Data Cloud の TimesFM: BigQuery と AlloyDB における予測の未来

Haiyang Qi
Software Engineer, BigQuery ML
Tabatha (Tabby) Lewis-Simo
Product Manager, AlloyDB
※この投稿は米国時間 2025 年 11 月 19 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Google は、TimesFM を Google の主要なデータ プラットフォームである BigQuery と AlloyDB に統合することを発表いたします。これにより、大規模な事前トレーニング済み予測モデルの能力が Google Data Cloud 内のデータに直接もたらされ、将来のトレンドをかつてないほど簡単かつ正確に予測できるようになります。
TimesFM は、Google Research が開発した強力な時系列基盤モデルで、4,000 億を超える実世界のタイムポイントの膨大なデータセットで事前トレーニングされています。この広範なトレーニングにより、TimesFM は「ゼロショット」予測を実行できます。つまり、再トレーニングしなくても、特定のデータに対して正確な予測を生成できます。予測モデルの作成とデプロイのプロセスが大幅に簡素化されるので、時間とリソースを節約できます。
では、これが BigQuery と AlloyDB でどのような意味を持つのかを見ていきましょう。
BigQuery の TimesFM
Google は、Google Cloud Next ‘25 で AI.FORECAST 関数のプレビュー版をリリースしました。今回発表する内容は以下のとおりです。
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AI.FORECAST と AI.EVALUATE の一般提供(GA)が開始されました。
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AI.DETECT_ANOMALIES が公開プレビュー版で利用可能になりました。
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AI.FORECAST は、以下を含む複数のオープンソース フレームワークでサポートされています。
では、これらについて詳しく見ていきましょう。
AI.FORECAST と AI.EVALUATE
GA リリースに含まれる主なアップグレードは以下のとおりです。
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TimesFM 2.5 がサポートされるようになりました。「model => “TimesFM 2.5”」を指定すると、最新の TimesFM モデルを使用して、予測精度の向上とレイテンシの短縮を実現できます。
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AI.FORECAST は最大 15,000 の動的コンテキスト ウィンドウをサポート: 「context_window」を指定することで、64 から 15,000 までの複数のコンテキスト ウィンドウがサポートされます。指定しない場合は、時系列入力サイズに一致するように 1 つのコンテキスト ウィンドウが選択されます。
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AI.FORECAST は履歴データの表示をサポート: 「output_historical_time_series」を true に設定することで、予測とともに履歴データを表示できます。このオプションを使用すると、より簡単かつ優れたビジュアリゼーションが可能になり、ユーザビリティが向上します。
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モデル評価用に AI.EVALUATE が追加されました。予測値の精度を評価するために実際のデータを指定できます。
以下の例では、TimesFM 2.5 モデルを使用し、AI.FORECAST で context_window = 1024 を指定して、最新の 1024 ポイントを履歴データとして使用できます。output_historical_time_series = true を指定すると、予測とともに履歴データが表示されます。
最初の 10 日間の予測値は以下のとおりです。


[可視化] タブをクリックして結果を可視化することもできます。結果は以下のようになります。


以下の AI.EVALUATE の例では、「2016-08-01」より前のデータを履歴として使用し、「2016-08-01」以降の実際のデータと予測された自転車の利用状況を比較して評価できます。
SQL は、各「usertype」に基づいて評価指標を生成します。


AI.DETECT_ANOMALIES
AI.DETECT_ANOMALIES を追加すると、予測値に対する異常を検出するターゲット データを指定できます。
以下の AI.DETECT_ANOMALIES の例では、「2016-08-01」より前のデータを履歴として使用し、「2016-08-01」以降のターゲット データで異常を検出できます。
SQL は、「2016-08-01」以降の各データポイントについて、ユーザータイプごとの異常を生成します。結果の 10 行の例は以下のとおりです。


AlloyDB の TimesFM
AI.FORECAST がAlloyDB でプレビュー版として利用可能になりました。AlloyDB 内から直接予測を行うための TimesFM の組み込みサポートが提供されます。これにより、データをエクスポートすることなく、販売予測、在庫需要予測、運用負荷モデリングなどのユースケースで、運用データと分析データを活用して予測を行うことができます。


AlloyDB を使用した売上予測
AlloyDB に保存されたデータを活用して売上を予測する方法の例を見てみましょう。従来は、AlloyDB からデータを抽出してデータ サイエンス環境に取り込み、予測モデルをデプロイしてモデルの予測を実行し、その予測を保存するために、ETL パイプラインを設定して維持する必要がありました。しかし、時間的制約のあるアプリケーションの場合、これらの手順はコストがかかる可能性があります。
代わりに、運用ワークロードに AlloyDB を活用すると仮定します。販売、在庫、価格のデータとメタデータは、retail_sales というテーブルに保存してあります。先週の売上は把握していますが、来週の売上を予測して、需要に応じて計画を立てたいと考えています。

AlloyDB の最新の統合により、わずか 2 つの簡単なステップで開始できます。
1. モデルを登録します。モデルがホストされている Vertex AI エンドポイントを指すように、AlloyDB のモデル エンドポイント管理内のモデル エンドポイントとして TimesFM モデルを登録します。これにより、AlloyDB は時系列データを安全にモデルに送信し、予測を受け取ることができます。以下の例では、Vertex AI にデプロイされた TimesFM モデルを指定し、モデル ID として「timesfm_v2」を選択します。
2. AI.FORECAST で予測を生成します。モデルを登録すると、AI.FORECAST 関数を利用できます。この関数は、時系列データと予測パラメータ(予測期間など)を受け取り、予測値を返します。
以下の例では、データベースに保存されている販売データに基づいて、信頼レベル 0.80 で次の 11 日間の販売を予測します。


この統合アプローチにより、データを高性能な AlloyDB インスタンス内に安全に保持し、Google の最先端の予測機能をすぐに活用できます。AlloyDB の低レイテンシと TimesFM のゼロショット予測機能により、運用ワークロードのリアルタイム予測分析が実現します。Google の統合について詳しくは、こちらのブログ投稿をご覧ください。
エージェントと MCP での AI.FORECAST
SQL インターフェースを介した TimesFM(AI.FORECAST)のサポートに加えて、Agent Development Kit(ADK)、データベース向け MCP ツールボックス、Google Data Cloud 向け Gemini CLI 拡張機能などのエージェント インターフェースを介して、BigQuery と AlloyDB で TimesFM の予測機能を活用できます。
BigQuery の組み込み予測ツールを使用する
このブログ投稿では、ADK の組み込み BigQuery 予測ツール(TimesFM を使用)でエージェントを記述し、データを使用した予測タスクを実行する方法を紹介しています。以下に示すのは、ADK で構築されたエージェントを使用して自然言語で予測タスクを実行する方法の一例です。


このブログ投稿では、MCP 拡張機能をインストールして設定し、Gemini CLI で BigQuery 予測ツールを使用する方法について説明しています。
次のステップ
TimesFM モデルが BigQuery で一般提供されました。詳しくは、チュートリアルと、AI.FORECAST、AI.EVALUATE、AI.DETECT_ANOMALIES のドキュメントをご覧ください。また、AlloyDB で TimesFM の使用を開始することもできます。
-BigQuery ML、ソフトウェア エンジニア Haiyang Qi
-AlloyDB、プロダクト マネージャー Tabatha(Tabby) Lewis-Simo


