Google Cloud Data Champions のご紹介: オーストラリアのロード インテリジェンスを高めている Emily Bobis 氏
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 2 月 16 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: 本ブログ投稿は、データと AI を活用した変革の舞台裏で活躍する人々を称えるシリーズ「Google Cloud Data Champions のご紹介」の第 2 回です。このシリーズでは、毎回ひとりの Data Champion をお招きして、これまでのキャリア、学んだ教訓、他のリーダーへのアドバイスなどをお聞きします。今回ご紹介するのは、受賞歴を持つオーストラリアのロード インテリジェンス企業 Compass IoT の共同創業者である Emily Bobis 氏です。Compass IoT は、コネクテッド カーのデータを使用して道路の安全性、インフラ、都市計画の改善に取り組んでいます。Compass IoT の事業の詳細をご覧ください。
自己紹介をお願いします。子供時代を過ごされた場所や、その後テクノロジー分野に進むことになった経緯をお聞かせください。
私の場合は、気づいたらテクノロジー業界で働いていたという感じです。もともとテクノロジー業界で働く人に対して特定のイメージを抱いていて、自分はそうした人たちとは違う人種だと感じていました。シドニー大学の学士課程で学んでいた最後の年に、シンガポール短期交換留学のための奨学金に応募しました。その奨学金は 4 人の学生に支給される予定だったのですが、運良く 4 人しか応募者がいなかったのです。さらに留学先では、共同創業者である Angus McDonald に出会いました。
Angus が最初に立ち上げたスタートアップに私も参加しました。シェアサイクル サービスを提供する Airbike という会社でした。これが、私が最初に関わったテクノロジーを活用したモビリティ サービスです。Airbike によって、スマートシティのデータには大きな欠落があることが明らかになりました。より優れた、安全な都市を設計するには、住民が街の中を実際にどのように移動するのかを知る必要があるのです。この問題に気づいたことが、Compass IoT 創業のきっかけとなりました。
キャリアを築くうえで、影響を受けたリーダーや企業があれば教えてください。
とても幸運なことに、シドニーにはスタートアップ エコシステムがあり、お互いの成功を心から願い、力を貸してくれる創業者がたくさんいます。なかでも、Guild of Entrepreneurs というオンライン コミュニティを主催する Alex Carpenter 氏と、University of Technology Sydney startups を率いる Murray Hurps 氏の 2 人は、このスタートアップ エコシステムを代表する人たちです。非常に寛大かつ親切で、頼りになります。
風変わりに聞こえるかもしれませんが、テコンドーの師匠である Alan Lau 氏にも影響を受けました。Alan とのトレーニングではレジリエンスと忍耐力を学びました。また、常にフィードバックを受け、それをまとめて、改善に取り組むといったスキルは、起業家として成長するために直接役立ちます。あまり人には言っていませんが、実はテコンドーの黒帯を持っています。2023 年には、テコンドーを習い始めて 13 年目になります。
Compass IoT の成長に向け、データ /AI 戦略を重視した理由を教えてください。
大量のデータを管理するには非常に多額の費用がかかり、また管理作業自体も非常に煩雑です。長期的な戦略を立てることで、極端に煩雑になったり費用を大幅に増やしたりすることなく、スケーラブルなプロダクトを開発できます。また、提供するプロダクトの品質を犠牲にする必要もありません。当社の場合、戦略を立てて、BigQuery、Pub/Sub、Cloud Run、Google Kubernetes Engine をはじめとする Google Cloud のグローバルにスケーラブルなツールを活用することで、データ レイテンシとエンドユーザー エクスペリエンスに影響を与えることなく、ビジネスを成長させることができました。
ご自身やチームがデータと AI を活用して成し遂げた最も大きな成果は何ですか。
非常に幸運なことに、当社のお客様はすべて、データドリブンな問題解決を抵抗なく受け入れてくださいます。ですから、一つのプロジェクトに絞るのは難しいです。大きな成果の一つは、コネクテッド カーのデータが、輸送ルートの把握や、道路の安全性向上など、さまざまな用途に活用されていることです。また、地方自治体が水害後に優先的に保守および補修を行う道路を選択する際にもこのデータが活用されています。
また、当社のデータを活用することで、シドニーで最も交通量の多い道路の衝突事故件数が半減したことや、当社のデータを元にドライバーの信号待ちの時間を変えただけで、高速道路の出口車線での追突事故の件数が減ったことも大きな成果です。詳しくは、事例紹介をご覧ください。当社はオーストラリア中の膨大なデータポイントを日々取り込んでいます。Pub/Sub は、非常に低いレイテンシで、ほぼリアルタイムの結果をお客様に提供するうえで非常に重要です。Google Cloud のデータ処理機能により、ドライバーの命と安全に関わる道路ネットワーク上の変化をモニタリングできます。交通事故は、24 歳以下のオーストラリア人の最大の死因の一つです。危険な目に遭う可能性が最も高い、道路を利用する人の命を守るために、当社の技術が使われているのは非常に嬉しいことです。
データ / AI の分野に足を踏み入れた当時に受けたアドバイスのなかで、特に役に立ったものを教えてください。
メンターであり友人でもある Brad Deveson の「迷ったらとにかく何かやってみろ」というアドバイスをいつも心に留めています。多くの人が、「正しい」決定を下すことや、失敗を避けることを重視しすぎて余裕を失い、結局何も決められなくなりがちです。ですから、決断に迷ったらとにかく何かやってみるほうが、何もしないよりもましです。それで失敗してしまったら、ロス・ユースタス・ゲラーのセリフを真似て「回れ右」すればいいんです。
データや AI の活用を重視するようになった過程で得た重要な教訓を教えてください。克服しなければならなかった課題はありましたか。
私が学んだ最も重要な教訓は、特にデータドリブンかつ比較的新しい業界では、イノベーションが必ずしも受け入れられるわけではないということです。当社がプロダクトやサービスを提供しても、想定したお客様から問い合わせをもらえる保証はありません。それどころか、当社の存在に気づいてさえもらえないかもしれません。忍耐強く長い時間をかけ、またお客様の気持ちになって、お客様がプロダクトやサービスを理解し、スキルアップできるよう取り組むことが非常に大切です。ブランド ストーリーの主人公はお客様です。お客様が成果を上げるようお手伝いするのが、私たちの役割です。自分が主人公ではないのです。
また、テクノロジー企業の創業者が技術者ではない場合、その創業者が克服しなければならない特に大きな課題は、開発タスクを終えるまでの現実的なスケジュールを把握し、そのスケジュールに沿ってお客様の期待値を管理することです。特定の開発期間が必要な理由を伝えられなければ、高品質なプロダクトやサービスを提供し、さらに社内のメンバーとお客様を同時に満足させることはできません。この場合、信頼できる開発チームを抱えることが非常に重要です。
Google Data Cloud でのデータベース、データ分析、ビジネス インテリジェンス、AI に関する最新のイノベーションの情報を入手するには、エキスパートのインサイトとデータ戦略について紹介する Google Data Cloud & AI Summit にご参加ください。
- Compass IoT、共同創業者 Emily Bobis 氏
- アソシエイト プロダクト マーケティング マネージャー Grace Yeung