Orange: ビジネスにおける AI の活用から学んだ 3 つの想定外の教訓

Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 2 月 22 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
人工知能(AI)には 2 つの形態があるように思われます。まず、映画で目にするような、非常にインテリジェントかつ高性能で、人間の仕事を奪ってしまうタイプの AI です。これは「SF タイプの AI」と言えるでしょう。次に、Orange のような企業が日常業務で活用している AI です。顧客関係、ビジネス運営、財務面で素晴らしい成果を上げることも珍しくありません。
この 1 年間、Orange は Google Cloud と連携し、実際に AI を使用して具体的なビジネス上の課題を解決しながら、これまでとは違う効果的な方法でデータをデプロイしてきました。皆様に AI をより簡単かつ効果的に活用していただけるよう、当社が学んだ 3 つの教訓をご紹介します。
2 つの場面を重視する: 導入時と拡張時
私のチームは、構想から AI ファクトリーによる効果的なデプロイまで、Orange の各種 AI ユースケースを担当しており、数多くの目標を掲げていました。それは、Orange France により多くの収益をもたらすこと、オペレーションと資本支出の両面で費用を削減すること、ネット プロモーター スコアで表されるようなカスタマー エクスペリエンスを改善することでした。それぞれ分野が大きく異なり、ビジネスのさまざまな領域から多くのデータを収集する必要がありました。また、すべてにデータ分析または AI が必要でした。
当社が所有する 60 以上のデータレイクとデータ ウェアハウスは、多数のオンプレミス サイトに分散されていました。中でも大規模なものは HubData と呼ばれる共有 Hadoop インフラストラクチャで、さまざまなタイプの標準的なビジネス インテリジェンス分析に使用されていました。後で説明するように、BI の機能は AI とは異なりますが、データの「原料」は非常によく似ています。この最初のデータをより柔軟な状態でクラウドに保存し、さまざまな AI ユースケースで活用したいと考えました。
複数のクラウド プロバイダを検討した結果、Google Cloud を導入することにしました。その決め手は、データ移行のしやすさと、クラウド移行後に使用できる最高水準のツールでした。特に Google Cloud の BigQuery は、最小限の業務中断で、AI を使用した作業を開始するために必要なキャパシティ、使いやすさ、柔軟性を備えていました。BigQuery 内で直接複数の ML アルゴリズムをそのまま使用でき、一度トレーニングすれば、即座にバージョニングを行い、Vertex AI を介して本番環境にデプロイし、さらにカスタマイズすることもできます。これにより、スケーリングの最適化、低レイテンシ、高品質なサービスが実現されます。
皆様が導入するクラウド プロバイダは異なるかもしれませんが、作業に適した場所への導入の容易さと、AI 業務を拡張する際に使用するツールの両方を重視してください。クラウド導入に必要な期間が短く面倒な作業が少ないほど、付加価値に注力する余裕が生まれます。
AI プロジェクトに関しては、大きいほど良いとは限らない
AI は高性能なツールであるため、当初は Orange の大規模な主力プロジェクトをいくつか処理するうえで役立つだろうと考えていました。実際には、最初の年に大規模プロジェクトと 30~40 件の小規模プロジェクトの両方に取り組み、すべてが成功を収めました。そして今後も多くのプロジェクトが待ち受けています。この状況を実現するために必要だったチームの増員はごく限られたものであったため、当社の人材もツールも適切であると確信できています。
実際のビジネスニーズと、困難ながらも実現可能なテクノロジー機能の適切なバランスが確立されると、プロジェクト チームは潜在的な価値を秘める多くの領域を想定できるようになりました。また、当社の目標は壮大なものではないため、スタッフもお客様も、オペレーションの手法の大きな変化を経験せずに済むことがほとんどです。単に改善のみを実感できるのです。
これらのプロジェクトは多数の領域にわたっています。たとえば、AI を使用して、デジタルやダイレクト マーケティングなどの複数のチャネルを介してお客様向けの商品のおすすめをパーソナライズしています。それまでは、Orange の小売店の担当者がお客様に商品をおすすめしていました。これは、新しいスポーツ チャンネルへの登録をおすすめするような小さいことはでなく、接続環境の改善をおすすめするといった大きな変化になる可能性もありますが、営業が順調に進めば、営業担当者に AI の価値を確信してもらうことができます。また、電気通信局で現場の技術者が配線の作業を行い、その複雑な配線の写真を撮影すると、ビジュアル AI がその作業状態が適切であるかどうかを数秒で判断できるという例もあります。こうしたシンプルで測定可能な改善の積み重ねにより、チームの想像力が強化され、さらに多くのアプリケーションの開発につながっています。
AI プロジェクトのプランニングは BI ソフトウェアを使用する場合とは異なります。BI は非常に複雑で、ルールベースであるためです。その一方、AI は設計面で厳格でありながらも、驚くような成果を上げることがあります。この点が、私が挙げる最後のポイントにつながります。
マシンと人間の融合によって多くの価値が生まれる
小売業務と現場業務の 2 つの AI ユースケースについてご紹介しましたが、両方のケースで、AI は補助的な役割で人間と連携しています。最終的な決断を下すのは人間であることは変わらないため、人間の想像力、創造力、経験が大きな価値を持ち続けます。
これは、不正行為の検出や製品エクスペリエンスなど、お客様にかかわるアクティビティに特に注意を払いながら、常に人間が最終決断を下す必要がある「責任ある AI の役割」という当社の信念に沿っています。また、人間の拡張知能(IA)はスタンドアロンの AI プロジェクトよりも強力な(そして特定しやすい)価値の源泉であるという概念の裏付けにもなります。
新しいツールを使用するときは常にそうであるように、AI も習熟までにある程度の期間が必要となりますが、いくつか驚くべき点があります。当社の場合、そのほとんどは喜ばしいものでした。たとえば、稼働までのスピードの速さや、成功したプロジェクトの数の多さなどです。あらゆる新しいツールと同様に、実際に使い始めてみると、ツールそのものとツールによって解決される問題を新たな観点から見ることができるようになり、さらにはあらゆる物事について新たな見方を獲得することもできます。
一般にこれを「チェンジマネジメント」と呼びます。チームが新たな働き方を正しく理解できるようにすることです。このプロセスを円滑にする要因はいくつかあります。たとえば、クラウドへの容易なデータ移行、プロジェクトの作業範囲の維持、優れた成果とカスタマー エクスペリエンス向上の重視、成功に対する迅速なフィードバックの推奨などです。人は、未来の自分の居場所を理解できているほど、環境に適応しやすくなります。
Cloud Workstations の概要とご試用について詳しくは、こちらのウェブページをご覧ください。