よりよい未来のために今、量子へのアクセスを拡大
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 6 月 18 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
次なる技術革新は量子コンピューティングです。量子コンピューティングは、人間の健康と長寿、気候変動とエネルギー生産、人工知能などに変革的なブレークスルーをもたらす無限の可能性を秘めています。しかし、量子コンピューティングによって世界を変えるためには、さまざまな立場のユーザーが量子コンピューティングに素早く簡単にアクセスできる環境にしなければなりません。
このたび、イオントラップ型量子コンピューティングで注目を集める IonQ の量子コンピュータを Google Cloud Marketplace でご利用いただけるようになりました。デベロッパー、研究者、企業の皆様は数回クリックするだけで、Google Cloud 経由で IonQ の高忠実度 11 量子ビットシステムにアクセスできます。ご請求とプロビジョニングは既存の Google Cloud アカウント経由で処理されます。
IonQ の CEO 兼プレジデント Peter Chapman 氏と、Google Cloud の HPC および量子コンピューティング担当テクニカル ディレクター Kevin Kissell による対談をご覧ください。
Q: Peter さん、Kevin さん、まずは今日のニュースから始めましょう。今回の IonQ と Google Cloud の統合は、どのようにして実現したのでしょうか。
Kevin Kissell: 量子コンピューティングは、まだ始まったばかりの分野です。多くの可能性を秘めており、量子ツールを利用する人や企業が増えれば、量子コンピューティング全体を発展させる力になるはずです。Google は、さまざまなニーズを持つ多種多様なクライアントと仕事をしています。Google の実装は、こうしたニーズに対応する特定のクラスのハードウェアを構築することに重点を置いてきましたが、クラウドを利用することの本質的な価値は選択の自由にあるため、他の魅力的なテクノロジー プロバイダとの Google のプラットフォームを通じた連携も必要だと考えています。そして私にとって、IonQ は間違いなく最優先で連携したいチームでした。
Peter Chapman 氏: IonQ は、量子システムへのアクセスを民主化することと同じくらい、量子コンピューティングで優れたハードウェアを構築することに重点を置いており、クラウドはハードウェアを広く利用可能にするという点で IonQ に適しています。量子がもたらす未来には大変期待していますが、それを実現するためには、より使いやすく、より広範にアクセスできるようにする必要があります。Google Cloud Marketplace で利用できる最初の量子コンピュータを提供できることを光栄に思います。
Q: 大局的に見て、この統合は世界にとってどのようなサインになると思いますか。
Peter 氏: これは、そもそもクラウドとのパートナーシップを検討し始めた理由にまで遡ります。量子コンピュータをクラウド経由で誰もが簡単に利用できるようになれば、数分の時間とクレジット カードがあれば誰でも量子プログラムを実行できるようになり、量子が現実のものとなったことが実証されます。こうしたアクセスの民主化が、量子の未来を実現する核となります。どこかのガレージにいる子どもが、量子のキラー アプリケーションを考えつくのではないか、そんな期待も抱いています。しかし、それもアクセスできなければ始まりません。学術界、産業界、商業界の多くのユーザーがすでに Google Cloud アカウントを持っていることから、IonQ と Google Cloud は連携して、量子コンピューティングへのアクセスの合理化を大々的に進めています。
Kevin: 量子の実現はもはや、可能かどうか、いつなのかを疑う段階ではなくなりました。「どのように」、「どのくらい」を話す段階にまで来ています。IonQ の次世代システムは、これまで不可能だった実験が可能になるという利点があります。さまざまな量子マシンを Google Cloud に置くことで探索可能になる、量子プロセッサ トポロジーという側面があります。これにより、適切なソリューションやアプリケーションを開発できます。
Q: ここで初歩的な質問をしてみたいと思います。量子コンピューティングとは何でしょうか。また、お二人はどのようにしてこの分野に足を踏み入れたのでしょうか。
Peter 氏: 量子には、それを表現する言葉さえも一致していない面があります。そこでたとえ話をしてみます。あくまでもたとえ話で、数学的なレベルで文字どおりのことが生じるわけではありませんが、考えるには合理的な方法です。通常のコンピュータで迷路を解こうとすると、正しい解が得られるまで、考えられる限りの経路を順に試していくことになります。迷路の中で分岐点に行き着いたとします。前に進むか、左か、それとも右か。右を選んで進むと行き止まりになるので、分岐点まで戻って左に進みます。これもまた行き止まりになったら、分岐点まで戻って今度は前に進み、次の分岐点に至り、そこでも同じ手順を繰り返します。通常のコンピュータは、考えられる経路が数百万通りもある迷路も、数秒で解くことができます。しかし、迷路が一定の規模以上になると、通常のコンピュータでは解けなくなるか、実用的な時間内で解けなくなります。量子コンピュータは、経路がいくつあっても、考えられる限りの経路を同時に計算できます。そのため、常に従来のコンピュータより早く解にたどり着きます。それでは、この迷路のすべての経路を変数として捉えてみましょう。一部の難題は単純に、変数の量が従来のコンピュータの扱える範囲を超えていることと関係しています。だからこそ、量子コンピュータが大きな恩恵をもたらすと期待されているのです。
Kevin: 実は私の専門分野は量子ではなく、CPU アーキテクチャとコンピュータ設計です。2006 年のコンピュータ アーキテクチャ国際シンポジウムは、特に心に残る技術会議でした。その年は量子に関するセッションがありました。当時は量子について本当に何も知りませんでしたが、参加してみたところ、強く興味を惹かれるようになりました。私のアプローチは主に人間のために問題を解決する機械を作ることですが、その可能性を広げる扉を開くのは量子であるということを、その量子ワークショップが教えてくれました。現在は、私たちの住む世界と量子世界の橋渡しのようなことをしています。
Q: 量子コンピューティングの魅力はどこにあると思いますか。また、「本物の」量子コンピュータを自由に扱えるようになったら、まず何をしますか。
Kevin: 私のバックグラウンドは、計算問題を解決する機械を作ることです。この分野では、現在のスーパーコンピュータをスケールアップして大きな問題に対処するトリックをたくさん見つけ出してきました。しかし、技術的な限界があります。つまり、アルゴリズムから引き出せる並列処理は限られているのです。月並みな表現かもしれませんが、ムーアの法則の限界にぶつかっているということです。そのためコンピュータ設計者として、人工知能や量子コンピューティングなど、この状態を抜け出すためのあらゆる技術に注目しています。気候変動のような社会問題について考えてみましょう。現在の技術では、既存の自動車をすべて電気自動車に変えるためには、確認されている量を超えるレアアースが必要になります。もっと良質なバッテリーが必要です。量子電気化学を使えば見つかるかもしれません。これが十分な規模の量子マシンを手に入れたら最初に取り組みたい問題です。多くの量子ビットが必要となりますが、新しい量子アプリケーションの候補を見極めている段階であり、実現しやすいものは見つかる可能性があります。
Peter 氏: 量子の面白さは、そこに秘められた可能性にあります。IonQ では、量子コンピュータを COVID-19(新型コロナウイルス感染症)問題に役立てられないだろうかと話し合いました。量子コンピュータはまだ十分な性能を持っていませんが、それが近い将来に変わるということこそ、量子コンピュータの可能性です。COVID-19 の解決を誰もが心の底から切望していますが、がんの治療、貧困と飢餓の撲滅、気候変動の解決などに対しても、同じ要望を持つべきです。こうした問題に取り組むことができるのは、おそらく量子コンピュータだけです。そのため、より強力な量子コンピュータを作ることが急務だと感じています。量子が解決できるかもしれない問題で、多くの人が苦しんでいるからです。人工知能にも以前から興味があるので、真の量子コンピュータがあれば、人工知能も個人的に実験してみたいと思っています。
Q: これから量子の分野に進もうと考えている人にどのようなアドバイスをしますか。
Kevin: 現在のところ、量子分野の成長は人手不足によって頭打ちとなっています。単に、この分野を発展させる仕事の経験者がまだ十分でないのです。忍耐強く、長期的に身を投じなければなりません。成果が出るまで非常に長く感じるかもしれませんが、量子コンピュータは現在のコンピュータ サイエンスにおいて最も影響力のある分野だということを忘れてはなりません。
Peter 氏: 私は長年にわたり、先駆的な発明家であり未来学者でもある Ray Kurzweil 氏のもとで働いてきました。我々は未来を予測することに注力していました。つまり、テクノロジーが世に出る時期と、それを最大限に活用する最適なタイミングについて探っていました。これは量子コンピューティングについて考える貴重な訓練となりました。この分野を考えている人には、量子は思ったより早く実現し、世界を変えることになるということを知ってほしいと思います。コンピュータについて先見の明を持ち、その実現に貢献した草創期の人たちは、最終的に大きな成果を挙げました。そして現在、量子はそのような段階にあると思います。この分野でのキャリアを考えている人にとっては魅力的なことでしょう。
IonQ のイオントラップ型量子コンピューティングの利用を開始するには、こちらをご覧ください。
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-Office of the CTO テクニカル ディレクター Kevin Kissell
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