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AI & 機械学習

機械学習で道路メンテナンスの質を高める

2021年1月22日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2021 年 1 月 14 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

道路にできた穴を探すための新しい方法があります。高性能の眼鏡や費用のかかる補修作業員の派遣は必要ありません。メンフィス市が見出したこの方法では、人間に代わって、バスに搭載されたカメラと機械学習がこの作業を行います。

人員を増やすことができない状況でよくない道路状況にどうにか対応していたとしても、交通量が増えることで状況はさらに悪化するため、道路の穴をふさぐ作業は永遠に終わりません。

Google Cloud パートナーの SpringML は、メンフィス市と連携してこの問題に取り組み、1 年間で 63,000 個もの道路の穴の補修を支援しました。人による以前の作業に比べ、穴の検出を大幅に改善しています。

分析と機械学習の進歩により、市は道路をより迅速に補修できるだけでなく、そもそも道路に損傷が発生するのを実質的に防ぐことができます。

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メンフィス地区交通局のバス

機械学習を使用した道路メンテナンス

メンフィス市もその他多くの都市と同様、舗装道路の継続的な劣化や、交通や天候による道路の穴の発生という問題に苦しんでいました。道路上にあるこうした穴は、運転の妨げになるだけでなく、交通渋滞を引き起こし、通勤や公共交通機関に遅れを生じさせ、さらには車両の損傷にもつながります。このまま放置していいはずがありません。

穴の発生は避けられないため、メンフィス市をはじめとする他の都市にとっての課題は、補修リソースを最も効果的な場所に配置し、いかにして補修に対応していくかということでした。機材も人員も限られているため、市民から寄せられたすべての報告に対処することはできません。また、このような一般から寄せられた報告では、問題の全体像がわからないこともあります。

そこで、この取り組みに参加したのが SpringML です。SpringML は、公的機関と提携し、テクノロジーを創造的な方法で活用して問題を解決します。メンフィス市に加わった SpringML チームがこの問題の解決策を見つけるために最初に調べたのは、どのような種類のデータにアクセスできるかという点でした。そこで閃いたのが、バスのカメラです。

「外部から新しいデータセットを取得しようとする前に、既存のデータで意思決定をサポートできるものがないかを考えてみてください。」SpringML AI プラクティス担当 Eric Clark 氏

メンフィス市のすべての市内バスは前面にカメラを搭載しており、主に交通状況(渋滞など)確認のためバスの走行時間中にデータを収集しています。つまり、市内を走行するすべてのバスが毎日道路を見ているのです。

チームはたちまちデータの宝庫を手に入れました。これには、公共交通機関で利用されるすべての道路が毎日記録に残されていました。バスのルートは明確に定められており、各バスには GPS が搭載されているため、映像と正確な位置情報を関連付けることができます。チームは作業に取り掛かりました。

1 日の終わりに各バスから動画を取得して、それをオンプレミスのストレージにアップロードしました。かなり手間のかかる作業でした。

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バスに搭載されたドライブから手動で動画データをダウンロード
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バスのシステムの IT ラック。ルートを走行する際の位置情報とカメラデータを追跡

次に、スクリプトで動画ディレクトリ内の新しいファイルを毎晩確認し、新しい動画を Google Cloud Storage にアップロードして処理を開始するようにしました。

アップロード後、Google Cloud Video Intelligence API を利用して新しい動画に検出モデルを適用し、道路の穴が映し出されている可能性のある画像を探しました。道路の穴を検出するための最初の AI モデルを作成するにあたり、SpringML チームは既存の画像を使用し、目視で道路の穴を識別していきました。また、より高画質なカメラのデータを使用してモデルの検出と精度を向上させることに加え、継続してバスルートから新しいデータを取得し、時間をかけてモデルを改善していきました。

Video Intelligence モデルの推論の結果は BigQuery に送信され、そこで画像、アノテーション、ファイルのメタデータ、位置情報、スコアを保存し、それらの並べ替えやクエリを簡単に実行することができました。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/data_from_the_BigQuery_model.max-1300x1300.jpg
BigQuery モデルのデータの一部。道路の穴の位置情報と重大度を出力
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公共事業の担当者が道路にできた穴を評価するために使用するアプリケーション

このカスタム ウェブアプリは、穴の可能性がある箇所を公共事業の担当者に示すことができます。担当者は、モデルが間違った際(多くの場合、汚れ、影、動物が原因)にモデルを修正したり、穴を確認して次の自動化プロセスを起動したりしていきます。穴が検出され確認されると、チームには実際の補修を管理するための作業チケットが必要になります。ウェブアプリにより、確認された穴についての情報が市の 311 情報システムに送信され、チケットが生成されます。その後、実際に道路を補修するための作業員と車両が派遣されます。

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道路の穴に関するデータの収集と検出のプロセス全体

良好な道路状況

この取り組みにより、道路にできた穴の検出と補修が迅速に行われるようになったと同時に、より多くのデータが収集され意思決定に活用されるようになったため、公共インフラを改善する今後のプロジェクトに対する可能性が開かれました。

詳しくは、Video Intelligence API クイックスタート をご覧になり、お試しください。また、SpringML の Eric Clark 氏のインタビューを GCP ポッドキャストでお聴きいただけます。AI Platform の機械学習ツールについて詳しくは、こちらをご確認ください。

-Google Cloud デベロッパー アドボケイト Max Saltonstall

-SpringML AI プラクティス担当 Eric Clark 氏

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