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顧客事例

舞鶴市:「日本一働きやすい市役所」の実現へ向け、時間と場所から解放される Chromebook を全庁導入

2025年7月23日
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Google Cloud Japan Team

古くから天然の良港として知られる京都府北部の港湾都市、舞鶴市。同市も多くの地方自治体と同様に、旧来の IT 環境がもたらす課題に直面していました。働き方改革やセキュリティ対策など、多岐にわたる課題の解決策として、同市はクラウド化による DX を本格始動。その核となるのが、Chromebook(Chrome Enterprise Upgrade)と Chrome Enterprise Premium の全庁導入です。舞鶴市は、この変革でどのように変わろうとしているのか。導入の背景と目指す姿について、キーパーソンたちに話を伺いました。

利用しているサービス:
ChromeOSChromebookChrome Enterprise UpgradeChrome Enterprise PremiumGoogle Workspace

より良い行政サービスを目指すため DX を決断

舞鶴市は、職員の働き方を抜本的に見直し、市民サービスの質を向上させるためのソリューションとして、2024 年度より全職員を対象とした Chromebook と Chrome Enterprise Premium の導入を進めています。この大規模な決断の背景にある市の課題意識について、鴨田 秋津市長は次のように話します。

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「私たちが DX で目指すのは、市民も職員も、デジタルによって幸せになってもらうことです。そのためには、職員が市役所に閉じこもるのではなく、どんどん現場に出て市民と対話し、そこにある課題を解決していく必要があります。しかし、これまでの環境では、職員が現場に気軽に出られないという、根本的な課題がありました。今回の変革は、単に道具を変えるのではなく、そんな職員の働き方の感覚、市役所の働き方そのものを変えていきたいと考えています。」

一方、政策推進部デジタル推進室 室長 吉崎 豊氏は、システム的な側面と職員が感じていたリアルな課題から、変革の必要性を語ります。

「以前使っていた A4 フルサイズのノート PC は持ち運ぶのが筋トレになるほど重く、機動性に欠けていました。さらに、自治体特有の三層分離の環境が原因でインターネット閲覧は極端に遅く、“起動する間に用事が終わってしまう”ようなありさまです。職員は『役所はそういうものだ』と半ば諦めていましたが、私たちには、このままではいけないという危機感が常にありました。BCP(事業継続計画)の観点からも、庁舎が被災すれば業務が完全に停止してしまうリスクは拭えませんし、ランサムウェアのようなサイバー攻撃への対応も完璧とはいえません。総合的に考えて、これまで以上に安全に、そして場所を選ばず業務を継続できる環境が必須だと考えました。」

さらに、これまでの IT 環境は管理面でも限界を迎えていたと、政策推進部 デジタル推進課 情報管理係 係長 中山 雅之氏は付け加えます。

「従来の PC 環境は、ウイルス対策、資産管理、認証など、さまざまなソリューションを後から追加していく積み木のような構造で、非常に複雑でした。その結果、常にマルウェア感染の恐怖がつきまとい、管理コストも増大する一方です。また、セキュリティを担保しながら職員の利便性をどう確保するか、という点も大きな課題となっています。」

単なるツールの導入ではなく、職員に「翼」を与える意識変革を

山積する課題を前に、舞鶴市は Chromebook と Chrome Enterprise Premiumの導入を決定しました。吉崎氏は、その理由を次のように明かします。

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「私たちが求めていたのは、すべての課題を“シンプルに”解決してくれるソリューションです。端末の機動力、クラウドによる性能維持、強固なセキュリティ、そして圧倒的な管理のしやすさ。これらを一つのエコシステムで実現できる Google のソリューションは、まさに理想的な存在です。」

しかし、それを組織の公式な意思決定として通すには、経営層、特にコストを司る財政部門の納得が不可欠です。吉崎氏が説得にあたって訴えたのは、Chromebook の機動力と安全性、そしてコスト面でした。

「まず機動力。従来の重い PC から解放され、どこでも仕事ができる環境は、市長が掲げる『課題は現場にある』という方針にもぴったりでした。そして安全性。ランサムウェアなどの攻撃に対し、そもそも感染しにくいアーキテクチャで、万一の災害時にもデータを失わず業務を継続することが可能です。この機動力と安全性が揃って初めて、職員は翼を与えられたように自由に、そして安心して働くことができます。さらに Chromebook なら、これだけの変革を 5 年間の総費用が従来の約半分で実現できます。この事実は、導入決定を強力に後押ししてくれたと思います。」

こうした吉崎氏の提案がスムーズに受け入れられた背景には、もうひとつ理由があります。それは、デジタル推進室が長年にわたる実績で培ってきた、経営層からの厚い「信用と信頼」です。

「外部の業者に任せきりにせず、自ら試せるツールはすべて試すなど、なるべく自分たちの手を動かしてきました。それは、DX への取り組みが『単なる金食い虫じゃない』ということを経営層に示し、必要な投資なんだと理解してもらいたかったからです。我々が今このタイミングで変革しなければ、次のリプレイスは 5 年後。その頃には舞鶴市は完全に取り残されてしまいます。熱意が通じてよかったです。」

その結果、舞鶴市は Chromebook の導入検討からたった 4 か月という異例の速さで全庁導入までこぎ着けることができました。現在、庁内では Chromebook、Chrome Enterprise Premium 合わせて約 1,000 台が稼働しており、舞鶴市が目指す変革が本格的に進み出しています。「ただし、単にツールを導入するだけでは組織は変わりません」と吉崎氏は付け加えます。

「どんなに優れた道具も、使う側の意識が変わらなければ宝の持ち腐れです。だから私たちは、単なる操作マニュアルを配布するのではなく、『なぜ変える必要があるのか』という背景や目的を丁寧に伝えることを大切にしました。例えば、具体的な使い方は、いつでも見返せるように短い『ショート動画』で共有しています。目指したのは、トップダウンで使い方を強制するのではなく、職員が『こうすればもっと便利になるんだ』と自ら気づき、主体的に活用法を見つけてくれるような環境づくりです。それによって意識改革が進むことを期待しています。」

全庁導入の先に見据えるもの、「日本一働きやすい市役所」へ

こうした丁寧な働きかけの結果、現場ではすでに具体的な変化が起き始めています。鴨田市長は、まず会議の変化を実感していると語ります。

「会議で使われる紙の量が劇的に減りました。以前は分厚い資料を人数分印刷していましたが、今では全員が Chromebook を開き、リアルタイムで同じ資料を共有しながら議論を進めるのが当たり前の光景です。ペーパーレス化は、目に見える大きな変化ですね。」

職員の働き方そのものも、大きく変わり始めました。これまで庁舎に戻らなければできなかった作業が、現場で完結できるようになったと中山氏は言います。

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「例えば、介護認定の業務です。以前は現場での聞き取りを手書きで行い、市役所に戻ってから議事録や報告書を作成していました。それが今では現場で聞き取りをしながら、その場で報告書を完成させることができます。職員からは『何時間もかかっていた作業が数分で終わり、市民と対話する時間が増えた』という嬉しい声が届いています。」

そして、吉崎氏が目指した意識改革も着実に実を結んでいます。「『役所はこういうものだ』という諦めが、『どうすればもっと活用できるだろう』という前向きな姿勢に変わりつつあります」と吉崎氏。消防署では職員が日々の車両点検を自発的に Chromebook で行うなど、現場の創造性を見事に引き出しています。

管理面での負担軽減も、劇的な効果を上げています。今回の Chromebook 導入の際のキッティングを主導した中山氏は、負担が大きく減ったのを実感しています。

「以前は端末の初期設定に丸一日かかっていましたが、Chromebook は数分で完了します。職員からの問い合わせも専用フォームに集約し、AI を活用して蓄積するなど、サポート業務も効率化できています。管理者側の苦労が軽減された分、より戦略的な IT 企画に時間を割けるようになったのは大きな進歩です。」

確かな手応えとともに、舞鶴市の挑戦は次のステージへと向かいます。吉崎氏は、今後の展望をこう語ります。

「今はまだ、私たちが提供した『翼』に慣れてもらっている段階です。今後は Gemini の活用なども視野に入れ、職員一人ひとりが自律的に業務を改善し、飛び立っていけるような文化を育てていきたいと考えています。」

最後に、鴨田市長は、この変革の最終的なゴールについて、力強く締めくくりました。

「私たちが目指すのは、電子申請で『来なくていい市役所』の利便性と、職員が現場で市民と対話することで生まれる温かみのあるサービスを両立させることです。デジタル化で生まれた時間を、人にしかできない創造的な仕事に使う。そうして、職員がやりがいを感じられる『日本一働きやすい市役所』を実現し、その活力が、ひいては持続可能で魅力的な舞鶴市づくりにつながっていく。今回の変革によって、大きな一歩を踏み出せたと思っています。」


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舞鶴市
1901 年(明治 34 年)、海軍の舞鶴鎮守府が開庁して以降、日本海側における重要な軍港として発展。戦後は大陸からの引揚港として多くの人々を迎え入れました。現在では人口約 7 万 4 千人が暮らす、海上自衛隊の重要拠点都市となっています。基地と国際貿易港が共存する独特の景観が特徴で、国の重要文化財である「舞鶴赤れんがパーク」は市の象徴でもあり、多くの観光客が訪れます。2024 年度、同市は Chromebook と Google Workspace の全庁導入を核としたデジタル改革を始動。舞鶴市は、この改革を通じて「デジタルによって市民も職員も幸せになる」ことを目指し、「日本一働きやすい市役所」の実現に挑んでいる。

インタビュイー
舞鶴市役所
- 市長 鴨田秋津氏
- 政策推進部 デジタル推進室 室長 吉崎 豊氏
- 政策推進部 デジタル推進課 情報管理係 係長 中山 雅之氏

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