メディア企業が新しいストリーミング規範に対応するための支援
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2020 年 10 月 13 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: この特集の初期バージョンは、最初に Next TV と TV Technology で公開されたものです。
新しいプログラムの爆発的な増加や注目を集めるストリーミング サービスなど、2020 年はメディアとエンターテイメントにおける大きな転換の年になるはずでした。しかし同時に、業界はその基礎的な要素であるウィンドウ化戦略、ライブイベント、制作標準などの多くが変化しないことも十分に予測していました。
そのすべてが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)によって変わってしまいました。業界にとって、まだ将来のはずだったものが突然現実になり、多くの企業は消費者との直接ビジネスモデルを加速および進化させ、同時に作業員や制作において社会的距離を保つというような困難な課題に直面しています。
メディア企業が短期的な対応から長期的な計画へと移行するにつれ、多くの企業は今後数か月や数年の間に業界がどのように変化するかを熟慮するようになってきています。
これらのすべては、Google の新しいガイド Accelerated Media Evolution In The Time Of COVID(COVID-19 期に高速化したメディアの進化)のトピックで、Media OnAir イベントの焦点でもあり、Google はこれらの場所で、自社の作業から得られた見識を主要なメディア企業と共有しています。Google はこれらの組織や他の組織に対して、新たな視聴者の行動を最重視し、3 つの主要な変化の主導に注力することを推奨しています。
1. 新しい収益化チャネルをスケールし、データによって視聴者と関与する
このパンデミックの初期段階において、視聴者は家庭に閉じ込められていたため、リニアの視聴時間が一時的に増大しています。これは、ニュースなど特定の形式により主導されたものです。しかし、一部の地域で制限が解除されるにつれ、視聴時間はロックダウン前の水準に戻りました。
これに対して、多くのストリーミング サブスクリプション サービスの視聴は継続的に増大しています。米国の家庭の 9% は、2020 年の第 2 四半期に新しい SVOD サービスに加入しました。1 ストリーミングの視聴時間の急増は、リニアの放送よりも弾力性があるようで、2020 年 6 月における米国でのストリーミング サービスの視聴時間は 2019 年よりも約 50% 増大しています。2
有料テレビバンドルとは対照的に、今日のストリーミング視聴者は、エンターテイメントにおいてはるかに多くの選択肢を自由に選ぶことができます。これらの視聴者は複数のサービスを併用することを好む一方で、変動も激しい傾向があります。パンデミックが全世界における自由意志での消費に大きな影響を与えている状況で、視聴者はエンターテイメントのコスト削減を求めており、従来の有料テレビバンドルよりも SVOD サービスがより魅力的な選択肢となるとともに、AVOD サービスへの加入も増加しています。
結果として、メディア組織は既存の放送の運用とコストを合理化する方法の再評価を迫られています。予測不能なストリーミング需要をシームレスに処理でき、同時に視聴者のデータからより深い見識を抽出して、視聴者のエンゲージメント、維持、収益化を推進できるようなテクノロジー プラットフォームを構築するための投資が必要になっています。たとえば、イギリスの主要な放送局である ITV は、自社の VOD サービスである ITV Hub のイベントを的確にモニタリングするため、Google Cloud 上の動画分析ソリューションを構築しました。
2. 新しいコンテンツをリモートで制作し、ライブラリ コンテンツの価値を最大化する
配信チャネルは変化しても、コンテンツが業界で最も重要なことに変わりはありません。コンテンツの広範さ、独占、オリジナルのコンテンツは、視聴者がストリーミング サービスに加入する 3 つの最大の理由で、ライブラリと新規コンテンツの両方の価値を最大化することはこれまでになく重要です。
コンテンツの制作も、パンデミックにより壊滅的な影響を受けています。全世界で物理的な制作が中断され、今になってようやく、少しずつ再開され始めています。そして、複雑な制作後のプロセスを通過したコンテンツについても、全世界で劇場公開が壊滅的な状況であることから、大ヒットが予測されるような作品もストリーミング サービスでの公開を余儀なくされています。これによりウィンドウ化戦略と、それに付随する経済モデルが劇的に変化しています。
メディア企業は、コンテンツ制作パイプラインを維持するため、境界のないクリエイティブ戦略に頼るようになりました。アニメーションなどリモートで製作可能な形式が急増し、ニュースやスポーツのようなライブイベントは記録的な短期間に新しいリモート作業プロセスを確立しました。
コンテンツの制作は数年間にわたって着実に増加してきましたが、一時的な制作の中断はメディア企業にとって希望の光となりました。この中断により、制作体制を見直して、よりデジタル化され、共同作業の、効率化され、クラウドによって支えられたグローバルな制作および管理プロセスを実装する機会が生まれました。ViacomCBS など大手のメディア企業も、コンテンツのギャップを埋めるために、自社の大規模なバックカタログとアーカイブのデジタル化と内容の充実を加速させました。
3. 将来の生産性のため新しい作業環境を構想する
最後に、多くの企業や業界が直面していた最大の課題はリモート作業への移行でした。たとえば、Yahoo Finance などの革新的な企業は、Google のビデオ会議ソリューションを利用して自社の放送チームのコンテンツを流し続け、視聴者を維持しました。Yahoo Finance の 150 人の編集者、レポーター、アンカーは Google Meet を使用して、米国およびロンドンの各地からニュースと動画ストリームを数千万人の視聴者にライブで放送し、一夜にして 100% リモートの放送モデルに移行しました。
業界が新しい作業規範に移行するにつれ、多くのメディア企業のオフィスではどのタスクを自動化またはリモートで行えるか、運用を維持するために本当に必要なオフィス面積は正確にどれだけなのかを十分に考慮する必要に迫られるでしょう。
この判断は職務によって異なるでしょう。制作後の要員、視覚効果アーティスト、動画編集者は仮想ワークステーションと編集アプリケーションを利用して、リモートで作業を完了できます。一方で財務、営業、マーケティングなどの中核チームは Meet などのビデオ会議サービスを利用して、現在居る場所に関係なく連絡を維持できます。しかし、一部の不可欠な要員、すなわち軽量スタジオ制作チームやオンプレミスの実演チームは、依然としてオフィスに足を向ける必要があるでしょう。
前例のない変化に対応するための継続的な革新
多くのメディアおよびエンターテイメント企業は、この新しい時代に成功し、影響力を維持するために、Google Cloud の運用のモダナイゼーションを選択しています。たとえば、Major League Baseball はアプリケーションをどこからでも実行できるようにするために Anthos を採用し、Statcast プラットフォームのアップグレードに BigQuery を利用し、Google の機械学習テクノロジーを使用して Film Room などファンに向けた新しいイニシアチブを開始しました。これらはすべて、より高いアジリティを実現し、競合の激しいメディアのエコシステムにおいて、さらに革新的なコンテンツをファンに届けるためです。
今年は誰も予測しなかったような出来事により変化が加速した年でしたが、メディア企業が全世界の視聴者に重要なニュース、情報、エンターテイメントを配給し続けるため行った工夫、革新、そして決意は驚くべきものでした。Google Cloud は、メディア企業が必要とするテクノロジーを提供し、Google の顧客との提携により、この前例のない困難に顧客が立ち向かって革新を続けられるよう支援するため注力しています。
詳細については、Google のガイド Accelerated Media Evolution In The Time Of COVID をご覧になるか、Media OnAir イベントにご参加ください。
出典:
1. Kantar、Amazon tops Disney, Netflix with surge in video service(2020 年 8 月)
2. Nielsen、The Hollywood Reporter、The Quarantine TV Ratings Spike Is Over(2020 年 6 月)
-メディア、エンターテイメント業界ソリューション担当マネージング ディレクター Anil Jain