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データ分析

臨床データを迅速に統合して要援護者に優先的にケアを提供

2020年10月30日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2020 年 10 月 22 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。


編集者注: 今年初めに COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックが米国に到来して以来、医療機関は患者にサービスを提供する計画の変革やスピードアップを迫られました。Commonwealth Care Alliance(CCA)は、Google Cloud のデータ分析を活用し、臨床医およびケア マネージャーと高いリスクを持つ会員とを結びつけることに成功しています。CCA で臨床情報学と高度分析部門のバイス プレジデントを務める Valmeek Kudesia 氏に、CCA のストーリーを伺いました。

CCA は、メディケイドとメディケアの両方の受給資格を持ち、高コストの特別な支援を必要とする個人を対象としたケアの提供とコーディネートを行うコミュニティ ベースの医療機関であり、リーダーとして全国的に認められています。CCA は、医療保険者、ケア マネージメント組織、実際のケアを担当する医療従事者の役割を統合して、支援を必要とする個人(「会員」)にサービスを提供しています。CCA の会員は、医学的、行動健康的、社会的な課題を抱えて生活しています。会員の多くは複雑な生活を送っており、ほぼすべての会員が特別なサポートを必要としているか、社会的に疎外されている人たちです。去年の冬に COVID-19 のニュースが米国に到来して以来、会員に対するより高いレベルのケアと注意が必要になりました。急速に変化する数多くの新しい要素を考慮しながら、会員へのサービスを続けるという使命を果たす必要がありました。

私たちの専任スタッフと臨床医は、迅速に利用でき、多くの分野またソースから統合された信頼できるデータを求めていました。CCA ではすでに、Google Cloud の BigQuery と Looker を使用する高度な分析プラットフォームを導入していました。6 か月後には、データの信頼性を確立して、会員が求めるサポートに関する包括的な情報を臨床医に提供できるようになり、会員の心身両面をケアする CCA の能力が強化されました。言い換えるなら、人間を中心としたデータ使用や分析が可能となったということです。今後も CCA は、会員に最良のサービスを提供するためにデータを活用し、COVID-19 とインフルエンザの同時流行に備えます。

意思決定の迅速化に必要なデータ

私たちが選んだプラットフォームは、数多くのユーザーがスピーディにさまざまな方面に移動し、必要なデータや情報をすばやく変更する必要がある状況を想定して構築されています。そのため、COVID-19 の到来後も、方針を転換する必要はありませんでした。

CCA のデータ サイエンス チームは、Looker と BigQuery を他のテクノロジー(下図を参照)と組み合わせて使用し、データ オペレーションと ML オペレーションの機能を開発しデプロイしました。Google Cloud 全体は、HIPAA 要件を満たす単一の業務提携契約(BAA)の下で利用可能であり、弾力性の高い BigQuery もサービスの一つとして利用できました(現在も同様)。これらの 2 つの機能により、CCA の小規模なデータ サイエンス チームは、コンプライアンスを維持し、優れたプラットフォーム パフォーマンスの恩恵を得るとともに、集中力を維持して迅速に行動できるようになりました。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/looker_and_BQ.max-1000x1000.jpg

COVID-19 パンデミックへの対応時に、私たちが使用しているクエリの抽象化と列ベースのデータエンジンには利点があることを実感しました。1 日または 1 週間の間で随時「何が重要か」を定義する非常に高速なサイクルと組み合わせることで、個々の「物事」を説明するための方法が急速に増加しました。列形式を利用することで、可能な限り多くの質問に対して回答を事前に提供できるようになりました。また、臨床医が新しいデータや異なるデータを表示するのに必要な速度で何を見るかということに関し、簡単なクエリ仮想化を使用して迅速なイテレーションを行いました。その結果、臨床医と「足並みを揃える」ことができるようになり、一般的なダッシュボードに加え、アクション ボードと呼ばれる、役割ごとに固有のダッシュボードを介してデータや予測分析情報を提供できるようになりました。「アクション ボード」はダッシュボード以上のものであり、会員 1 人 1 人のニーズに応じて、臨床医が次に実行するアクションを決定するために必要な情報が提供されます。

会員が必要とする宅食や投薬などのサービスを確実に提供するために、複数のソースの 1 日ごと、ものによっては 1 時間ごとのデータを組み込む必要がありました。必要なデータがすべて揃っていたこともあります。たとえば、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)による COVID-19 合併症のハイリスクの定義を 30 分以内に LookML(Looker のクエリ抽象化レイヤ)に実装し、CCA の情報モデルに「ハイリスク COVID-19 合併症」コンセプトをリンクさせました。メインの COVID-19 モニタリング ダッシュボードを 1 日で構築し、関連するパンデミック データを他の臨床ダッシュボードとアクション ボードに取り込みました。抽象化や行き届いた情報配信とコンセプトの柔軟性を組み合わせることで、COVID-19 の影響を受けるリスクの高いすべての会員を迅速に特定し、担当の CCA 臨床医と統合ケアチームにその情報を提供できるようになりました。

必要なデータの中にはアクセスが難しいものがありました。たとえば当時、GitHub には COVID-19 のデータやデータサービスのリポジトリはありませんでした。それでも、すべての会員にサービスを提供するために必要なすべてのデータを組み込む必要がありました。これは、雑食的なデータ取得アプローチです。多くの場合、自分たちの手でデータを収集する必要がありました。たとえば、マサチューセッツ州での COVID-19 パンデミックの初期段階において、高齢者に必要不可欠なサービスを提供するコミュニティ センターである成人向けデイケア(ADH)センターが閉鎖され始めたかと思うと、突然一斉に閉鎖されました。新たに ADH が閉鎖されたことを知ってから数分以内で、それぞれの会員を担当する CCA の臨床医に、その情報をアクション ボードを介して提供できました。COVID-19 パンデミックの後の段階においては、検査の陽性率に関するマサチューセッツ州公衆衛生局のデータの取り込みを開始して、COVID-19 のリスクが高い地域や拡大している地域に、リスクの高い会員がどのくらい密集して居住しているかを示す分析情報を提供しました。

「単なるデータ」から「ケアとサポートの基盤」へ

COVID-19 のパンデミックとその影響が深化し続けるなか、CCA は利用可能な最新の情報を継続的に活用して会員のサポートとケアの戦略を更新し主導しています。CCA のチームは、データをより快適に使用できるようになりました。週当たりのアクティブ ユーザー数は通常で 450 人以上です。平均すると、就業時間中にほぼ 1 秒に 1 回のペースで誰かしらがデータを確認しています。質問はより興味深いものになり、データが会員の全体像にどのように適合するか、または適合しないかについて、より多くの質問がなされるようになりました。データを個別の要素として考えるのではなく、データは消え去り、1 人の人間である会員とのやり取りを行ううえでのコンテキストの一部として吸収されるようになります。これは、GPS について特に考えることなく目的地のみに意識が向いているような状況に似ています。現在では、会員にケアを提供する際に実際にデータが活用されています。データは、日常の業務に組み込まれています。

この種の信頼性を獲得したことで、データ サイエンス チームはより深い特徴量エンジニアリングと因果推論に移行し、スタッフや臨床医に提供する分析情報を充実させました。また、CCA のスタッフや臨床医は、サポートを必要とする会員のケアに、データによる支援を期待するようになりました。

データに基づいた意思決定に関する振り返り

データに基づく意思決定を実現するためには、システムに対する信頼を時間をかけて構築する必要があります。COVID-19 が、その信頼を高めることに一役買いました。現在、CCA の臨床医は、サポートを必要とする会員のケアに、データによる支援があることを想定しています。完全ではないものの有用なデータとプラットフォームを構築するためには、迅速なイテレーションを行う必要があることを学習しました。そして、テクノロジーはそのイテレーションの速度に十分に対応している必要があります。人間である私たちは、自分が把握していることに目を向ける傾向があります。全体像が見えていないとき、すべての情報を持っていないときには、近視眼的な選択や逆効果になる選択をすることがあります。既存の問題を悪化させる習慣や思い込みに陥ってしまうかもしれません。

現在 CCA では、人間とデータ間のやり取りに加え、人間と機械との間のやり取りについても取り扱っています。正しく理解することで、余計なステップをはさむことなく、意思決定のプロセスにデータを組み込めます。これは究極的には、意思決定プロセスの自然な一部分にすぎません。この場合は、人間をケアするための意思決定です。たとえば、胸痛の評価には、膨大なデータを内包する心電図(ECG)の解釈が必要になることがよくありますが、臨床医の目的は ECG をケアに役立てることであり、データそのものに注目することではありません。

データを適切に活用すれば、人によるケアを強化し、治療における味方とすることができることを COVID-19 のパンデミックから学べました。

CCA の詳細は、JOIN@Home セッションおよびケーススタディの全文で確認できます。

-CCA Clinical Informatics & Advanced Analytics 担当バイス プレジデント Valmeek Kudesia 医学博士

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