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顧客事例

NTTコミュニケーションズ: Gemini を活用した「AI Advisor」で、日本企業のセキュリティ人材不足を大幅に改善

2025年6月26日
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Google Cloud Japan Team

情報通信技術分野において幅広い法人向けサービスを展開している NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTTコミュニケーションズ)。その柱のひとつとして力を入れているのが、セキュリティ対策と AI を活用したソリューションです。2025 年、NTTコミュニケーションズでは企業や組織のセキュリティ運用者をサポートするため、新たに「AI Advisor」というサービスを開始しました。セキュリティ問題の現状と、Google Cloud を全面的に採用した開発のプロセスについて、「ジェネレーティブAIタスクフォース」のお 2 人に話を伺いました。

利用しているサービス:
Gemini, Cloud Run など

利用しているソリューション:
生成 AI

セキュリティ人材は 11 万人不足、IT 化の普及に伴って高まる企業の事業継続リスク

事業規模や業種の違いを問わず、今や業務の IT 化や DX を進めていくのは、どの企業にとっても必須の選択となっています。これに伴って高まってきたのがセキュリティ リスクです。昨今、サイバー攻撃の手法は巧妙化し、ランサムウェアによる被害がニュースでも報じられるなど、被害件数は急激に増加。フィッシング攻撃、マルウェア感染、DDoS 攻撃など、企業や組織が対応しなければならない脅威も多種多様になってきています。NTTコミュニケーションズは国内外で多くの企業を顧客に抱えるだけに、かねてよりこの状況を危惧していました。ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 ジェネレーティブAIタスクフォース 担当部長の北川 公士氏は、次のように語ります。

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「サイバー攻撃に対して完璧な防御体制を構築するためには、膨大なコストと人的リソースを投入しなければなりません。しかし IT 人材、特にセキュリティを管理、運用できる担当者は慢性的に不足しています。実際、日本企業の実に約 9 割がこの課題を抱えており、11 万人もの人材が不足していると推計されます(※)。こうした現状は、インシデントへの対応や最新のセキュリティ対策の導入に遅れをもたらし、事業継続にとって大きなリスクとなっています。また、担当者は過重労働に苦しみ、スタッフの教育、訓練の時間確保さえままならないという事態も起きています。セキュリティ人材の不足は、いわば社会的な課題とも言えます。」

そこで同社が着想したのが、進化の著しい生成 AI をセキュリティ分野に活用する方法でした。サイバー レジリエンス(サイバー攻撃への耐久性や、攻撃を受けた後の復旧の迅速さ)を高め、事業継続性を確実にしていくために、生成 AI をどのように導入すればいいのか、北川氏らはワーキング グループを作り、検討とテストを重ねていきます。

「我々 NTTコミュニケーションズにとって、セキュリティ サービスはもともと主力製品のひとつです。市場には優れた製品もすでにありましたが、従来の製品はシステムがログを収集しても、分析は人が行うというものがほとんどでした。そのため、セキュリティを強化すればするほどアラートが大量発生し、運用者の負荷が増大してしまうという問題も生じていました。また、セキュリティ部門の経験が浅い担当者からすると、アラートを受けても、次のアクションがわからないというケースもあります。そこで我々は、各社が導入している既存のセキュリティ システムに、生成 AI を連携させていくアプローチを取ることにしました。自然言語でさまざまな相談ができるサービスを構築し、システム運用者の負担を下げていくことを主眼に置き、開発の方向性と想定されるユースケースを絞り込んでいきました。」

※ 総務省「ICT サイバーセキュリティ政策の中期重点方針」(2024 年 7 月発表)

効率的な開発のためにプラットフォームを Google Cloud と Gemini へ全面移行

AI がセキュリティ運用者にアドバイスし、作業を支援するこのソリューションは「AI Advisor」と名付けられ、2023 年から本格的な開発がスタート。途中、北川氏がジェネレーティブAIタスクフォース全体のリーダーになることが決まり、2024 年からは同部門の担当課長、猪野 直人氏が開発を引き継ぎました。それまで開発インフラは Google Cloud と 他社のプラットフォームが併用され、生成 AI も他社の製品が使用されていましたが、猪野氏は Google Cloud、Gemini への全面移行を決断します。

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「最初の着想、コンセプトは北川が固め、すでに実証実験を重ねていましたが、将来性やコストなどをトータルで考え、Google Cloud と Gemini に切り替えるほうが明らかに合理的だと判断しました。Google Cloud に舵を切った大きな理由は、サーバレス プラットフォームが充実していたことです。Cloud Run を利用してコンテナベースで開発を行えば、セキュリティ、スケーラビリティ、運用管理などはマネージド サービスとしてすべて Google Cloud に任せることができるので、我々は環境の構築に手間をかける必要がなくなります。その分、アプリケーション開発にリソースを集約できるわけですから、開発基盤を移行するメリット、利便性はとても大きいと感じました。」

Google Cloud への完全移行はスムーズに進みましたが、猪野氏によれば、軸となる生成 AI の基盤を Gemini に切り替えていく際には、いくつかの試行錯誤も必要でした。

「Gemini は指示されたことを着実に処理してくれる傾向が強いため、狙った解答を引き出すには、人間側も的確な指示をするスキルが必要なことがわかりました。そこで、Google Cloud のチームのサポートを得ながら、Gemini で最適な解答を出すための方法を探っていきました。重要なのはプロンプトのチューニングや実装の仕方だったので、トライ アンド エラーをしながら、ひとつひとつ問題を潰していく地道な作業を続けた結果、精度の高い解答が導き出せるようになりました。迅速な情報共有と丁寧なサポートをしていただいた Google Cloud チームには、とても感謝しています。」

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Gemini を活用した「AI Advisor」は、IT 人材不足に悩む企業と日本社会の吉報

Google Cloud に移行してからの実質的な開発作業は、2024 年 10 月から 2025 年 3 月までのわずか半年間で完了。従来の開発ペースに比べて 20〜30% の短縮化に成功しただけでなく、実用化に向けて高い精度も確保されました。「AI Advisor」は 2024 年 11 月からソリューションとして提供を開始、2025 年 4 月には正式にサービス化され、対外的にも大きな効果をもたらすことが期待されています。その最大の特徴は、SIEM、SOAR、XDR など既存の IT 運用ソリューションと、最新の生成 AI 技術、さらに組織固有の情報を組み合わせて運用する点にあります。

「具体的には、セキュリティ情報の収集と整理、脆弱性の判断、日々膨大に発出されるアラートの優先順位付け、レポートの作成、次に取るべきアクションがわかる質問候補の生成、ヘルプデスク支援などの機能を提供しています。また『AI Advisor』は、さまざまなプラットフォームや各企業のシステム環境に応じて柔軟に導入することが可能で、個社ごとの情報を元にカスタマイズできるようにもなっています。これはコストと所要時間の両面において導入の敷居を下げるだけでなく、より高度で詳細な回答を生成することを可能にしています。」(猪野氏)

新しくセキュリティ部門に配属された経験の少ない担当者にとっても扱いやすく、熟練運用者の負担軽減にもつながる。さらには導入が容易で、コストダウンも見込める「AI Advisor」のサービス開始は、IT 人材やセキュリティ担当者の不足に悩んできた多くの企業・組織にとって吉報だと言えるでしょう。最後に、北川氏が今後の展開についてビジョンを語ってくれました。

「AI Advisor はサイバー攻撃からの防御と緊急時の復旧をサポートし、組織全体のセキュリティ レベル向上に貢献するのはもちろん、セキュリティ問題に携わる人々の生産性向上を手助けしますので、社会的な課題解決の一助にもなれるのではないかと考えています。今後も Google Cloud と Gemini を活用しながら機能を拡充し、セキュリティ プラットフォームとしてのキャパシティを拡大していきたいと思っています。」


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NTTコミュニケーションズ株式会社
1999 年設立。通信事業者ならではの高品質なインフラと高度な技術を活かし、ネットワーク、クラウド、データセンター、アプリケーション、セキュリティ、AI など、多岐にわたる ICT サービスを展開している。2022 年からはドコモグループにおける法人事業の中核を担う企業となり、「ドコモビジネス」ブランドのもと 5G、IoT などを活用した社会・産業のグローバル レベルでの構造変革、新たなワークスタイルの創出、地域社会の DX 支援などに取り組む。

インタビュイー(写真 左から)
・ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 ジェネレーティブAIタスクフォース担当部長 北川 公士 氏

・ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 ジェネレーティブAI タスクフォース担当課長 猪野 直人 氏


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