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Healthcare & Life Sciences

Virta Health が Google Cloud を利用して 2 型糖尿病の治療を変革

2022年3月28日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 3 月 11 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、代謝性疾患患者、特に米国において 2 型糖尿病を患う何百万人もの米国人患者の危機が明らかになりました。米国糖尿病学会によると、米国の人口の 11.3%(3,700 万人以上)が糖尿病を患っていますが、推定 850 万人の米国人が受診しておらず、足の切断、失明、腎臓障害、心臓病、早死といった合併症の危険にさらされています。経済的な負担も大きく、米国における 2 型糖尿病患者の負担は、全体で年間 4,000 億米ドルを超え、患者一人当たり平均で 13,240 米ドルとなっています。新型コロナウイルス(COVID-19)で死亡した人の 40% が糖尿病の患者であることから、2 型糖尿病の患者が COVID-19 の検査で陽性になると、致命的となる可能性があることがわかっています。CDC のデータによると、新型コロナウイルスで入院した患者の 78% が体重過多や肥満体でした。

Virta Health は、この感染症と闘うために臨床的に証明された治療法を用いて、薬物療法や手術を使用せずに、2 型糖尿病などの慢性代謝性疾患を安全かつ持続的に改善する治療法の発見に取り組んでいます。患者の症状を改善するために、Virta は患者に専用の仮想ケアチームと体系的な教育を利用する機会を提供し、患者が、特定の食品が慢性高血糖にもたらす影響を理解して、必要な食生活を見直せるようにしています。患者の食生活の変化が定着したら、Virta は薬の処方を安全に中止します。Virta は、栄養生化学、データ サイエンス、AI、デジタルツールの技術革新と臨床の専門知識を組み合わせて、Google Cloud ベースの使いやすいアプリで、同社ならではのテクノロジー、医師、ヘルスコーチの融合を実現しています。

Google は Google Cloud の役割を、Virta の患者を中心としたエコシステムを次の 3 つの方法で支援することだと考えています。

1. Virta のインフラストラクチャへの柔軟性とコントロールの提供

2015 年に小規模な医療スタートアップとしてスタートした Virta は、有力企業となった今、2025 年までに 2 型糖尿病患者 1 億人を治療することを目標として数万人の患者を治療しています。企業が成長するにつれ、インフラストラクチャのニーズも高まっていました。2020 年、Virta は一連の遠隔診療プラットフォームを、コンプライアンス対応のコンテナ オーケストレーション プラットフォームの Aptible から、Google Cloud のマネージド Google Kubernetes Engine サービスに移行する時期であると判断しました。Aptible から GKE への移行には、次のようないくつかの主要な動機がありました。

  • 優れた選択性: ネットワーキング、スケーリング、ツールの決定における柔軟性とコントロール

  • きめ細かい権限設定: さまざまなワークフローへの権限とアクセス権を付与すると同時にそれ以外の権限を制限するきめ細かい機能。エンジニアリング チームの規模が大きいほど重要

  • マネージド ツール: Cloud FunctionsBigQueryGoogle Cloud Healthcare API などの業界をリードするマネージド ツールの利用が可能

2. 相互運用可能なデータ プラットフォームと情報レイヤの確立

このレイヤは、データの取得、キュレーション、管理、ストレージ、相互運用性を扱い、エコシステムが動作できる共通のデータセットを作成します。Virta がより多くのワークロードを FHIR ストアに移行する際、Google Cloud Healthcare API により、すぐに使える FHIR ストアが提供されました。これは、規格に準拠した検証済みの機能的なもので、移行の主要な動機づけの要因となりました。Google Cloud の Cloud Healthcare API により、相互運用を実現する強固な基礎が確立され、オープン スタンダードを活用して患者のデータを照合する Virta の革新的な手法が引き出されます。糖尿病を治療および克服する最初のステップは、リスクのある集団を特定することです。BigQuery を活用することで高度な分析の実施が可能となり、代謝マーカー、栄養摂取、投薬データを組み合わせることでデータをさらに充実させることができます。

3. 人工知能と機械学習を使用したインテリジェント システムの開発を可能に 

機械学習(ML)と人工知能(AI)は、臨床医の治療ワークフローと患者のケア全体を向上させるシステムで重要な役割を果たします。

医療提供者(医師、看護師、ヘルスコーチ)は、毎日患者と 1 対 1 で向き合っています。患者に糖尿病の治療方法について教育し、学んだ内容を患者が毎日の生活で実践できるようサポートしています。一人ひとりの患者にあった治療を行うために、医療提供者はリアルタイムで情報を入手する必要があります。Virta の医療提供者は、受動的にも能動的にも患者に関わっています。受動的なケアとは、たとえば、食事療法について患者の質問に答えるなどといった患者からのサポート要請に応じることです。能動的なケアの例としては、血糖値不足の記録に気づいた際に連絡すること、治療の成果をほめること、食事療法の効果が出たときに投薬を調整すること、などがあります。

Virta の ML エンジニアは、数多くの Google Cloud プロダクト(Kubernetes Engine、BigQuery、Google Cloud Storage、Cloud Build など)を使用して、メッセージ、バイオマーカー、ラボ、健康転帰などの匿名化されたデータを組み合わせて、能動的なケアによるメリットが最も大きい患者を特定する AI システムを開発しました。この AI システムは、パイプラインの一部として機能し、その結果として「患者エンゲージメントの機会(患者と関わるべきタイミング)」について臨床医にアラートを出し、個別の診療に役立つコンテキスト情報を提供します。このパイプラインは、AI 適用、臨床運用、設計、プロダクトといった Virtans の部門横断型チームによって継続的に反復処理されています。

Virta は、ML を使用して治療を止めてしまう可能性が最も高い患者を示すことができるため、医療提供者は早期に介入して患者に治療を続けることができます。また、ML を使用して患者の HbA1c(血糖の基準値)を推定し、現在の回復までの進行状況を判断します。こうした入力情報やその他の情報に基づいて臨床医にアラートが表示され、臨床医は対処方法を判断できます。これは、Virta の増え続ける患者の安全を守りながら治療を行うために不可欠です。

エンゲージメントに優先順位を付けるために、チームはルールと ML 手法を組み合わせたハイブリッド アプローチを採用し、次のものに高い優先順位を付けています。

  • 最も時間の影響を受けるエンゲージメントの機会

  • 最近コーチからメッセージを受け取っていない患者

  • つい最近治療を開始した患者(適切なスタートを切れているか確認するため)

チームは 2021 年、ヘルスコーチのアラートと、コーチの行動につながる確率を増やす方法に焦点を当てました。役に立たないアラートが多すぎる場合は、エンゲージメントの最適化基準を見直して厳しくし、優先順位付けアルゴリズムを調整し、ヘルスコーチによって特定されたギャップを埋めるために新しいアラートを導入しました。その結果、ヘルスコーチの行動が約 20% 増加し、より効率的かつ効果的に活動できるようになり、それが患者の大きな成功へとつながっていきました。

Google は、Virta が数百万人の患者の 2 型糖尿病を治療するという目標を達成するうえで非常に大きな役割を果たしています。Virta は、2022 年には顧客数と患者数が対前年度比で 100% 以上増加すると見込んでいます。患者数の増加に伴い、Virta は引き続き ML と AI にさらに注力し、患者に糖尿病治療に安全に取り組んでもらい、治療を成功させるとともに、臨床医やヘルスコーチのワークフローの合理化を継続していきます。


- Google Cloud、グローバル ヘルスケア ソリューション担当ディレクター Aashima Gupta
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