Google I/O: Google Cloud について知っておくべきこと
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 5 月 12 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
今年もこの時期がやってきました。今週 Google I/O が開催されました。Google I/O は Google 最大のデベロッパー カンファレンスで、世界中のデベロッパー コミュニティが集い、学び、話し合い、楽しみます。このイベントでは Google Cloud と Google Workspace について大きく取り上げ、直感的で便利なデベロッパー エクスペリエンスを構築して自由かつ迅速にイノベーションをもたらす Google の取り組みについて紹介しました。Google は、AI / ML やセキュリティなどの分野に長年の Google リサーチから得た専門知識を組み込み、負担の高い作業を行います。それにより、貴社のお客様のために安全でインテリジェントなソリューションを簡単に構築できます。
今年の I/O の内容を見ていきましょう。
まず、基調講演について取り上げます。
Google I/O の基調講演
Google および Alphabet の CEO、Sundar Pichai のエネルギッシュな基調講演を皮切りに I/O の 1 日目が始まりました。基調講演では、機械学習の最近のブレークスルーに焦点を当て、世界で最も速く、最も効率的で、最も持続可能な ML インフラストラクチャ ハブの 1 つにも触れました。Cloud TPU v4 Pod を備えた Google Cloud の機械学習クラスタ(プレビュー版)を使用すると、研究者やデベロッパーは、より大規模で複雑なモデルをより高速にトレーニングすることで AI のブレークスルーを果たせます。さらに、大規模な自然言語処理(NLP)、レコメンデーション システム、コンピュータ ビジョンなどのワークロードを強化できます。1 つのデータセンターに 8 つの TPU v4 Pod が構成されるこのシステムは、9 エクサフロップのピーク パフォーマンスを生成します。90% のカーボンフリー エネルギーで動作するだけでなく、累積コンピューティング能力の点で世界最大級の一般利用可能な ML ハブであると考えられます。Cloud TPU v4 を使用した ML ハブの詳細については、こちらをご覧ください。
「TPU v4 に早期アクセスし、CodeGen を使用して、会話型 AI プログラミングのブレークスルーを達成できました。Code Gen は 160 億のパラメータの自動回帰言語モデルであり、単純な英語のプロンプトを実行可能コードに変換します。」 - Salesforce、リサーチ サイエンティスト、Erik Nijkamp 氏
「…TPU v3 から TPU v4 に移行すると、非常に大規模なモデルのトレーニング時間が 70% 向上しました。また、Cloud TPU v4 Pod の二酸化炭素排出量を大幅に抑えられることがもう 1 つの重要な要素でした。」 - Cohere、CEO および共同創設者、Aidan Gomez 氏
基調講演中、Sundar はユーザーに重点を置いた Google Workspace の新しい AI 対応機能についても説明しました。この機能は、ハイブリッドな職場環境でユーザーが活躍できるように設計されています。NLP が新たに進歩し、Google スペースの要約が可能になり、ユーザーは便利なダイジェストを利用して、聞き逃した会話を把握できます。Google Meet 向けの会議の自動音声文字変換により、会議に参加しなかった人が最新情報を把握したり、参加者が後で議論の内容を簡単に参照したりできるようになります。また、ユーザーはポートレート復元機能も利用できるようになりました。これにより、低品質のウェブカメラを搭載したデバイスでも、ビデオの画質が自動的に改善されます。さらにユーザーは、表面が硬い大きな空間での反響音をフィルタリングすることで、地下室やキッチン、ガレージでも「会議室と同等」の音質を再現できます。こうした新機能は良質なエクスペリエンスを提供し、Google Workspace ユーザーが、Googleの AI におけるリーダーシップからの恩恵を受けられます。
デベロッパー基調講演
次に、Google のデベロッパー エクスペリエンスおよび DevRel 担当バイスプレジデントである Jeanine Banks と複数のプロダクト チームが、Google Android から Flutter、Cloud に至るまで、魅力的な最新情報を数多く発表しました。Google Cloud については、まず Cloud Run ジョブのプレビューが発表されました。この機能により、デベロッパーはデータベース移行などの管理タスクの実行、毎晩のレポートなどのスケジュール ジョブの管理、バッチデータ変換の実行に費やす時間を短縮できます。Cloud Run ジョブでは、スケーラビリティに優れたフルマネージドの Cloud Run プラットフォームでコードを実行でき、ジョブの実行時にのみ料金が発生し、インフラストラクチャの管理に煩わされることがありません。Cloud Run ジョブの詳細については、こちらをご覧ください。
次に、PostgreSQL 向け AlloyDB のプレビュー版が発表されました。この新しいフルマネージドのリレーショナル データベース サービスは、従来の高価なデータベース システムから Google Cloud に移行するために必要なパフォーマンス、可用性、管理のしやすさを企業に提供します。AlloyDB は、Google マップ、YouTube、Google 検索、広告など、有名かつ世界中で利用されているプロダクトを支える、実績のある分散したストレージやコンピューティングを、PostgreSQL と組み合わせています。PostgreSQL はデベロッパーに愛用されているオープンソースのデータベース エンジンです。
Google のパフォーマンス テストによれば、AlloyDB は標準の PostgreSQL に比べてトランザクション処理が 4 倍、分析クエリが最大 100 倍高速です。また、トランザクション ワークロード向けの AWS の同等の PostgreSQL 互換サービスに比べて 2 倍高速です。AlloyDB のフルマネージド データベース操作と ML ベースの管理システムにより、管理者とデベロッパーは困難なデータベース管理タスクから解放されます。もちろん、AlloyDB は PostgreSQL と完全な互換性があります。つまり、デベロッパーは既存の開発スキルやツールを再利用できます。また、メンテナンスも含めて 99.99% の SLA を誇り、複雑なライセンスや I/O 料金は発生しません。PostgreSQL 向け AlloyDB の詳細については、こちらをご覧ください。
「デベロッパーには、アプリケーションの構築、イノベーション、移行のために多くの選択肢が用意されています。AlloyDB は、PostgreSQL との完全互換、優れたパフォーマンス、可用性、クラウド統合を備えた魅力的なリレーショナル データベースの選択肢を提供します。私たちは Google と共同でイノベーションに取り組み、エンタープライズ グレードの機能を活用しながら、従来の独自データベースから費用対効果の高い方法でモダナイズできることを大変うれしく思っています。」 - PayPal、データ インフラストラクチャおよびクラウド エンジニアリング担当シニア ディレクター、Bala Natarajan 氏
Cloud 基調講演 - 「デベロッパー向けに構築されたクラウド」
Cloud 基調講演では、Google Cloud のプロダクト管理ディレクター Aparna Sinha と、Google Workspace のプロダクト リード Matthew Izatt が、エキサイティングなクラウドの最新情報を紹介しました。Aparna は、Cloud Run ジョブと AlloyDB の利点を繰り返し口にして、Google の複数のサービスがうまく統合された、バックエンド、ウェブ、モバイル、データ分析の各アプリケーション用のフルスタックが提供されることを紹介しました。これらのスタックには、利便性向上のために主要なセキュリティ機能と AI / ML 機能もネイティブに組み込まれています。
具体的には、Cloud Build の新機能であるビルド整合性を使用することで、ビルド来歴と「Built by Cloud Build」証明書がすぐに利用できます。これには生成されたイメージ、入力ソース、ビルド引数、ビルド時間などの詳細情報が含まれており、最高で SLSA レベル 2 の保証を達成できます。次に、Binary Authorization を使用して、適切な証明書を持つ検証済みのビルドのみが本番環境にデプロイされるようにすることができます。これでエキスパートでなくともエキスパートと同じ結果を出せるようになります。
また、Aparna はネットワーク アナライザのプレビュー版を発表し、デベロッパーが複雑なサービス中断の根本原因を迅速かつ簡単にトラブルシューティングして隔離できるようになることを説明しました。Network Intelligence Center の新しいネットワーク アナライザ モジュールは、ネットワーク障害の原因となり得るものを事前に検出して、構成ミス、過剰な使用、最適でないルートによって引き起こされるダウンタイムを防ぐことができます。ネットワーク アナライザは、Compute Engine、Google Kubernetes Engine(GKE)、Cloud SQL などのサービスで利用できます。詳細については、ネットワーク アナライザのページをご覧ください。
デベロッパーからの関心が特に高かったのは、Immersive Stream for XR のプレビュー版の発表でした。これを使用すれば、強力な Google Cloud GPU で拡張現実(eXtended Reality)のエクスペリエンスをレンダリングし、これらのエクスペリエンスを世界中のモバイル デバイスにストリーミングできるようになります。Immersive Stream for XR は、高品質の XR を作成、維持、スケーリングするプロセスを統合したものです。実際、Immersive Stream for XR を使用して配信される XR コンテンツは、モデル、年式、オペレーティング システムに関係なく、ほぼすべてのモバイル デバイスで動作します。また、ユーザーはリンクをクリックするか QR コードをスキャンするだけで、この没入型の体験を楽しめます。
「新規のお客様も既存のお客様も、当ブランドの歴史において最もユニークで革新的な 2 台の車に対するユニークかつ革新的なキャンペーンを期待しています。Google Cloud のおかげで、そのようなお客様と共有するまさにスペシャルなものを作り上げることができました」 - 北米 BMW、ブランド コミュニケーションおよび戦略責任者、Albi Pagenstert 氏
詳細は xr.withgoogle.com をご覧いただき、こちらの動画でぜひご自身の目でお確かめください。
最後に、Matthew はまとめとして Google Workspace がもたらす素晴らしいイノベーションを取り上げ、デベロッパーによるスイートの拡張およびカスタマイズと、既存のツールとの統合のシンプル化が、簡単にできるようになったことを詳細に説明しました。たとえば、Google Workspace アドオンを使えば、好みのスタックと言語を使用してアプリケーションを構築できます。構築してしまえば、そのアプリケーションは Gmail、Google カレンダー、ドライブ、ドキュメントなどの Google Workspace アプリ全体で使用できるようになります。また、Matthew は、PagerDuty などの DevOps ツールを Google Workspace プラットフォームに簡単に接続できるようにすることで、どのように開発エクスペリエンスが改善されるかを紹介しました。最後に、彼はアプリケーションの成長とエンゲージメントを高めるために Google Workspace Marketplace が果たすであろう重要な役割について言及しました。Google がどのように機械学習を活用して、ユーザーのより生産的かつ効果的な仕事を支援しているかについて、詳しくは今週の Workspace ニュースをご覧ください。
セッションとワークショップ
3 つの基調講演にはたくさんのクラウド最新情報が盛り込まれていました。でも、これだけではありません。
Google I/O では、クラウドに関する 14 のブレイクアウト セッションと 5 つのワークショップが開催され、さまざまなトピックが紹介されました。以下が全リストです。すべてオンデマンドでご覧いただけます。
セッション
ワークショップ
そして最後に、I/O のとても楽しいインタラクティブな体験をお忘れなく。I/O Adventure に参加してクラウド アイランドでカスタムのインタラクティブなデモやサンドボックスをお楽しみください。ここでは、参加者はコンテンツをチェックしたり、Google 社員とチャットしたり、クールなグッズをもらったりすることができます。
I/O で Google Cloud から発表された内容は以上です。今後数か月以内に、デベロッパーのエクスペリエンスをさらにシンプルで直感的なものにする、よりエキサイティングな発表が多数予定されています。それまでの間、デベロッパー コミュニティである Google Cloud Innovators に参加して、素晴らしい人脈を作り、交流を楽しんでください。また、10 月に開催される Google Cloud Next '22 にもぜひご登録ください。またお会いできるのを楽しみにしています。
- プロダクト マーケティング担当リーダー Nikhil Kaul