ビームス: 最短 10 分でキッティングが完了する ChromeOS により、コストと運用工数を大幅に削減

Google Cloud Japan Team
アパレル業界においていち早く DX に取り組んできた株式会社ビームス。同社ではこれまで、一人ひとりに寄り添った顧客体験の創出やバックオフィスでの工数削減のため、さまざまな DX 施策を行ってきました。その一環として、社内 IT 環境の最適化を図るべく、ChromeOS を搭載した Chromebook の大規模導入を決断。スピーディーな導入と運用負担の軽減を実現した背景や、導入による具体的な効果について、IT システム本部 テクニカルディレクターの草野 亜子氏に話を伺いました。
利用しているサービス:
ChromeOS, Chromebook, Chrome Enterprise Upgrade, Google Workspace
突然訪れたパンデミックによる店舗休業期間、リモート環境の構築が急務に
オンラインで買い物を楽しむ消費者が増えている昨今、実店舗とオンラインを融合した新しい顧客体験の創出がキーワードになっているアパレル業界の DX。株式会社ビームスでも、さまざまな施策を行っています。公式アプリ「weBEAMS」内でお気に入りに登録しているアイテムの在庫情報を、来店時にお知らせするプッシュ通知や、お客様の好み、閲覧履歴に寄り添って一人ひとりに最適なオススメを表示するアプリのパーソナライズ レコメンド施策など、業界内でも特に力を入れて店舗 DX に取り組んでいます。
そんな同社が Chromebook の導入を決めたのは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が猛威を振るった 2020 年でした。緊急事態宣言に伴う全店舗の臨時休業、出社制限による在宅勤務への切り替えなど、一刻も早い対応が求められる状況において、当時社内の IT インフラを管理していた草野氏の頭に真っ先に浮かんできたのが、Chromebook の存在だったといいます。


「それまでモバイル端末は出張や外出が多いスタッフに限って配布していた程度でしたので、対応にはとても苦労しました。緊急事態宣言が発令された直後は本当に時間がなく、レンタル PC を数百台手配してしのいでいましたが、コスト面から見ても長くは続かないことはわかっていました。この危機を乗り越えるには、端末代が安く、キッティングから配布までスピーディーに対応できる Chromebook しかないと考えたのです。」(草野氏)
導入の決め手は、コスト面だけではありません。「弊社では 2012 年から Google Workspace を採用しており、Google のソリューションに対する信頼感があったことも、すぐに決断できた大きな要因です。実は Google Workspace を導入した段階で Chromebook を 3 台購入しており、基幹システムへの接続の安定性やスピード感など、問題なく業務が行えることの検証が済んでいたため、端末をリプレイスすることへの不安もありませんでした」と草野氏。
「Chromebook は業務を滞りなく行えることはもちろん、端末自体にハードディスクを持たないためセキュリティ面も安心ですし、導入コストも安く抑えられます。IT インフラの担当者として自信を持って会社に提案できました。」(草野氏)
キッティング時間は最短 10 分、迅速かつ低コストな導入が可能
Chromebook の導入自体はスムーズに決定したものの、実際の作業を行ったのはパンデミックによる混乱の最中。端末のリプレイスに時間がかかればかかるほど、一時的に使用している法人向けレンタル PC のコストもかさむため、とにかく短期間で大量にさばく必要がありました。
「これまでに使っていた端末では、1 台につき最低でも 1 時間はキッティングに時間がかかっていましたが、Chromebook では 1 台 10 分程度で設定が完了します。当時(2020 年)導入した台数は 180 台ですから、それだけでもかなりの時間短縮になっています。キッティングにかかる時間的、人的なコストを大幅に削減できたことは、Chromebook を導入して 1 番良かったと感じている部分です。導入を決めてからはとてもスピーディーで、端末の購入から配布まで 3 か月程度で完了しています。」(草野氏)
調達から配布までを迅速に行えたことで Choromebook への信頼度がさらに高まり、その後は毎年台数を増加。現在までに約 800 台以上の Chromebook を導入しています。どの段階でも作業の負担が劇的に少なかったと、これまでのキッティング作業を振り返り、草野氏は言います。しかし、それだけ急に新しい OS を搭載した端末を導入するというのは、従業員側に混乱を招く心配がありそうなもの。導入に際して、その点の苦労はなかったのでしょうか。
「2020 年当時はシン クライアントを使うときには Chrome リモート デスクトップを設定して使っていましたが、シンプルな操作で接続できる内容でしたし、それ以前までの環境で PC を扱えていれば、まったく問題はない範囲だと思います。シン クライアントの環境は大きく変わらないので、おそらく従業員側はそんなに大きな変化を感じていないのではないかなと思います。実際に問い合わせもほぼなくて、導入時に大きなトラブルもまったくありませんでした。苦労といえば、とにかく速く台数をさばかなければいけないということくらいでした。」(草野氏)
逆に、従業員からは Chromebook を歓迎する声も上がっているそうです。「電源を入れてからすぐ立ち上がるので、ストレスなく仕事に取りかかれると好評です。従来は立ち上げと同時にウイルス対策ソフトを走らせる必要がありましたが、ChromeOS では必要ありませんから、セキュリティ的に強く、しかも速いというのは管理側としても嬉しい部分です。」(草野氏)
浮いたリソースを再分配することで好循環が生まれる
「大きく業務環境の改善を実感しているのは、やはり端末を管理する私たちです」と草野氏。Chromebook 導入の一番のメリットとして挙げていたキッティング時間の短縮のほかにも、良い変化を感じているそうです。


「Chromebook はローカル ストレージを持たないため、端末の紛失時にもデータ漏洩のリスクが少ないことはよく知られていると思いますが、ちょっとした不具合や故障などのトラブルの際にも端末の初期化を気軽に、しかも短時間で行えるので復旧が早く、サポート業務の負担が減少しました。また、トラブルの原因究明のために従業員から詳しく聞き取りをしなくても、Chrome Enterprise Upgrade の管理画面を見ることで、ある程度原因を読み取れることも多いです。この点は以前の端末ではまったくわからなかったので、すごく助かっていますね。」(草野氏)
さらに草野氏が大きく変わったと言うのが、そうした工数の削減によって新しい時間が生まれ、別の業務などに当てることができるようになったことです。
「業務効率が改善し、現在進めている他のプロジェクトにリソースを割けるようになったことは、とても良かったと思っています。また、キッティングを集中的に担当していた人材にも、別の領域で活躍してもらうことができるようになりました。人材活用の観点からも Chromebook を導入した効果の大きさを実感しています。」(草野氏)
在宅勤務への対応のために進めた ChromeOS の導入により、IT 部門の業務負担を軽減やセキュリティの強化、リソースの最適化を実現。今後は、店舗の DX やサイネージにも手を広げ、DX を進めていきたいと草野氏は語ります。
「Chromebook はもちろん、Google Workspace も含めて、最初は数あるソリューションのひとつでした。しかし今ではもう、なくてはならない業務の中心的な存在です。その背景には、 Google のソリューションは常に進化していて、使いこなすことでどんどん業務の効率が上がっていくことがあります。直近では生成 AI の Gemini を弊社でも全従業員が使えるようになりました。私は先行して使っていますが、これほど仕事の効率に直結するツールはないと感じています。Chromebook を通じて全従業員が使えるようになったことで、バックオフィス業務ではもちろん、店舗でも新しい業務スタイルが生まれていくことを個人的に期待しています。今後は、そうやって新たな機能やソリューションの活用を促進しながら、より良い顧客体験を作っていきたいと考えています。」(草野氏)

