AI を活用した開発を実現する、Google Cloud データベースへの新たな MCP インテグレーション
Hamsa Buvaraghan
Product Manager, Google Cloud Databases
Prerna Kakkar
Software Engineer, Google Cloud Databases
※この投稿は米国時間 2025 年 6 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
先月の Google Cloud Next 2025 では、生成 AI エージェントとデータベースのスムーズな接続を実現し、企業の中核的なワークフローを自動化するデータベース向け MCP ツールボックスを発表しました。データベース向け MCP ツールボックス(「ツールボックス」)は、デベロッパーが生成 AI エージェントを企業データに簡単に接続できるようにするオープンソースの Model Context Protocol(MCP)サーバーです。BigQuery、AlloyDB(AlloyDB Omni を含む)、Cloud SQL for MySQL、Cloud SQL for PostgreSQL、Cloud SQL for SQL Server、Spanner のほか、PostgreSQL、MySQL、SQLite などのオープンソースのセルフマネージド データベースに対応しています。また、Neo4j、Dgraph などのベンダーが提供するデータベースにも対応しており、その数は現在も増え続けています。
このたび、AI を活用した開発を支援するために特別に設計された機能がツールボックスに追加されたことをお知らせします。これにより、ツールボックスを使って IDE 上でデータベースを AI アシスタントに簡単に接続できるようになりました。
MCP は、Anthropic が作成した新しいオープン標準です。標準化されたプロトコルを通じて AI システムとデータソースを接続するもので、カスタム インテグレーションを必要とする断片的なインテグレーションに取って代わります。ツールボックスでは、MCP 対応の AI アシスタント(Claude Code、Cursor、Windsurf、Cline など)を使用して、データベースのクエリ、新しいアプリケーションのスキーマの設計、データモデルの変更時のコードのリファクタリング、統合テスト用データの生成、データベース内のデータの探索など、さまざまな用途に合わせたアプリケーション コードを記述できます。
今回は、これらの新機能と、その利用方法についてご紹介します。
MCP と Google Cloud データベースの利用
Claude Code、Cursor、Windsurf などの AI ネイティブ IDE や VSCode などの定番の IDE を使用して、コード生成、コード リファクタリング、コード補完、自動テスト、ドキュメント作成といった AI 支援タスクを実行する際に、最も効率的にデータに接続する方法を探すことがあるかもしれません。MCP ツールボックスと Google Cloud データベースで効率的なデータ接続を実現する方法を見てみましょう。
ツールボックスの新しい事前構築済みツールを使用すると、任意の IDE 内から直接 Cloud SQL、AlloyDB、Spanner、BigQuery、またはセルフマネージドの PostgreSQL データベースと統合できます。すべてのアプリケーションがなんらかの形でデータを管理しているため、ツールボックスの新しい機能は、ソフトウェア開発プロセスを自動化する新たな機会となります。
データベース接続による AI を活用した開発
開発者がこれらの新しいツールを使用して作業を加速させる方法を見てみましょう。
最近、e コマース アプリケーションの保守を担当する開発チームに加わったサラは、ソースコードと開発用の Google Cloud SQL for PostgreSQL データベースにアクセスし、VS Code IDE と統合可能なオープンソースの AI アシスタントである Cline を使用します。ツールボックスをすばやくセットアップし、Cline とデータベースに接続しました。
次に、サラはデータベースを調べて、データの構造とクエリの方法を理解します。SQL の構文を学んだり、PostgreSQL の詳細を覚えたりする必要はありません。Cline がユーザーに代わってデータベースに関するメタデータを検索し、データベースにシームレスに接続してクエリを実行してくれます。簡単な言葉で質問するだけで、答えが返ってくるのです。
これまでは、答えを得るために複雑な SQL クエリを記述し、特定のテーブル スキーマを覚えておく必要がありました。たとえば、過去 3 件の注文を検索する場合、正しいテーブルを把握し、SELECT * のような SQL クエリを記述する必要がありました。また、商品カテゴリと購入日を含む未出荷の注文数のデータを入手したい場合は、注文テーブルと商品テーブルを結合する別の SQL クエリを記述しなければなりませんでした。このように、SQL クエリはすぐに複雑になります。
今では、簡単な自然言語プロンプトを使用するだけで、残りの作業は AI が処理してくれます。
自然言語プロンプト
数分後、サラはデータベース内のデータについて十分に理解できました。これで最初の仕事に取りかかる準備は万端です。

次に、サラのチームはベンダー管理機能をシステムに統合する仕事を任されました。そこでサラは Cline に、ID、会社名、住所、市区町村、都道府県、メールアドレス、電話番号の列を持つ新しい「ベンダー」テーブルを作成するよう指示しました。また、「在庫」テーブルにベンダー ID 列を追加し、適切なインデックスを設定する必要もあります。この場合も、これらのタスクのために SQL やコードを記述する必要はありません。指示するだけで、Cline がデータベースに変更を加える方法を把握し、ツールボックスを介してそれを実行します。
これまではベンダー情報の追加などの変更を実装する場合、一連の手動による更新が必要でした。つまり、テーブル作成用の SQL の記述(必要な列をすべて含む「ベンダー」テーブルの作成)、既存のテーブルの変更(「在庫」テーブルへのベンダー ID 列とインデックスの追加)、アプリケーション コードのモデルクラスの更新を行い、最後に InventoryDAO テストが有効な状態のまま新しい構造をカバーするようにしなければなりませんでした。
今では、簡単な自然言語コマンドをいくつか使用するだけで、これらの作業をすべて処理できます。簡単な自然言語プロンプトを使って AI に指示するだけです。
自然言語プロンプト
Cline はツールボックスを介してデータベースにアクセスできるため、修正されたスキーマの完全なコンテキストを把握し、それに応じてコードを変更できます。最後に、サラは Cline に InventoryDAO クラスのテストを更新するように指示します。テストに合格したら、変更内容を確認してチェックインします。

新しくチームに参加した開発者はもとより、PostgreSQL の構文に習熟している開発者でさえ理解して実装するのに 1 日以上かかる可能性があったタスクが数分で完了しました。サラは、新しいチームでの最初のタスクを午前中に終えることができました。
使ってみる
MCP ツールボックスの機能拡張は、データベース開発のライフサイクルを加速させ、AI を活用したワークフローの可能性を引き出す、パワフルで直感的なツールをお客様に提供するという Google の継続的な取り組みの一環です。
ツールボックスについてさらに詳しく学び、お気に入りの AI 支援コーディング プラットフォームに接続して、AI によって加速されるデータベース連携型のソフトウェア開発の未来をぜひご体感ください。
-Google Cloud データベース、プロダクト マネージャー、Hamsa Buvaraghan
-Google Cloud データベース、ソフトウェア エンジニア、Prerna Kakkar