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AI & 機械学習

安全に AI エージェントをスケールさせるための 4 つの条件

2026年6月19日
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Will Grannis

VP and CTO, Google Cloud

Google Cloud Next '26 を経て、AI エージェントへの関心は、導入検証から、本番環境でのガバナンス、セキュリティ、スケーリングといった運用管理へとシフトしています。

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The front door to AI in the workplace

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このコラムでは、Google Cloud CTO オフィスのエキスパートが、読者の皆様のビジネスや IT に関する課題や質問にお答えします。

本記事では、CTO オフィスの Will Grannis と彼のチームが、Next '26 を振り返ります。32,000 人が参加し、数百もの新機能・ソリューション発表が行われ、数えきれないほど多くのお客様と会話をしたラスベガスでの 3 日間を終えたばかりの彼らに、帰りの飛行機の中でも頭から離れなかった「最も印象に残った気づき」を挙げてもらいました。

そこから 4 つのテーマが浮かび上がりました。

エージェントの導入は完了した。今、求められているのはガバナンスだ。

AI エージェントは主流になりました。同時に、それに伴う不安も現実のものとなっています。

Ben McCormack

エージェントは至る所に浸透しています。Next でお話を伺ったすべてのお客様が、ビジネス プロセスを推進するために、すでに何らかの形でエージェントを稼働させており、その熱気はまさに本物でした。

一方で、FOMO(取り残されることへの不安)も渦巻いています。多くのお客様が、自分たちは遅れをとっているのではないかと焦りを感じていますが、実際にはほとんどの企業がスタートラインを同じくしています。実装は広まっていますが、解決していない疑問はたくさん残っています。お客様が抱える疑問は、地域を問わず、デジタル ネイティブから伝統的な大企業に至るまで、驚くほど一貫していました。誰もが、エージェントをより安全に運用し、その挙動を可視化するための優れたアプローチを模索しています。お客様の期待は、プラットフォーム自体が担保すべき領域と、エージェントのタスク処理アプローチによって解決すべき領域の、2 つに大別されます。

欧州のお客様には、さらに熟慮すべき事項があります。それは「主権(ソブリン)」です。ほぼすべての会話において主権の話題が挙がりました。お客様は、AI 戦略の基盤を支えるテクノロジー サプライチェーンを理解したいと考えているのです。

新たなインサイダー リスク

Troy Trimble

エージェント型 AI がプロダクトやプロセスにもたらすメリットについては、多くの期待とユースケースがあります。しかし同時に、ビジネスやテクノロジーのリーダーたちの間には、その制御に対する明らかな不安も存在します。

その理由は、エージェントが新しい種類のインサイダー リスクになり得るからです。人間の従業員に求めるのと同等の期待に応えられるようにするには、エージェントの挙動を理解し、適切に制御する必要があります。しかし、既存のセキュリティ モデルは、人間が操作することを前提に構築されたものであり、人間に代わって自律的に意思決定を行うソフトウェアを想定したものではありません。

お客様はそのことを痛感しています。多くの企業はすでに、インターネットと社内エージェント間で情報を安全にやり取りするために、高度なデータ ファイアウォールを構築しています。この取り組みは、データの持ち出しのリスクを徹底的に排除するためのものです。ツールの開発が実際のユースケースに追いつきつつある現状では、各社はまだ手探りでガバナンスを構築している状態です。Google Cloud に対しては、こうした課題に対応するために必要なプロダクトや機能開発を今後も継続して提供してくれるはずだ、という明確な期待が寄せられています。

そのため、Next での 2 つの発表は大きな反響を呼びました。「Agent Identity」は、人間中心のセキュリティ モデル内でエージェントをどのように認証するかという課題のギャップを埋めるものです。Knowledge Catalog も、同様の理由で大きな注目を集めました。Knowledge Catalog は、より多くのデータソースを取り込むことで、エージェント型ソリューションにビジネス固有のコンテキストを提供します。これが、信頼を支える「方程式」の片方の要素です。もう片方は、エージェントが実際に何を行っているかを完全に把握することです。

エージェント間連携

Patricia Florissi

先月のこのコラムで、私たちは「エージェントは実世界へ飛び出した」と述べました。そして、それは現実のものとなっています。Next を経て明らかになったのは、一度外に出たエージェントは、タスクを完了するために他のエージェントと協調し合うということです。そうした連携は、同一企業内のエージェント間だけでなく、組織の枠を越えて行われることもあります。

自律的であるか否かにかかわらず、そのやり取りが機能するには、ガバナンス、セキュリティ、オブザーバビリティの 3 つが整っている必要があります。Gemini Enterprise Agent Platform がお客様を惹きつける理由は、こうした特性を備えたエージェントを大規模に展開する手段が手に入るからです。

こうした大きな期待とは裏腹に、本質的なジレンマも存在します。お客様は、組織内のすべての人がエージェントを構築し、生成 AI を活用できるようにしたいと考えています。それと同時に、エージェントの乱立と、それによって生じる脆弱性の拡大についても強く懸念しています。求められるのは、民主化と統制の両立です。どちらか一方だけを満たしても、根本的な課題解決にはつながりません。

コストについても考える必要があります。人間とエージェントが共に働くハイブリッドな労働環境が広がるにつれ、生成 AI のランニングコストが予測困難な形で増加していくのをお客様は目の当たりにしています。特に、出力結果に厳格な説明責任が求められる規制業界においては、生成 AI の挙動に高い確実性をもたらすアーキテクチャおよび問題解決のパターンが求められています。

お客様が Google Cloud への大規模な移行を進め、データを生成 AI に対応させるためにインフラストラクチャを再構築している様子は、非常に印象的でした。こうした投資の背景には、生成 AI がビジネスの将来にとって重要であり、それを活用できる基盤が必要であるという認識があります。お客様はまた、自社の取り組みが遅れていないかということに強い関心を持っており、ときには不安さえ感じているようでした。基調講演やパネルディスカッションの後、「そのような働き方を実現している組織がすでにあるのか?」という質問をよくされました。

実務を通じて学び続けるエージェント

継続的学習こそが運用の本質

Michael Zimmermann

エージェントの品質向上を図るには、デプロイ後も学習を継続する必要があります。本番環境にデプロイされるエージェントのほとんどは、最初から完璧ではなく、完全な自律性も 100% の精度も備えていません。だからこそエージェントには人間による監督が必要であり、そのプロセスを通じて、専門家から学び、エージェントを進化させる強力な機会が存在します。仮に最初からエージェントが自律的で完璧(100%)であったとしても、ビジネス環境は変化するため、エージェントも人間の従業員と同じように進化し、適応していく必要があります。

人間参加型(Human-in-the-Loop、HiTL)のアプローチは、人間とエージェントのコラボレーションへと進化しつつあります。人間による監督のあり方は変化します。エージェントの役割は、単に人間がプロセスに介在する HiTL 段階から、人間の専門家から洗練された判断を引き出し、その知識をエージェント自身が未来へと引き継ぐコンテキストへと昇華させる段階へと、シフトしようとしています。対象分野の専門家(Subject Matter Expert, SME)がエージェントにノウハウを教え込むとき、そのデータはエージェントのナレッジベースとなり、忘れることはありません。エージェントは個々のケースから学習し、LLM が持つ汎用的な知識と企業固有のドメイン ナレッジを融合させることで、高度な自律性を実現できるようになります。この終わりのないループの結果として、人間の運用負荷は徐々に減少し、より大きなインパクトと明確な費用対効果がもたらされます。

Next で発表された Google Cloud のいくつかの機能が、このアーキテクチャ パターンを具現化し始めています。Gemini Enterprise Agent Platform は、専門家の関与(SME-in-the-Loop)のもと、本番環境において安全かつ確実にエージェントを学習させるための構成要素を提供します。その基盤では、A2UI、コンテキスト管理、エージェント ID、評価ハーネス、ADK、エージェント ランタイムといった各コンポーネントが連携し、継続的な学習基盤を形作っています。エージェントは、実務を遂行しながらも、絶えず進化し続けるのです。

電報から電話へ

Antonio Gulli

AI がコードを生成し、ソフトウェア エンジニアリングそのものを再定義しつつある現在、この領域では多くのパラダイムシフトが進行しています。最近私は、非常に印象に残る例えを耳にしました。それは、この変化は「電報から現代の電話への移行」に匹敵する、というものです。電報の時代、メッセージを送るには専門のオペレーターを経由する必要がありました。今では、誰もが互いに直接コミュニケーションをとることができます。コードの世界でも、同じような進展が見られます。Antigravity のようなツールはこうした変革の最前線にあります。そして、お客様からは「次に、AI が業務を劇的に変革する分野はどこか」という問いが繰り返し寄せられています。

エージェントはもはや SF のコンセプトではありません。標準的なモデルが高度化を続ける一方で、エージェントは外部環境と動的に相互作用するという点で、別のカテゴリとして位置づけられます。エージェントは記憶(メモリ)を持ち、パーソナライズが必要で、常に新しい状況に直面しています。エージェントの取り組みは、実務を通じて学び、いつ既存のスキルを使い、あるいはその場でいつ新しいスキルを取り入れるべきかを見極めることです。お客様は、エージェントによるシミュレーションや、業務をこなすだけで性能が向上していく自己改善型エージェントに、強い関心を寄せています。

また、オープンなエージェント型クラウドへの明確なシフトも見られます。オープンソースの勢いはますます加速しており、その中心には Gemma があります。インフラストラクチャの土台はすでに整っており、エージェントの構築や制御を行う ADK や、エージェント同士の通信を可能にする A2A などを利用できます。お客様は、構築に使用する最先端のテクノロジーと、その実行方法と場所を選択できるオープン性を手に入れることができます。マネージド サービスの強みと、オープン スタンダードがもたらす柔軟性の双方を享受できるこの組み合わせこそが、お客様が求めているものだと私たちは考えています。

電報から直接通話への移行が第一段階だったとすれば、自己改善型エージェントは、リアルタイムで思考し、適応する能力を付与する存在だと言えます。これらすべてをオープンなエージェント型クラウド上に構築することで、全体像が完成します。これらのエージェントが学習して能力を高めるにつれて、イノベーションは閉ざされた扉の向こうではなく、コミュニティの中に蓄積されていきます。

AI が現実世界に進出

物理 AI が研究フェーズを超える

Massimo Mascaro

物理 AI は、もはや研究室の段階を脱しつつあります。多くの企業が、ロボット工学と生成 AI を組み合わせることで、実環境における推論や未知の環境への一般化を進めています。このような取り組みは、1 年前には本番環境において実現不可能でした。

Next で最も明確な実証例を示したのは、広告大手の WPP でした。同社は、高度な撮影に Boston Dynamics の Spot ロボットを活用しており、その複雑な動作はすべて、Google Cloud 上の NVIDIA Omniverse シミュレーションと強化学習によってトレーニングされています。同社がこのトレーニングを新しい G4 VM インスタンスで実行した結果、以前は 10 時間かかっていたトレーニングが 1 時間未満に短縮されました。これらのロボットは、TPU 8 の基調講演の発表動画の撮影にも使用されています。

基盤となるインフラストラクチャについて理解しておくことは重要です。G4 インスタンスは NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell GPU で実行され、より軽量なロボット工学やシミュレーションのワークロードに合わせて適切なサイズに調整できるように、部分構成が導入されています。これにより、必要のない Blackwell のフル容量に対して過剰な料金を支払う必要がなくなります。NVIDIA Isaac Sim と OpenUSD ライブラリが Google Cloud Marketplace で利用可能になったことで、デベロッパーは物理的に正確なデジタルツインを構築して、実環境で動作させる前にロボットの制御ポリシーを検証できるようになりました。

GDM Robotics のショーケースでは、Boston Dynamics、Franka Robotics、Enchanted Tools とのパートナーシップを通じて、さらなる技術レイヤが追加されました。このパートナーシップにより、ロボットがより自然に物事を認識し、推論し、人間やツールとやり取りするための基盤となるインテリジェンスを提供できるようになります。私たちはまた、ロボット工学やデジタルツイン アプリケーションを構築するデベロッパー向けの専用ハブも立ち上げました。物理 AI は以前から新興分野として注目されてきましたが、Next を経て、より実用的なものになりつつあります。

コンテキストのギャップが縮小

データとインテリジェンスがついに同じ場所に

Sarah Gerweck

私たちは現在、エージェントとクラウドの機能がデータとインテリジェンスを結び付けるという、重要な転換点を目の当たりにしています。エージェントが実行できることと、企業が実際にそれらを活用できることとのギャップは縮小しつつあります。

Next では、こうした変化を裏付ける具体的な進展をいくつか示しました。

環境のパーソナライズ: Gemini Enterprise と Agent Memory Bank により、エージェントはタスクをまたいで動的なコンテキストを持ち運べるようになり、毎回ゼロから始める必要がなくなります。

データアクセスの統合: クロスクラウドのレイクハウス、エージェント間の連携、拡大し続けるコネクタ群により、データは特定の場所に縛られずに価値を発揮できるようになります。

理解力の向上: Knowledge Catalog と会話型分析により、人間と AI の両方がデータを解釈できるようになります。このことは、「データがある」という状態と「エージェントがそれを利用できる」という状態の間のギャップが、これまで大きなボトルネックとなっていたため、重要な意味を持ちます。

次にやってくるのは、直感的なインターフェースを備えたソフトウェアの時代です。それは、深いパーソナル コンテキスト、緻密なデータアクセス、AI がもたらすインサイトを融合させ、単にシステムにクエリを投げるのではなく、優秀な同僚と仕事をしているかのような体験をもたらします。

共通のテーマ

これらのテーマをまとめて読んでみると、同じ疑問が異なる形で浮かび上がってきます。それは、「エージェントを本番環境の技術として確立するにはどうすればよいか」ということです。ガバナンス、セキュリティ、継続的な学習、組織の内部だけでなく企業や組織の境界を越えてエージェント同士が相互通信を行う環境、オープンソースの役割、物理的な実装、データ基盤。これらは、その問いに対するそれぞれの回答であり、いずれも、試験段階の先に進むために欠かせない要素です。

Next '26 は、この変化を具体的に示しました。エージェント型エンタープライズは、もはやロードマップ上の構想ではありません。今、議論すべき課題は、エージェントを実際にどう本番運用するかということなのです。

※この投稿は米国時間 2026 年 5 月 14 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

-Google Cloud、バイス プレジデント兼 CTO、Will Grannis

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