ChromeOS + クラウドベースの業務スタイルで デジタル活用の高度化と社内 DX を目指す 静岡新聞社の取り組み

Google Cloud Japan Team


静岡新聞社は発行部数が約 49 万部で、地方紙(県紙)として全国トップの発行部数を誇ります。@S+(アットエスプラス)などサービスが拡大する一方で、IT 部門の人員が少なく多数の端末管理に課題を抱えていました。また 2013 年に導入したシンクライアント端末の起動や動作の遅さに不満を感じていました。そこで ChromeOS 搭載の端末を導入し、デジタル活用に向けた社内の意識変革を目指しながら、DX を着実に推進している同社の取り組みを紹介します。
利用しているサービス: Chrome Enterprise、Chromebook
シンクライアントへの不満解消や端末管理効率化に向け ChromeOS を導入
静岡新聞社・静岡放送(SBS)の社員・スタッフは両社を合わせて約 900 名。日々利用する ICT ツールやインフラの調達・管理、運用保守を限られた人員で担うのがシステムデザイン局で、シンクライアント端末 300 台、VM 環境向け端末 500 台、加えて業務用の物理端末 200 台、モバイル デバイス 300 台を管理していました。「全社員が共通して使う環境はシンクライアント端末が中心で、仮想環境への依存度が高かったですね」と同局の穂積隼人氏が振り返ります。
「シンクライアント端末に関しては、ログインが多い時間帯には起動に 1 分以上かかり、動作も遅くなっていました。さらに、社内でネットワーク障害が起きると使用できなくなるため、現場からは不満の声があがっていました」。(穂積氏)
また管理側では、端末故障時の再設定作業で時間を取られることに加え、端末管理を台帳で個別に行っていたため、これらの作業自体が煩雑になっていました。
2017 年 Google のカンファレンス「Google I/O 2017」で ChromeOS の存在を知り、翌 2018 年 2 月に、局内に検証機として 20 台を導入しました。
「噂に聞いていた OS の動作が軽快なことに加え、起動が速く、クラウドベースで作業を行えるところに魅力を感じました」と、同局の田引理文氏が明かします。
新しい OS 検討に際しては、当時ランサムウェアの被害が拡大し始めてきたことから、経営陣へセキュリティの脅威を強調し、ChromeOS は攻撃の標的になりにくいという優位性をアピールしました。さらに、もともと Google Workspace を使っていたことからスムーズに導入に踏み切ることができました。
当初は現場の理解がなかなか進まず、Chromebook の説明会を何度か開催したものの、"まだ必要ないかも" と回答されることも多くありました。
ところが、2020 年からは持ち運びしやすく、操作性も高い Chromebook の利用希望者が一気に増加します。その理由として、新型コロナウィルスの感染拡大が大きく影響しています。必然的に在宅勤務を求められたため、申請不要で持ち帰れるようルール変更を行った結果、必要ないと言っていた部署も含めこぞって Chromebook の利用を希望するようになりました。「端末を社外に持ち出すことになるため、業務で使用しているファイルは Google ドライブに保存し、Chromebook 本体に保存しない運用を提案しました。さらに、遠隔操作で簡単に初期化できるので情報漏えいのリスクも下がり、在宅勤務でも安心して使える端末として社員に渡すことができました」。(田引氏)
Google Workspace の活用度も格段に高まり、管理の作業工数も大幅削減
社員が ChromeOS 端末を利用することで、親和性の高い Google Workspace の活用も大きく進みました。「Google Workspace はインターネットに繋がっていればどこからでもファイルにアクセスできるので、活用領域が広がりました」。(穂積氏)
Google Workspace で共同編集を行うようになってからは会議資料のペーパーレス化が一気に進み、Google Meet によるオンライン会議も主流となりました。「Google Workspace の利用率は、Chromebook 導入当初と比べると 5、6 倍に伸びているのではないでしょうか」と穂積氏。管理者側としての変化は、キッティング作業の工数が格段に減ったことだと、同局の望月美里氏が語ります。
「いままでは 200 台程のキッティングを完了させるのに 1 ヵ月以上かかっていましたが、2022 年秋に Chromebook を 180 台購入した際は、夕方以降のスキマ時間のみでもわずか 3、4 日で全台のキッティングが完了したのは驚きでした」。
OS の運用に関しては、ChromeOS は常に最新の機能を利用できるように、アップデートを分散させているので回線負荷が少ないうえに、再起動だけで更新が行われる点も利便性の高さを感じている、と望月氏は話します。
Chrome Enterprise Upgrade (CEU)を利用して端末管理やセキュリティ面で必要な管理や確認ができるだけではなく、業務で必要なアプリだけを配布することもできます。
Google Apps Script( 以下、GAS)の活用も進んでいます。「サーバーレスで実行できるのが便利で、多少のコードを知っていれば誰でも扱えるのがメリットですね。社内の業務システムを GAS で内製化することで、約300 万円かけてツール導入を考えていた社用車の予約システムは費用を大きく削減することができました。Chromebook 導入後は社員からさまざまな作業の効率や生産性を上げるためのシステム化に関する相談も増え、社内 DX の推進も実感しています」。(田引氏)
クラウド ベースに業務を集約して社内 DX の一層の推進を目指す
今後は、社内で使用する端末を Chromebook で統一させることを目指すほか、"脱 Virtual Machine( 以下、VM )環境" を目指しています。「理想としては社内業務をほぼ Google Workspace で完結させ、クラウドベースの業務をより浸透させていきたいですね。また VM の仮想環境も保守運用コストが年間数千万円かかっているため、Chromebook への移行をすすめ、2023 年下期には脱 VM 環境を目指します」。(田引氏)


システム全体のクラウド移管も進めています。経営方針にオンライン ファーストというワードが出てきていることもあり、「今後は DX にさらに力を入れていきたい。業務システムも Google Cloud Platform (GCP)にのせ、Chromebook 一本でどんな仕事もセキュアに行える環境を実現したい」と穂積氏。今後は CMS (Contents Management System)の開発やオープン AI を使った新しい新聞制作の仕組みを考えていきたいと将来の展望についても話してくれました。
最後に田引氏がこう話してくれました。「クラウド ベースの良さは、ChromeOS を触って初めて気づくものです。DX 化に興味がなかった社員たちも、実際に Chromebook を利用するようになって意識が変わってきたので、DX を進めるためにもまずは触ってみていただきたいですね」。
※2023 年 6 月取材時点の内容をもとに記事を作成しています。
株式会社 静岡新聞社
静岡新聞社は、1941 年、静岡県下の 6 新聞を統合して創立。1952 年設立の静岡県内初の民間放送「静岡放送(SBS)」とともに、新聞、テレビ、ラジオ、デジタルメディアの 4 事業を手掛けている。2023 年 4 月には静岡のニュースやイベント情報などを配信するスマートフォン アプリ「@S+(アットエスプラス)」のサービスもスタートした。
(導入台数)
Chromebook
約 700 台


インタビュー担当者様
株式会社 静岡新聞社・静岡放送 株式会社
システムデザイン局 インフラデータ基盤グループ
穂積 隼人 氏


株式会社 静岡新聞社・静岡放送 株式会社
システムデザイン局 ICTシステムグループ
田引 理文 氏