お客様の優れた成果(7 月版): データ エージェント、詳細な財務調査、病院での転倒検出など

Google Cloud Content & Editorial
※この投稿は米国時間 2025 年 7 月 30 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
AI とクラウド テクノロジーは、世界中のあらゆる業界のあらゆる分野を変革しています。お客様がいなければ、Google Cloud は存在しなかったでしょう。お客様こそが Google のプラットフォームで未来を築いている存在だからです。このシリーズでは、ビジネスを根本から変え、業界を形作り、新しいカテゴリを生み出しているエキサイティングなプロジェクトの数々を取り上げます。
最新号では、Box がクロスプラットフォームの AI エージェント統合で分析情報を抽出する事例、Schroders が複数の接続されたエージェントで複雑な投資リサーチ システムを構築する事例、Hypros の IoT デバイスが個別の見守りなしで患者の苦痛をモニタリングする事例、Formula E のブレーキ回生による EV レースカー走行実験の事例、LVMH の 75 の高級ブランドにサービスを提供する統合データと AI プラットフォームの事例、Alpian が AI を活用してスイスで最も先進的なクラウドネイティブのプライベート バンクになる事例、MLB オールスター ゲームで生成 AI ツールがホームラン ボールの落下位置を予測する事例、Oviva が AI ベースの食事記録アプリを開発した事例を紹介します。
9 月版もお見逃しなく。業界リーダーや注目のスタートアップによる Google Cloud テクノロジーの豊富な活用事例をご確認いただけます。また、まだご覧になっていない場合は、Google のお客様が実践した 101 件の生成 AI ユースケースもぜひご確認ください。
Box の複数データドメインから分析情報を抽出する次世代 AI エージェント
お客様: Box は、デジタル時代にいち早く情報共有およびコラボレーション プラットフォームを生み出した、草分け的存在です。同社は新しい働き方を生み出すうえで重要な役割を果たし、それに続く新しいテクノロジーの波が押し寄せるなかで、取り組みを進化させ続けてきました。
事例: 生成 AI 時代がもたらした進歩とこれまでに保存されてきた大量のデータのおかげで、Box ユーザーは、AI を使用して新たな方法で情報を検索、統合することによって、ずっと大きな価値を引き出せる可能性があります。これを実現するために、Box は、複雑な非構造化データをインテリジェントに識別して構造化する Box AI エージェントを開発しました。
重要な理由: Box は、Google の最先端の生成 AI である Gemini 2.5 モデルと、幅広いプラットフォームの複数のエージェントを統合できる新しい Agent2Agent プロトコルを使用してエージェントを構築しました。Box AI エージェントは、新しい機能を実現するだけでなく、高性能エージェントのプラットフォームをまたぐ大規模な連携の効果を示すものです。。
得られる学び: 「Box AI Enhanced Extract Agent は、企業ユーザーに AI への信頼をもたらし、生成 AI テクノロジーや、それをビジネス クリティカルなタスクに使用することへの心理的ハードルを下げてくれるでしょう。(中略)Box AI Enhanced Extract Agent が目指したのは、最も複雑な部類のコンテンツ(スキャンされた PDF、画像、スライド、その他のさまざまな資料)の扱い方を刷新し、すべてを構造化された実用的なインテリジェンスに変えることでした。」 – Yashoda Bhavnani 氏(Box、AI 担当責任者) / Ali Arsanjani 博士(Google Cloud、応用 AI エンジニアリング担当ディレクター)
Schroders のマルチエージェント型財務分析リサーチ アシスタント
お客様: Schroders は、運用資産が約 9,750 億ドルにのぼる世界有数のアクティブ運用会社で、サステナブル投資のリーダーとして知られています。
事例: Schroders のアナリストは、一度に最大 50 社の顧客を担当します。発揮できる成果を最大化するために、同社はアナリストのデータ収集の負担を軽減し、ビジネスの成長とクライアントの投資効果の向上に欠かせない、高付加価値の戦略的思考に集中できる環境を整えようと考えました。この実現に向けて、Schroders と Google Cloud は連携して Vertex AI Agent Builder を使ったマルチエージェント型リサーチ アシスタントのプロトタイプを構築しました。
重要な理由: アナリスト独自のワークフローをサポートするために、融通の利かないプロセスを避けて個人に合った環境を提供することが中心的な目標でした。このために、同社は、カスタマイズ可能なシステム指示(アナリストや開発者が調整して利用できる、基盤となるプロンプト)を採用しました。また、システムのエージェント構成を個別に調整できる機能も組み込みました。パイロット版を試用したアナリストは、エージェントの利用により満足度が大幅に向上し、時間を節約できたと報告しています。
得られる学び: 「この取り組みを通じて、成功するエージェント構築のポイントが明確になりました。列挙すると、それは、タスクを細かく分解すべきであること、プロンプト エンジニアリングが重要であること、ツールの信頼性が必須であること、エージェントごとにツールの範囲を制限すべきであること、状態管理が複雑なため上位エージェント プロトコルを活用すべきであること、ユーザーの信頼は獲得するものであること、などです。」 – Ed Jeffery 氏(Schroders、投資 AI 研究開発、プリンシパル ソフトウェア エンジニア) / Megha Agarwal(Google Cloud、UK/I カスタマー エンジニアリング、AI エンジニア)
Hypros が病院での転倒を検出する IoT スキャナを開発
お客様: Hypros は、デジタル時代の医療向けのカスタマイズされたソリューションと実用的な分析情報を武器とし、プロセス分析、独自のプラットフォームやデバイスなど、さまざまなサービスを提供しています。
事例: ケア環境での患者のモニタリングは非常に重要ですが、患者を目を離さずに見守ることは現実的ではなく、また、部屋でもデジタルでもプライバシーを確保する必要があります。Hypros は、患者が倒れたり苦痛を感じたりしたときに、2 段階の AI ワークフローでそれを感知できる AI 搭載の室内 IoT デバイスを開発することにしました。これにより、患者を常にモニタリングしなくても、助けが必要なときを判断できます。
重要な理由: Hypros は、低解像度のセンサーと、匿名化された不明確なセンサー測定値から苦痛を認識できる 2 つの AI モデルを組み合わせることによって、医療従事者がその精度に自信を持ち、患者が常に監視されてはいないという安心感を得られるデバイスを実現しました。この 2 段階のプロセスは、エージェント AI でますます一般的になっている、さまざまな AI モダリティを連携させるアプローチの威力を示しています。
得られる学び: 「センサーデータを蓄積する代わりに、高度な AI モデルで複数のストリームのデータを解釈して関連付けて、シンプルな元データをより良い判断に役立つ実用的な分析情報に変換しています。リアルタイムのアラートにより緊急事態にもすばやく対応できるため、患者は必要な集中ケアを迅速に受けられ、スタッフは最善のケアを提供できます。」 – Marcel Walz 氏(Hypros、CTO) / Erlandas Norkus 氏(Hypros、AI エンジニア)
Formula E、山を下りながらレースカーを充電
お客様: Formula E は、レースの常識を変える、電気モーターにより瞬時に加速する車で知られたレースリーグです。電気自動車には、ブレーキをかけることでバッテリーを充電できるという特徴もあり、これはレース中に重要な戦術となります。
事例: モナコ E-Prix の開催に先立ち、Formula E と Google は、バッテリー残量わずか 1% の Formula E GENBETA レースカーが、フランスのアルプス沿岸部を下りながらブレーキでエネルギーを回生し、象徴的なモナコ サーキットを 1 周完走できるかどうかをテストしました。これを達成する前に、AI モデリングを使用して数多くのトライアルを実施しました。
重要な理由: チームは、Google の AI Studio で、この下り坂での充電プランが実現可能かどうかを尋ねる簡単なプロンプトから始めました。モデルは、Gemini 2.5 Pro のディープ ラーニング機能で地形、天候、車両の仕様などのすべての要素を評価し、プロジェクトが「理論的に実現可能」であると判断しました。これは、生成 AI の研究開発力を示す力強い例です。イベントでは、Firebase とBigQuery でリアルタイムのテレメトリーを可視化し、複数のセンサーからのデータと Google マップにより継続的なステータス更新を行いました。
得られる学び: 「山下りでのエネルギー チャージという突飛なアイデアが実現可能かどうかの判断から、走行中のリアルタイム分析情報の取得に至るまで、AI は私たちのガイドとして機能しました。野心的な "もしも" を、刻々と追跡できる現実へと変えたのです。」 – Alex Aidan 氏(Formula E、マーケティング担当バイス プレジデント)
LVMH、75 の多様なメゾンのためのデータ基盤を構築
お客様: 世界最大の高級ブランド コングロマリットである LVMH は、ルイヴィトン、モエ エ シャンドン、ヘネシーをはじめとして、ディオール、ティファニー、ブルガリ、セフォラ、セリーヌ、ドン ペリニヨンなどの象徴的なブランドを擁しています。各ブランドは高い自律性を維持していますが、IT サービスの構築は LVMH の IT 部門が一手に担っています。
事例: LVMH は 4 年間、Google Cloud と協力して傘下ブランドのデータ基盤を構築してきました。特に、さまざまなブランドをまたいだ顧客の全容を把握することができていなかったためです。そして、基盤を整えたうえで、その上に生成 AI 機能(店舗のクライアント アドバイザー向けチャット エージェントなど)を構築する取り組みを始めました。
重要な理由: さまざまな生成 AI プラットフォームには現在、毎月 40,000 人以上のユーザーが世界中からアクセスし、150 万件以上のクエリ(ドキュメントの分析や翻訳など)を実行しています。これらの AI ツールは、顧客関係管理におけるパーソナライズをさらに強め、チームや共同作業者間の運用効率を高めるのにも役立っています。
得られる学び: 「あえて比較するなら、純粋な小売 e コマースのソリューションは、ビッグデータと自動化を活用した非常にマスマーケット向けのものとなっています。自動化は当社にはあまり適しません。我々は、真に差別化されたアプローチを求めています。しかし、それがお客様とのつながりをさらに深めてくれるのであれば、LVMH のサービスの真骨頂、つまり卓越性とエフォートレスを体現しているといえるでしょう。当社のテクノロジーは、まさにそのためにあります。」 – Franck Le Moal 氏(LVMH、最高情報責任者)
Alpian、デジタル時代のプライベート バンキングを再定義
お客様: スイス初の完全にクラウドネイティブなプライベート バンクである Alpian は、個人の資産管理とデジタルの利便性を融合させた独自のモデルを誇っています。
事例: 規制の厳しい金融業界にありつつも、Alpian は生成 AI ツールを導入してプロセスを自動化し、より良いサービスを提供しようと模索しました。Gemini や Vertex AI により、従来は複雑だったプロセスが簡素化され、開発者はシンプルな会話型コマンドを通じてインフラストラクチャを操作できるようになりました。
重要な理由: アイデアは存在していましたが、大量のデータを精査し、最新の状況と組み合わせてすぐに表示できるさまざまなメッセージを考案するという複雑な要素を考慮すると、AI の助けなしに実現することはできませんでした。
得られる学び: 「技術の進歩と規制要件のバランスをとりながら、Alpian は、アジリティ、セキュリティ、顧客中心主義をシームレスに安心して融合させられる、バンキングの未来のモデルを構築しています。」 – David Nemeshazy 氏(Alpian、CTO) / Damien Chambon 氏(Alpian、クラウド責任者)
MLB がオールスター ゲームで観客を魅了
お客様: メジャーリーグ ベースボールは、統計的にも歴史的にも豊かな野球というスポーツとファンとのつながりを保つために、新しいテクノロジー プラットフォームでのイノベーションを続けています。
事例: Google Cloud は、MLB の Statcast ユニットと協力して、MLB オールスター ゲーム中にホームランがスタンドのどこに落ちるかを予測する生成 AI 搭載ツールを構築しました。このエージェント型 AI システムは、打者のこれまでの成績や物理的要素などのデータを使用して、試合観戦中のファンにラッキーなホームラン ボールが飛んで来る可能性を示唆しました。
重要な理由: ホームラン モデラーを使用して次の打者がホームランを打つ可能性のある場所を評価し、クリエイティブ チームは Gemini 2.5 Pro を使用してキャッチフレーズ候補をすばやく作成します。その後、候補から最適なオプションを選択し、必要に応じて言い回しを整えて、球場中の大型スクリーンやデジタル ディスプレイに表示します。この「人間参加型」レビューは、AI を活用した取り組みにおいてますます一般的な手法となっています。
得られる学び: 「メッセージが流れていくのを見て、AI がいかに優れたチームプレーヤーになれるかを実感しました。アイデアは人間によるものでしたが、大量の選手データを精査し、最新の打順や交通状況と組み合わせてすぐに表示できるさまざまなメッセージを考案するというすべての要素を考慮すると、AI の助けなしには実現できませんでした。」 – Hussain Chinoy(Google Cloud、生成 AI テクニカル ソリューション マネージャー) / Emmanuel Awa(Google Cloud、AI ブラックベルト)
Oviva、AI によるアドバイス機能を備えた食事記録アプリを開発
お客様: Oviva は、食事記録のプロセスを簡素化し、提供されるフィードバックの質を高めることによってより良い食事の選択を支援する、AI ベースのアプリを開発しました。
事例: Oviva の AI アルゴリズムは、記録した食事内容をリアルタイムで分析することで、具体的でパーソナライズされているだけでなく、理解しやすく行動に移しやすいフィードバックをユーザーに提供します。こうしたフィードバックは、詳細な栄養分析でユーザーを困惑させるのではなく、1 日を通してバランスの取れた食生活を維持できるよう支援することに重点を置いています。
重要な理由: Oviva のユーザー アクティビティは周期的なパターンを示し、食事の記録が特定の時間帯に集中しています。このパターンは処理リソースの大きな変動につながっており、場合によっては数桁も多い容量が必要になることがあります。低いレイテンシと優れた可用性を提供する、AI で最適化された Google のインフラストラクチャによって、エンジニアリング リソースをサービスのスケーラビリティ実現に割くことなく確実にビジネス目標を達成できることが明らかになりました。
得られる学び: 「AI を活用した食事記録機能は、ユーザーの食事に対する取り組み方に大きな変化をもたらしており、食事の選択に自信が持てるようになり、健康的な食習慣を維持する意欲が高まったという声が上がっています。フィードバックのシンプルさと即時性も、ユーザーの定着率向上につながっています。」 – Manuel Baumann 氏(Oviva AG、共同創業者 / CTO) / Nicolas Wipfli(Google Cloud、カスタマー エンジニア)
-Google Cloud コンテンツおよび編集チーム