UC Davis、VALID AI、Google Cloud が連携し、生成 AI を活用して SDOH の問題に対処
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2024 年 3 月 22 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
健康の社会的決定要因(SDoH)とは、人々が生まれ、生活し、働き、遊び、祈り、年齢を重ねる条件や環境で、健康上の結果に影響を与える医学的でない要因のことです[1]。十分なサービスを受けていない患者を支援し、健康格差を縮小して、最も弱い立場にある人々の健康状態を改善するうえで、SDOH への取り組みは特に重要です。
しかし、医療記録に記載されているデータは構造化されていないことが多いため、電子医療記録(EMR)から SDOH 情報を抽出することは大きな難題であり、ほかにも SDOH に関するドキュメントのばらつき、データ品質と完全性、プライバシーと公平性についての懸念が生じています。これらの問題が、個々の患者に合わせた包括的かつ能動的なケアの提供を困難にしています。
現在の SDOH の問題に対処するため、革新的で包括的なヘルスケアのリーダーである UC Davis Health は最近、SDOH チャレンジを開始しました。このチャレンジは、ヘルスケア業界における生成 AI の利用を促進するために、Valid AI(UC Davis Health を含む医療システム、保険会社、パートナーの共同体)が主導するイニシアチブです。
Google Public Sector は、UC Davis Health およびこのチャレンジに参加しているその他の医療システムや医療保険会社とともに、生成 AI サンドボックスを共同設計して SDOH チャレンジをサポートしています。この生成 AI サンドボックスは、研究コミュニティがオープンソース フレームワークで画期的なイノベーションを加速し、複雑な疑問に迅速かつ再現性の高い、責任ある安全な方法で答えられるようにします。このチャレンジの最初のユースケースは、患者の転帰に有意義な影響を与えることを目的としており、以下のような内容が含まれます。
- 交通手段: 信頼性の高い便利な交通手段がない患者は、診察の予約に来なかったり、遅刻したりすることがよくあります。医療システムは SDOH 情報を活用することで、交通手段の選択肢(自動車、バス、地下鉄など)が限られている、あるいはまったくない患者を特定し、診察の予約時に自動的にライドシェア サービスの予約をトリガーしたり、地域の交通手段を紹介したりできます。
- 住居: 患者の住居状況(住居がない、または住居が一定でない(住所不定))は、健康状態に大きな影響を与える可能性があります。住居に関する情報を可視化することで、医療機関は社会福祉サービスと提携し、一時的な居住場所、賃貸支援、恒久的な住居などの的を絞った支援を提供できます。
- 食料と栄養: 健康の重要な社会的決定要因である食料不安は、糖尿病や心臓病などの症状の管理に重要といえる健康的な食生活を維持する患者の能力を左右します。食料不安に関するデータにより、医療機関は患者をフードバンク、食事配達プログラムなどのサービスに誘導したり、補助的栄養支援プログラム(SNAP)や女性、乳児、子供のための栄養支援プログラム(WIC)といった社会福祉サービスへの登録を支援したりできます。
- 教育と雇用: 教育と雇用は 2 つの主要な SDOH 要因であり、収入、ヘルス リテラシー、医療ケア(および保険)へのアクセスを通じて健康に大きな影響を及ぼします。医療システムは、患者に職業訓練、教育プログラム、就労支援を紹介することで、患者の社会経済的地位の向上を後押しできます。
- 言語サポート: 言語とヘルス リテラシーは、患者が医療ケアを利用できるようにするための SDOH の重要な要因です。翻訳通訳サービス、バイリンガルの医療従事者、多言語対応の資料など、医療サービス内に多言語サポート システムを導入することで、コミュニケーション ギャップを埋めることができます。これにより、言語能力(または第一言語)に関係なく、すべての患者が平等に健康に関する情報やサービスにアクセスし、医療従事者とやりとりできるようになるため、患者のエンゲージメント、理解、健康状態が最適化されます。
Google Cloud には、ヘルスケアにおけるアクセスを拡充し不公平に対処する革新的な研究をサポートしてきた、確かな実績があります。Google Cloud は、2017 年から長年にわたってカリフォルニア大学と協力関係を築いており、今回の SDOH チャレンジのサポートはその中でも最新の取り組みとなります。Google Public Sector は、Google Cloud Research プログラムを通じて、このイニシアチブに Google Cloud クレジットを提供しています。このプログラムは、さらに、研究者が生成 AI サンドボックスから可能な限り多くの価値を引き出すことができるよう、生成 AI や他のクラウドツールに関するトレーニングを提供しています。また、Google の専門家と UC Davis Health の専門家をつなぐ役割も担っています。
今回の連携の目的は、SDOH チャレンジの参加者を支援し、UC Davis Health で今後の医療のために貢献できるようにすることです。また、VALID AI の共同体および提携しているあらゆる規模の医療機関は、こうしたイノベーションを研究所から国内外の本番環境にデプロイする時間を短縮することができます。UC Davis Health の CIO 兼最高デジタルヘルス責任者であり、VALID AI の創設会長である Ashish Atreja 博士は、次のように述べています。「私たちは、オープン イノベーションの体制で産業界と学術界が連携し、社会的バイタルサイン(SVS)をすべての医療現場で実現するためのまたとない機会を得ることができました。Google Cloud が参加し、この公共の利益を共に作り上げるあらゆる規模の医療機関をサポートしてくれることを嬉しく思います。」Google Cloud は、UC Davis Health および VALID AI と連携し、より公平で包括的なヘルスケアを提供できることを誇りに思っています。また、生成 AI の力を活用して医療研究のモダナイズされたエクスペリエンスを提供することを楽しみにしています。
Google Cloud の研究者向け生成 AI およびデータ ソリューションについて、詳細をご覧ください。
-Google Public Sector、バイス プレジデント Brent Mitchell