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Google Cloud

SAP ユーザーがクラウドでより高速に分析を進めるには

2020年9月2日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2020 年 8 月 21 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

 今日リアルタイムで入手できる現実世界のデータは通常、IoT デバイス、メッセージ アプリケーション、ソーシャル メディア、ウェブサイトや e コマース サイトの利用から導き出されるクリックストリームなど、さまざまな種類の情報源から得られます。近年、こうしたデータの多様性、容量、速度が急速に増大しています。ESG が実施した最近のアンケートによると、66% の組織が 1 ペタバイト以上のデータを管理しており、ほぼ 3 分の 1(31%)が 5 ペタバイト以上のデータを管理しています。これらのデータソースを合わせると、ビジネス面で新たに大きな価値を得るための貴重な基盤が出来上がります。このことは、運用データソースとその他のデータソースを組み合わせることで意思決定のあり方を変えることのできる SAP ユーザーに特に当てはまります。

そしてここに課題があります。つまり、この絶えず流入するデータのせいで、確固とした分析情報を効率的かつ安全に管理、保存、分析、生成することが困難となっているのです。実際、ESG がアンケートを行った組織の大半が、得られた全データのうち分析に使用しているのは 30% 以下であると回答しています。そのため、2020 年 5 月から行われた SAPinsider の調査で、アンケート対象になった SAP ユーザーの 52% が分析を行う上での最大の問題にデータ統合を挙げているのは当然と言えます。

過去数年で、多くの組織が SAP やその他の法人向けソリューションをパブリック クラウドに移行する利点に気付き始め、IT 保守費用の削減、データ セキュリティの向上、より柔軟でスケーラブルな費用構造を目指しています。また、パブリック クラウド プロバイダを選択することで、データ統合とデータ分析の点でオンプレミス ソリューションをはるかに超える水準の機能を利用できます。Google Cloud は、クラウドとオンプレミスの SAP 環境向けに、それぞれ強力な 2 つの分析ソリューションを提供しています。1 つはクラウド データ ウェアハウスの BigQuery、もう 1 つは AI ツールと機械学習ツールのスイートです。

BigQuery: Google Cloud を利用したデータ ウェアハウジング

BigQuery は、フルマネージドのサーバーレスなクラウド データ ウェアハウスで、ペタバイト規模のプロジェクトを極めて高速に、運用費用を掛けず管理できます。BigQuery ML による組み込み型機械学習機能を使用すると、標準 SQL を用いた機械学習モデルを運用でき、BigQuery GIS による地理空間分析を行えます。BigQuery は、インフラストラクチャの規模を自動的に調整して最適なパフォーマンスを確保し、ストレージをコンピューティングと分離します。これにより、ユーザーは、他のクラウド データ ウェアハウスより 26%~34% 低い 3 年間総所有費用(TCO)で大規模に分析を実施できます1

3 か国で 11 店舗のデパートと 1 つの e コマースサイトを運営しているドイツの小売業者 Breuninger は、自社が所有するデータこそが、変化し続ける顧客の要望と行動に合わせて進化とイノベーションを継続するための鍵を握っていることに気付きました。その結果、複数の SAP システムを含む分散した IT 環境を集約し、BigQuery を使用して、全社から寄せられる多様なデータセットを分析するため、Google Cloud の導入に踏み切りました。現在、Breuninger は、独自仕様の SAP レポートを取得する代わりに BigQuery でレポートを作成することで、以前より低コストかつ迅速に分析情報を得ています。実際、スピードが非常に速いため、顧客データをリアルタイムで取得できています。つまり、Breuninger の各チームはより正確な情報に基づいて意思決定を行えるようになり、あらゆる販路で質の高いサービスを顧客に提供できるようになったのです。

Google Cloud は、当社のあらゆる IT コンポーネントとシームレスに統合できるため、データをまとめ上げてその意味をより深く理解するのに役立っています。それに加え、移行期間中には Google Cloud チームから手厚いサポートを受けることができました。

Breuninger 社データ プラットフォーム サービス責任者 Matthias Krenzel 氏

BigQuery Data Transfer Service は、あらかじめ設定されたスケジュールに基づいて Google マーケティング プラットフォーム、Google 広告、YouTube、パートナーの SaaS アプリケーションなどの外部データソースから BigQuery へ自動的にデータを転送するフルマネージド サービスです。そのため、1 行もコードを書くことなく分析用のデータ ウェアハウス基盤を構築できます。また、Google Cloud 一般公開データセットは、さまざまな業界向けに需要の多い、100 を超える一般公開データセットの強力なデータ リポジトリを提供しています。Google Cloud ではあらゆる一般公開データセット用の無料ストレージを提供しており、お客様は 1 か月あたり最大 1 TB のデータを無料でクエリできます。Google Cloud は、InformaticaQlikDatavardSAPSoftware AG などの主要なデータ管理統合プロバイダと提携しており、強力なツール群とソリューション群を使用して、ECC、S/4、BW などの SAP システムから抽出したデータをターゲット データ ウェアハウスである BigQuery に取り込めます。また、Atos は、Rapid Deployment Accelerators for SAP Analytics with BigQuery を開発しました。Atos によると、事前定義されたデータモデルを使用して、マスターをトランザクション データと結合することによりセルフサービス形式のレポート作成機能を利用できる一方で、60~75% 安い費用で 50~70% 早く開発を完了できるビジネス ロジックが実現します。BigQuery 内の SAP データを基に、検索トレンド、広告、マップなどの外部データソースを追加して、BigQuery に組み込まれた機械学習機能を活用すると、深みのあるビジネス分析を進めることができます。

Google Cloud の分析用 AI ツールと機械学習ツール

Google Cloud は、BigQuery 以外にも、高度な分析を行うために AI と機械学習をお使いのアプリケーションに迅速かつ簡単に実装できる数多くのツールを備えています。Google Cloud AI Building Blocks を使用すると、視覚認識能力、言語能力、会話能力、構造化データをアプリケーションに簡単に組み込めます。事前にトレーニングされた定評のある API を使用するか、Cloud AutoML を使用すると、最小限の労力と機械学習の専門知識だけで高品質なカスタムモデルを作成できます。

画像形式のデータを抱える組織は、Google Cloud の AI を基盤としたインテリジェントなプロダクト、AutoML Vision を利用することで、クラウドまたはエッジに存在する画像から学習情報を抽出できます。電力会社の AES は、AutoML Vision を使用して、何百基もの風力タービンの損傷状況を評価しています。AES は、ドローンを使用して、タービンの点検と写真撮影を行っています。これらのドローンは通常、30,000 枚の画像を撮影しますが、画像を 1 枚ずつ検証する必要があります。AES は、Google Cloud の AutoML Vision を導入し、機械学習機能を使用することで、損傷を自動的に検出できるようになったため、従来ほど時間をかけずに損傷を特定して修復できるようになりました。

データドリブン ビジネスの確立

Google Cloud Platform は、お客様ご自身のペースと方法で SAP 環境をクラウドに移行できるように設計されています。SAP アプリケーションをクラウドに移行すれば、インフラストラクチャの継続的なメンテナンス費用が不要で柔軟かつスケーラブルなソリューションをフル活用でき、企業データに対して BigQuery を使用することで新たなビジネス価値を生み出せるようになります。また、ビジネス プロセスに機械学習を導入し、現在および将来のニーズに合わせて複数のソリューションの組み合わせることが可能になります。

Google Cloud の分析ソリューションと機械学習ソリューションが SAP ユーザーにどのようなメリットをもたらすかについては、こちらをご覧ください(https://cloud.google.com/solutions/sap)。


1. 出典: ESG Master Survey Results、The State of Data Analytics、2019 年 8 月

-Google Cloud SAP 担当マネージング ディレクター Snehanshu Shah

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