ルービン天文台による最初の天文学研究プラットフォームがクラウドで実現
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 7 月 2 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
今週いよいよ、ヴェラ・C・ルービン天文台において、天文学者のための新しいルービン サイエンス プラットフォーム(RSP)の初回プレビューが立ち上げられます。この天文台は南米のチリにありますが、アメリカ国立科学財団(NSF)傘下でアリゾナ州ツーソンに拠点を置く NOIRLab とカリフォルニア州の SLAC によって管理され、NSF と米国エネルギー省が共同出資しています。このプラットフォームでは、Legacy Survey of Space and Time(LSST)の膨大なデータセットを保存、分析するための使いやすいインターフェースが利用可能になります。LSST は、10 年間にわたって毎晩、天球の 3 分の 1 を網羅する調査を行い、数十億の星や銀河系、数百万の超新星や変光星、太陽系の小天体を観測するプロジェクトです。
LSST のデータセットは前例のない膨大さと複雑さにより、科学者が自分のパソコンにダウンロードして分析できるレベルをはるかに超えたものになります。科学者は代わりに RSP を使用して、ウェブポータル、ノートブック、その他の仮想データ分析サービスを組み合わせ、LSST データ アーカイブの処理、照会、可視化、分析を行うことができます。初回の立ち上げは「Data Preview 0」と呼ばれ、シミュレーション データを使用します。これは、ルービン天文台と Google の 3 年契約の提携により、Interim Data Facility(IDF)を Google Cloud に構築して巨大 LSST データセットのホスティングをプロトタイプするものです。クラウドベースのデータ ファシリティをこの規模で天文学に応用するのは、この契約が世界初となります。
星の世界をクラウドに
Data Preview 0 では、IDF に Cloud Storage、Google Kubernetes Engine(GKE)、Compute Engine が活用され、ルービン天文台のユーザー コミュニティが RSP の初期バージョンで LSST のシミュレーション データにアクセスできるようになります。シミュレーション データは LSST 暗黒エネルギー サイエンス コラボレーションによって数年かけて構築されたもので、天球の 300 平方度以上(月の面積の約 1,500 倍)を 5 年間観測した LSST 的なデータを疑似化したものです。そこで得られる画像は非常に現実に近く、ピクセルサイズや光子の検出感度など、その計測的特徴は、ルービン天文台の LSST カメラに求められる仕様と同じです。さらに、LSST データの処理に使用される予定の LSST サイエンス パイプラインの初期バージョンで処理された点も実際の状況に即しています。ルービン天文台のシニア マネージャー兼コミュニケーション担当責任者である Ranpal Gill 氏は、次のように述べています。「このようなワークロードがクラウド環境でホストされるのは初めてです。研究者の方々には、このプラットフォームの初期バージョンをいろいろと試してみる良い機会となるでしょう。」
より多くの研究者にアクセスを拡大
Data Preview 0 には、ルービン天文台のデータへのアクセス権を持つ 200 名以上の科学者や学生が参加します。これらの参加者は、さまざまなグループや地域を代表し、多様な経歴を持つ幅広い応募者の中から選ばれました。参加者には、チュートリアル、セミナー、通信チャネル、相互交流の機会など、各種リソースによるサポートが提供されます。そして、RSP のデータを使用して、自分のペースで独自の科学分野を自由に研究できます。
ルービン天文台のリード コミュニティ サイエンティスト兼ワシントン大学天文学部の研究科学者である Melissa Graham 氏は、次のように述べています。「革新的な性質を持つ将来の LSST データセットには、その分、データアクセスとデータ分析の革新的なシステムと、科学者への万全なサポートが必要です。Data Preview 0 では、LSST 関連の科学目標を探究する参加者をサポートすると同時に、RSP のツールをビッグデータ分析に使用して自分のスキルを強化できることも個人的にとても楽しみです。」
同時に、RSP がクラウドでホストされるということは、小規模の研究所などに所属する研究者も、最大規模の国立研究センターに引けを取らない最先端の天文学インフラストラクチャにアクセスできることを意味します。
また、今回のプレビューでは、研究者が何に関心を持っているのかを開発チームがプラットフォームのテストやデバッグ中に知ることができ、ルービン天文台にとっても有意義な効果が見込まれます。Graham 氏は次のように述べています。「プラットフォームは現在も活発な開発が進んでおり、それを使用する研究者も開発過程でフィードバックを提供してツール開発の最適化に関与することで、ともに発展していくことができます。」
次のステップ
LSST では、10 年にわたる観測を 2023~2024 年中に開始することを目標に掲げ、500 ペタバイトのデータ収録を予定しています。Google は、この比類ない規模のプロジェクトをクラウドを通じてサポートし、スケーラビリティを確立して、世界中の研究者がアクセスできるようにすることを目指しています。Data Preview 0 の詳細については、こちらの動画をご覧ください。
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-Google for Education マーケティング担当 Nicole DeSantis