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ビジネス インテリジェンス

Looker のセマンティック レイヤがビジネス インテリジェンス向けの信頼できる AI を実現する仕組み

2025年5月22日
Richard Kuzma

Group Product Manager, Data Agents

Jesse Sherb

Product Manager

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※この投稿は米国時間 2025 年 5 月 8 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

データがインテリジェントなアプリケーションを支え、ビジネス上の意思決定を促進する AI の時代において、正確で一貫性のあるデータ分析情報の需要はかつてないほど高まっています。しかし、データの複雑さと膨大さがツールやチームの多様性と相まって、誤解や精度の問題につながるリスクもあります。そのため、セマンティック レイヤで信頼性のあるデータの定義を管理することが非常に重要になります。セマンティック レイヤは、自社ビジネスに関する固有情報を、標準化された参照情報とともに利用して、ビジネスに適した一貫性のあるデータ解釈を提供します。これにより、真実に基づく AI イニシアチブと分析プロセスを確立でき、信頼できる結果を導くことができます。

Looker のセマンティック レイヤは、ビジネスの指標やディメンションの信頼できる唯一の情報源として機能し、組織内で各種ツールにまたがって一貫性のある明確な用語が確実に活用されるようにします。つまり、セマンティック レイヤは、生成 AI ツールが単なる元データではなくビジネス ロジックを解釈するための基盤を提供します。これは、ビジネス用語とユーザー意図をマッピングする重要なシグナルによって正確な答えが導き出され、曖昧さが軽減されることを意味します。また、LookML(Looker モデリング言語)が、セマンティック モデルの作成を支援します。セマンティック モデルによって、組織がデータの構造とロジックを定義でき、複雑さが抽象化されるので、組織内のユーザーは必要な情報を簡単に得ることができるようになります。

セマンティック レイヤは特に生成 AI において重要な意味を持ちます。管理されていないデータに生成 AI を直接適用すると、印象的であるものの、根本的に精度と整合性に欠ける結果が生成される場合があります。たとえば、複雑な SQL を記述する際など、重要な変数を誤算したり、データを不適切にグループ化したり、定義を誤解したりすることがあります。場合によっては、これが誤った戦略や収益機会の逸失につながります。

データドリブンな組織には、信頼できるビジネス情報が必須です。Google 内部のテストでは、Looker のセマンティック レイヤによって、生成 AI の自然言語クエリにおけるデータエラーがほぼ 3 分の 1 に減少しました。Enterprise Strategy Group の最近のレポートによると、組織の分析およびビジネス インテリジェンス プラットフォームにとって、データの品質と整合性を確保することが最大の課題であることがわかりました。Looker は、信頼できる唯一の情報源として、データの精度を確保し、組織全体とすべての接続されたアプリケーションに信頼できるビジネス ロジックを提供します。

信頼できる生成 AI の基盤

生成 AI を真に信頼できるものにするには、組織のデータ インテリジェンス エンジンとして機能する堅牢なセマンティック レイヤをその基盤に据える必要があります。これにより、核となるビジネス コンセプトを定義する一元化された管理フレームワークが提供され、一貫した唯一の信頼できる情報源が確保されます。

セマンティック レイヤは、BI 向けの信頼できる生成 AI の実現に不可欠であり、次の効果をもたらします。

  • 信頼性の向上: 一貫して定義され、管理されているデータを根拠に AI の回答を生成することで、生成 AI の「ハルシネーション」を減らします。

  • ビジネス コンテキストを深く理解: AI エージェントとデータ エージェントは、組織内のアナリストと同じくらいビジネスを理解している必要があります。セマンティック レイヤを使用することで、これらのエージェントにビジネス用語、指標、相互関係を理解させ、ユーザーのクエリを正確に解釈して関連性の高い回答を提供できるように強化できます。

  • ガバナンスの徹底: 既存のデータ セキュリティとコンプライアンスのポリシーを生成 AI 環境に適用して、機密情報を保護し、監査可能なデータアクセスを実現します。

組織内の整合性: 組織全体でデータの整合性を確保することで、すべてのユーザー、レポート、AI を活用した分析情報で、共通の定義と用語を使用し、同じ方法で参照できるようにします。

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LookML で精度を向上させ、大規模言語モデルの推測依存を減らす

生成 AI 時代におけるセマンティック レイヤの利点

Looker のセマンティック モデリング言語である LookML は、クラウド向けに設計されており、生成 AI を BI に完全統合するために多くの重要なメリットを提供します。

  • 一元化された定義: 専門家が指標、ディメンション、結合関係を一度定義すれば、すべての Looker エージェント、チャット、ユーザーがそれらを再利用できます。これにより、回答の一貫性が確保され、認識を統一できます。

  • 高度な決定的計算: Looker はランダム性を排除し、予測可能で再現可能な結果を提供するので、複雑な数学的または論理学的な演算に特に効果を発揮します。さらに、ディメンション化されたメジャー機能によって値が集計されるため、グループとして一括で演算を行い、複雑なアクションを迅速かつ簡単に実行できます。

  • ソフトウェア エンジニアリングのベスト プラクティス: Looker は、継続的インテグレーションとバージョン管理により、コード変更を頻繁にテスト、追跡し、本番環境のアプリケーションが円滑に稼働し続けられるように徹底します。

  • 時間ベースの分析: 組み込みのディメンション グループにより、時間ベースと期間ベースの計算を実行できます。

  • データの深掘り: ドリル フィールドを使用すると、ユーザーは単一データポイントの探索を通じてデータを詳細に調べることができます。データ エージェントはこの機能を利用して、ユーザーがさまざまなデータのスライスを詳しく調べられるように支援できます。

セマンティック レイヤの基盤により、曖昧なフィールド名(order.sales_sku_price_US など)が含まれる元テーブルに対する SQL コードの記述を LLM に要求する必要はありません。LookML 内で明確に定義されたビジネス オブジェクト(Orders > Total Revenue など)を検索するという、LLM の特性を生かした機能が LLM によって自ずと発揮される仕組みになっています。これらのオブジェクトには、メタデータに加え、人間にわかりやすい説明(例:「取引金額または販売価格の合計」)が含まれています。これは、ビジネス ユーザーがビジネス表現を使い(例:「収益を表示」)、データ的な表現(例:「数量ではなく販売額(価格)の合計を表示」)を使わない場合に非常に重要な要素となります。LookML はデータソースと意思決定者が求める情報とを結び付けるので、LLM は正しいフィールド、フィルタ、並べ替えをより適切に識別でき、データ エージェントをインテリジェントなアドホック アナリストとして機能させることができます。

LookML は、データの構造化されたライブラリ カタログを提供します。これにより、AI エージェントは関連する情報と要約を見つけて、質問に正確に回答できます。その情報を適切な場所から実際に取得するタスクは、Looker によって処理されます。

AI と BI の密な連携によって、インテリジェントで信頼性の高い会話型の分析情報が約束されます。Looker のセマンティック レイヤにより、お客様はデータにアクセスするすべてのサーフェスでこれらのイノベーションを活用できます。今後も、さまざまなデータソースにサポートを拡大し、エージェント インテリジェンスを強化して、会話分析にさらなる機能を追加することで、データ インタラクションを最も信頼できるビジネス アドバイザーとの会話と同じくらい直感的で強力なものにしていきます。

Looker のセマンティック レイヤと会話分析のメリットを最大限に活用するための第一歩を踏み出しましょう。Conversational Analytics API の詳細については、Google Cloud Next の最新のアップデートをご覧ください。また、こちらからプレビュー版へのアクセスをお申し込みいただけます。

-グループ プロダクト マネージャー、Richard Kuzma

-プロダクト マネージャー、Jesse Sherb

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