Dual Run でメインフレームの移行リスクを軽減
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 3 月 17 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
CIO は、運用費用の上昇や人材確保の難しさと、重要なアプリケーションをクラウドに移行する際に伴う費用とリスクとのバランスを考慮しつつ、メインフレームへの投資を再評価しています。ビジネスのアジリティの向上、技術革新、コンピューティングの弾力性、顧客インサイト、人材プールの増加などが CIO の考えに影響を与え、大型コンピュータからパブリック クラウド プラットフォームへの移行とモダナイズを促しています。
Google Cloud は最近、新しいメインフレーム モダナイゼーション ソリューションとなる Dual Run を発表しました。これは、お客様のメインフレーム移行に伴うリスクを軽減し、クラウドへの移行を加速させるものです。リーダーは、Dual Run を活用することで、メインフレームのモダナイゼーション プロジェクトを確実に成功させて成果を上げることができます。ここでは、Dual Run とは何か、どのように機能し、どのように役立つかについて、もう少し詳しくご紹介します。
実績のある技術によるメインフレームのモダナイゼーション
メインフレームを使用している企業は依然として多く存在するため、Google Cloud は、すでにソリューションを構築していた世界最大級の銀行である Banco Santander と提携し、企業顧客に Dual Run を提供することにしました。実際、Dual Run は Banco Santander の独自技術の上に構築されており、規制の厳しい金融サービス業界ですでに実績を築いていました。Banco Santander は、このたび利用可能になった Dual Run を利用して、自社のデータとワークロードを Google Cloud の信頼できるインフラストラクチャにすでに移行しています。
既存のコンセプトかつ独自のソリューション
Dual Run は、メインフレームと Google Cloud 上で同時にワークロードを実行できる、並列本番環境システムを運用できます。メインフレームを運用する多くの企業が並列本番環境のコンセプトについて検討しており、すでにこれを試みている企業もありますが、Google Cloud はハイパースケーラーの中で唯一このようなソリューションをサービスとして顧客に提供しています。
並列本番環境を運用することで、Google Cloud 上でアプリケーションのリアルタイム テストを実行でき、ビジネスに支障をきたすことなく、パフォーマンスと安定性に関するデータを迅速に収集できます。2 つのシステムの機能とパフォーマンスの同等性が満足のいくものであれば、既存のメインフレーム システムはバックアップとして残すか廃止し、新しい Google Cloud 環境をお客様の記録システムにすることができます。
Google Cloud に移行することで得られる AI ベースのスケーラビリティ、スピード、セキュリティといった革新的なメリットに加え、Dual Run によるメインフレームの移行は、以下のようにさらに多くのメリットをもたらします。
移行リスクを軽減: Dual Run は、ビジネス クリティカルなシステムを並列に実行しつつ、現行システムとターゲット システムの違いを追跡する優れたレポート機能を提供することで、移行時のリスクを低減します。これにより、Google Cloud への移行中に既存のメインフレームへの影響やリスクがなくなります。
移行への投資を保護: 本番環境システムから取得した実証的なデータに基づいて決定とアクションを行うことで、移行のミスによる費用発生を回避します。
ビジネス テストの労力を削減: 現行システムとターゲット システムの結果の機能的な同等性を本番環境データと比較し、移行したワークロードのテストサイクルを大幅に短縮します。
移行を加速: 明確に定義されたフレームワーク、自動化コンポーネント、事前定義済みダッシュボード、実績のある手法により、メインフレームの移行プロセス全体をスピードアップします。また、Dual Run で利用できる実証的なレポートにより、規制対象業界のお客様は、規制当局によるレビューや情報提供の要求に備えてより迅速に対応できます。
Dual Run による移行プロセス
Dual Run には、評価から本番環境までの移行プロセス全体を支援する複数の自動化コンポーネントがパッケージ化されています。
以下の図は、メインフレームのモダナイゼーションの過程で Dual Run が果たす重要な役割を示しています。
この図を、フェーズごとにもう少し詳しく見てみましょう。
現在の状態: 本番環境ワークロードがまだメインフレームで実行されている状態であり、ここが出発点となります。Dual Run は、メインフレームのワークロードが Google Cloud と互換性があるかどうかを評価するのに役立ちます。
この評価の後、Dual Run の変換エンジンが現行のアプリケーションとの非互換性を解決し、その後、アプリケーションとデータを Google Cloud に移行します。この段階では、現行のアプリケーションはメインフレーム上で実行されており、移行したアプリケーションは Google Cloud 上で実行またはテストする準備ができています。
Dual Run の実行時: この状態では、移行したワークロードは 2 つのステージで実行されます。
Dual Run ステージ 1:
Dual Run の最初のステージでは、メインフレームは「プライマリ」システムとして残ります。つまり、他のシステムへのレスポンスや出力はメインフレームから送信され、移行したワークロードは「セカンダリ」として Google Cloud で並列に実行されます。
Dual Run は、周期的なプロセスとして以下のアクションを実行し、移行するアプリケーションが必要な品質に達するまで繰り返します。
メインフレームで実行されるすべてのワークロード(バッチとトランザクション)を Google Cloud に複製する
両システムの結果を検証して相違点があれば報告する、これにより移行したアプリケーションで是正措置を講じることが可能
両システムの機能とパフォーマンスの違いをモニタリングし、メインフレームと Google Cloud のデータを定期的に同期させることで両システムを同期する
通常、移行にかかる時間の大半は、満足のいく結果が得られるまで行う Dual Run の最初のステージに費やされます。このステージの重要な目標は、移行したアプリケーションが現在のアプリケーションと完全に同じ結果を提供するように調整されている間、主要なビジネス クリティカルなメインフレームのワークロードが妨げられないようにすることです。
Dual Run ステージ 2:
Dual Run のレポートと結果により、移行したアプリケーションがメインフレーム システムと一致することが確認されると、Google Cloud が「プライマリ」システムとなり、メインフレームは「セカンダリ」として引き続き並列に実行されます。Dual Run では、構成管理システムを使用して、プライマリ システムとセカンダリ システムをスムーズに切り替えることができます。
ターゲットの状態: 最終的には、Dual Run コンポーネントが削除されている間にメインフレームを廃止することができ、Google Cloud を使用して最適かつ効率的にビジネスを運用できます。
まとめ
Dual Run は、メインフレームの移行やモダナイズを必要としている企業や組織に、リスクと時間を軽減しつつこれらを実現する独自のソリューションを提供します。実際、Dual Run は、メインフレームの移行を成功させるために不可欠な、豊富な実績、エンジニアリング、戦略的パートナーシップを適切に組み合わせて提供しているとお客様から評価をいただいています。詳細については、メインフレームのモダナイゼーションをご覧ください。
- Google Cloud、メインフレーム変革プラクティス担当シニア コンサルタント Avudai Gomathinayagam
- Google Cloud、Cloud Migration チーム所属 Tom Nikl