コンテンツに移動
HPC

NetApp と Google Cloud によってクラウドの EDA ワークフローを加速

2022年3月10日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 3 月 1 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

半導体業界は長い間、決められたリリース時間枠でより多くのことを実現しようと努めてきました。しかし、7、5、3 ナノメートル(nm)プロセスノードへの移行といった新たな要因により、必要とされるコンピューティングとデータの規模はさらに増大しています。大手の半導体設計チームは、需要を満たすためにさらに大規模なデータセンターを開設、維持するのではなく、Google Cloud を利用することを選んでいます。そうした組織は、Google Cloud が提供する弾力性により、設計サイクル全体でニーズに合わせてコンピューティング リソースをスケーリングできるため、効率性が向上することに気付いています。

EDA ワークフローをクラウドに移行するための最も一般的な方法は、まず「リフト&シフト」して、オンプレミスのストレージ システムと同等の機能を維持しつつ、その後でワークフローをモダナイズする計画を立てることです。また、追加の作業を実行する必要がある場合は、企業はクラウドに「バースト」することで、クラウド コンピューティング リソースをスピンアップおよびスピンダウンできます。これにより、半導体企業のお客様は、直接変更を加えることなくすぐにアプリケーションを移行したり、移行時にオンプレミスのリソースを利用したりできます。NetApp は Google Cloud と提携することで、半導体企業のお客様が将来的にリフト&シフト、クラウドへのバースト、モダナイズ、データの分析情報の抽出を簡単に行えるようにするための、独自のストレージ プラットフォームを提供しています。まず、お客様は、エンタープライズ クラスのクラウド ストレージ ソリューションを使用して、簡単にデータを移行できます。これらのソリューションは、オンプレミスの NetApp システムとの緊密な統合が可能で、Google Cloud 向けに最適化および検証されています。その後、NetApp のアプリケーション ドリブンなストレージとインテリジェントなデータサービスを使用して、データ管理をモダナイズできます。これらすべてが、クラウドでデプロイおよび管理されます。

Google Cloud 向け NetApp Cloud Volumes

Google Cloud では、大きく分けて 2 つの NetApp Cloud Volumes が提供されています。フルマネージド ストレージ サービスの NetApp Cloud Volumes Service(CVS)と、セルフ マネージド ストレージ サービスの NetApp Cloud Volumes ONTAP(CVO)です。CVS と異なり、CVO ではオンプレミスの NetApp デプロイを活用するとともに、SnapMirror や FlexCache を利用して、オンプレミスから Google Cloud の CVO にデータをシームレスに移行できます。Google Cloud 向け CVO を使用することで、費用を抑えて Google Cloud からより多くのパフォーマンスを引き出しつつ、データ保護、セキュリティ、コンプライアンスを高めることができます。また、すでに NetApp をご利用のお客様は、使い慣れた機能をすべてそのまま使用できるため、これまでオンプレミスで行ってきたトレーニングや自動化への投資も無駄になりません。

CVO を使用する主なメリットは、次のとおりです。

  • 短時間でのデプロイと簡単な構成

    • NetApp Cloud Manager または Terraform スクリプトを使用することで、CVO ソリューション全体を数分でデプロイ、削除できます。

  • 柔軟な構成

    • NetApp CVO のデプロイは、29 の Google Cloud リージョンのすべてでサポートされています。

    • 設計サイクルの全体にわたって、お客様の固有のニーズに合わせてコンピューティングストレージのリソースを柔軟に選択してデプロイできます。

    • シングルノードの CVO デプロイ オプションに加えて、CVO HA 構成を使用して高可用性のストレージをデプロイできます。これは、単一ゾーン内または複数のゾーン間で行うことができます。CVO HA 構成では、中断を伴わないオペレーションとフォールト トレラントを実現できるだけでなく、データが 2 つの CVO コンピューティング ノード間で同期的にミラーリングされます。

  • Monitoring と Logging

    • NetApp のツールに加えて、Google Cloud の Monitoring と Logging を統合することで、パフォーマンスのボトルネックと構成の問題を即座に診断、解決できます。

  • 高度なデータ キャッシュ技術と同期技術

    • NetApp のデータ管理アプリケーションを使用すると、オンプレミス システムと Google Cloud の間でデータをミラーリングしたり、データをいずれかの場所にキャッシュしたり、データをクラウドに移行したりできます。

  • 高速な移行

    • NetApp CVO ソリューションでは、オンプレミスのストレージ システムおよびソリューション設計と同等の機能が維持されているため、ワークフローに変更を加えることなく、より迅速にアプリケーションを移行できます。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/1_NetApp_CVO.max-1300x1300.jpg
Google Cloud 向け NetApp CVO のアーキテクチャの概要 - CVO シングルノード(左側)と CVO-HA(右側)

クラウドへのワークロードのバースト

オンプレミス コンピューティングは、現在でも EDA のお客様の大部分にとって標準であり続けています。しかし、既存のオンプレミス インフラストラクチャでは、日に日に増大し、柔軟性が求められる設計要件の需要を満たすことが難しくなっています。企業は、Google Cloud が提供する弾力性により、設計者が決められたリリース時間枠内でより多くのことを実現可能になることに加え、ますます増大するデータ容量に対応できることに気付き始めています。クラウドを使用することで、設計チームは製品化までの時間を大幅に短縮できます。同時に、一定量の、老朽化の可能性があるオンプレミスのストレージおよびコンピューティング インフラストラクチャで、EDA ワークロードの需要を満たせるかどうかという不確実性を排除できます。

ハイブリッド クラウドを構築する場合であれ、完全に Google Cloud に移行する場合であれ、データの規模とグラビティには特別な処理が求められます。NetApp の高度なデータ キャッシュ機能である FlexCache と同期技術により、既存のワークフローを維持しながら、オンプレミス システムと Google Cloud の間でデータをミラーリングしたり、データをいずれかの場所にキャッシュしたり、データをクラウドに移行したりできます。

NetApp FlexCache を使用すると、オンプレミスのデータをシームレスに Google Cloud に接続できます。NetApp CVO は、クラウドの EDA ワークロード向けの高パフォーマンスでスケーラブルなストレージとして、またオンプレミスのツールおよびライブラリのキャッシュとして機能するように構成することが可能です。クラウドの EDA ワークロードでは、これらのツールとライブラリはローカルにあるものとして認識されます。また、すべてのツールとライブラリをクラウドにミラーリングする必要がないだけでなく、クラウドでバージョニングされたツールとライブラリの個別のコレクションを積極的に管理する必要もありません。デベロッパーは、必要なときに必要な場所で必要なデータのみを取得できます。さらに、FlexCache をオンプレミスにプロビジョニングすることで、クラウドで実行されたジョブの結果が、オンプレミスで実行されているデバッグツールではローカルなものとして認識されるようにすることも可能です。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/2_Bursting_EDA_Workloads.max-1500x1500.jpg
NetApp CVO FlexCache を使用した Google Cloud への EDA ワークロードのバースト

合成 EDA ワークロードのパフォーマンスの測定

EDA ワークロードは、ストレージ システムに対して一連の固有の課題をもたらします。これは、ストレージ システムで使用されているソフトウェア ツールやワークフローの設計ステージによって、I/O プロファイルが異なる場合があるためです。

EDA ワークロードの一般化とシミュレートを試みるにあたって、Google では次のことを仮定しています。

  • 論理設計フェーズでは、多数のジョブが並列実行されている場合、I/O パターンはほぼランダムになり、大量のメタデータを使用し、多数の小さなファイルにアクセスする傾向がある。

  • 物理設計フェーズでは、I/O パターンはよりシーケンシャルになり、同時に実行される読み取り / 書き込みジョブが少なくなり、より大きなファイルにアクセスする。



Google は、合成 EDA ワークロードのベンチマーク スイートを使用して、GCP 向け NetApp CVO のパフォーマンスを評価しました。このベンチマークは、実際のアプリケーションの動作と、データ処理のファイル システム環境をシミュレートするために開発されたものです。各ワークロードがこのベンチマークを上回るには、一連の合否基準をクリアする必要があります。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/3_Synthetic_EDA.max-1900x1900.jpg
合成 EDA ワークロードのベンチマーク スイート - NetApp CVO および CVO-HA のパフォーマンスの特徴

優れたパフォーマンスを実現するには、CVO を高速書き込みモードで実行する必要があります。このモードでは、データはディスクに書き込まれる前にメモリにバッファリングされます。CVO 高可用性を利用したい場合は、アクティブ / アクティブ構成にすることをおすすめします。両方の構成で、CVO は ONTAP の豊富な機能セットと、Google Cloud の規模のメリットを提供するとともに、お客様のワークフローを維持します。

次のステップ

Google Cloud と NetApp CVO によるソリューションをぜひお試しください。NetApp の EDA 向け Cloud Volumes ONTAP の詳細と、Google Cloud 向け Cloud Volumes ONTAP の利用を開始する方法について学習することもできます。

さらに、Google Cloud でのシリコン設計についてご興味をお持ちの方は、「テープアウトのタイミングを逃さない: Google Cloud による迅速なチップ設計」と「Google Cloud を使用してチップ設計プロセスを加速する」をご覧ください。


このブログ投稿に協力してくれた Google Cloud の Guy Rinkevich と Sean Derrington、NetApp の Jim Holl 氏と Michael Johnson 氏に感謝いたします。



- Google Cloud プリンシパル アーキテクト Alec Shnapir
- NetApp Office of the CTO、プリンシパル テクノロジスト Chad Morgenstern 氏

投稿先