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サステナビリティ

Formula E の Mountain Recharge プロジェクトで電気自動車の限界に挑戦

2025年5月12日
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Olly Grundy

Group Product Marketing Manager, UKI

Olivier Van Goethem

Customer Engineering Manager, UKI

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※この投稿は米国時間 2025 年 5 月 4 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

ブレーキングで勝負するレースに興奮したのはいつのことでしょうか?

心をドキドキさせる強烈な加速と命知らずの走りは、多くのモータースポーツ ファンを釘付けにしています。特に、Formula E、そしてすべての電気自動車(EV)において、電気モーターによってほぼ瞬時に得られる爆発的な加速はその魅力の一端を担っています。

あまり注目はされていないものの、EV には、摩擦エネルギーを電気に変換できる回生ブレーキという重要な機能があります。Formula E のミッションの一つは、EV を世界クラスのレーサーだけでなく、一般消費者にも選ばれる魅力的な自動車にすることであり、この優れた特長を強調することが優先課題となっています。しかし、減速時の興奮を他の人にも同様に感じてもらうにはどうすればよいかという課題がありました。

その答えはモナコの山々から、そして Gemini 2.5 のプロンプトから得られました。

Monaco E-Prix の開催に先立ち、Formula E と Google は Mountain Recharge というプロジェクトを立ち上げました。その課題は、Formula E の GENBETA レースカーが、バッテリー残量がわずか 1% の状態から、フランスのアルプス沿岸を下りながらブレーキングでエネルギーを回生し、象徴的なモナコ サーキットを 1 周完走できるようにするというものでした。

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この実験は単なるショーではなく、EV だけでなくクラウドにおいても、テクノロジーの限界に挑戦するものでした。ライブ分析と AI を活用した綿密な計画がなければ、Mountain Recharge は実現しなかったかもしれません。実際、山を通るどのコースがこのプロジェクトに最適であるかを判断する際にも AI が役立ちました。(どのルートが選ばれたか、そしてこのプロジェクトが成功したかどうかは、後ほどお知らせします。)

Mountain Recharge は、コースでのスリルだけでなく、さまざまな業界における AI の可能性も示しています。AI は、タスクの実行を支援する役割に加えて、ブレインストーミング、テスト、矢継ぎ早に行うシミュレーションにおいてもその価値を発揮し、Mountain Recharge をゴールに導きました。

実現可能性の検証

この実験的なプロジェクトが始まる前に、Formula E と Google Cloud のチームは、このような挑戦が可能かどうかを Gemini に相談しました。

実現可能性という根本的な疑問への回答を得るために、Google の AI Studio に「バッテリー残量がわずか 1% の GENBETA レースカーが、山道の下り坂を利用して充電を行い、モナコ サーキットを 1 周することは可能か?」という簡単なプロンプトを入力しました。

Gemini 2.5 Pro の詳細な推論機能を備えた AI Studio バリデータを使用することで、Formula E が GENBETA の性能についてアップロードしたファーストパーティ データを分析し、その後、Google 検索でモデルをグラウンディングし、オンラインで利用可能な膨大な情報に接続することで、精度と信頼性をさらに向上させました。

AI Studio は、8 ステップからなる詳細なプロセスで思考を共有しました。そのステップには、必要となる重要な情報の特定、提供されたドキュメントの参照、シミュレーション検索による外部情報の収集、計算と分析の実行、そして最終的に、核心となる質問に基づいて回答をまとめることが含まれています。

最終的な出力結果は「理論的には可能」でした。つまり、このプロジェクトは非常にやりがいのあるチャレンジということです。

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Mountain Recharge プロジェクト: モナコの急カーブを走り抜けて大量の電力を生成。

その後も AI Studio で作業を進め、Maps Explorer などのカスタムアプリを構築できる新機能を使用した結果、Col de Braus が最適なルートであることが判明しました。その後、このチャレンジのためのルートのマッピングにも AI Studio を使用しました。厳格かつデータに基づくこうした検証は、技術仕様や推定を組み込む AI Studio と Gemini の能力によって促進され、その結果、このプロジェクトは単なる推測の域を超えたものとなり、Formula E が自信を持って挑戦できるものへと変貌しました。

コースの外でも AI は重要な役割を果たしました。調整と計画を支援するために、Formula E と Google Cloud のチームは NotebookLM を使用して技術規則やバッテリー仕様を整理し、関連する情報を特定しました。これにより、課題が複雑で関係者が多い状況の中でも、こうした部門横断型のチームは最新の状態に保たれ、ソースデータに基づいて意思決定を行うことができました。

スマートカー、スマート ドライバー、スマートフォン

山道を下る間は、車両の状態とエネルギー回生をリアルタイムでモニタリングすることが重要になります。このリアルタイムのテレメトリー可視化には FirebaseBigQuery が大きな役割を果たしました。複数のセンサーと Google マップからのデータを、車両に接続した高性能のスマートフォン(Google Pixel 9 がこのタスクに最適でした)から Google Cloud のデータ ウェアハウスである BigQuery にストリーミングしました。

しかし、マリティム アルプス山脈の過酷な地形によってモバイル信号が安定せず、データのストリーミングは、克服すべきもう一つの課題となりました。そのため、データが送信できない場合は、信号が再び利用可能になるまでスマートフォンのローカルのキャッシュに保存することにしました。

BigQuery のリアルタイムのデータ取り込み機能とプラットフォーム内 AI モデル作成機能は、重要な指標の迅速な分析と計算を可能にしました。Firebase を使用して、BigQuery に接続し、データと分析情報を表示するウェブベースのダッシュボードを開発し、AI Studio では、ダッシュボードのモックアップ画像を完全に機能するコードに変換することで、アプリケーション開発を大幅に効率化できました。

「Mountain Recharge というクレイジーなアイデアが実現可能かどうかを判断することから、走行中にリアルタイムで分析情報を得ることに至るまで、AI は私たちのガイドとして機能しました。野心的な『もしも』を、刻々と追跡できる現実へと変えたのです」と、Formula E のマーケティング担当 VP である Alex Aidan 氏は述べています。

山道を下り終えた後、車両には、土曜日に行われる E-Prix のレース前イベントの一環としてモナコ サーキットを周回できるだけの十分なエネルギーを蓄積できました。

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新しい形の押しがけスタート。

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ゴール後も続くメリット

Mountain Recharge キャンペーンの成功と発展は、野心的なプロジェクトを追求する他の人々にも貴重な教訓をもたらしました。この事例は、AI を必ずしもプロジェクトの中心に据える必要はないことを示しています。今回のレースカーのように、私たちが長年行ってきたことを促進し、最適化するためにも同様に強力な役割を果たすことができるのです。Mountain Recharge で得られた成果は、以下のような、幅広い業界に対応できる AI の潜在的なメリットを強調するものです。

  • 計画と探索の強化: Formula E の型破りなアイデアの探求と最適なルートの特定を Gemini が支援したように、企業は、革新的な問題解決、市場分析、戦略的計画などに大規模言語モデルを活用し、予想外の視点を見出し、「もしも」を「できる」へと変える取り組みを加速できます。

  • プロジェクト管理の効率化: 膨大な情報を一元化して整理できる NotebookLM の機能は、ロジスティクス、リソース配分、研究、コンプライアンスなど、複雑なプロジェクトの効率を AI が大幅に向上させられることを示しています。これにより、エラーのリスクが軽減され、チーム間の連携がスムーズになります。

  • データドリブンな意思決定: Mountain Recharge で示されたリアルタイムのデータ分析機能は、BigQuery のようなクラウドベースのデータ プラットフォームの力を浮き彫りにしています。これらのツールを活用してデータから即座に分析情報を得ることで、アジャイルな調整やパフォーマンスの最適化をその場で実現できます。これは、迅速な対応が不可欠な動的環境において非常に有用です。

  • 複雑なシステムの理解を深める: AI を適用して複雑なデータ ストリームを分析することで、パフォーマンスに影響を与える要因をより深く理解できます。

このような機能は、元 Formula E チーム プリンシパルで、現在は Formula E のテスト ドライバーと放送局のキャスターを務めている James Rossiter 氏を大いに感心させました。「アドバイスや考慮すべき点の精密さには本当に驚きました。私たちは常にチームとしてこのようなことを話し合っていますが、これはレースとは大きく異なるため、ドライビングの考え方を根本から見直す必要がありました。」

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Formula E Mountain Recharge キャンペーンは、単なるエキサイティングなコンテンツではありません。インテリジェントなテクノロジーによって増幅された人間の創意工夫の力を証明するものです。これはまた、Formula E と Google Cloud の最新のコラボレーションであり、AI を使用して、このスポーツと世界の可能性の限界を押し広げるという、両社の共通の取り組みでもあります。

私たちはすでに、EV レースの公平性を確保するために、AI を活用したデジタル ドライビング コーチを開発しています。Mountain Recharge では、サーキットの枠を飛び越えて、一般的なドライバーにも EV の性能を印象付けることができました。

大きな視野で考えることが何よりも重要です。それが画面に表示されるシンプルなプロンプトから始まるとしてもです。適切な質問をするだけでよいのです。まず、「これは可能か?どうすれば可能になるか?」という最も重要な質問から始めましょう。


-UKI(英国およびアイルランド)グループ プロダクト マーケティング マネージャー Olly Grundy

-UKI(英国およびアイルランド)カスタマー エンジニアリング マネージャー Olivier Van Goethem

 

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