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データ分析

地図と会話: CARTO が BigQuery により会話形式での GIS 操作を可能に

2023年10月3日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 8 月 24 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: この投稿は、Built with BigQuery を活用したパートナー様をご紹介するシリーズの一部です。


これまで数十年にわたり、企業は地理情報システム(GIS)を使って分析情報を地理空間データと融合し、データドリブンな戦略に活用してきました。たとえば、通信業界ではインフラストラクチャのデプロイに最適な地域を GIS で判断し、環境計画業界では、どこに植林すれば最大の効果が得られるかを GIS で特定しています。広告業界でも、キャンペーンの際に効果的なビルボードの配置を GIS で決定しています。

このように GIS が高度化し、企業が位置情報やユーザー属性情報をより細かく活用できるようになった一方で、複雑さも増しています。現在、GIS を最大限に活用できているのは、この分野のエキスパートだけであり、ほとんどの GIS や地図のアプリケーションは一般にその複雑さが弊害となって十分に活用されていません。

CARTO は、各企業がこのアクセシビリティの課題を克服できるよう、大規模言語モデル(LLM)と生成 AI を利用した対話型 GIS を提供しています。この対話型 GIS では、あらゆるレベルのユーザーが複雑な分析ワークフローを会話に置き換えることができます。

GIS、地図アプリケーション、ポータルは、その複雑さが妨げとなって、多くのユーザーが最大限に活用できていません。こうした従来型のアプリやシステムは、分析のためのオプションやレイヤが UI に大量にあるため、機能性が高い反面、複雑な分析ワークフローを操作できるよう訓練されたエキスパートしか利用できなくなっています。

こうしたアプリケーションの 2 つ目の課題として、分析スタックの他の部分とは別の特殊な地理空間ソフトウェア上で実行する必要があるという点も挙げられます。クラウド ネイティブ以外のソリューションでは通常、データを別のシステムに複製またはキャッシュ保存する必要があるため、アーキテクチャはさらに複雑になり、データ ガバナンスは限定され、費用がかさみます。これを解決する一つの方法として、組織の他部門と同じクラウドネイティブ プラットフォーム内で地理空間分析を実行できます。

LLM と生成 AI で GIS をシンプルに

生成 AI が分析の分野に変革をもたらし、さまざまな技術レベルのユーザーが複雑なデータを容易に操作できるようになっています。たとえば、チャットを使えば会話形式で分析を行い、必要なものをクエリや指示で定義できるため、複数のフィルタ、レイヤ、分析ワークフローを操作する必要がなくなります。

CARTO は、LLM と生成 AI のメリットを認識し、GIS 機能の妨げとなるフィルタ、オプション、その他のコンポーネントを手動で選択する必要がないようにすることで、アプリやポータルの複雑さの問題を解決し、GIS のインターフェースを大幅に簡素化できました。対話型 GIS なら、ニーズに最適な場所をシステムに尋ねるだけです。たとえば、「この都市で 7 月の来店数が最も多い地域は?」、「初めて子どもを迎えるカップル向けの広告はどこに配置すればよいか?」といった具体的な質問に最適なフィルタを選ぶ作業を、対話型 GIS が地理学の専門家としてサポートしてくれます。操作を簡素化、効率化できるだけでなく、GIS を有効に活用し、質問に対してより詳細な答えが得られます。

対話型 GIS でキャンペーンを最適化

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対話型 GIS を活用している企業の一つに、家庭外(OOH)広告業界のイノベーションの最前線にいるメディア企業 Clear Channel Outdoor があります。Clear Channel は 21 か国に事業を展開し、全世界で 47 万個を超えるビルボードを管理しています。

OOH で効果的な広告キャンペーンを企画するときには、オーディエンスと場所の分析結果を調整することが鍵となります。ターゲット オーディエンスがその広告を見る可能性が高い場所を特定し、適切な時期やタイミング、カスタマー ジャーニーにおける意思決定の段階でターゲットにリーチできるよう広告を最適化することが重要です。

Clear Channel Outdoor の RADARView は、地図ベースのインターフェースを備えたオーディエンス分析プラットフォームで、CARTO を基盤に構築されています。集約されたユーザー属性データ、行動に関する分析情報、場所や近隣地域のターゲティングを組み合わせて、広告主やブランドが望むオーディエンスに最も効率的にリーチできる OOH の広告枠を容易に特定、選択できます。

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Clear Channel Outdoor は RADARView を利用して OOH のメディアプランを作成しています。その際には、多数のオプションにより、オーディエンスの行動データや属性情報、幅広い場所との距離を適切に組み合わせて、最適なオーディエンス ベースの OOH キャンペーンを生成しています。ただし、7 万を超えるオプション(地域、オーディエンス セグメント、ブランドなど)から選べるため、考えられる組み合わせは数百万に上り、キャンペーンに適切なフィルタを選ぶのは非常に複雑な作業となります。このため、機能をフルに活用できるのは、プラットフォームの最適化方法に熟練したエキスパートのチームに限られます。RADARView に生成 AI 機能を追加することで、このプロダクトは使いやすくなり、Clear Channel Outdoor の従業員と顧客がより効率的にデータを活用して OOH キャンペーンを計画できるようになります。

CARTO の対話型 GIS を Clear Channel Outdoor の RADAR ツールに適用することで、OOH キャンペーンに最適なコンテキストとオーディエンスをより自然な方法で明らかにできます。現在、RADARView のユーザーは、このプロダクトと会話して、より効果的な OOH キャンペーンを企画できるようになっています。自然言語処理と会話をベースとするこのセルフサービスのアプローチにより、Clear Channel Outdoor の全チームにわたり、ツールの利用が増えると期待されています。セマンティックなフィルタ操作の強化により、ユーザー エクスペリエンスが簡素化されると同時に、生成されるメディアプランの効果が最大限に高まるため、結果的にオーディエンス ベースの OOH キャンペーンが大幅に改善され、パフォーマンスが向上し、オーディエンスとユーザーの双方にメリットがあります。

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BigQuery を使って構築: 生成 AI により地理空間データを最大限に活用

Clear Channel の事例は、対話型 GIS を BigQueryVertex AI、そしてその他の幅広い Google Cloud サービスで支えている一例にすぎません。BigQuery は生成 AI に必要となるすべての情報の基盤となり、BigQueryML は Vertex AI および PaLM2 と接続します。仕組みは次のとおりです。

  1. リクエストやメッセージを入力すると、このクエリが Cloud Functions のエンドポイントに送られます。その後、BigQuery ML 関数 ML.GENERATE_TEXT を使用して PaLM2 モデルが呼び出され、リクエストまたはメッセージの主要なエンティティが抽出されます。
  2. これらのエンティティがエンべディングに変換され、オーディエンス、地図上の場所(POI)、ブランドなどのカスタムデータを取得するために使われます。これらのデータは Vertex AI Matching Engine 内のエンベディング データベースに格納されます。
  3. アプリケーションが PaLM2 モデルからのレスポンスとカスタムデータを受け取ったら、これらのフィルタを一連のクエリに変換し、CARTO を通じて BigQuery に対して直接実行します。
  4. 最終的な出力は、フィルタの条件を満たす、地図上の一連のビルボードです。アプリケーション自体は Firebase HostingFirestore を使ってデプロイし、基本地図として Google マップを使用します。

対話型 GIS を構築するには、安定したデータ基盤、スケーラブルなシステム、最新のデータスタック アーキテクチャが必要であるだけでなく、セキュリティのためにはデータがデータ ウェアハウスを絶対に離れないことも重要です。CARTO、BigQuery、Vertex AI の組み合わせにより、LLM の機能とネイティブな地理空間データをすべて同じシステム内で提供できます。

BigQuery への地理空間サポートの追加と、その上に構築された CARTO プラットフォームにより、組織の他部門と同じ分析プラットフォームで GIS のフル機能を提供することが可能になりました。その結果、スケーラビリティ、費用対効果、セキュリティに優れた GIS が実現します。データを別の特殊なシステムに移動する必要はなく、データクラウド上で実行するだけです。

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CARTO と BigQuery による GIS アプリケーションのモダナイズ

CARTO により、BigQuery のネイティブな地理空間サポートを基盤とする GIS を最大限に活用できます。このクラウドネイティブ アーキテクチャでは、地理空間データを別のシステムに複製する必要がなく、データは他の分析環境と接続されます。この最新のスタックにより、スケーラビリティ、機能性、費用対効果に優れたプラットフォームが実現します。BigQuery ユーザーを対象とする CARTO の高度な空間機能について詳しくは、こちらをご覧ください。AI を活用した GIS システムのモダナイズや価値向上については、弊社のエキスパートにお問い合わせください。

ISV とデータ プロバイダにとっての Built with BigQuery のメリット

Google は Built with BigQuery イニシアチブを通じ、テクノロジー、便利な専用のエンジニアリング サポート、市場開拓共同プログラムを簡単に利用できるようにすることで、CARTO のような企業が Google のデータクラウド上で革新的なアプリケーションを作成できるように支援しています。参加企業には以下のメリットがあります。

  • 専任のエキスパートから、重要なユースケース、アーキテクチャ パターン、ベスト プラクティスに関するインサイトを得ることによって、プロダクトの設計とアーキテクチャの構築を加速できます。
  • 共同マーケティング プログラムを利用して、認知度の向上、需要の創出、導入の拡大を図り、より大きな成功を実現できます。

BigQuery は、Google Cloud のオープンかつ安全でサステナブルなプラットフォームに統合された、パワフルでスケーラビリティの高いデータ ウェアハウスのメリットを ISV に提供します。Google が提供する巨大なパートナー エコシステムと、マルチクラウド、オープンソース ツール、API のサポートを利用すれば、テクノロジー企業は、データ ロックインを回避するために必要な移植性と拡張性を得ることができます。

Built with BigQuery の詳細については、こちらをクリックしてください。

ー CARTO、創業者 Javier de la Torre 氏

ー Google Cloud、サステナビリティ / Geo ISV パートナーシップ Denise Pearl

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