AlloyDB for PostgreSQL を発表:高額なレガシー データベースからの解放
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 5 月 12 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
企業は、レガシー データベース システムから解放されたいと悩んでおり、アプリケーションをモダナイズするための代替手段を求めています。本日、Google I/O において、AlloyDB for PostgreSQL のプレビュー版を発表しました。AlloyDB for PostgreSQLは、PostgreSQL と互換性を持つフルマネージド型のデータベースサービスで、極めて要求が厳しいエンタープライズのデータベース ワークロードをモダナイズするための強力な選択肢を提供します。
標準的な PostgreSQL との性能比較テストでは、トランザクション処理で 4 倍以上、分析クエリで最大 100 倍の高速化を実現できていることを確認しています。また、AlloyDB はAmazon の類似サービスと比較して、トランザクション ワークロードが 2 倍高速になるため、AlloyDB はレガシー データベースからの移行における新たな選択肢となるでしょう。
クラウド上でデータベースをモダナイズする際、多くの組織がレガシー データベース エンジン依存からの脱却に苦慮しています。特に企業のお客様は、高額で使いにくいライセンスや、レガシー製品特有のベンダーロックインを排除するために、PostgreSQL などのオープンシステムの標準化を求めています。しかし、ビジネスクリティカルなワークロードをオープンソース データベース上でリプラットフォームすることは、容易ではなく、担当チームは、パフォーマンスのチューニング、バキュームによる性能への影響を軽減させるための設計、アプリケーションの可用性管理などに関する課題を抱えています。AlloyDB は、Google のスケールアウト コンピュートとストレージ、業界をリードする可用性、セキュリティ、AI/ML を活用した運用管理の利点と、PostgreSQL の完全な互換性を組み合わせ、企業がミッションクリティカルなアプリケーションを実行する際に期待するパフォーマンス、拡張性、管理性、信頼性を兼ね備えています。
IDC のデータ管理ソフトウェア担当リサーチ バイスプレジデントである Carl Olofson 氏は、次のように述べています「多くの企業がビジネスをデジタルに変革していく中、データベースはクラウドにシフトしており、この傾向は今後も続くと予想されます。AlloyDB により、Google Cloud は、スピードと機能性の向上、予測しやすく明朗な価格設定が保証された PostgreSQL のすべてのメリットを提供し、企業のさらなる飛躍を支援します。」
AlloyDB は、異種データベース間の移行において非常に大きな変革をもたらします。先日、データベース移行サービスに、Oracle から PostgreSQL へのスキーマ変換とデータレプリケーション機能を新たに追加しました。また、Google Cloud が提供する新しい Database Migration プログラムでは、ツールやインセンティブ ファンディングを提供し、クラウド移行を支援しています。
PayPal の データインフラストラクチャおよびクラウドエンジニアリング担当シニアディレクターである Bala Natrajan 氏は次のように述べています。「開発者は、アプリケーションを構築、刷新、移行する多くの選択肢を持っています。AlloyDB は、PostgreSQL との完全な互換性、優れたパフォーマンス、可用性、クラウド統合を兼ね備えた魅力的なリレーショナル データベースの選択肢を提供してくれました。Google と共にイノベーションを生み出すことにより、レガシーかつ独自のデータベースをコスト効率よくモダナイズしながら、エンタープライズ グレードの機能の恩恵を受けられることに大きな期待を寄せています。」
AlloyDB の特徴
Google は、世界で最もスケーラブルなデータベースサービスを設計、管理してきた数十年に及ぶ経験を活かし、PostgreSQL のエコシステムに AlloyDB を追加しました。
AlloyDB は、PostgreSQL のために特別に設計された、インテリジェントにデータベース最適化されたストレージサービスによって構築されています。AlloyDB は、YouTube、検索、Google マップ、Gmail といった大規模な Google サービスを動かしているインフラストラクチャと同じビルディングブロックを使用しており、スタックの各層で計算とストレージを分離しています。この独自の技術により、予測可能なパフォーマンスを提供しながら、シームレスに拡張することができます。
さらに、分析アクセラレーション、組み込み AI/ML、データの自動階層化への追加投資により、AlloyDB は最小限の管理オーバーヘッドで、あらゆるワークロードに対応できます。
これら全てのテクノロジーは、先進的なオープンソース データベースの最新版である PostgreSQL 14 との完全な互換性を維持しながら機能するため、既存の開発スキルやツールが再利用でき、既存の PostgreSQL アプリケーションをコード変更なしに移行できるなど、PostgreSQL エコシステムの全てのメリットを享受できます。さらに、AlloyDB の基盤にPostgreSQL を採用することで、オープン性を維持しながら、お客様にさらなる価値を提供します。
Ubie 株式会社 Software Engineer, Site Reliability 坂田 純氏は、次のように述べています。「AlloyDB を検証する機会を頂いたことをとても嬉しく思います。AlloyDB はトラディショナルな RDBMS を引き続き使えるだけではなく、高い可用性とスケーラビリティをもたらします。」
AlloyDB により、以下の点において既存アプリケーションのモダナイゼーションを実現します。
1. 優れたパフォーマンスと拡張性
AlloyDB は、極めて要求が厳しい商用グレードのワークロードに対して、優れたパフォーマンスとスケールを提供します。標準的な PostgreSQL と比較して 4 倍、AmazonのPostgreSQL 互換サービスと比較して 2 倍の速度でトランザクションを処理します。また、ワークロードのパターンに応じて自動的に階層化する多層キャッシングにより、クラス最
高水準の性能を適切な価格で提供します。
2. 業界トップクラスの可用性
メンテナンスを含めて 99.99% の高可用性 SLAを実現します。AlloyDB は、データベースのサイズや負荷に関係なく、大半のデータベース障害を自動的に検出し、数秒以内に回復します。また、AlloyDB のアーキテクチャは、無停止でのインスタンス サイズ変更とデータベース メンテナンスに対応しています。プライマリ インスタンスは数秒で通常のオペレーションを再開でき、レプリカプールの更新はユーザーに対して完全に透過的に行われます。これにより、お客様はミッションクリティカルなワークロードで、高い信頼性と継続的な可用性を備えたデータベースを利用することができます。
株式会社ソウゾウ (メルカリグループ) ソフトウェアエンジニア 山本 竜三氏は、次のように述べています。「新しい PostgreSQL 互換のデータベースの登場を歓迎します。AlloyDB はアプリケーション側の変更不要で、より良いスケーラビリティと可用性を実現します。私たちが自社の E コマースプラットフォームを運用する上で可用性は重要であり、特に AlloyDB がメンテナンスに伴うダウンタイムを最小化することを期待しています。」
3. リアルタイムのビジネスインサイト
AlloyDB は、標準的な PostgreSQL と比較して最大 100 倍高速な分析クエリを実現します。ベクトル化されたカラム型 アクセラレータによって、最適化されたカラム型形式でデータをメモリに格納し、高速スキャンと集計を実現しています。このため、AlloyDB はビジネス インテリジェンス、レポーティング、ハイブリッド トランザクション、および分析ワークロード(HTAP)に非常に適しています。また、アクセラレータは自動配置されるため、ボタンをクリックするだけで分析性能を向上させることができます。
株式会社プレイド リード プロダクト エンジニア 小川 拓也 氏は、次のように述べています。「PLAID では CX (顧客体験) プラットフォーム KARTE を企業向けに開発・提供しています。KARTE は膨大な行動ログから深い洞察を得る先進的なリアルタイム分析機能を持ち、顧客に合わせた最適なコミュニケーションを可能にしています。AlloyDB は PostgreSQL と完全互換であり、透過的に列方向処理を行うことができます。私たちはこれが新しく強力なオプションであると捉えており、OLTP・OLAP・HTAP と分断されたワークロードを統合したシステムデザインを最小限の追加知識で実現する、ユニークな技術的アプローチであると考えています。将来的には Google Cloud の他の強力なデータベース サービスとの連携も強化され、私たちのKARTEが提供する分析機能において、より優れたパフォーマンス、スケーラビリティ、拡張性をもたらすことを期待しています。」
4. 予測しやすく明朗な価格設定
AlloyDB は、高額な独自ライセンスが不要で、不透明な I/O 課金がないため、予測しやすく明朗な価格設定となっています。そのため、従来よりコスト削減が容易になります。ストレージは自動的にプロビジョニングされるため、お客様の使用に応じて課金され、リードレプリカのための追加ストレージコストは発生しません。インスタンスメモリに加えて自動的にプロビジョニングされる無料の超高速キャッシュにより、コストパフォーマンスを最大限に高めます。
5. 機械学習による管理とインサイト
多くのマネージド データベースサービスと同様に、AlloyDB はデータベースのパッチ適用、バックアップ、スケーリング、レプリケーションを自動的に処理します。しかし、適応型アルゴリズムと機械学習を駆使することにより、PostgreSQL の バキューム管理、ストレージとメモリ管理、データ階層化、分析高速化に関しては、他のサービスを凌駕しています。ワークロードを学習し、メモリ、超高速セカンダリキャッシュ、高耐久性ストレージにまたがるデータをインテリジェントに整理します。これらの自動化機能により、データベース管理者や開発者の管理が簡素化されます。また、AlloyDB は、お客様のアプリケーション上で機械学習をより効果的に活用できるようにサポートします。Google Cloud の AI プラットフォームである Vertex AI との統合により、ユーザーはクエリやトランザクション内で直接モデルを呼び出すことができます。これにより、アプリケーションのコードを追記することなく、高いスループット、低レイテンシー、インサイトの向上を実現します。
AlloyDB をはじめる
近年のデータベース戦略は、優れたアプリケーションのより迅速な開発、お客様への新たな体験の提供において、重要な役割を果たしています。AlloyDB の発表は、Google Cloud データベースにとって大きなマイルストーンです。組織全体のイノベーション促進や、データベース ワークロードの制御を実現していくにあたって、AlloyDB をどのように活用いただけるかをとても楽しみにしています。
AlloyDB の詳細については、インテリジェントなストレージシステムをご参照ください。cloud.google.com/alloydb で AlloyDB を利用開始し、クラスターを作成できます。また、Google I/O 2022ではデモや発表を予定していますので、ぜひご確認ください。
- GM and VP of Engineering for Databases, Google Cloud, Andi Gutmans