福祉サービスと就労支援において Google Cloud でできることを再認識する
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 9 月 8 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックでは、米国の公的給付制度が想像を絶する形で試されました。前例のない 6,000 万人もの人々が基本的なニーズを満たすために失業者支援サービスや社会福祉サービスに頼り、州や地方自治体の行政機関はその需要に応えるために逼迫した状態となっていました。
しかし、州や地方自治体の行政機関のリーダーたちは、住民に不可欠なサービスを提供するという課題に対処するために立ち上がりました。彼らは、従来の常識にまったくとらわれないプロセスを備えた革新的なソリューションを創出、運用し、危機的状況にある家族が差し迫って必要としていた雇用、給付金、食料、医療支援を提供しました。これらの公共部門のヒーローたちは、この重要な時期にサービス水準を上げ、地域コミュニティの経済回復を促進し、人々のために不可能を可能にしたのです。
州や地方自治体の行政機関は、Google Cloud と連携することでコミュニティにおける福祉サービスや就労支援サービスの提供方法を再設計できます。しかも月単位や年単位の時間をかけず、わずか数週間のうちにすべてを完了できます。
リモートワークやサービス提供のハードルを克服するツール
労働者が新しい仕事を確保したりリモートで作業したりできるようにする、利用しやすい最新のツールがこれほど必要とされたことはかつてありません。Google Cloud 上に構築された仮想キャリア センター(VCC)は、このようなニーズを考慮して設計されました。
Google Meet を含む Google Workspace では、求職者がキャリアコーチ、求人企業、就職先となり得る雇用者とのビデオ会議をスケジュール設定できます。Google Job Search API を使用することにより、自分のスキルや興味に合ったキャリアの機会を探ることができるようになります。
ロード アイランド州仮想キャリア センターは、遠く離れた場所から、キャリアコーチとの仮想会議、求人企業との面談の予約、効果的な履歴書作成のサポートを提供することで、求職者への支援を行いました。CareerCompass RI Bot(キャリア開発用インテリジェント エージェント)「Skipper」は、データと機械学習を活用して、ロード アイランド州の住民向けに、新しいキャリアパスの選択を支援するサービスや再教育の機会を知らせるサービスを提供しています。
Google Workspace は、リモートワークを可能にするだけでなく、医療サービスや福祉サービスのプログラムに携わる人々にとって重要なニーズである、リモートでのサービス提供をサポートできます。適格性の判定、評価、サービスの提供など、これらのプログラムの多くにとって、個人や家族との関わりは不可欠な要素です。仮想面接、カウンセリング セッション、遠隔医療などを通じて利用者と直接対話できるため、双方で利用しやすくなります。さらに、Google Workspace for Education のコンポーネントである Google Classroom を使用すると、里親や養親は認可に必要な仮想トレーニングを受けることができます。
救済資金の給付や雇用支援を迅速に行うためのツール
失業扶助の申請者数の急増に伴い、審査が必要な申請のバックログも急増しました。また、パンデミックでは不正請求の増加も見られました。これにより正当な支払いを待つ家族への給付が遅れ、行政機関は不必要な支出を強いられました。この問題の規模が手持ちのリソースでは対応できないほど大きいことに気づいた行政機関は、機械学習に焦点を移しました。
膨大な請求のバックログに対応するために、SpringML は Google Cloud と提携して不正支払い分析ソリューションを開発しました。行政機関は、この AI を活用したソリューションの助けを借りて不正請求を特定し、不適切な支払いを回避しました。これにより、支援を必要としている人に優先的に支援を提供することができました。通常、このようなツールの開発には数か月を要しますが、チームはわずか数週間でツールをリリースし、すべての関係者に利益をもたらしました。正当な支払いを待つ家族は迅速に小切手を受け取れるようになり、州や地方自治体の行政機関は数百万ドルの支出を節約できました。
たとえば、不正な申請者への合計 3 億 3,000 万ドルの誤払いに対処するため、オハイオ州は Google Cloud と提携しました。そして、人工知能や機械学習ソリューションを活用して、不適切な支払いとなりそうな申請を事前に特定し、誤払いリスクを低下させました。その結果、州は不正な請求への支払いを回避し、経済的困難に直面している家族への正当な救済資金の支払いを加速させられました。
ニューヨーク州労働局は、住民が失業保険の申請の負担を増やすことなく、パンデミックによる失業に対する支援を申請できるよう、合理的な失業申請を開始しました。この試みはすぐに成功しました。差し迫って必要な資金援助が住民に提供されたため、申請書のバックログは激減しました。イリノイ州 は異なるアプローチを取りました。コンタクト センター人工知能(CCAI)を導入して仮想エージェントを作成することで、24 時間年中無休で多言語の専門的な内容の問い合わせに対応し、リアルタイムで順を追って案内を行いました。会話内容は、問い合わせの主な原因や顧客感情などを明らかにする分析ツールとレポート作成ツールを使用して分析情報に変換されます。問い合わせ量の急増を解決することで、CCAI は 100 万件以上の失業保険申請の処理に貢献しました。
自動化されたデータ ソリューションで食料や給付金の支援リソースを即座に提供
パンデミック時には、何百万人もの人々が職を失ったり、休校になったりしたため、食料や給付金の援助が必要となりました。これらの給付金を申請するにはどれもかなりの量の書類が必要で、そうした書類はこれまではほとんどの場合手作業で処理されていました。サポートを必要としている人の数を考えると、これには膨大な人的資源と時間が必要でした。
行政機関は、Document AI(DocAI)を使用すれば、この非常に手作業の多いプロセスを自動化し、個人や家族に重要な給付金を迅速に提供できます。DocAI は重要なデータを抽出し、スタッフが確認できるように単一レビューペインに信頼スコアを表示し、そのデータをケース管理システムに自動的にアップロードすることで、手作業を大幅に削減します。こうした州や地方自治体の行政機関は、DocAI を利用することで困難な書類申請プロセスをなくし、現在および今後の住民の給付金ニーズを満たすことができます。こうした活用方法の実例として、ウィスコンシン州労働開発局(DWD)とハワイ州が挙げられます。
ウィスコンシン州の DWD は、DocAI を使用して紙による失業保険請求の効率化を図りました。DWD のスタッフは、提出された申請書から抽出された重要なデータを受け取り、迅速に判断できるため、申請者とスタッフ双方の時間を節約しています。また、ハワイ州も DocAI を使用して、到着した旅行者の COVID-19 検査結果データを抽出、解釈し、即座に Google Cloud に転送しました。その結果、ハワイはパンデミックの最中でも旅行者を受け入れ、経済活動を再開することができました。
Google と連携する
この非常に困難な時期を乗り越え、パンデミックを切り抜けたとき、各行政機関には、就労支援サービスと医療福祉サービスを住民に提供するための、より強固な体制が備わっていました。州や地方自治体の行政機関は、仮想エンゲージメントの必要性を認識し、サービスへのアクセスを拡大することでこの危機的な局面に対応し、仕事、給付金、食料、医療のニーズを解決しました。
福祉サービスと就労支援における Google Cloud の詳細については、お客様イノベーションに関する動画をご覧いただくか、Google Cloud 営業担当者にお問い合わせください。力を合わせて問題を解決しましょう。
-米国州政府、地方自治体およびカナダ公共部門マネージング ディレクター Brent Mitchell
-Google Cloud グローバル公共部門戦略ビジネス エグゼクティブ Denise Winkler