AI ROI リーダーに学ぶ、ビジネス成果に直結する投資の優先順位

Oliver Parker
VP, Global Generative AI GTM, Google Cloud
経営幹部 2,400 人を対象とした最新の調査により、世界有数の組織がいかにして AI から価値を引き出し、費用対効果の高い成長を推進しているかが明らかになりました。
※この投稿は米国時間 2026 年 7 月 28 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
日々お客様をご支援するなかで、よく尋ねられる質問があります。それは、「AI をどこに活用すれば最大の価値を得られるか」というものです。
AI への投資がニュースを賑わせ、ソーシャル メディアで議論を巻き起こしている今、AI の費用対効果に改めて注目が集まっているのは当然の流れです。実際、Google トレンドのデータによると、2026 年 1 月以降、「トークン効率」への関心は「トークン最大化」や「トークン リーダーボード」の 4 倍になっています。
世界中のあらゆる規模の Google Cloud のお客様を通じて、私たちはこの事実を目の当たりにしています。お客様たちは、単に AI に投資するのではなく、ビジネス成果に直結する投資を優先することの重要性を深く認識されています。また、ROI を確実に把握し、それを適切な投資先へと循環させるための効果測定の手法にも非常に精通されています。その価値は、そうした組織が取り組んでいる AI プロジェクトの種類に表れています。


また、お客様から直接伺っているお話を裏付けるような新たな調査結果も出ています。Google Cloud は National Research Group と協力し、組織における AI 活用状況について経営幹部に伺う 3 回目の年次調査を実施しました。
調査対象となった 2,400 人以上の最高責任者、バイス プレジデント、事業部門責任者のうち、84% の経営幹部が、AI イニシアチブによる財務的リターンの増加を実感していると回答しました。このグループのうち、26% が前年比でリターンの伸びが加速していると回答しています。
Google では、この後者のグループを「AI ROI リーダー」と呼んでいます。これらのリーダーは、AI からリターンを引き出すことに長けているだけでなく、最大の効果を得られる場所に AI を優先的に投入しています。実際、AI ROI リーダーたちは一貫した共通のプラクティスを取り入れることで、こうした成功を収めていることが調査から明らかになっています。以下に概要を示し、レポート全文で詳しく説明しているアプローチは、調査から得られた知見を貴社組織で活用するための明確かつ実践的な指針となります。
費用対効果の高い成長を促進するために AI ROI リーダーが実践している 3 つのこと
AI ROI リーダー、つまり AI からの財務的リターンが加速している 26% の組織を調べた結果、共通する 3 つの施策があることがわかりました。
- 明確なオーナーシップ: 48% が、AI やエージェント関連の取り組みにおけるオーナーシップと意思決定権限を「非常に明確」に定めています。
- ワークフローへの AI の組み込み: 約半数が、「AI を中核となるビジネス プロセスや収益源に組み込んだ」、あるいは「AI によって新たなビジネスモデルや収益機会が創出されている」と回答しています。
- AI フルーエンシーの必須化: 38% が、必要なトレーニングを伴う、役割に組み込まれた包括的かつ継続的な AI 能力開発を実施しています。たとえば、継続的なスキルアップ プログラムや、現在の従業員への継続的な投資などです。
これらは具体的に何を意味しているのでしょうか。成功を収めている AI リーダーは、AI を活用して業務をどのように変革すべきかという明確なビジョンを打ち出したうえで、従業員がそれを実践できるよう必要なリソースとトレーニングを提供しています。たとえば、財務部門のリーダーが発注承認を効率化する最適な AI エージェントを共有する、人事部門のリーダーが膨大で難解なマニュアルや福利厚生プランの情報を集約して従業員からの問い合わせに即座に回答できる仕組みを提示する、といったことが挙げられます。こうしたリーダーたちは、継続的なトレーニングや能力向上支援を提供するとともに、責任の所在を明確にしながら、テクノロジーとプロセスの双方を改善することに注力しています
適切に実施した結果は明らかです。調査対象となった 2,400 人の経営幹部の 86% が、AI がコスト効率の高い成長を促進し、運用コストを比例して増加させることなく収益や生産量を拡大させる助けになっていると回答しています。
ROI 向上の鍵はエージェント
AI からの収益を実感している組織において、ROI の向上に最も寄与しているのはエージェントです。
今回の調査では、エージェント AI が収益の増加、コスト削減、運用効率または利益率の改善という 3 つの主要なビジネス指標すべてにプラスの影響を与えていることがわかりました。調査の結果、ほぼすべての回答者(94%)が AI エージェントがコスト削減と収益の双方に貢献していると回答し、特にコスト削減効果を挙げる回答がやや優勢でした。


回答者の 94% が AI エージェントがコスト削減と収益の両方に貢献していると回答し、貢献していないとの回答は 6% にとどまりました。
ROI が向上している領域
AI による ROI は、基本的な生産性の向上にとどまらない新たな段階へ移行しています。今回の調査によると、AI 投資がもたらす測定可能な効果として現在最も挙げられているのは、「戦略的な意思決定の迅速化」と「従業員の能力向上」です。従業員一人ひとりの価値が高まっているのです。
また、こうした組織は顧客に与えるインパクトをこれまで以上に重視するようになっています。調査結果が示しているように、ROI は「顧客のライフタイム バリューの向上」や「イノベーション サイクルの短縮」といった領域で成果として現れています。


意思決定の迅速化 + 従業員の能力向上 + 顧客価値への注力 = AI に投資する組織の収益向上。
世界トップクラスの組織は AI の費用対効果をどう高めているのか
Google は、さまざまな業界の大手企業と連携して、迅速な AI 活用の拡大を通じて収益を向上させるという目標の達成をサポートしています。散発的な試験運用にとどまることなく、AI を中核業務に直接組み込むことで、こうした企業は収益向上と業務効率化という確かな成果を上げつつあります。
小売
Best Buy は、Gemini Enterprise Agent Platform を活用して数千件もの商品レビューを簡潔な分析情報にまとめ、購入者が十分な情報に基づいて購入を決定できるようにしています。詳細
金融サービス
PayPal は、Gemini Enterprise を使用してインテリジェントなデータドリブン型の意思決定レイヤを構築し、よりパーソナライズされたカスタマー エクスペリエンスを大規模に実現しています。詳細
製造
Tata Steel は、巨大なグローバル組織全体で自律機能を急速に拡大しており、Gemini Enterprise 上に構築された 300 を超える特化型の AI エージェントのフリートをわずか 9 か月でデプロイし、グローバルな事業運営全体で効率性と精度を向上させています。詳細
医療
Highmark Health は、Gemini Enterprise Agent Platform 上に構築した AI アシスタント「Sidekick」を活用して、従業員がもたらすインパクトを拡大しています。Sidekick は、調査プロトコルの自動化や社内チームへの「AI 検索プロキシ」の提供を通じて、2025 年だけで 2,790 万ドルの価値を生み出しました。詳細
ライフ サイエンス
Elanco は、Gemini Enterprise Agent Platform と Gemini モデルを活用して、薬物安全性監視や顧客注文などの重要なビジネス プロセスをサポートするフレームワークを構築しています。昨年の導入以来の費用対効果は推定 190 万ドルに達しました。詳細
通信
Amdocs は、Gemini Enterprise for Customer Experience を使用して、通信事業者用カスタマー エクスペリエンス エージェントを作成しました。このエージェントは、エンドツーエンドの通信プロセスを推論、オーケストレート、実行することができ、解決のスピード、コスト効率、顧客満足度を向上させています。詳細
メディア、エンターテイメント
Thomson Reuters は、自社の承認済みモデルのラインナップに Gemini Pro モデルを追加しました。一部のタスクの処理を最大 10 倍高速化し、ドキュメント全体をコンテキスト内で処理できることがその決め手となりました。詳細
資産管理
Citi Wealth は、Citi Wealth チームの一員となる、AI を活用した常時稼働のメンバー「Citi Sky」をリリースします。Citi Sky は、Citi アプリを通じて Citi のグローバル インテリジェンスをクライアントに提供します。詳細
消費財
Coca-Cola と Footballco は、高度な画像生成、シネマティックな動画合成、高忠実度な音声モデリングを人間の創造性と融合させています。これにより、世界最大級のトーナメント期間中、自社のグローバル コンテンツ シリーズとして、リアルタイムでソーシャル ファーストなエンターテイメントを世界中のサッカーファンに大規模に届けています。詳細
今後の投資動向: 予算の増額、戦略の強化、費用対効果の向上
組織が AI の費用対効果を実感していることを示す最大のシグナルは、投資を継続しているという事実です。業界の経営幹部の方々に、今後 12 か月間に主要なユースケースにおいて AI がどの程度の効果をもたらすと予測するか、評価を伺いました。その結果、ほぼすべての組織(97%)が AI への投資を増やす計画を立てていることがわかりました。


回答を通して、AI 投資において最も有望な 8 つの分野が特定されました。多くの企業が、AI を活用した分析、ワークフローの自動化、カスタマー エクスペリエンス、AI インフラストラクチャを最優先事項として捉えています。


AI は全員が取り組むべき課題
AI の真の価値は、単に既存の業務をスピードアップさせることだけではありません。その真価は、運営を変革し、従業員が生み出す成果を高めていく過程でビジネスの成長を促進することにあります。
AI を試験運用段階から全社的な価値創出まで拡大していくには、一部で見られる「優れた成果」と大規模な本番運用との間のギャップを埋める必要があります。そのプロセスは、強力なドミノ効果を引き起こします。AI によって個人の業務対応力が高まるにつれて役割が進化し、チームの関係性がフラットになり、従来の企業階層もそれに適応していくことになります。
AI ROI リーダーが手にする最大のメリットは、生産性の向上だけではありません。迅速な分散型の意思決定によってもたらされる「組織のスピード」もそのメリットとなります。このモデルを全社規模で展開できれば、ワークフローを最適化するだけでなく、将来を見据えた本質的にアジャイルな組織を築き上げることができます。
調査の方法とプロセス
National Research Group と協力して、グローバル市場のあらゆる業界にわたる 2,403 人の経営幹部を対象に調査を実施しました。
Gemini Enterprise と Google Antigravity を使用して、約 30 万のデータポイントを分析しました。データは、業界、地域、企業規模、AI 導入段階の 4 つの主要な側面から評価しました。
これに加えて、 Google 検索トレンドと YouTube トレンドから得た一般公開データ、および Google Cloud のお客様から得た定性的データも使用しました。
- Google Cloud、グローバル生成 AI GTM 担当バイス プレジデント、Oliver Parker



