朝日放送グループHD: Google Kubernetes Engine で、プラットフォームエンジニアリングへの取り組みの第一歩を踏み出す
Google Cloud Japan Team
朝日放送グループホールディングス株式会社 (以下、朝日放送グループ様) は、テレビ、ラジオ、コンテンツ配信などの事業を展開する放送局で、放送業界の中でも、革新的な取り組みで知られています。近年は、DX を推進するためにクラウドを活用、さらに開発と運用に関する生産性を高めるために、プラットフォームエンジニアリングの考え方について、調査をはじめられました。
プラットフォーム エンジニアリングとは、ガートナーによると「インフラストラクチャ・オペレーションの自動化とセルフサービス機能により、開発者エクスペリエンスと生産性を向上させます。開発者エクスペリエンスを最適化し、プロダクト・チームによる顧客価値のデリバリを加速させることが期待できるため、大きく注目されています。」と言及されています。(参照: ガートナー, 2023 年 1 月 15 日, “プラットフォーム・エンジニアリングとは何か?”)
Google Cloud では、こちらのブログにあるように、プラットフォームエンジニアリングを、組織において有用な抽象化を行い、セルフサービス インフラストラクチャを構築するアプローチと考えています。また、抽象化とセルフサービス インフラがデベロッパーに最大の恩恵をもたらすためには「ゴールデンパス」が重要であると考えています。ゴールデンパスとは「迅速なプロジェクト開発に役立つ巧みに統合されたコードと機能のテンプレート構成」です。簡単に言うと、よくあるタスクのためのセルフサービス テンプレートです。
Google Cloud では、プラットフォームエンジニアリングの導入を検討されるお客様向けに、Platform Engineering Jumpstart というプログラムを提供しています。
今回のインタビューでは、朝日放送グループ様のプラットフォームチーム 高木様と金谷様から、Platform Engineering Jumpstart に参加した感想や今後の取り組みについて伺いました。
PFE Jumpstart で利用した主なサービス:Google Kubernetes Engine, Cloud Build, Cloud Workstations
FPE Jumpstart で利用したソリューション:アプリケーションのモダナイゼーション
番組ホームページや配信サービスの安定と運用改善に向けて
金谷様、高木様が所属する DX・メディアデザイン局の R&D チームは、8 名のメンバーで構成されており、ホームページやデータ放送、動画配信に関わるシステム、データ活用基盤の構築など、デジタル技術を活用したシステムの検討や構築から、さらにデータチームやコンサルチームと連携して、デジタル広告の販売にも注力するなど、幅広い業務を担当されています。
高木様と金谷様は、朝日放送グループの デジタル部門としての重要な役割も担っています。テレビを中心とした業務のデジタル支援、特に動画配信や高校野球の配信システムなどを担当。一方、「M-1グランプリ 敗者復活戦」や「バーチャル高校野球」などのアクセスが集中するサービスにおける、効率的かつ安定なシステムの構築や運用にも取り組んでいます。
バーチャル高校野球や番組連動アプリなど、視聴者が参加できるアプリケーションの開発では、内製による開発が主流で、バックエンドとフロントエンドのそれぞれの開発チームが協力して取り組みます。しかし、これらのサービスや各種ホームページを支えるシステムでは、その特性からスパイク対策や BCP 対策が非常に重要で、ここに関して改善の余地があると考えていました。また開発については、属人的なところがあり、開発プロセスにおいて、関係する部門間や関係会社とのコミュニケーションコストも課題となっていました。これらを解決して、開発チームとしての生産性を高め、ビジネスに迅速に対応するために、プラットフォーム最新技術の活用を視野に入れた検討が必要と考えていました。
Platform Engineering Jumpstart への参加と感想
金谷様が、夏に Google Cloud のスキルを習得いただくための招待制特別トレーニング プログラム「スキルチャレンジプログラム」に参加したことをきっかけに、Kubernetes の活用が現在の朝日放送グループでの課題の解決になるかもしれないと考え、その後、GKE ハンズオンを受講、さらに今回 Platform Engineering Jumpstart に参加しました。このワークショップでは、朝日放送グループの各種ホームページを支えるプラットフォームのモダナイゼーションをテーマとして、Google Cloud のエンジニアと 3 日間にわたるディスカッションを実施、現在の課題の根本原因を詳細に確認、解決するためのKubernetesベースのアーキテクチャを一緒にディスカッションし、最終的にあるべきアーキテクチャを作ることができました。また、実際に GKEクラスターを構築するなどプロトタイピングも実施しました。ディスカッションの中では、Google Kubernetes Engine (GKE) を使ったモダナイゼーションに関するプラクティスや最新情報、参考事例、またCloud Runなど他の製品との使い分けなどについても Google Cloud からレクチャーがあり、これらは大変有益でした。
高木様は、「BCP 対策、オンプレミスからクラウドへの移行、およびコンテナの活用により、簡単なスケーリングやスパイク対応が可能となる感触を得ました。ワークショップで学んだKubernetes の基礎知識やプラットフォーム設計に関する知見を、今後のプロジェクトで活用したいと思います。現在はまだ仮想マシンを多用していますが、今後は Kubernetes を用いたコンテナの積極的な使用を目指しています。」と述べています。
金谷様は「YAML や Git での管理を徹底し、誰でも共有できるようにすることで、運用を効率化したいと考えています。また、カナリアリリースも活用していきたいです。」と話します。
技術とプラットフォームの将来展望
GKE を利用した開発者向けプラットフォームの構築に期待しています。Kubernetes によって、スパイク対策や BCP 対策が容易になり、CI/CD の活用によって運用負荷も大きく軽減できる感触を得ましたので、これらの本格的な展開を検討します。Google Cloud は BigQuery など使いやすいサービスが多く、また Google Workspace を利用していることから、Google アカウントが使えるメリットも大きいです。今後の IT 戦略として Google Cloud を使ったプラットフォームエンジニアリングの活用を重要な戦略として捉えています。これにより、開発チームの効率化と、新しいサービスの迅速な開発・提供が可能になると期待しています。
グループの事業の根幹は、魅力あるコンテンツを「創る」こと。様々な手段を通じて、皆さまに「届ける」こと。私たちは、時代の変化に対応し、様々なアイデア、技術を取り入れて進化を続ける「総合コンテンツ事業グループ」として、事業を通じて、豊かな社会づくりに貢献していきます。
インタビュイー
朝日放送グループホールディングス株式会社
DX・メディアデザイン局 R&Dチーム
金谷 洋佑 様
朝日放送グループホールディングス株式会社
DX・メディアデザイン局 R&Dチーム
高木 衛 様