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データ分析

BioCorteX が「この薬は効くのか?」問題に BigQuery を活用

2024年8月7日
Nik Sharma

CEO, BioCorteX

Amber Hilton

Healthcare and Life Sciences Principal Architect, Google Cloud

※この投稿は米国時間 2024 年 7 月 16 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: この投稿は、Built with BigQuery を活用したパートナー様をご紹介するシリーズの一部です。


BioCorteX は、事前にはわかり得ない「この薬は効くのか?」という問題の解決に重点的に取り組むテックバイオの先進企業です。この問題の解決を探るため、BioCorteX は初めての生物エミュレータを作成しました。これは、医薬品と細菌の関係を明らかにし、より適切な治療法の発見、開発を可能にするものです。新しいテクノロジーは高い価値を持つものの、それだけではできることに限りがあるという理解のもと、BioCorteX は科学的アプローチに根差した、他とは大きく異なるテクノロジーを使用しています。BioCorteX の成功は、革新的なテクノロジー、クラウド ファースト戦略、そして「統合生物学」の科学的アプローチの組み合わせによるもので、これが独創的なソリューションを可能にしています。

少しの相互作用が臨床試験に大きく影響

現在、製薬業界は世界全体で新薬の開発に年間約 2,500 億ドルも投資していますが、成功の確率はわずか 4% です1。このことから、規制当局による承認を妨げる障壁が、健康上の問題を抱えながら暮らす人々の選択肢を大幅に狭めていることがわかります。

最近の研究では、人間の体の表面や体内に生息する細菌が薬に作用し、臨床試験の失敗につながることがわかっています。BioCorteX の目標は、細菌と薬の関係への理解を深め、臨床試験が本当に治療的に失敗だったのかを明らかにすることです。

しかし、そのためには、仮説の段階から検証に進むまで膨大なデータの整理や処理が必要となり、通常は数週間や数か月に及ぶ長い待ち時間が生じます。コンピューティングとストレージの各リソースに対して必然的に発生する需要も非常に大きくなり、費用とパフォーマンスに影響を及ぼします。このことが原因で、研究者や臨床医が有意義な進展を遂げられないこともあります。

BioCorteX は、Google Cloud を利用することで、バイオテック分野の環境を変え、数年前には不可能と思われたような成果を短期間で達成しています。

BioCorteX は、2 つの相補的なテクノロジーを開発することで、この変化を加速させています。1 つ目は Carbon Knowledgeです。これは 300 億を超えるノード、160 億を超えるエッジから構成される生物学ベースの巨大なナレッジグラフで、BigQuery 上に保存されています。2 つ目は、基礎的なエミュレータとなる Carbon Mirrorです。これは、Carbon Knowledge™ をベースに、細菌、人類生物学、疾患、医薬品の間の隠れた相互作用を明らかにするものです。Carbon Mirror から得られた、行動につながるインサイトが、すでに治療反応のメカニズムへの深い理解と確実性の向上を促進し、高度な医薬品の大規模かつ迅速な開発を可能にしています。

こうした機能を開発するにあたり、BioCortex は、航空宇宙分野で実証されたデータ集約型のエミュレーション テクノロジーを採用し、それをライフ サイエンスや製薬の分野に応用しました。こうした手法は従来のモデリングやシミュレーションの機能を超越し、航空宇宙分野のミッション クリティカルなシステム設計で結果を出すために不可欠なものです。BioCorteX のテクノロジー エコシステムが独自の行動につながるインサイトを提供するためには、BigQuery での膨大なデータの体系的な管理と照会が重要です。

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テックバイオ業界は非常にエキサイティングな時期を迎えています。ほんの数年前まで、当社のような小さなスタートアップが Carbon Knowledge Carbon Mirror の規模のスケーラブルなソリューションを構築するのは、考えられないことでした。たとえば、BioCorteX は、 米国と日本で承認済みのすべてのがん治療薬について患者集団における in-silico の臨床試験を実施しましたが、Google Cloud を使用することで時間と費用を節約できました。- BioCorteXCTO / 共同創設者 Mo Alomari 博士

BioCorteX などのテックバイオ企業が、Google Cloud を活用して医薬品開発における大きな障壁を克服していることを嬉しく思います。BioCorteX は、ホリスティックな医薬品エコシステム アプローチを検討し、医薬品開発における失敗率を下げることで、人々の生活に直接的に大きな影響を与えられる可能性を示しました。医薬品開発の未来を形作るのは、このような最先端企業だと確信しています。」- Google Cloud、ヘルスケアおよびライフ サイエンス担当ディレクター Shweta Maniar

BioCorteX が実現する新たな治療的価値

BioCorteX は当初から、Carbon Knowledge を毎日リリースし、臨床医や研究者に常に最新かつ正確なデータを提供することを要件としてきました。このとき大きな課題となったのは、構築するパイプラインの数が多く、必要なナレッジグラフが大規模で複雑であるため、大量のコンピューティング リソースが必要になるということでした。会社が予算とリソースを追加して、インフラストラクチャを特別に設計することを求めたとしても、従来のナレッジグラフ アーキテクチャでは、大きなクエリ ワークロードはタイムアウトとなる可能性があります。

BigQuery は、こうした非常に大規模な集計処理を効率化し、数十億単位の行数をオンデマンドで返すことができます。BioCorteX は、さらに一歩踏み込み、強化されたテーブルのパーティショニング機能とクラスタリング機能を使用して、ナレッジグラフのサブセットにクエリを実行し、Carbon Knowledge のニーズをいつでも満たせるようになりました。これにより、クエリの速度と費用対効果が大幅に向上し、細部はエンドユーザーから見えないよう抽象化されました。

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ナレッジグラフの設計と開発に BigQuery の機能を使用したこの新しいアプローチは、BioCorteX が医薬品開発のライフサイクル全体にわたり真の価値を引き出せることを継続的に実証しています。薬と細菌の相互作用は日々新たに見つかっていることから、疾患の治療における臨床上の進歩が新時代を迎えていると楽観視するだけの理由があります。

こちらから、BioCorteX、および同社の製品やサービスについてご覧ください。

Built with BigQuery」の利点

Built with BigQuery は、BioCorteX などの企業が Google のデータクラウドを使って革新的なアプリケーションを構築するお手伝いをします。参加企業には以下のメリットがあります。

  • 専任のエキスパートから、重要なユースケース、アーキテクチャ パターン、ベスト プラクティスに関するインサイトを得ることによって、プロダクトの設計とアーキテクチャの構築を加速できます。

  • 共同マーケティング プログラムを利用して、認知度の向上、需要の創出、導入の拡大を図り、より大きな成功を実現できます。

BigQuery は、Google Cloud のオープンかつ安全でサステナブルなプラットフォームに統合された、パワフルでスケーラビリティの高い統合 AI レイクハウスのメリットを ISV に提供します。データの可能性を最大限に引き出してイノベーションを促進する方法については、Built with BigQuery の詳細をご覧ください。

ー BioCorteX、CEO Nik Sharma 氏

ー Google Cloud、ヘルスケアおよびライフ サイエンス担当プリンシパル アーキテクト Amber Hilton

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