Google Cloud の感情分析とは: COVID-19 ワクチン接種戦略を成功させるための土台
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2020 年 12 月 18 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
新年を迎えるにあたり、世界中がこの世界規模のパンデミックの終息を待ち望んでいます。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)ワクチンの開発競争をめぐり、かつてないほど迅速に科学力が動員されました。そして開発中のワクチンが複数存在する現在、私たちは空前の規模とスピードで予防接種事業を展開するという次のハードルに直面しています。
課題は以下の 3 つです。1 つ目は、十分な量のワクチンを生産する能力です。2 つ目は、2 回セットでの予防接種、複雑な低温物流、歯止めの利かないウイルスの感染拡大を阻止するために(米国だけでも)何億人も短期間でワクチンを接種する必要があることなど、配布にあたっての高いハードルです。そして 3 つ目は、個人にワクチン接種の同意を取り付けることで、これが最大のハードルになるかもしれません。
感情分析: ワクチン配布のための重要な指針
医療に関する意思決定は個人的なものです。特定の地域または人口構成のコミュニティ内の市民の感情を評価する能力は、ワクチン配布事業を実施するうえで非常に重要になります。たとえば、配布戦略の準備において、医療機関や地方自治体の保健機関は、特定の地域または人口構成のコミュニティ内を含め、ワクチン接種を受けることに関する一般的な感情を把握する必要があります。次に、プログラムの展開を追って感情分析を行うことで、予防接種事業の成功だけでなく、信念や行動の変化を追跡するのにも役立ちます。
従来、州レベルの保健衛生担当部門では、組織的活動を開始する前に世論調査やアンケートによって特定のプログラムごとに感情分析を実施し、その後、数回だけその情報を再検討します。しかし、未曽有の規模で実施される今回のワクチン配布プログラムと、デジタル フィードバック ツールの普及は、以前よりはるかに迅速かつ深く市民の懸念を理解できるというメリットを医療機関や地方自治体の保健機関にもたらす可能性があります。その理由として、今日の市民が、コールセンター、ウェブサイトとアプリ、chatbot、広告キャンペーン、ソーシャル メディア、検索、ニュース フィードなど、さまざまなコミュニケーション プラットフォームを通じて行政機関と関わっていることが挙げられます。そうしたチャネルは現在も増え続けています。
Google Cloud の感情分析は、マーケティング データ ウェアハウスのコンセプトに基づいて構築されており、コミュニケーション担当チームからデータ アナリスト、公共政策担当者まで、ブラウザを使用する誰もがデータを読み取って意思決定できるようにします。行政機関は、この「単一の信頼できる情報源」から特定のオーディエンスに向けてマーケティング活動を指揮し、懸念が生じた場合には対応して、関連性の高い正確な情報を提供できます。Bigtable や BigQuery 転送サービスなどのツールは、多くの一般的なメディア プラットフォームやストレージ オプションで動作します。また、Google Cloud Natural Language API を使用することで、行政機関は有力な意見(肯定的、中立的、否定的)の特定、感情の強度の評価、認識の変化に応じた最新情報の入手が可能になります。これにより、こうした変化を時系列で追跡し、議論されているトピックに関連する変化を確認できます。
スピード、セキュリティ、規模
スピードは、ワクチンの配布戦略を立てて実施するうえで不可欠です。州の機関には、コストと時間のかかる総入れ替え戦略を行うための時間、帯域幅、リソースがありません。Google Cloud の感情分析は、行政機関が実施する事業のあらゆる段階に対応し、既存のウェブサイト分析を強化して、行動につながるインサイトを主要な意思決定者の手に直接提供します。ポリシーを実装するためにデータを必要としている人の身近にデータを移し、データ サイエンティストを際限のないレポート作成から解放して、価値の高いイニシアチブに集中できるようにします。
Google Cloud の感情分析は、行政機関がサービスを提供しようとする市民との関係を持っており、行政がデータを所有し管理する必要があるという理解に基づいて設計されています。Google Cloud のソリューションは、機関のプライベート GCP アカウントにデプロイされているため、機関がデータを所有し、その使用方法を決定します。また、ネイティブ GCP サービス上に構築されているため、企業の要件を満たすようにソリューションをスケールできます。
感情分析の実例
Google Cloud の感情分析ソリューションは、COVID-19 のパンデミックが続く中、州や地方の保健機関をサポートするプロジェクトの強力な基盤上に構築されています。この世界的なパンデミックの渦中で、Google は皆様が安全で信頼できる情報を入手し、つながりを保てるようにするとともに、次のようなテクノロジーとツールを通して公衆衛生の取り組みを支援しています。
COVID-19 Open Data Repository は、Data Commons を補完するもので、COVID-19 疫学データおよび 50 か国以上の経済指標と人口統計情報などの関連変数の包括的なオープンソースのリソースを提供します。
コミュニティ モビリティ レポートは、COVID-19 の公衆衛生管理をサポートします。
新しい仮想診療機能は、地域的にも全国的にも市民が仮想医療を利用しやすくします。
全米精神疾患患者家族会(NAMI)と連携して不安度評価ツールを開発し、運用を開始しました。
COVID-19 Search Trends Symptoms Dataset は、400 を超える症状、兆候、健康状態の検索トレンドのデータセットを提供し、研究者が症状関連の検索と COVID-19 の感染拡大との関係を研究できるようにします。
Rapid Response Virtual Agent は、医療機関が患者とつながり、COVID-19 固有の情報を迅速に共有できるように支援します。
感情分析は、COVID-19 の感染拡大に対抗するためのツールの一つにすぎませんが、州政府や地方自治体の大規模なワクチン配布の取り組みを支援するうえで特に重要なツールの一つであることが証明されるかもしれません。
-Google Cloud グローバル公共部門デジタル戦略担当ディレクター Todd Schroeder