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ハイブリッド クラウド

スマートシティ チューリッヒ: 都市のデジタル トランスフォーメーションを推進している Anthos の舞台裏

2023年7月12日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 7 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

自治体の IT 部門は都市のデジタル トランスフォーメーションをどのようにサポートできるでしょうか。チューリッヒの情報技術センター OIZ の主任 IT アーキテクトである Reto Hirt 氏にたずねます。今回のゲストブログ投稿では、チューリッヒ市のデジタル化の加速をサポートしている Hirt 氏の部門の舞台裏をご紹介します。公共部門における IT 特有の課題、チューリッヒの IT 部門が Anthos を使用してクラウド テクノロジーのメリットをどのように市のオンプレミス アプリケーションにもたらしているか、それによってハイブリッド クラウド アプローチがどのように実現されているかについて Hirt 氏にお話しいただきました。

チューリッヒは、湖畔の景観、高山の静けさ、生活の質の高さで知られています。また、ヨーロッパにおける金融の中心地の一つであり、世界で最もスマート化の進んでいる都市のリストに常に挙げられています。最も重要なことは、機能する病院、公共交通機関、その他日常生活に必要な多くの施設や設備を必要とする 44 万人以上の住民がチューリッヒで暮らしていることです。約 3 万人の職員と 600 人の IT スペシャリストが、市のサービスを稼働し続けるために 24 時間体制で精力的に働いており、チューリッヒのデジタル化および情報技術センターである OIZ にすべての部門が接続されています。

OIZ は 2,100 を超えるアプリケーションを担当しているため、そのサービスはなんらかの形ですべての住民の生活に影響を与えています。たとえば、「Mein Konto」ウェブ プラットフォームを使用すると、チューリッヒ市民は 1 回のログインでさまざまなオンライン サービスに一元的にアクセスできます。こうしたサービスは、税金の支払い、市営アパートの賃貸、保育所の検索など、多くのことに役立ちます。私たちはこれらのサービスのユーザー エクスペリエンスをモダナイズする方法を常に模索していますが、すべてのアプリケーションを手動でスケールするためのリソースがありません。通常の企業であれば、すべてをクラウドに移行するだけで済むかもしれませんが、公共サービスとしてのデータ保護には、より慎重なアプローチが求められます。そうした経緯から、私たちは Anthos に注目しました。

ハイブリッドおよびマルチクラウドの将来に向けた市の基盤づくり

なぜ Anthos を選んだのかというと、ワークロードを実際にクラウドに移行することなく、最適な場所でワークロードをホストし、クラウドのメリットをオンプレミスのアプリケーションに適用できるという柔軟性を手にできるからです。また、特定のベンダーに対する依存度も軽減できます。Anthos があれば、コンテナ化されたアプリケーションを書き直すことなく、クラウド間の自由な移動を簡素化することができます。これは、マルチクラウド戦略に沿った中期計画にとってきわめて重要な点です。

スイスの大手 IT プロバイダでありクラウド スペシャリストである ti&m AG のサポートを受けながら、私たちは Anthos を活用して、自治体のオンプレミス データセンターで必要に応じてアプリケーションを実行およびスケールできる新しいコンテナ管理プラットフォーム(CMP)を構築しました。CMP は、純粋にオンプレミスで実行されるデリバリー プラットフォームと、必要に応じて将来的にクラウドに拡張できるランタイム プラットフォームの 2 つの部分で構成されています。Anthos を活用したこれらの CMP ソリューションを組み合わせることで、チューリッヒのアプリケーション環境の管理とセルフサービス方式での新しいアプリケーションのインテグレーションがはるかに容易になります。これは、組織内のチームにとっても、外部ソフトウェア プロバイダとのコラボレーションにとっても、真の変革をもたらすものです。

イノベーションに向けて都市をオープンに

外部ベンダーについていえば、私たちの新しいデリバリー プラットフォームは、「セキュリティを犠牲にすることなく、ソフトウェア サプライヤーにチューリッヒ市向けのアプリケーションを構築してもらうにはどうすればよいか?」という根本的な問題を解決します。私たちは以前、特定のテクノロジーによる制限を受けていました。ベンダーがその範囲外のソフトウェア ソリューションを提示してきた場合、私たちは拒否するか、動作させられるようにカスタム ソリューションを使用しなければなりませんでした。

Anthos を使用すれば、作業がはるかに容易になります。外部のソフトウェア ベンダーは、独自のレジストリを使用した独自の環境でアプリケーションを構築し、基盤となるインフラストラクチャ向けに書き直すことなく、自治体の CMP ソリューションに転送するだけで済みます。最初に稼働したアプリケーションの一つは、外部のソフトウェア サプライヤーによって構築されたチューリッヒの賃貸向けテナント ポータルです。ベンダーはコンテナ内でアプリを構築し、それを自治体の環境に移動するだけでよいため、テクノロジーの違いはまったく問題になりませんでした。

これは私たちとベンダーの双方にメリットがあります。私たちはまったく新しいアプリケーションとソリューションを簡単に統合でき、それがチューリッヒとその住民に利益をもたらしています。また、ベンダーはそのシンプルさに感銘を受けています。

職員にセルフサービスと API 管理を提供する

もちろん、チューリッヒ市の職員も同じセルフサービスの機会を活用できます。Anthos を使用すれば、職員はアプリ開発ツールと配信ツールにアクセスできるようになり、継続的インテグレーションおよび継続的デリバリー(CICD)環境で新規のコードをユーザーに迅速に push することがはるかに容易になります。このプラットフォームは非常に使いやすいため、さまざまなレベルの経験をもつプログラマーが新しいアプリケーションを簡単に開発し、市全体に提供することができます。私たちの職員の中には、修士論文の一環として紙ベースの財務修正プロセスをデジタル化することに決め、いくらかのトレーニング後、すぐにアプリケーションを開発できた者がいます。

私たちのアプリケーション環境は着実に拡張を続けており、API は私たちのサービスを結び付ける接着剤として機能しています。私たちは 20 年以上 API を使用してきましたが、API にアクセスする標準化された方法がありませんでした。特定のサービスについて職員が疑問をもった場合、API のオーナーに電話して自分で解決する必要がありました。新しい API 管理ツールである Apigee は、一貫したフレームワークの作成に役立ち、職員はどの API をどのように使用できるかをすぐに確認することができます。

チューリッヒのモダナイゼーション - 一度に 1 つのサービス

私たちの新しい CMP は順調なスタートを切っています。これまでに 50 以上のアプリケーションを統合しており、今後はさらに数百ものアプリケーションを統合予定です。新しいアプリケーションをより迅速に構築、導入し、既存のアプリケーションをより適切にスケールできます。これは OIZ と市の IT チームにとっての素晴らしい成果ですが、最も重要なのは、市のサービスを日常的に利用しているチューリッヒの住民が生活しやすくなっていることです。スケーリングの改善によりサービスの停止が減り、多数のオンライン サービスが継続的に改良され、IT 部門が住民のニーズやフィードバックによりよく対応できるようになったことで、現在および将来の世代に向けてチューリッヒを変革する準備が整いました。

将来的には、さらに多くのワークフローをクラウドに移行する可能性がありますが、Anthos のおかげで急ぐ必要はなくなりました。Anthos は私たちにとって決して暫定的なソリューションではなく、アクセラレータともいえるものでした。安全なワークロードをすぐにクラウドに配置する必要はなく、クラウド テクノロジーの力を活用してアプリケーションをモダナイズできるからです。


- OIZ Zurich、主任 IT アーキテクト Reto Hirt 氏
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