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スタートアップ & SMB

NEAR: ユーザビリティにより Web3 の採用を拡大

2023年3月28日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 3 月 21 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。


編集者注: 今回お話を伺ったのは、NEAR ブロックチェーン プロトコル、エコシステム、NEAR 財団を立ち上げたオープンソース グループである NEAR です。NEAR はそのインフラストラクチャ サービスを Google Cloud で構築しています。


Web3 は、ID、データ、資産がユーザーにより管理、所有され、ウェブのサービスが分散するというパラダイム シフトです。この構想を実現するには、数十億のユーザーへスケールでき、分散型の安全な環境を維持し、長期にわたり独立して維持可能である、基盤となるインフラストラクチャ レイヤが必要です。   

このようなインフラストラクチャは Web3 の採用に必要な条件ですが、それだけでは十分ではありません。Web3 の採用における最大の課題の一つが、ユーザビリティです。このテクノロジーは登場してから約 10 年ほどと比較的新しく、データ、ツール、プロダクト レイヤはさらに新しいものとなります。現在数百万のユーザーが Web3 を利用していますが、数十億にのぼる Web2 のユーザーにははるかに及びません。

NEAR は、オープンソースのレイヤ 1 ブロックチェーンを、スケーラブルで動的にシャーディングされるネットワークで提供して、この課題を解決することを目的としています。これにより、開発者が使いやすいプロダクトを容易に開発できるようになります。

NEAR は Google と TensorFlow の開発者だった Illia Polosukhin 氏と、MemSQL と AI の研究者だった Alex Skidanov 氏により設立されました。二人が手掛けた AI スタートアップに貢献した世界中の協力者への支払いのための手段を必要としていましたが、イーサリアムのような既存のブロックチェーンでは実質的に不可能であることが判明しました。2018 年に方向転換してこの構想に取り組み、2020 年に NEAR のメインネットをリリースしました。

リリース以降、このチェーンは劇的に拡大し、1,000 を超えるアクティブなプロジェクトが展開され、利用ユーザー数は 2,200 万ユーザーにのぼります。NEAR の本来の目的は、Web3 の構想を技術的に可能にすること、さらにはデベロッパーとユーザーの両方が大規模に採用できる方法でこれを実現することでした。この課題を解決するため、Google Cloud のより広範な Web3 イニシアティブと提携しました。

継続的な拡大を支援

NEAR の継続的な採用を支援するため、ロードマップでは複数のアップグレードが予定されています。ロードマップは Nightshade シャーディングの登場で最高潮に達しますが、これは NEAR のアーキテクチャ ロードマップの最終フェーズとなります。シャーディングでは並列化によりネットワークがスケールされるので、需要の急増に対処でき、最終的には数十億のユーザーに対応できるようになります。チェーンのシャーディング メカニズムは 4 つのフェーズに分割されており、現在は一定数のシャードによる 2 番目のフェーズに位置しています。次のフェーズでは、状態と処理の両方がシャーディングされ、4 番目の最終フェーズでは動的再シャーディングが導入される予定です。動的再シャーディングにより、ネットワークが使用率に基づき必要に応じてシャードを自動的に分割、統合するようになります。

NEAR プロトコルの技術開発を主導するエンジニアリング チームである Pagoda は、NEAR エコシステムが使用するインフラストラクチャ サービスを活用するため、Google Cloud を選びました。インフラストラクチャ プロバイダとして直面している主要な課題として、エコシステム内のビルダーの需要増大に対応するため、このようなサービスの自動スケーラビリティを確保することがあります。Google Cloud なら、開発者が重要な取り組みに専念できます。新しいプロジェクトで常にインフラストラクチャを再構築する必要性を解消することで、開発にかかる時間を節約し、価値実現までの時間を短縮できます。根本的に、すぐに利用できるこのようなインフラストラクチャを提供することで、NEAR のユーザビリティとアクセシビリティの構想が推進されます。

さらに Google Cloud は、NEAR から助成金を得ている技術者向けの専用技術サポートを通じて、NEAR エコシステムの新しいビルダーを支援します。このパートナーシップにより、当社はエコシステムで最初のステップを踏み出す新しいプロジェクトに、品質の高いリソースとサポートを提供できます。

主要な差別化要因としてのユーザビリティ

NEAR はコアバリューの一つとしてユーザビリティを重視しており、常にユーザビリティを包括的な価値観として考えています。スケーラビリティのないブロックチェーンや安全ではないブロックチェーンに、ユーザビリティはありません。同様に、テクノロジーが使いにくく、それを使用した構築が難しい場合、そのようなテクノロジーで作成されたアプリには、大規模なブラッシュアップが必要であり、その過程でユーザービリティと機能のいずれかを犠牲にすることになります。

NEAR は、その中核となるプロトコル自体にユーザビリティとアクセシビリティを取り込むことでこの課題を解決することを目指しています。これにより、Web3 に伴う複雑さが解消され、開発者に対し抽象化されるので、開発者はユーザーのためによりシンプルで使いやすいインターフェースを構築できます。

このアプローチの例は NEAR のアカウント モデルに見られます。このアカウント モデルは、その柔軟性と、複雑な 16 進数文字列ではなく人が読める形式のアドレス(例: jane.near)を使用していることで知られています。これは、レイヤ 1 ブロックチェーンの中でも NEAR 独自の特長です。

ユーザビリティへの取り組みは NEAR の 2 年間の技術ロードマップの中心でもあり、プロトコル レベルでビルダーに対する障壁を解消することを目的としています。

今後予定されている機能の一つであるメタトランザクションでは、アカウントと分散型アプリケーションがユーザーの代理としてトランザクションを送信し、必要なネットワーク使用料を支払うことが可能になります。これによりアプリケーション操作中の混乱発生を防ぎ、既存のエンドユーザー ウェブ エクスペリエンスに非常に近いものにできます。

プロトコルに取り入れられたアクセシビリティのもう一つの例として、Secp256r1 キーのサポートの追加があります。これにより、iPhone など特定のモバイル デバイスに、オンチェーンの暗黙的なアカウントを導入できます。アカウントの作成プロセスでは、他の有名なブロックチェーンで行う多数のステップが含まれており、取引所で暗号通貨を購入する必要がある場合がよくありますが、このプロセスを実行する必要がなくなり、モバイル ユーザーのオンボーディング プロセスが簡素化されます。

ユーザビリティとアクセシビリティの強化は、NEAR が Google Cloud と緊密に提携することで得られたメリットの一つです。この提携関係に対する信頼はいたるところで見られます。これは、当社の一部のバリデータがそのノードのホームとして Google Cloud を選定していることに反映されています。


- NEAR、デベロッパーリレーションズ担当責任者 Drew Gorton 氏
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