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コンピューティング

GKE コンピューティング クラスとコンピューティング フレキシブル CUD を利用した次世代の VM の活用

2025年10月10日
Victor Szalvay

Product Manager

Olivia Melendez

GCE Product Manager

※この投稿は米国時間 2025 年 9 月 30 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

組織は、クラウド コンピューティングの最新の進歩を通じて、優位性を獲得することを絶えず目指しています。N4、C4、C4A、C4D など、新しい Google Compute Engine と Google Kubernetes Engine(GKE)の第 4 世代のマシンシリーズでは、パフォーマンス、費用対効果、機能が大幅に向上しています。しかし、新しいハードウェアへの移行は必ずしも簡単なものではありません。チームは、互換性テスト、リージョンの容量、財務上の責務の遂行において課題に直面することが多々あり、これらすべてが導入を遅らせる可能性があります。

幸いなことに、Google Cloud の 2 つの高度な機能を併用することで、通常のオーバーヘッドなしで新しいマシンシリーズを導入するための戦略的かつ費用対効果の高い方法を利用できるようになります。GKE コンピューティング クラスの技術的な俊敏性と、コンピューティング フレキシブル確約利用割引(CUD)の財務上の適応性を組み合わせることで、イノベーションの加速化、復元力の維持、費用の最適化を同時に実現できます。さらに、コンピューティング フレキシブル CUD では Autopilot と Cloud Run の使用も対象となるため、ワークロードに適したコンピューティングを手軽に利用できます。それでは詳しく見ていきましょう。

課題: ハードウェア導入のハードルを克服する

最新のマシンシリーズを導入することで、パフォーマンスと効率性が新たなレベルに引き上げられますが、移行中に以下のようないくつかの難題に直面する場合があります。

  • 互換性テスト: 完全な移行の前に、新しいマシンシリーズでアプリケーションが想定どおりに動作することを確認する必要があります。そのためには、新しいハードウェアを安全に導入してパフォーマンス データを収集し、互換性を確保するための戦略が必要です。
  • リージョンの容量の確認: 新しいマシンシリーズがより多くのリージョンに拡大するにつれて、その可用性は変化する可能性があります。そのため、特定の場所での容量制限によってアプリケーションの可用性が影響を受けないように、フォールバック オプションが必要になります。
  • 財務上の責務の調整: リソースベースの CUD は優れた価値を提供するものの特定のマシン ファミリーに限定されるため、既存の契約期間中にさらに新しくて費用対効果の高いハードウェアを採用することについては柔軟性が乏しくなります。
  • ワークロードの移行: 複数のマシンタイプ全体でのワークロードの構成、移行、管理のプロセスは、運用上の複雑さを伴う可能性があります。これをスムーズに実行するには、プラットフォーム チームの綿密な連携が必要になります。

解決策、パート 1: GKE コンピューティング クラス

GKE コンピューティング クラスでは、ハードウェアの導入に関する課題に対して優れた技術的ソリューションが提供されます。ワークロードを単一のマシンタイプに結び付けるのではなく、GKE が自動スケーリングに使用できるマシンファミリーの優先順位付きリストを定義できます。これにより、最先端のテクノロジーを柔軟かつ復元力のある方法で段階的に統合できます。

コンピューティング クラスを使用すると、費用対効果が高くて新しいマシン ファミリー(N4 など)を優先するよう GKE に指示するポリシーを定義できますが、最初の選択肢が利用できない場合は、すでに使用している確立されたマシン ファミリー(N2 や N2D など)に自動的にフォールバックします。また、コンピューティング クラスに新しいワークロードを段階的にサブスクライブすることで、新しいハードウェアを順次、安全にロールアウトできます。これにより、運用上のリスクとダウンタイムを最小限に抑えられます。

活用例

たとえば、ステートレス ウェブ アプリケーションで新しい N4 マシンシリーズの優れた費用対効果をうまく利用したいと考えているものの、トラフィックが予期せず急増した場合は前世代の N2 シリーズにフォールバックすることを希望しているとします。

この場合は、優先順位付けされたマシン ファミリーのリストを使用して、カスタムの ComputeClass オブジェクトを作成できます。

ComputeClass マニフェスト(n4-fallback-class.yaml):

読み込んでいます...

この簡単な定義により、GKE クラスタ オートスケーラーはまず N4 ファミリーからノードのプロビジョニングを試みます。それが不可能な場合、リスト内の次のオプションである N2 ファミリーを自動的に試します。

次に、nodeSelector を使用して、ワークロードの Pod 仕様でこのクラスを参照します。

ワークロード Kubernetes マニフェスト:

読み込んでいます...

このコンピューティング クラスの構成を使用して、ワークロードを N4 に段階的に移行できます。それには、対象のワークロードに cloud.google.com/compute-class: n4-fallback-class nodeSelector ラベルを追加して再デプロイするだけで完了します。

実際の成功事例: 新しいハードウェアを安全に導入した Shopify

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技術面と財務面での柔軟性を兼ね備えたこの強力な組み合わせは、単に理論的なものではありません。実際に大手企業によって成果を挙げるために活用されています。Shopify のプリンシパル エンジニアである Justin Reid 氏は Google Cloud Next '25 において、同社が GKE コンピューティング クラスを活用して、世界最大級の GKE フリートを運用している方法について共有してくださいました。

GKE コンピューティング クラスにより、Shopify はブラックフライデーとサイバーマンデーに大規模なサービスを提供できましたが、これは前述の戦略を正確に実装した結果です。つまり、新しい N4 マシンを優先するコンピューティング クラスを定義し、N2 マシンをシームレスなフォールバック オプションとして含めました。

「コンピューティング クラスは、Shopify が最も要求の厳しいイベントでスケールするうえで重要な役割を果たしました。おかげで、運用上の複雑さが大幅に軽減されました。」 - Shopify、プリンシパル エンジニア、Justin Reid 氏

Next ‘25 のセッション全体はこちらでご覧いただけます。

実際の成功事例: C シリーズ ファミリーによる高パフォーマンス ワークロード

要求の厳しいワークロードには、一貫して高いパフォーマンスを提供し、ローカルで接続された SSD、高度なメンテナンス制御、より大きな VM シェイプ、より高い CPU 周波数などのエンタープライズ機能にアクセスできる C シリーズの VM がよく選ばれていますここではコンピューティング クラスを設定して、前世代の VM よりも優れた費用対効果を実現する C4 や C4D などの新しい高性能オプションを優先できます。また、これまで広範にわたって使用してきた VM にフォールバックすることも可能です。

ComputeClass では、C4 または C4D をプライマリ VM として、もう一方をフォールバック オプションとして、C2 VM を最後のオプションとして設定できます。これにより、最新のマシンタイプの入手可能性を最大限に高めながら、複数の前世代プラットフォームに対する供給を自信を持って活用できます。可用性が犠牲になることはありません。

ComputeClass マニフェストは次のようになります。

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ワークロードの Pod 仕様で cloud.google.com/compute-class: c4-c4d-fallback-class を参照することで、要求の厳しいアプリケーションは信頼できるフォールバック プランとともに、パフォーマンスと費用対効果が最も高い C シリーズの VM に常に配置されます。

解決策、パート 2: コンピューティング フレキシブル CUD

技術的な俊敏性は、考慮すべきことの半分にすぎません。費用ベースのコンピューティング フレキシブル CUD は、これに匹敵する商用上の柔軟性を提供します。リソースベースの CUD では、特定の 1 つのマシンシリーズで最大割引が適用されますが、フレキシブル CUD では、フォールバック オプション(C2 や N2 など)を活用しながら、第 4 世代(N4 や C4 など)を含む幅広いマシン ファミリー全体で対象となるコンピューティングの合計費用に適用されます。

コンピューティング フレキシブル CUD を購入すると、1 年間または 3 年間にわたってコンピューティング リソース(vCPU、メモリ、ローカル SSD)に対する 1 時間あたりの費用を確約することで、大幅な割引(3 年間の場合、汎用 VM が最大 46% オフ)が適用されます。

活用例

3 年間のコンピューティング フレキシブル CUD を購入したとします。前の例の n4-fallback-class を使用する GKE クラスタは、初めに N4 マシンでワークロードを実行します。その使用には、コンピューティング フレキシブル CUD が自動的に適用されます。

ところが、リージョンで需要が急増し、GKE のコンピューティング クラス ポリシーによって、追加の負荷を一時的に処理する N2 マシンがプロビジョニングされたとします。ここで重要なのは、コンピューティング フレキシブル CUD がワークロードに自動的に適用され、N2 マシンにも割引が適用されることです。割引額は使用に応じて変動するため、CUD を失うことなく、安心して新しいハードウェアを導入できます。

実際の成功事例: Verve Group

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Verve Group SE は、AI を活用した広告ソフトウェア ソリューションで広告主とパブリッシャーを支援する大手デジタル メディア企業です。自社データとプライバシー ファーストのテクノロジーに重点を置きながら、広告主とパブリッシャーを結び付けて効果的なキャンペーンを実現しています。

「Verve では新しい C4D のほか、C3D や N2D などの VM といったさまざまなマシンシリーズを使用しています。カスタム コンピューティング クラスを使用して、リージョン間の費用対効果をランク付けしたフォールバックをオーケストレーションしています。費用の大部分はコンピューティング フレキシブル CUD でカバーされていますが、これは当社が使用する多くのマシンシリーズで割引の柔軟性を確保するうえで重要な役割を果たしています。」- Verve、プリンシパル システム エンジニア、Pablo Loschi 氏

最新のインフラストラクチャのための最適な組み合わせ

GKE コンピューティング クラスの技術的な復元力とコンピューティング フレキシブル CUD の適応性を組み合わせることで、新世代の Compute Engine マシンシェイプといったハードウェア導入のための堅牢かつ経済的に健全な戦略を策定できます。この統合されたアプローチにより、以下が実現します。

  • 安全な革新: 重要なワークロードで新しいマシンシリーズを段階的に導入してテストできます。

  • パフォーマンスと費用の最適化: Google Cloud が提供する最新かつ費用対効果の高いハードウェアを活用できます。

  • 復元力の強化: 新しいハードウェアを統合しても、アプリケーションの高可用性を確保できます。

  • 運用の簡素化: さまざまなマシンタイプをまたいで、ノードの複雑なプロビジョニングとスケーリングを GKE で管理できます。

これらの機能を活用してイノベーションの最前線に立ち、Google Cloud の急速に進化するコンピューティング環境のメリットを安全で効率的かつ費用対効果の高い方法で自信を持って探求、活用できます。

詳しくはこちらの動画で、カスタム コンピューティング クラスによって GKE のインフラストラクチャの自動スケーリングがどう改善されるかについてのわかりやすい概要をご確認ください。Compute Engine の第 4 世代マシンタイプGKE コンピューティング クラスコンピューティング フレキシブル CUD についても、詳細をご確認ください。

謝辞: この投稿に貢献してくれた、Google Compute Engine のシニア プロダクト マネージャー Yasmin Mowafy に感謝の言葉を贈ります。

-プロダクト マネージャー Victor Szalvay         
-GCE プロダクト マネージャー Olivia Melendez

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