2022 年の NRF「Big Show」で、デジタル接続とデータを活用してビジネスを変革する小売業者のニーズを検証
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 3 月 18 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
今年の小売業界を活気づける動向を先取りするために、ニューヨークで開催された 2022 年全米小売業協会(NRF)の「Big Show」を振り返ってみましょう。
1 月のイベントの参加者には、小売業の課題が今日どのように解決されているかを具体的な例で紹介しました。顧客の期待と購入パターンを解析し、店舗をオムニチャネル エクスペリエンス ハブに適合させ、データの可視性と実用性を向上させるための新しいソリューションなどはその一例です。
NRF 2022 はまた、昨年のショーのテーマ「すべてをオムニチャネルに」を論理的な次のレベル「最高のハイブリッド体験を可能にする」に引き上げました。このメッセージは、この新しいハイブリッドな世界におけるインテグレーションと相互運用性、つまりすべてをうまく連携させることの重要性を明確に伝えています。
最新のデジタル インフラストラクチャで実店舗とデジタル小売をスムーズに融合することが、最も重要です。 そのために、テクノロジー ベンダーは、非接触でリアルタイムの IoT やモバイル アプリケーションなどのデジタル トランスフォーメーション イニシアチブを、クラウド、エッジ、安全な接続の上に構築して、小売業者が今日の消費者が望む最新のシームレスなハイブリッド小売を実現できるようにする必要があることを示しました。
NRF で重点的に紹介された代表的なテーマとテクノロジーは他に、メタバースへの関与の拡大、サステナビリティ、物理的なセキュリティとデジタル セキュリティ、アジリティと適応性の必要性などがありました。
メタバースおよびハイブリッド(オムニチャネル)エクスペリエンス
今日、メタバースは私たちの生活の延長であり、一連の仮想世界として存在するテクノロジーによって強化されています。将来的には、メタバースは、デジタルライフと現実の生活が完全に融合する、相互接続された無限の世界になるでしょう。NRF ショー会場の実際のブースで約束を待つ間、自分のアバターが完全に具現化されたデジタル NRF を歩き回り、他のバーチャルな参加者に会い、デジタルのスターバックスに立ち寄って、人間のスターバックスの店員が運んできたコーヒーの代金を支払う様子を想像してみてください。双方の世界が近づくにつれて、デジタルの自分と現実の自分がメタバースでシームレスに融合します。
メタバースでは、ブランドにもデジタル プレゼンスがあります。Nike は昨年末に「Nike」、「Just Do It」、同社のスウォッシュ ロゴを含む 7 つの商標を出願し、仮想デザイナーという役職の募集を公表することで、仮想ブランドのスニーカーと衣料品を製造販売する意向を示しました。その後、すでに NFT とデジタル スニーカーを製造販売している RTFKT Studios を買収しました(10 代のアーティスト FEWOCiOUS とのコラボレーションの一つで、同社はわずか 6 分で 600 足 / NFT のスニーカーを販売し、売上金額は 310 万ドルにのぼりました)。
メタバースは、消費者と製品の需要に関するデータ収集の可能性も開きます。仮想世界でのスニーカーの発売を想像してみてください。新しいスニーカーの特定のスタイルが爆発的に売れ、現実世界での売れ筋についてのブランド インサイトを得られます。またその情報が、トレンドに合った生産につながり、値下げや廃棄処分になる在庫も減少させます。メタバースは、よりサステナブルな運用を実現するための手段にもなります。
メタバースは、デジタル世界と現実世界の間に残るわずかなギャップをさらに縮めます。ほとんどの消費者はアバターを利用していませんが、オンラインとオフラインの間を行き来しており、小売業者がこれらのハイブリッドなオムニチャネルの世界にシームレスに対応することを期待しています。これらの需要は、ラスト ワンマイルの配達と体験を中心に加速しています。たとえば、オンラインで購入した商品を店舗で受け取る(BOPIS)またはカーブサイドピックアップで受け取る、店舗で購入した商品をオンラインで返品する、店舗で商品を BOPIS 購入に追加する、サードパーティの食料品配達サービスに代替品を通知するといったことが考えられます。
ハイブリッド エクスペリエンスにより、新しい方法で消費者の満足度を高める機会が生まれますが、同時に費用と複雑さも増大します。収益性を実現しながらこの需要を満たさなければならないことが、NRF で議論された多くのテクノロジーの背後にある主要なテーマでした。こうしたテクノロジーには、適切な製品を推奨する人工知能(AI)、製品固有のリバース ロジスティクス ワークフローを定義およびガイドする返品のロジスティクス ソフトウェア、オムニチャネル ショッピングを実現する注文オーケストレーションおよび調達アプリケーション、顧客体験を最適化するラスト ワンマイル配達の可視性などが含まれますが、これらはほんの一例です。また、店内の従業員エンゲージメントを改善および最適化できるタスク管理アプリケーションや、より迅速な支払いと顧客のセルフサービス チェックアウトを可能にするタッチフリー アプリケーションも展示されていました。RFID は引き続き、在庫の正確性と、棚、店舗全体、およびサプライチェーン上の在庫の位置特定を改善します。
サステナビリティ
NRF 2022 は、サステナビリティに重点を置いています。ショーで発表された NRF / IBV の調査で、消費者がサステナブルな買い物を広く受け入れていることが浮き彫りになりました。調査によると、買い物客の 62% は、「環境への影響を減らすために購買習慣を変えたい」と考えています。約半数は、サステナブルな製品とブランドに対して割増金(平均 70% の割増金)を支払う意思があることを示しています。
小売業者は、サプライ チェーン、店舗、さらには返品を通じてサステナブルな調達を使用することにより、サステナビリティを改善し、事業全体の二酸化炭素排出量を削減するよう取り組んでいます。テクノロジー ベンダーは、クラウド / エッジ、AI、コンピュータ ビジョン、IoT / RFID によって実現されるさまざまなソリューションを発表しました。これにより、小売業者は、影響を軽減することを目的に、環境への取り組みを効果的に測定および記録できます。
数社のクラウドおよびデジタル インフラストラクチャ プロバイダは、エネルギー消費、水使用量、廃棄物を削減することを目的に資産管理を目指す、サステナビリティ クラウドなどのテクノロジーを紹介しました。例としては、IoT センサーを使用した水使用量の削減、店舗資産の再利用の最適化、小売業者が炭素排出量を正確に監視および測定できるようにするダッシュボードなどがあります。ただし、このようなサステナビリティ ソリューションは、小売業者が今日のオムニチャネルの世界で競争力を高め、差別化を図るのに役立つ次世代のデジタル インフラストラクチャで稼働した場合に、成功する可能性が最も高まります。
物理的なセキュリティとデジタル セキュリティ
2021 年の NRF 調査によると、米国の小売業者の 57% が、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが小売業を標的とした組織的犯罪の増加につながったと報告し、50% が万引きの増加を報告しました。IDC の Future Enterprise Resiliency & Spending Survey, Wave 10(2021 年 11 月)で小売業者に 2022 年に最大の戦略的利点をもたらすデジタル インフラストラクチャへの投資は何かと尋ねたところ、一番の回答は「サイバーセキュリティと復旧への投資」でした。
さまざまなテクノロジー ベンダーが、セキュリティ、詐欺、損失防止に関する小売業者の懸念を認識しています。
ネットワーク、接続、エッジの各ベンダーからは、顧客データや関連データを利用するさまざまな IoT アプリケーションからデータを確実に保護する多層セキュリティ ソリューションが紹介されました。多くは、ランサムウェア、小売業を標的とする犯罪、損失防止などのさまざまな脅威に対処するためのセキュリティ コンサルティング サービスを提供しています。
セキュリティ ベンダーと e コマース セキュリティ ベンダーは、AI ベースの分析を使用して「悪い」 / 危険な顧客を特定し、リスクを軽減することで、e コマース アプリケーションや BOPIS およびカーブサイドピックアップなどのオムニチャネル アプリケーションでの詐欺や不正を防ぐソリューションを紹介しました。
クラウド ベンダーは、小売業のクラウドが一貫性のある信頼性の高い ID 管理とデータ セキュリティを実現する仕組みについて説明しました。
POS / 支払い / 店舗テクノロジーのベンダーからは、多要素トークン化、バイオメトリクスや音声認証などの ID 技術の向上、および購入手続き時や戸口での損失防止を実現する AI 対応およびコンピュータ ビジョン ソリューションにより、あらゆるプラットフォームからの支払いを安全に処理できることが解説されました。
アジリティと適応性の必要性
ショーでは、小売業者が今日の小売業界の多くのチャネルにわたって、アジャイルでパーソナライズおよび統合されたデータドリブンのシームレスな運用を実現するために必要な、さまざまな種類のデジタル インフラストラクチャ テクノロジーが披露されました。このような点へのフォーカスは妥当と言えます。IDC の Future Enterprise Resiliency & Spending Survey, Wave 10(2021 年 11 月)によると、小売業者の半数以上が、今後 12 か月でビジネスと運用のアジリティへの投資を増やすことを計画しています。
テクノロジー ベンダーは、ビジネスと運用のアジリティを実現するための接続性への投資と、インテグレーションの容易さとスケーラビリティを改善することに加え、アプリケーションを統合プラットフォームや、オープン システム、ハイブリッド クラウド、小売業界のクラウドと簡単に交換したり適切に組み合わせられる機能を実現するためのテクノロジーへの投資を強調しました。
ベンダーはまた、データを可視化し、データの価値を最大限に高め、競争上の優位性と差別化に不可欠なデータドリブンのパーソナライズを実現しながら、データをより有効に活用するためのインフラストラクチャを披露しました。ハイライトには、リアルタイムで分析情報を生成するための高速で安全な接続、5G と Wifi-6、エッジとクラウドに対応したデータと AI プラットフォームが含まれていました。これらはすべて、今日のオムニチャネルの小売を可能にするように設計されています。
テクノロジー購入者へのアドバイス
小売業者は、2022 年以降のテクノロジーへの投資を決定する際に、NRF 2022 のこれらの主要なテーマを検討する必要があります。すでに将来の繁栄に向かって進んでいる小売業者に後れを取らないようにするために、次の行動を取る必要があります。
今日の消費者が望んでいる、シームレスで非接触のオムニチャネル アプローチを実現する。
アジリティと適応性を必要とする最新の小売環境を処理するように構築されていないレガシー インフラストラクチャを置き換えて、急速に増大するデータをこれまでになく安全かつ迅速にシームレスに接続できるようにする。
サステナビリティ、適応性、メタバース、セキュリティのどれを重視するにしろ、ビジネスニーズに全体的かつ戦略的に対処することが最も重要なことです。
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- IDC Retail Insights 担当グループ バイス プレジデント Leslie Hand