クラウドネイティブの医療画像処理で医療提供をサポート
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 11 月 17 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
米国の医療システムは転機を迎え、医療提供者による医療ケアの提供方法と、患者の医療ケア体験再考の真っ只中にあります。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックは、すでに存在していた多くの根本的な脆弱性(医療現場のシフト、リソース圧迫、サイバーセキュリティなど)を顕著化させ、新しいテクノロジーが出現するきっかけとなりました。クラウドネイティブの医療画像処理はそうしたテクノロジーの一例で、病院、医師、患者、データを安全に結び付け、患者のケアを支援する包括的ソリューションです。
放射線科医の場合、どこにいても、リモートの条件下でも、リアルタイムであらゆるデバイスを使って画像を読み取り、診断を行い、共同作業を行う必要性が増加しました。放射線科医の不足と増加し続ける医療画像処理の件数によって、さらなるワークロードの分散と、より改善された高速かつセキュアな画像ツールの需要が高まっています。
医療 IT チームが直面している主な課題
現在の病院と医療システムは、データ エコシステムの老朽化、データ ストレージ費用の上昇、データ セキュリティ問題の増加などに直面しています。
データ セキュリティ: サイバーセキュリティ企業 Sophos のレポートによると、昨年は米国の病院の 3 分の 2 がサイバー攻撃やランサムウェアの被害に遭い、1 件あたり平均 900 万ドルの費用がかかっています。経年劣化が進むサーバーで処理され、複数のオンプレミス ロケーションで使用される病院のデータが流出するのは珍しいことではありません。さらに、プラットフォームとサーバー全体でウイルスが自らを複製する可能性があります。
データ ストレージ: これまで、病院は多くの場合サイロ化された複数のオンプレミス データセンターに医療画像を保管してきました。医療画像データは、すべての医療データの 90% を占めています。こうしたデータに必要とされるストレージ インフラストラクチャの保守、置き換え、拡大に費やされるコストは多大な資本経費となっています。さらに多くの画像を合法的に保存する必要があるため、組織はストレージ増量のプレッシャーに絶えずさらされています。多くの病院は、システムを確実に稼働させるために過剰なプロビジョニング(および過剰な支払い)を行う状況に陥っています。
データ移行: データをクラウドに移行し始めた医療システムでは、医療画像のアーカイブを移行する段階で、費用および複雑性の問題が発生しています。現状では、大半のシステムは従来型のサーバーベースのソフトウェアを遠隔地のデータセンターにインストールするリフト&シフト アプローチに依存していますが、所要時間が問題となっています。1 日あたり 3 万件という平均移行率では、旧システムから新システムにデータを移動させるのに最大 18 か月かかることになります。
一方で、病院と医療提供者は、患者のスキャンから最終報告までにかかる処理時間の削減と治療調整の改善を目指しています。また、処理量も増加の一途をたどっています。現在、放射線科医による検査の分析件数は年間平均 2 万 6,000 件ですが、年間 1 万 4,000 件だった頃から 20 年も経っていません。臨床医は、日々の作業負荷と疲労を軽減するための、より高速で整然とした、人手がかからない画像処理ワークフロー、分析、アーカイブ システムを必要としています。
クラウドで患者のケアを再考
データ量の増加を負債のままにしておく必要はありません。Google Cloud およびクラウドネイティブの画像処理プラットフォーム プロバイダは、増えたデータを資産に変えています。
医療機関が直面している課題の解決を支援するために、Google Cloud と Change Healthcare は緊密に協力して、医療画像データの保存と管理における費用、複雑性、セキュリティのギャップに対応するための革新的なソリューションを開発しました。
Change Healthcare 画像処理ソリューション担当 SVP 兼 GM の Tracy Byers 氏は次のように説明しています。「クラウド環境のおかげで、ヘルスケアが抱える医療画像の大規模なライブラリの保管と共有が簡単になり、費用対効果も向上します。大幅に費用削減できるだけではなく、クラウド環境にデータを一元化することで情報を共有できるため、医療提供者同士が共同作業を行ってより良い決定が可能になります」。
Change Healthcare の Stratus 画像処理ソリューションに代表される医療画像分野における専門性と、Google Cloud の人工知能、分析、安全性を重視して設計されたインフラストラクチャの機能を組み合わせて、両企業がエンタープライズ画像処理プラットフォームの共同イノベーションを行っています。これにより、医療機関は、場所を問わず、簡単かつ低費用で医療画像に安全にアクセスして分析し、どのユーザーとも共有することができるようになります。
クラウドネイティブ画像処理プラットフォームの 5 つのメリット
より迅速で精度の高い診断。画像が自動的にアップロードされると即時に分析可能になるため、医療提供者は画像を素早く確認して結果を報告できます。すべての画像データが完全に利用可能なため、正確かつタイムリーな診断が可能です。
いつでもどこでも、安全に画像にアクセス。スタッフ、サテライト クリニック、外来患者が分散している環境においても、認証および承認によって適切なユーザーがデータにアクセスしていることを確認するゼロトラスト フレームワーク上で、医療画像に安全にアクセスして精査できます。
モダナイゼーションが容易。システムのアップグレードにまつわる複雑性と費用を低減します。エンタープライズ画像処理に完全に特化したフルマネージドの画像処理プラットフォームで、臨床医に最新の機能を提供できます。
医療画像へのアクセスを容易にしてサービスを改善。医療画像をリアルタイムで確認できる、直感的で使いやすいビューアにより、IT 担当からオペレーション担当、臨床医、医師、患者まで、すべての関係者をサポートします。画像アプリケーションから、進化し続けるクラウドベースの最新のサービスやツールに直接アクセスできるため、以前は単一目的だったデータから付加的な使用パターンを引き出して、活用することができます。
患者中心のエクスペリエンス。これまでは、患者が自分の画像を入手したい場合、リクエストを提出して画像を CD に書き込んでもらい、送料を払う必要がありました。画像処理プラットフォームでは、患者は最新のウェブ アプリから医療画像にアクセスできます。患者が自分のデータを自分で管理できることで、透明性とデータ モビリティが向上して、患者に寄りそう体験が実現します。
病院、医師、患者、データを結び付ける
Change Healthcare と Google Cloud によるフルマネージド画像処理プラットフォーム ソリューションの先行ユーザーは、モダナイゼーションによる費用削減とパフォーマンス向上の効果を実感しています。ハードコストの削減と隠れたコストの特定のプレッシャーが高まるなか、クラウドネイティブの画像処理ソリューションの導入により、シームレスなデータ移行と 99.99% を超える稼働時間を実現するだけにとどまらず、所有コストを最大 20% 削減できます1。
Change Healthcare と Google Cloud は、すべての画像データを、あらゆるデバイスで完全に、リアルタイムで確認できる機能を提供することで、医療機関がさらに迅速で正確な診断を行い、費用と複雑性を抑えながらより良い患者ケアを実現できるよう支援を続けます。こちらから、組織でクラウド、データ、医療画像処理に関する Google Cloud の豊富な専門知識を活用する方法をご確認ください。
1. 稼働時間の基準は、実装かつ使用されている Change Healthcare のシステム構成ガイドラインに基づきます
- Google Cloud、グローバル HCLS 産業ソリューション担当マネージング ディレクター Joe Miles
- Change Healthcare、エンタープライズ向け画像処理担当バイスプレジデント兼最高製品責任者 Omer Schalit-Cohen 氏