ヤマハ発動機: アプリからのデータ活用に挑戦 Tech Acceleration Program を活用
Google Cloud Japan Team
Google Cloud Tech Acceleration Program (TAP) は、ユーザー企業が DX の取り組みを加速させるために、実際のアプリケーションを題材にしたアジャイル型のワークショップです。クラウドネイティブな技術を活用し、迅速で効率的なアプリケーション開発を体験できます。ヤマハ発動機株式会社(以降ヤマハ発動機)は、2023 年 2 月 15 日 〜 2月17 日にて TAP に参加しました。参加された IT 本部デジタル戦略部の藤井北斗様、佐々木誠様、石浦亮佑様、町田翔様にお話を伺いました。
ヤマハ発動機は、2017 年より DX の取り組みを開始、その戦略として、Y-DX1 (経営基盤改革)、Y-DX2 (今を強くする)、Y-DX3 (未来を創る)の 3 つを軸にして推進してきました。その成果は着実に表れ、経済産業省・東京証券取引所の「DX 銘柄」に2020 年、2021 年と2 年連続で選定されています。この DX 戦略を推進するための中核となるのが「デジタル戦略部」で、2018 年に DX の専門組織として発足しました。全社を横断して DX を推進するためのコア組織であり、事業部門と一体となってデジタル技術を活用した業務変革を考えたり、データ活用を定着させるための社員研修を実施するなど、積極的に現場を支援しています。
TAP で利用した主なサービス:Cloud Run, Pub/Sub, Eventarc, Cloud Functions
TAPで利用したソリューション:
アプリケーションのモダナイゼーション
データ活用を促進するためのアプリケーションの開発を目指して、TAP を利用
ヤマハ発動機では、2030 年をめどに、全ての製品に通信機能を搭載してデータを収集・活用する「コネクテッドビジョン 2030」を掲げており、販売されたバイクなどから得られた大量のデータを分析し、製品やサービスの開発、販売、カスタマサポートに生かしていくことを目指します。このビジョンの実現のため、デジタル戦略部では大量のデータアクセスを効率的に処理し、迅速に分析できるデータ分析基盤を構築、現場の事業部門がデータを活用できるよう支援しています。しかし、データの ”分析” に関する支援が中心であるため、データを ”活用” する、という観点では、部門によってレベルの差があったり、属人的なところも多く、誰もがデータにアクセスして活用できるようになるには、まだ課題もあります。一方で、データを活用して新しいお客様向けのサービスを立ち上げる動きや、工場などの業務を改革するアイデアなど、現場からは多くの相談がきていますが、これらを具体的に支援していくには、使い勝手が良く、導入後のアップデートなどの運用が効率的なアプリケーションを開発して提供していくことが必要でした。そこで、デジタル戦略部では、”データを価値へ変換できる状態にする” を部門の目標として掲げ、取り組み始めました。その頃、Google Cloud の担当者から、クラウドネイティブ技術を活用してアプリケーションの内製開発を支援する Tech Acceleration Program (TAP) を提案され、これを利用することにしました。
Google Cloud の主要プロダクトやアーキテクチャ設計ポイントの解説、ユースケースのディスカッションを通して、デザインパターンを増やす
今回、TAP に参加されたのはデータ分析担当チームで、BigQuery をベースとしたデータ分析基盤の構築とその社内での活用促進が業務の中心であり、アプリケーション開発については、リソースやノウハウが十分ではありませんでした。これまでの開発では、時間やコストがかかることも多く、チームが目指す現場でのデータ活用の促進のためには、これを解決することが急務でした。「以前、ある部門では 3 年近くかかってしまった案件もありました。これからは短期間でプロトタイプを作り、早く本番提供できるようにしたいと考えています。」と藤井様は話します。このような背景から、TAP では開発がシンプルで運用負荷の低い Cloud Run や、データ連携を効率的に構築できる Cloud Pub/Sub, Eventarc などのサーバーレスのサービスを積極的に活用する方針としました。Day 1 では、このようにヤマハ発動機が目指すビジネスと IT の課題や方向性について議論しながら、Google Cloud のエンジニアから適切な製品について詳しくレクチャーしながらアーキテクチャを設計する際のポイントについて解説していきます。また、実際のビジネスでのいくつかのユースケースを題材にして、どのようなデータ処理が必要になるかを詳細にディスカションし、レクチャーした製品の特性を生かしたデザインのパターンを策定しました。「Google Cloud プロダクトの知識とクラウド設計で重視すべきポイントが理解できました。」と佐々木様は話します。
モブプログラミングでプロトタイピングをしながら、コンテナやマイクロサービスの設計など関連するテーマもディスカッションし、アプリケーション開発の理解を深める
Day 2, 3 では、Day 1 で扱ったいくつかのユースケースをもとに、プロトタイピングを実施します。プロトタイピングはモブプロの形式で実施、ヤマハ発動機のメンバーがドライバーとなって、Google Cloud のエンジニアを含めて参加者がそれぞれ意見を出し合いながら進めます。Cloud Run を使った Web アプリの構築や、Eventarc を利用したイベント駆動でWeb アプリを起動させる仕組みなどを構築しましたが、その他にもコンテナや CI/CD の環境構築も実施しました。「Docker の理解がまだ足りなかったが、できそうなイメージを持つことができました。」と町田様。Day 3 の最後には、マイクロサービスの設計に関するアプローチとして、DDD (ドメイン駆動設計)についても Google Cloud のエンジニアより解説しました。ここでは、あるケースについて DDD の考え方に基づいてビジネスの境界を考えてみる、という演習も実施しました。「DDD はとても面白いと思いました。もっと深くやってみたいです。」と石浦様は話します。TAP 全体を通して、Google Cloud カスタマーエンジニアの諏訪は、「ワークショップの最初から、ヤマハ発動機様に積極的に発言いただき、ビジネス課題やアーキテクチャのディスカッションをしっかりと実施できたことで、今後取るべきアクションが明確になり、とても内容のあるワークショップになったと思います。」と話します。TAP 全体を通して、藤井様は、次のように話します。「3 日間集中して学んだことで、かなり知識がつきました。必要となるタイミングで実装できそうな実感が持てました。また、今回開発したプロトタイピングをもとに、Y-DX3 に関わるアプリケーション開発を進めていきますので、Google Cloud には、引き続きご支援いただけることを期待しています。」
ヤマハ発動機は、二輪車の開発を起点とするパワートレイン技術、走行・航走を支える車体・艇体技術をコア・テクノロジーとし、さらに制御技術やコンポーネント技術を発展させながら、半世紀にわたって事業の多軸化とグローバル化に取り組んできました。
パワートレイン技術はやがてマリンエンジンやRV、パワープロダクツ事業といった新たな軸を生み出し、また艇体技術のひとつであるFRP加工技術はプール事業をはじめ、各種パーソナルビークルの外装品などに発展しています。