地理データを救出活動に活用: デュッセルドルフ消防局での Google Cloud の活用法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 12 月 20 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
足をくじいた場合でも、建物が燃えている場合でも、誰かが助けを必要としているときは消防隊や救急隊が救助にかけつけます。消防、救助、初期対応を担当することには大きな責任が伴い、その責任はますます大きくなっています。都市部は変化しており、気候変動によって新たな課題が発生しています。これらの課題には革新的なソリューションが必要です。このブログでは、デュッセルドルフ消防局担当ディレクターの David von der Lieth 氏が、市の消防隊が Google Cloud を活用して即時に利用可能な配置分析を行い、市と住民により良いサービスをどのように提供しているかについて説明しています。
緊急通報があった場合、一秒一秒が重要になります。そのため、デュッセルドルフのような成長している都市では特に、消防署を配置する場所が非常に重要です。交通渋滞、工事現場、その他の予期せぬ事態に遭遇した場合でも、消防はあらゆる場所に 6 分以内に到着しなければなりません。
緊急事態の数も、住民の人数も増加していることで、この基準に沿うことはさらに難しくなっています。新規および既存の消防署、救助施設の分布を最適化するために、以前はコンサルティング会社による調査と配置分析に頼っていました。この方法は費用だけでなく、時間もかかるものでした。1 回の調査に 3 か月から 4 か月かかることもよくありました。現在は、Google Cloud ベースの分析ツールにより、同じ結果を数分で入手しています。
地理データで配置の最適化と計画を迅速に行う
デュッセルドルフ消防局では、2020 年から Google Cloud と Google マップ ソリューションを使用しています。その当時、パートナーの Ubilabs はワクチン接種のルート計画用のツールを開発していました。そのツールにより、地理空間データを活用して、健康上の理由でクリニックやワクチン接種センターに行くことができない人をより適切に支援することができました。そのソリューションを展開したときに、火災現場や救助現場の分布に対して同様の計画ツールが使えることにすぐに気付きました。
新しいソフトウェア ソリューションを自治体の IT システムに組み込むのは複雑な場合があるため、簡単に統合できるクラウドベースの Software as a Service のツールが必要でした。「簡単」がここでのキーワードです。直感的で、エンドユーザーへのトレーニングを必要としない、視覚的にも魅力のあるツールが求められていました。スクリーンショットや画面共有で誰もがその背景と意味をすぐに理解できるようなシンプルなツールにしたいと私達は考えていました。
数か月ではなく数分で分析を提供
これらの仕様と、デュッセルドルフ消防局側からの継続的なフィードバックにより、Ubilabs はたった 10 週間で計画用のツールを開発しました。完成したソリューションでは、数か月ではなく数分で情報が提供されます。財務的な観点からも、ソフトウェア全体の開発費用はサードパーティ レポート 1 本と同じ程度であるため、すでに回収できています。
このツールの使い方は簡単です。デュッセルドルフ消防局では、地図上の既存および建設予定の消防署、救助施設に対して位置マーカーを置いています。日によっては特定の駐車場などで救急車を待機させる場合もあるので、一時的な場所を追加することもできます。これらの場所はすべて一覧表示されます。
その後、この地理データを使用して、指定された制限時間内でいくつの場所に到着できるかを確認します。制限時間内に到着できない地域は、地図上に赤色でマークされます。この設定により、さまざまなシナリオを想定して、改善する必要があるところを迅速に見つけることができます。
新しい用地をより柔軟に見つける
新しい救助施設の建設に理想的な場所の特定にはすでに分析ツールを使用しています。用地を探す作業は通常とても複雑で長いプロセスであり、後の段階になって規制やその他の理由で理想の場所が実は使用できなかったことが判明するのは珍しいことではありません。その場合、代替の候補をすぐに考えて、慎重にそれぞれを検討する必要があります。
これまでは、新しい候補ごとに新しいサードパーティ レポートが必要であったため、計画が数か月遅れることがありました。現在では、分析ツールを使って新しいシナリオを迅速に想定し、数分で答えを出すことができます。このツールは、建設プロジェクトにかかる時間を短縮できる貴重な資産です。
データに基づいた救助隊員への支援
この Google Cloud ベースのツールはその他の戦略上および運用上の決定もサポートします。デュッセルドルフ消防局では、市で発生する特定の事象に対する救助リソースの動的割付にこのツールを使い始めました。また、特定の場所における権限と責任を調整して、各救助施設のキャパシティのバランスを改善するのにも役立っています。
救助隊員への負担を軽減するために、6 分という基準を満たせば、特定の通報に対して別の地域から救急車を派遣できます。救助隊員は 1 回のシフトで 10 件から 20 件の通報を受けることが多く、毎回全力を尽くす必要があるため、あらゆる負担軽減が歓迎されます。
コミュニティのためのイノベーション
もちろん、ベテランの消防、救急隊員は日常業務や責任の小さな変化にもすぐに気がつきます。そのため、それぞれの方策とその根拠を明確に説明することが重要です。世界で最も優れたクラウド ソリューションであっても、消防、救助現場での活動で得られた数十年にわたる経験に置き換わることはできませんが、新たな戦略をテストして、新たな視点を切り開くことは可能です。人間のノウハウと最新のテクノロジーは両立するのです。
この分析ツールは、デュッセルドルフ市での戦略上および運用上の決定にとって不可欠なものになっています。しかし、この取り組みはまだ始まったばかりです。Ubilabs や Google Cloud と協力して、ツールをさらに改善、拡張する方法をすでに幅広く考えています。たとえば、気象、交通、大気、河川水位のデータなどのように消防局にとって非常に重要なデータで自由に利用可能な地理参照データは数多くあります。将来的には地図上にこうしたデータをすべて集計した形で、または個別の表示レイヤで表示できるようになるかもしれません。それが実現すれば、より優れた運用上の決定を行い、適切な場所に的確なタイミングで最適な救急サービスをより迅速に提供できるようになります。
私達には多くのアイデアがありますが、Google Cloud や Ubilabs との協力は、そうしたアイデアを試すプレイグラウンドとしては完璧です。開発はシンプルでしたが、結果は素晴らしいものでした。デュッセルドルフ消防隊と消防隊がサービスを提供するコミュニティにとって、それは真の資産です。