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AI & 機械学習

第 4 回 生成AI イノベーションアワード開催レポート:ビジネス価値を創出する受賞企業の生成 AI 活用事例

2025年11月27日
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Google Cloud Japan Team

先日、第 4 回 生成 AI イノベーションアワードが開催され、多数の応募の中から先進的な取り組みを行った 10 社がファイナリストとして選出されました。本記事では、その中から最優秀賞 1 社と優秀賞 3 社に選ばれた企業の、生成 AI を活用して具体的なビジネス課題を解決した事例を、プレゼンテーションの内容を交えて詳しくご紹介します。

イベントのハイライトをまとめた動画もこちらからご覧ください。

最優秀賞:ベネッセコーポレーション「図解でわかる AI チューター」

最優秀賞に輝いたのは、株式会社ベネッセコーポレーションの「図解でわかる AI チューター ​​」です。これは、AI が図解を用いて高校生の学習におけるつまずきを即座に解消する学習支援サービスで、同社の学習時間計測アプリ「StudyCast」内で提供されています。

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背景:超多忙な高校生活をサポート 部活や授業で多忙な高校生にとって、分からない問題をすぐに解決できないことは学習の大きな障壁となります。同社は 55 年以上にわたり高校生の学習に向き合ってきた経験から、この課題を解決すべく、いつでもどこでも頼れる AI チューターの開発に着手しました。

ソリューションと成果 生徒が分からない問題の写真を撮ると、AI がヒントや解答ステップ、そして独自の技術で生成された美しい図解を提示し、「考える→わかる→できる!」という学習サイクルを導きます。さらに、関連する解説動画や類似問題へもシームレスに連携します。

このサービスの裏側では、同社が蓄積してきた解法データベースと Vertex AI、Gemini が連携しており、これにより、高精度な解答生成と 30% の高速化を実現しました。サービス開始からわずか 2 か月で 4 万人以上の生徒に利用されるなど、大きな反響を呼んでいます。

優秀賞には、それぞれ異なるアプローチで AI 活用の可能性を示した 3 社が選ばれました。

時事通信社:”眠れる”ニュース資産をクイズで再活用

背景:ニュースの価値の短命化 報道記事は公開から 3 日程度で閲覧数が 70-90% 低下し、「モルグ」と呼ばれる書庫に日々数百件単位でアーカイブされ、死蔵されてしまう課題がありました。

ソリューションと成果 そこで同社は、Gemini 2.5 Pro を活用し、ベテラン記者が執筆した良質な解説記事(コラム)をソースに、関連するストレートニュースをベクトル検索で補強して、時事問題クイズ「時事トレンドクイズ」を自動生成する仕組みを開発しました。

この取り組みにより、これまで活用されてこなかった膨大なニュース資産が、新たな価値を持つコンテンツとして生まれ変わりました。クイズ導入後、関連コンテンツ全体のビュー数は 30% 向上し、元記事よりもクイズの方が多く読まれるケースも生まれています。

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テレビ朝日:番組制作のファクトチェックを 95% 効率化

背景:膨大で過酷なファクトチェック業務 テレビ番組制作の現場では、台本、ナレーション、テロップ、映像など、あらゆる情報に対して厳密な裏取り(ファクトチェック)が求められます。2 時間の番組を制作するために、5 人がかりで 100 時間以上もの時間を費やすことも珍しくありませんでした。

ソリューションと成果 同社が開発した AI アプリは、番組の台本などをアップロードするだけで、AI が検証すべき事実や主張を網羅的に抽出します。その後、最大 60 の Gemini を並列実行し、高速でファクトチェックを行います。

この AI は、情報の正確性だけでなく、その結論に至った思考プロセスや情報源も提示するため、検証の信頼性を担保しています。この仕組みにより、一次情報の取得にかかる時間を約 100 時間からわずか 30 分へと、95% もの削減に成功し、制作スタッフがよりクリエイティブな業務に集中できる環境を実現しました。

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グリー:専門家 AI エージェント群による「バーチャルサービスデスク」

背景:情報のサイロ化と問い合わせ対応の非効率 社内の情報はポータルサイト、Google Docs、Slack などさまざまな場所に散在し、従業員は「どこで、誰に聞けばよいか」分からず、情報システム部門への問い合わせが集中していました。

ソリューションと成果 そこで同社は、Google Cloud の Agent Development Kit (ADK) を用いて、複数の専門家 AI エージェントがチームで対応する「バーチャルサービスデスク」を開発しました。

総合受付の AI がユーザーからの問い合わせ内容を判断し、法務、人事、IT 資産管理など、それぞれ専門知識を持つ AI エージェントに振り分けます。これにより、従業員は適切な情報を迅速に入手できるようになりました。運用開始から 3 か月で、90 日間で 2,338 件の問い合わせに自動応答し、人間による対応件数を 17% 削減することに成功しています。

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まとめ

今回の受賞企業に共通しているのは、生成 AI を自社の独自の強みやデータと掛け合わせることで、具体的なビジネス価値を創出している点です。各社の事例は、業界を問わず、生成 AI がビジネスの新たな可能性を広げるための重要なヒントを与えてくれます。

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