パート 1: ハッカソンはもはやプログラマーだけのものではない
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 3 月 10 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
今日、世界中の企業や組織がハッカソンを開催し、ソフトウェア デベロッパーのスキルアップやコラボレーションの強化、創造性の醸成、新しいアイデアの試行を後押ししています。では、技術者以外の従業員はどうしたらよいのでしょうか。ハッカソンに参加して技術的なソリューションを構築するには、前提条件としてコーディング能力が必要なのでしょうか。
コード不要のアプリケーション開発の登場で、その答えはノーになりました。数年前までのハッカソンでは技術者以外の従業員は脇役に甘んじていましたが、今日では、誰もがコードを書かずにアプリを構築したり、技術の最適化を図ったりできるプラットフォームへの投資が進んでいます。ハッカソンはソフトウェア デベロッパー限定のイベントではありません。技術者以外の従業員も、ノーコード ツールを使用することで、テクノロジーを活用して創造的なソリューションを構築できる「シチズン デベロッパー」になることができます。
在庫や物流を管理するアプリから、現場でデータを収集するアプリ、そして時間のかかるステップを自動化するプロセスの最適化まで、必要とされているソリューションは数多く存在しますが、従来のデベロッパーが使えるリソースや時間は限られているため、それらが十分に構築されているとはいえません。しかしノーコードとシチズン デベロッパーは、イノベーションのツールを民主化し、こうした状況を一変させる可能性を秘めています。
Google Cloud はこの民主化を実現するため、ノーコード アプリケーション開発プラットフォームである AppSheet を構築しました。また多くのお客様事例から、ハッカソンが技術者以外の従業員にインスピレーションを与え、シチズン デベロッパーによる開発プログラムを大きく進めるために非常に有効であることが確認されています。
たとえば、フィリピンの大手モバイル ネットワーク プロバイダの Globe Telecom は、ノーコード ハッカソンをはじめて開催した際、参加者は 30 チームほどになるだろうと予想していました。しかし、従業員が非常に乗り気だったため、100 チーム以上から参加の申し込みがありました。優勝を飾ったのは、Globe Telecom サービスの統合性のリスクになり得る不正なシグナル ブースター アクティビティを検出するワークフロー最適化アプリでした。最終候補に残ったその他のアプリには、同社の小売店向けの在庫管理アプリや、従業員が目標に向かってリアルタイムで共同作業するために役立つ開発計画および評価のアプリ、さらにはガソリン価格レポートを含む車両メンテナンス アプリなどがありました。こうしたプロジェクトによって既存の IT 部門の業務が完全に代替されることはありませんが、比較的構築が容易であるにもかかわらず、IT 部門に時間がなかったために手つかずで残されていた一部のアプリに開発の道筋を示すものであるといえます。ノーコードのおかげでシチズン デベロッパーがソリューションを構築できるようになり、結果として従来のデベロッパーはより高度で戦略的なイニシアチブに取り組むことができるようになりました。
多くの方々にこうしたメリットを享受していただけるよう、組織がノーコード ハッカソンをうまく実行するために役立つ内容をお届けします。本日は 2 部構成の 1 回目として、ハッカソンで期待できるメリットと、目標として設定しておくべきことについてご説明します。次回の 2 回目では、大きなイベントを成功させるためのフレームワークについて詳述します。
ノーコード ハッカソンによってどのような価値を生み出すことができるか
ノーコード ハッカソンでは素晴らしいアプリが生み出されることもありますが、その目標は、最初から驚くほど革新的なアプリを生み出すということではなく、既存の IT 部門の協力のもと、シチズンによる開発が長期間にわたって盛んに行われる文化を作り上げることにあります。
ハッカソンによってノーコード アプリ開発が促進されます。最も重要な目標の 1 つは、シチズンによる開発とは何かを定義し、従業員がソリューションを試すことができる場を設けることです。多くの場合、技術者以外の従業員は日々さまざまな問題に遭遇しているため、一般的な問題の解決をサポートするにふさわしい立ち位置にいるといえます。たとえば、あるデベロッパーが運用管理者からのアプリケーション開発リクエストを評価しようとしているとします。そのアプリケーションでは機器の評価データを追跡処理する必要があり、製造現場で働く 20 人の従業員のために複数回の承認プロセスを経る必要もあります。そのタスクと問題点を熟知している可能性が高いのは製造現場で働く従業員であるため、従来のデベロッパーが望む結果を得るためには膨大な開発サイクルが必要になる可能性があります。またこのリクエスト自体、認められなければ評価すらされません。しかし、ノーコード プラットフォームという手段を用いれば、製造現場で働く従業員が実際に自分たちでアプリを作ることができます。シチズン デベロッパーの強みは、対象分野の専門家であることが多く、ニーズやプロセスを自分で詳しく把握しているということです。その強みを存分に発揮するために必要なものは、実行をサポートするプラットフォームとプログラムだけなのです。
ハッカソンによってプラットフォームの採用が促進されます。シチズンによる開発が可能であることをハッカソンの主催者が伝えることで、次の目標である「実際に従業員にノーコード プラットフォームを採用してもらう」ための準備が整います。ハッカソンでは、ノーコード プラットフォームを使用して制限時間内に目標達成を目指します。短い時間にテストを重ねることで、将来のノーコード プロジェクトに向けて活用できるスケーラブルなベスト プラクティスやインサイトが得られます。このような取り組みや、取り組みを通じて醸成される「実際にやってみて学ぶ」という文化により、ハッカソンの参加者が継続してノーコード プラットフォームを使用する可能性が高まることが確認されています。また、その他の従業員も真似をしてノーコード プラットフォームを採用するようになることも明らかになっています。IT リソースの不足を解決するために奔走したり、IT リソースの増員を申請したりするのではなく、問題に最も近い人物に力を与えることで、組織が未来に集中し続けることができるようになるのです。
ハッカソンによって IT 部門とビジネス ユーザー間のコラボレーションが促進されます。前述のように、シチズンによる開発で既存の IT 部門の業務が完全に代替されることはありません。ただ、基幹業務の担当者に革新のためのツールを提供し、IT 部門のバックログから小規模プロジェクトをなくし、他の方法では構築されなかった可能性のあるアプリに開発の道筋を示すことができます。そしてその結果、デベロッパーが価値の高い戦略的なイニシアチブに集中できるようになるのです。また、シチズンによる開発は、IT 部門に隠れて行われるべきではありません。たとえばある強力なノーコード プラットフォームでは、従業員がセルフサービス ツールを使ってテストや構築を行うことができる一方で、IT 管理者に、ノーコード プラットフォームの背後にあるデータベースや API にへのアクセス状況を監視し、制御するガバナンス権限を与えることができます。つまり IT 部門とシチズン デベロッパーは「私たち対彼ら」という対立関係ではなく、相利共生関係であるべきといえます。ハッカソンを開催することで、このような関係を一から構築していくことができます。その過程でビジネスチームと IT チーム間のコラボレーションにおけるベスト プラクティスが得られ、またノーコード プログラムでメリットが得られることを軸に、皆の協力が促されていくのです。
ノーコード ハッカソンを開催する
ここまででノーコード ハッカソンのメリットと目標についてはご理解いただけたと思いますが、「自分の組織で実施するにはどうすればいいのだろうか」と疑問に思われるかもしれません。そちらは次回の記事でお答えします。それまで、AppSheet でコーディングの必要なく構築できることについてこちらの記事でご確認いただければ幸いです。
-プロダクト マーケティング マネージャー Jennifer Cadence