Google Distributed Cloud の新サービスによりデータと AI をどこでも活用
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 8 月 30 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
企業と行政機関は、デジタル トランスフォーメーションを進めるなかで、接続性での制約、低レイテンシな接続の必要性、業界特有のコンプライアンスやデータ主権に関する要件など、多くの課題に直面しています。このような課題により、パブリック クラウドの全面的な導入が困難となる場合があります。
Google Distributed Cloud(GDC)は、エッジまたはデータセンターでワークロードを実行しながらも、クラウド サービスの機能性、柔軟性、スケールを求める組織に固有の需要を満たせるよう設計されています。GDC は、AI とデータのために構築されたフルマネージド型のハードウェアおよびソフトウェアのソリューションで、豊富なサービス群、拡張可能なハードウェア フォーム ファクタ、Google と接続した形でも完全エアギャップ型でも運用できる機能を備えています。このたび開催される Google Cloud Next '23 では、お客様がワークロードをあらゆる場所で実行できるよう、分散型クラウド ポートフォリオの機能強化を発表いたします。
AI とデータをどこでも最適化
このたび、Google は、Google Distributed Cloud 向けに AI とデータに関する以下の 3 つの新サービスを発表いたしました。
Vertex AI インテグレーション - パイプライン、予測、ドキュメント翻訳: 現在、GDC Hosted 上の Vertex AI は、音声、翻訳、光学式文字認識(OCR)のための事前トレーニング済みモデル、および最もよく利用されている ML フレームワークやツールとのインテグレーションを通じて ML のライフサイクル全体をサポートするマネージド ノートブック サービスである Workbench を提供しています。Google は、カスタムモデルのサービングを自動化する Vertex Prediction と、大規模な ML 運用を管理する Vertex Pipelines の GDC Hosted への導入を進めています。また、Document Translation API サービスの導入も進めています。このサービスは、Microsoft Office および PDF フォーマットのオンデマンド ドキュメント翻訳をサポートし、かつ書式が保持されるため、開発者とエンドユーザーの貴重な時間とリソースを節約できます。これらのサービスのプレビュー版は、2024 年第 2 四半期から提供されます。
「私たちの役割は、最新鋭の使いやすいデジタル サービスを一般向けとして提供することです。AI と分析機能を組み込んだ Google Distributed Cloud Hosted のような非接続型クラウド ソリューションを導入することで、より適切にセキュリティ、プライバシー、コンプライアンスを管理でき、この目標を達成できます。」 - ルクセンブルク国家情報技術センター(CTIE)、ディレクター、Patrick Houtsch 氏
AlloyDB Omni: Database Service for GDC Hosted は、新しいマネージド データベース エンジンである AlloyDB Omni をプレビュー版として対応するようになりました。AlloyDB Omni では、高パフォーマンス、PostgreSQL との完全な互換性、ML を活用した自動操作システムによる管理の簡素化など、AlloyDB の利点をレガシー データベースの数分の一の費用でご利用いただけます。Google のパフォーマンステスト(2023 年 3 月実施)において、AlloyDB Omni はトランザクション ワークロードを標準的な PostgreSQL よりも 2 倍以上高速に処理でき、標準的な PostgreSQL よりも最大 100 倍高速に分析クエリを処理できました。AlloyDB Omni は pgvector 拡張機能もサポートしているため、ベクトル エンベディング(LLM によって生成されたデータの数値表現であり、基礎データの意味を表現するために使用される)の格納、インデックス作成、照会が可能です。
Dataproc Spark: 多くの組織がデータ処理とデータ分析に Apache Spark などのオープンソース テクノロジーを使用しています。オープンソースのデータツールを実行するための Google Cloud のマネージド サービスである Dataproc を利用することで、お客様は 54% 低い TCO で Spark を実行できます(2022 年 4 月時点)。GDC Edge が Dataproc をサポートすることにより、データ所在地とデータに関する規制の要件を満たしながら、より費用を削減し、より優れたセキュリティと管理機能を実現することが可能になります。このサービスのプレビュー版は、2023 年第 4 四半期から提供されます。
「Google Distributed Cloud と Dataproc を導入したことで、オンプレミスからクラウドまで、安全かつ均一な方法で、AI によるリアルタイムのデータ管理と分析が可能になりつつあります。」 - Orange、AI およびデータ部門グローバル責任者、Steve Jarrett 氏
柔軟性とスケールを生かした構築
Google Distributed Cloud ではさまざまなサイズと構成が利用可能になっており、デプロイに必要な独立性と制御性を確保できます。数万単位の遠隔エッジ用 3 ノード デプロイメントから、自社データセンター内に設置する数百台のラックまで、さまざまな規模のデプロイメントを選択できます。また、お客様のニーズの変化に応じてデプロイメントをスケールしやすくする、以下の新しいインフラストラクチャ機能群もご紹介いたします。
次世代ハードウェア: Google は、パフォーマンス、柔軟性、モジュラー スケーリング オプションを向上させた次世代の Google Distributed Cloud マシンの提供を開始いたします。新しい Google Distributed Cloud ハードウェア スタックは、第 4 世代の Intel® Xeon® Scalable プロセッサと、最大 400 Gbps のスループットを誇る高性能ネットワーク ファブリックを備えています。
新しい GDC Hosted ハードウェアは、vCPU の性能向上、DDR5 高帯域幅メモリ、Gen5 PCIe による I/O 性能、400 G / 100 G ネットワーク リンク、AI ワークロードに特化した GPU(Nvidia A100 チップ)が搭載されており、ご利用のエアギャップのあるクラウド環境で実行される AI およびデータ処理アプリケーションを支えます。
また、GDC Edge 用の新しいハードウェア構成の提供も開始いたします。この構成には、vCPU、RAM、ストレージの容量が異なる、小、中、大 3 種類の小型フォーム ファクタ サーバーが含まれています。このサーバーは堅牢性が高く、小売店やレストラン向けに最適化されています。この新しい構成は、ネットワーク接続の不安定さにも耐えられるよう設計されています。合理化されたデプロイモデルにより、GDC Edge を使用して、何千もの場所でフルマネージド型の高可用性オンプレミス Kubernetes クラスタを活用し、店舗内アプリケーションを中央から柔軟に管理できます。
最新のワークロードに対応する新しい IaaS サービス: GDC Hosted は現在、新しいゲスト OS、顧客管理の VM イメージ、VM ランタイム構成用のパッケージ リポジトリ、簡素化されたネットワーキング、バックアップおよび復元のツール、合理化された API およびコマンドライン インターフェース(CLI)をサポートしています。これらを組み合わせることで、VM ベースのワークロードに対する最新のワークフローを実現できる一方で、専用ネットワーク接続により、オンプレミスのネットワークと組織との間で物理的な直接接続が確保され、分離性、柔軟性、スケールを高めることができます。コンテナ管理を支援するため、GDC Hosted にはアーティファクト管理のためのマネージド サービスが追加され、プライベート リポジトリからコンテナ イメージを簡単に保存してアクセスできるようになっています。これらのサービスは、プレビュー版でご利用いただけます。
今回の Next では、新しいプレミアム版 GKE である GKE Enterprise も発表しました。GKE Enterprise を導入することで、Google Cloud が提供するフルマネージド統合ソリューションを使用して、複数のチーム間での連携を速め、ビジネスにとってきわめて重要なワークロードを簡単かつ安全に実行し、総所有コストを削減できます。GKE は、すべての Google Distributed Cloud プロダクトに搭載されており、新しく発表された GKE Enterprise は、追加費用なしですべての Google Distributed Cloud デプロイメントに搭載されます。
パートナーシップの拡大: オープン クラウド戦略は Google の中核であり、Google は、オープンなエコシステム上に GDC を構築し、アプリケーション開発を加速するための主要なオープンソース ツールや ISV を利用できるようにしています。また、開発者がより簡単に非接続型アプリケーションを構築できるよう、マーケットプレイスでの提供サービスも拡大しており、ElasticSearch、MongoDB Enterprise Advanced、SAP などのおなじみのサービスを Google Distributed Cloud 上で提供しています。これらの統合サービスをエアギャップのある環境にデプロイすることが、これまで以上に容易になります。
「当社は、厳しい規制要件とコンプライアンス要件を抱えている公共部門のお客様にサービスを提供するため、Google Cloud とのパートナーシップ拡大を進めています。Google Cloud 上の Elastic に加え、Google Distributed Cloud でも Elastic を運用できるようになり、嬉しく思っています。これにより、魅力的な検索アプリケーションや AI を活用したアプリケーションを構築し、アプリとインフラストラクチャをモニタリングして、そのインフラストラクチャを保護できるようになる一方で、引き続きコンプライアンス要件を満たすことができます。」- Elastic、プロダクト担当バイス プレジデント、Steve Kearns 氏
「当社は、さらに多くのお客様それぞれのニーズに応えることで、Google Cloud とのパートナーシップを強化しています。お客様は、すでに MongoDB Atlas が Google Cloud Marketplace から入手できることに加え、Google Distributed Cloud 上で MongoDB Enterprise Advanced を利用することで、十分にエアギャップのある安全で独立した環境でアプリケーションをモダナイズできるようになります。」- MongoDB、プロダクト管理担当バイス プレジデント、Ben Cefalo 氏
「SAP Business Technology Platform on Google Distributed Cloud Hosted は、公共部門と規制対象企業のお客様が、最も機密性の高いデータやミッション クリティカルなビジネス プロセスに必要な独立性と制御機能を確保できるようにすることを目的としたサービスです。エアギャップのある環境を必要とするお客様は、AI、データ、分析、アプリケーション開発、自動化をビジネス プロセスと統合することで、より迅速にイノベーションを進めることができます。」- SAP、BTP Foundation およびインテリジェント エンタープライズ部門長兼テクノロジーおよびイノベーション担当シニア バイス プレジデント、Michael Ameling 氏
新しいセキュリティ機能と可用性機能: GDC は、厳格なデータ主権および運用主権に関する要件をが指定されたワークロードを含め、お客様のアプリケーションのニーズに応えるためにゼロから設計されています。GDC は、境界保護、顧客管理の鍵、保存データの保護、ロギング、マネージド SIEM(セキュリティ情報およびイベント管理)および SOAR(セキュリティ オーケストレーション、自動化、対応)サービスなど、ライフサイクルの各段階でワークロードを保護するための包括的なセキュリティ サービスとセキュリティ機能を備えています。
このたび、プレビュー版として利用可能なセキュリティと可用性に関する追加機能を発表いたしました。
GDC Edge 上の境界プロキシは、Google Cloud と GDC Edge 間のすべての管理トラフィックを検査、記録することにより、GDC Edge の可視性と監査可能性を確保します。
GDC Edge 上の踏み台インスタンスを使用すると、トラブルシューティングのために Google Cloud から GDC Edge へのアクセスを簡単に表示、制御でき、運用主権を確保し、コンプライアンス要件を満たしやすくなります。
GDC Hosted 上の鍵トラッキング機能を使用すると、お客様が管理しているすべての鍵のリソース マッピングを自動的に作成、提供できます。
GDC Hosted 上の BYO 証明書を使用すると、サードパーティの認証局によって発行された証明書をアップロードできます。
存続可能モードでは、Google Cloud への接続が切断された場合でも、GDC Edge 上でオンプレミスの運用を継続し、ネットワークから切断された状態でワークロードを長時間実行できます。存続可能モードにより、信頼性の低いネットワークによる運用の中断を最小限に抑えながら、Google が管理するインフラストラクチャをオンプレミスでデプロイできます。
Google Distributed Cloud はこれからも成長を続けます
上述のサービスや機能は、さまざまな業界の組織が Google Distributed Cloud を利用して最新の AI アプリケーションを構築できるサービスや機能のほんの一部にすぎませんが、これらの最新のサービスや機能では、最新のインフラストラクチャと運用機能を活用し、独自のクラウドを独自の方法で運用できます。
Google Distributed Cloud を使用して Google Cloud の機能をエッジまたはデータセンターに導入することにご関心をお持ちの場合は、Google またはその認定パートナーまでご連絡ください。
SPTL 202 What’s next for architects and IT professionals(アーキテクトと IT プロフェッショナルの次のステップ)
ARC 101 Running AI at the edge to deliver modern customer experiences(エッジで AI を実行して最新のカスタマー エクスペリエンスを提供)
- インフラストラクチャ担当バイス プレジデント兼ゼネラル マネージャー Sachin Gupta
- Google Distributed Cloud、プロダクト担当シニア ディレクター Brad Bonnett