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アプリケーション開発

イオンネクスト:新たなネットスーパーの拡大に向け、Google Cloud でデータ分析とイオンネクスト・プラットフォームの開発強化

2024年8月7日
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Google Cloud Japan Team

イオンネクスト株式会社は、イオン株式会社の 100% 出資により設立され、英国 Ocado Solutions 社の最新技術を活用した新たなネットスーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)を 2023 年 7 月に立ち上げました。AI を活用したソフトウェア、ロボット搭載の顧客フルフィルメントセンター、効率的なラストワンマイル配送など、最先端の技術で、幅広い商品やサービスをお客様のご希望の時間帯にお届けしています。

Tech Acceleration Program (TAP) は、ユーザー企業が Google Cloud のクラウドネイティブな技術を活用し、実際のアプリケーション開発を通じて DX を加速させるためのアジャイル型ワークショップです。

今回は 2024 年 1 月、4 月に TAP に参加されたイオンネクストの荒井様と坂井様に、 Google Cloud の利用拡大に向けた取り組みについてお伺いしました。

利用している主なサービス:GKE, Cloud Run, BigQuery, AlloyDB, Cloud Composer, Cloud Load Balancing, Secret Manager, Artifact Registry, Security Command Center, Vertex AI, Google Maps API

利用している主なソリューション:アプリケーションのモダナイゼーション

イオンネクストについて

まず、イオンネクストについて教えてください。

荒井様: イオンネクストは、2019 年に設立されたイオン株式会社のグループ企業です。IT 部は約 40 名の社員が在籍しており、その他業務委託やベンダーの方々と共に、「Green Beans」の開発・運営を行っています。

Green Beans について詳しく教えていただけますか?

荒井様: Green Beans は、2023 年 7 月にサービスを開始したイオンの新ネットスーパーです。Ocado 社のシステムを SaaS として活用し、イオンが展開する会計基盤「iAEON」との連携や、独自のリテールメディア、配送効率化システムなどを構築しています。現在、会員数は 21 万人を超え、東京都、千葉県、神奈川県の一部にサービスを展開し、エリアは順次拡大予定です。

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ビジネス開始から、たった 1 年弱で 21 万人とはすごいですね!どのようにしてユーザーを獲得されたのでしょうか?

坂井様: イオンのブランド力に加え、品揃えの豊富さ、徹底した鮮度管理、そして自社のデリバリークルーによる丁寧な配送がお客様に評価されていると考えています。システム面では、1 時間ごとの配送時間帯設定や配送ルートのシミュレーションによる効率化など、独自の強みを持っています。例えば、お客様が仕事に出かける前に商品を受け取れるよう、配送時間帯を細かく設定できるのは、大きな特徴の一つです。また、データ分析に基づいたマーケティング施策や、レシピ提案なども行っています。

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少数精鋭の内製エンジニアと外部リソースの融合:迅速な開発を実現できる体制

このスピード感あふれる成長を支える開発体制とはどのようなものでしょうか?

荒井様: イオンネクストは、IT 部門に 35 ~ 40 名ほどの社員を擁し、そのうち開発を行っているエンジニアは 10 名程度と、少数精鋭の体制で開発を進めています。しかし、質の高い業務委託やフリーランス、ベンダーと協力することで、柔軟かつ迅速な開発体制を構築しています。

2019 年の準備会社設立当初は、1 つのチームで全ての開発を担っていましたが、サービスの拡大に伴い、UI / フロントエンド、バックエンド、新規開発、運用保守などの専門チームに分割し、各チームが自律的に開発を進められる体制へと移行しました。

また、データ分析やデータインテグレーションなど、Google Cloud を活用した開発においては、内製化を積極的に進めています。一方で、パッケージソフトの導入や、専門性の高い領域については、外部リソースを活用することで、開発スピードと品質の両立を図っています。

さらに、2023 年末に立ち上げたオウンドメディア「AEON Tech Hub」を通じて、優秀なエンジニアを積極的に採用し、開発体制を強化しています。

ビジネス拡大に向け、Google Cloud の活用を決定

今回、ビジネスの拡大に向け、Google Cloud の活用を決められた経緯を教えてください。

荒井様: Azure と AWS 上でサービスローンチし、社内にデータが蓄積されてきたことを受けて、データドリブンな経営判断をしたいといったデータ分析ニーズが社内で出ました。Azure にも同様のサービスはありますが、BigQuery の方が情報も豊富だったため、データエンジニアが少ない私たちにとって取り組みやすい環境だと感じました。また、Google Cloud は開発者に優しいと感じました。サクッと新しいアプリを作ろうと思ったとき、Cloud Run は最適です。また、GKE などコンテナのサービスが充実していること、さらに Spanner や AlloyDB などデータベースの選択肢が多いことなども開発者にとっては魅力でした。さらに、私たちとタッグを組んで一緒にやっていこうという温度感が Google Cloud にはありました。

既存の環境には何か課題があったのでしょうか?

荒井様: 元々 OLTP 用のデータベースと OLAP 用のデータベースが一緒になっていたため、将来的な分析業務によっては、発注・配送等の定常利用される業務システムに影響がでてしまう可能性があると考え、BigQuery の利用を検討し始めました。また、イオンネクストが使用している既存環境は別の組織が管理しているため、ニーズに合わせた柔軟な変更が行いにくいこと、またガバナンス設計が十分でなかったことが課題でした。そこで、Google Cloud を本格的に使い始める前に、マルチプロジェクトの構成やセキュリティ ガードレールを入れた、ガバナンス設計をはじめにすることで、より柔軟かつ効率的な基盤を構築できると考えました。

Google Cloudはスムーズに使い始められましたか?

坂井様: マルチプロジェクトの設計をはじめにしたことにより、プロジェクト毎、環境毎で権限範囲も分けられたので本番のような他の環境に影響を与えることを心配せずに、誰でも「まずは開発用環境で触ってみる」というのをやりやすくなったように思います。また、プロジェクトを提供する我々としても最低限のガードレールがあるので、渡しやすくなったかなと感じています。

イオンネクストでは、業務システムごとに適材適所で様々なプラットフォームを使い分ける思想を取っており、今回のワークショップや勉強会等の取り組みによって、Google Cloud も一つの選択肢として積極的に選ぶことができるようになりました。

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Google Cloud 導入の効果

Google Cloud 導入によって、どのような効果がありましたか?

荒井様: BigQuery の採用により、OLTP と OLAP システムを分離し、データ分析コストを大幅に削減できます。従来の同一システム上での処理では、大規模データ分析時にリソース不足によるパフォーマンスの問題が発生していました。BigQuery は データ分析処理に特化したアーキテクチャで、ペタバイト級のデータも高速処理可能です。また、BigQuery はクエリ実行時の従量課金制のため、Azure SQL Database の常時リソース確保型よりもコストを柔軟に調整できます。BigQuery への移行は、コスト削減に加え、パフォーマンス向上によるデータドリブンなマーケティング施策の加速に貢献すると期待しています。

TAP への参加と効果

Google Cloud の導入にあたって、TAPのメニューである「Platform Engineering Jumpstart」に参加されたそうですね。

坂井様: はい。まず今年の年初に、Google Cloud の利用を始めるためのガバナンス設計について支援をいただきました。その後、GKE クラスターの運用や CI/CD パイプライン構築など、プラットフォーム エンジニアリングに関する知識やスキルを習得したいと考え、Platform Engineering Jumpstart に参加しました。このワークショップでは、Google Cloud のスペシャリストの方々に、私たちの Kubernetes 基盤の構築に関わる課題や環境に合わせた具体的なアドバイスをいただくことができました。Google Cloud は今年から取り組みを始めましたが、これまでつちかっていた AWS の経験を活かしてスムーズにキャッチアップできました。特に、セキュリティやガバナンスに関するノウハウは非常に参考になりました。

ワークショップで得られた知識は、どのように活用されていますか?

荒井様: ワークショップで学んだ内容を参考に、Google Cloud 環境のガバナンス設計を見直し、セキュリティを強化しました。また、CI/CD パイプラインを構築し、開発効率の向上にも取り組んでいます。

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今後の展望

今後の展望について教えてください。

荒井様: まずは、Azure で動いているコンテナの移行や、データベースの移行など、Google Cloud への移行をさらに進めていきたいと考えています。また、開発者がインフラをセルフサービスで構築できるように、ガードレールの整備をしていきたいと思っています。さらに、生成 AI を更に活用したレシピまとめページの作成など、新たな取り組みも進めています。

Google Cloud への期待

坂井様: セキュリティに関する支援に期待しています。特に、Shared VPC のような、複数のプロジェクトで利用できるセキュリティ機能の拡充や、Security Command Center のプレミアム機能をスタンダードプランでも利用できるようにしてほしいです。

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イオンネクスト株式会社
イオン株式会社の100%出資により設立されました。AIを活用したエンドツーエンドのソフトウェア、ロボットを搭載した独自のフルフィルメントセンター、最適化されたラストワンマイルソリューションなど、 英国のOcado Solutions社の最新技術を活用しオンラインマーケットを立ち上げました。

インタビュイー
イオンネクスト株式会社
IT部リライアビリティグループ シニア SRE 荒井 隆成 様 インタビュー記事
IT部リライアビリティグループ SRE リード 坂井 勇登 様

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