Fortune 500 のアルコール飲料企業を俊敏性のある e コマーストップ企業へ転換
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 8 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: 今回は、アルコール飲料企業 Constellation Brands の DTC 成長 / 戦略部門担当責任者でディレクターである Ryan Mason 氏に、消費者直接取引（DTC）への転換についてと、Google Cloud の力強いテクノロジー スタックがその転換を支えた方法についてお話を伺いました。
18 か月におよぶパンデミック後に、消費者との直接ビジネスが一変し、その状況が継続していることは誰もが知るところです。この 1 年間、消費者はこれまでとは違う方法での買い物を強いられてきました。その結果、オンラインでの支出に対する慣れが生まれ、ある程度の利便性を期待するようになってきています。消費者販売における e コマースのシェアが過去 10 年間で着実に伸び続けている中で、パンデミックがきっかけとなり、今後も残っていくであろう「10 年の成長を 3 か月で」という有名なフレーズが誕生しました。
こうした現実に対処していくために、e コマースを通して消費者に直接販売する直販ワインブランドである Empathy Wines を買収し、消費者への直販（DTC）に改めて力を入れました。DTC 分野でのイノベーションを加速させるために、既存の Empathy チームに人員と新たな職務を追加し、新たに立ち上げた DTC グループに Robert Mondavi Winery、Meiomi Wines、The Prisoner Wine Company、High West Whiskey などを含むワインやスピリッツのポートフォリオへのデジタル コマース運用モデルの適用を推進してきました。
パンデミックの中 1 年が経過し、ユニークかつ強力なクラウド テクノロジー スタック、最高水準の e コマースのユーザー エクスペリエンス、モダナイズされたフルフィルメント ソリューション、データドリブンの成長マーケティングを整備して業界のリーダーとなった Constellation は、ワインとスピリッツのカテゴリで DTC の売り上げが急増しました。
DTC にするメリット
ある McKinsey のレポートでは、パンデミックにより DTC への戦略的なビジネスの移行がここ 2 年間で加速しており、消費者向けブランドが成長するには DTC ビジネスで 20% 以上を目指す必要があると論じています。実際に市場ではその動きが具体化しつつあり、Nike の直販デジタル チャネルは昨年度の 15.5% から増加し、2021 年末までに総事業の 21.5% への到達に向かっています。また、Adidas は 2025 年までに DTC 50% を目指しています。収益面で利点があるのはもちろんですが、他にも DTC を推進するメリットは十分にあります。
Constellation Brands にとって、この 4 つの柱は核心を突いていて、DTC への転換は大部分が消費者インサイトやデータによる収益の増加と収益ミックスの管理を目的としています。アルコール分野であることで複雑さが増し、それにより消費者の買い物の嗜好、配達と物流の障害などのあらゆる面で、DTC へのアプローチとマニフェストに別方向からのアイデアを加える必要がありました。早々にシェアを獲得し、このカテゴリをリードし続けるために、膨大な量の自社データを活かして、インパクトの強い行動につながるインサイトを強化する必要があることに気づきました。
Constellation Brands の DTC テクノロジー アーキテクチャは、完全にデジタル化したバリュー チェーンを生み出す礎の一つとなりました。ウェブサイト トラフィック、マーケティングの支出、テイスティング ルームのトランザクション、e コマースのトランザクション、物流とフルフィルメント イベント、売上原価（COGS）、利益のプロファイルなどが、リアルタイムでデータ ウェアハウスに記録、保存されています。そして初めて、次のような複雑なビジネス上の疑問にいつでも簡単かつ確定的に回答できるようになりました。「過去 6 か月間にブランド直販サイト Y から SKU X を購入したロサンゼルスのお客様の年齢と性別の分布は？コホートのネット プロモーター スコアは？この郵便番号の範囲で同日配達を導入した後にスコアは伸びたのか？どのくらい伸びたのか？」
こうした質問に回答し、根本的な原因を理解することで、お客様の好みに合ったスピードでのプロダクト提供やイテレーションするマーケティング戦略を、俊敏性を保ちながら実施することができています。さらに、Drizly や Instacart などの主要な卸売ディストリビューション パートナーや 3 ティアの e コマース パートナーとの有益な戦略を発展させるために、DTC 消費者インサイトを活用した場合と同様にオムニチャネルでのプレゼンスの最適化が可能になっています。Constellation における DTC の実践で中核となっているのが顧客第一で設計された「急先鋒」で、卸売を含むすべての販売チャネルにメリットをもたらす分析情報を生み出す役割を担っています。
消費者中心と分析情報の生成を最優先にした Constellation の DTC テクノロジーに対するアプローチ
Constellation Brands は、デジタル コマース テクノロジー スタックの構築に対し最新のアプローチを取っています。Shopify Plus を中心に構築したハブアンドスポークや、その他の主要な最新テクノロジーのプロバイダを活用しています。たとえばメール プロバイダの Klaviyo、ロイヤリティ プラットフォームの Yotpo、ネット プロモーター スコア測定の Delighted、カスタマー サービス モジュールの Gorgias、決済代行業者の Stripe、イベント予約プラットフォームの Tock などです。デジタル マーケティングと分析では、Google Cloud と、アナリティクス 360、タグ マネージャー 360、検索広告 360 などのプロダクトを含む Google マーケティング プラットフォームを使用しています。
エコシステムからすべての受信データを収集、整理、保存するために、e コマース ビジネス向けのデータ処理プラットフォームである SoundCommerce と提携しています。SoundCommerce の協力を得て、すべてのエンドポイントから Google BigQuery 中央データ ウェアハウスへのデータ取り込みの自動化が可能になりました。BigQuery のおかげで、データチームはデータサイロを排除でき、ビジネスに関する実用的なインサイトを引き出す大量のデータの素早い分析が可能になりました。BigQuery では、BigQuery ML の SQL を使ってすぐに使用できる予測分析が可能で、すべての Google マーケティング プラットフォームのデータが BigQuery 内での分析にネイティブにアクセスできることが重要な差別化要因となっています。
しかし、データの保有だけでは機会の半分しか活用できていません。そのため、システム内に流入する膨大な量のデータを理解するためには、力強く最新のビジネス インテリジェンス プラットフォームが必要でした。調査の核になったのは、Constellation Brands の将来を見据えた戦略と合致する BI へのアプローチを実践しているパートナーを探すことでした。
DTC チームは、顧客獲得コスト（CAC）、顧客のライフタイム バリュー（CLV）、離脱、ネット プロモーター スコア（NPS）などのさまざまな指標の正確な測定値をビジネスの健全性の指標として信頼し、成功するための最重要事項として、日々このような数値をモニタリングしています。そこで、戦略的な KPI を正確に把握し続けられるように、既存の BI プラットフォームをいくつか検討しました。その中で最終的に、他社から一歩抜きんでたさまざまなメリットがある Google Cloud の Looker を選びました。
とりわけ構想という観点では、Looker は、誰もが正確かつ最新の情報にアクセスできる場合に優れた意思決定が行われる、という Constellation Brands の信念と最も合っていました。Looker は、誰であっても重要な販売活動に関するリアルタイムのデータに基づいて行動を起こせるように、シンプルなウェブベースのインターフェースにデータを掲示しており、それによりビジョンの実現が可能になっています。さらに、Looker にはフォーマット化されたモジュールを多くの関係者に定期的に自動で配信する機能があり、データ リテラシーとビジネス パフォーマンスの透明性が向上しています。
プロダクトという観点では、実際のデータの抽出を必要とせずに、すべてのユーザーが自信をもってデータを扱うことができる、信頼に足る環境を生み出すクラウド サービス、ウェブベースのインターフェース、 一元化されたアジャイルモデリング レイヤが理由で Looker を選びました。その他の BI ツールは、スキルを持った IT リソースを必要とする一元化されたセマンティック レイヤですが、それがボトルネックになり、アジリティが制限される場合があることを経験してきました。Looker のセマンティック レイヤである LookML であれば、Peter Donald 氏が率いる BI チームは、自分たちの SQL の知識を容易に積み上げることができ、データモデルに対する高度な管理と柔軟性の両方を実現できます。堅牢でシームレスな Git ソースコード管理で支えられた完全なブラウザベースの開発環境であることで、データチームがコードを迅速に開発、テスト、デプロイすることが可能となっています。
同時に、LookML ではビジネス ユーザーは高度な SQL の知識を必要とせずにコラボレーションができます。Constellation Brands のデータチームは、アクセスと導入を拡大するために、Looker でインタラクティブなデータ エクスペリエンスを取りまとめています。ビジネス ユーザーは、ウェブベースの環境でアドホック分析、ダッシュボード作成、カスタムデータ エクスペリエンスの開発が確認でき、新しい疑問が生じるたびに IT リソースに頼ることなく、基になるデータが常に正確であると自信を持った状態で、必要な答えを得ることができます。このことが、必要なデータへのアクセスをすべてのビジネス ユーザーに提供するという一番の目標の達成に寄与し、リアルタイムに近い状態で主要な指標の状況のモニタリングを可能にしています。
Constellation における DTC BI の影響と今後
端的に言うと、DTC テクノロジー スタックに最新の統合アプローチを取ることで、ポートフォリオ全体に経済的な効果が表れ、顧客の離脱の食い止め、コンバージョン率の向上、顧客獲得コスト（CAC）の最適化、顧客のライフタイム バリュー（CLV）比率に対するチームの理解を促進しました。おそらく最も重要な点は、顧客ベースへのメリットでしょう。顧客データや消費者行動のマイニングが、お客様がなにを求めているのかのデータを生み出し、供給の増減を判断するための分析情報となります。たとえば、SKU かリージョンで販売のベロシティやコンバージョン率をモニタリングすることで、お客様の好みに関するプロファイルの変化、需要の変動、より力強く革新的なパイプラインのための基盤の提供、卸売業界におけるより効果的な販売および流通戦略についての理解を深めることが可能です。Constellation Brands のチームは、データ インサイトとデータ アクティベーション間のさまざまなサイクルに寄与する、Looker の新たな統合である Customer Match の初期パイロット版のテスターでもあります。将来的には、このサイクルを有効活用し、ワインとスピリッツのポートフォリオの検索、ショッピング、YouTube のプレースメントで Google 広告の効果を増大させる計画です。
Looker による運営上の影響も大きく、チームによると、重要なビジネス上の意思決定にかかる時間が約 60% 減少し、生産性の底上げと毎日の運用リズムの迅速化が実現すると試算しています。最新の BI ソリューションを併せ持つ厳選されたテクノロジー スタックのおかげで、業界をリードする位置に居続けることができています。Constellation では、規模面で DTC の販売チャネルが中核事業の卸売を上回るようにはデザインしていませんが、このアプローチにより今後何年もビジネス全体に利益をもたらすであろう比類ない分析情報と測定能力が得られました。
-Constellation Brands ディレクター兼 DTC 成長/戦略部門担当責任者 Ryan Mason
