ルノーグループによる、Google のソフトウェア定義自動車業界ソリューションの活用法
Femi Akinde
Product Lead, Cloud Shell and Cloud Workstations
【Next Tokyo ’25】
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視聴はこちら※この投稿は米国時間 2025 年 7 月 17 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
ルノーグループはヨーロッパの大手自動車メーカーとしてよく知られており、ソフトウェア会社だと認識している方は少ないかもしれませんが、そう考えるのが妥当である理由も多くあります。ルノーグループの Ampere Software Technology は、インテリジェントな電気自動車向けの高度ソフトウェア ソリューションを開発および統合し、顧客体験の向上と新しいサービスを実現するソフトウェア定義自動車(SDV)の開発に取り組んでいます。
Ampere は、大規模な Android Automotive OS(AAOS)コードベースを活用して、ルノーグループのソフトウェア定義自動車を開発しています。しかし、他のソフトウェア企業と同様に、費用の抑制、コードベースの同期、適切なテスト体制の維持、新しい人材のオンボーディングに苦労していました。
Google Cloud とルノーグループの既存のパートナーシップを基盤として、Ampere はソフトウェア定義自動車の開発に Google Cloud ソリューションを導入しました。Google Cloud Workstations と Gemini Code Assist を活用したこのソリューションは、開発過程でよく発生する障害の多くを排除することで、プロセスを効果的に合理化し、安全性と生産性を高めました。


Cloud Workstations は、セキュリティを重視する企業を対象にフルマネージド開発環境を提供します。同時に、Gemini 2.5 を活用した Gemini Code Assist は、ソフトウェア開発ライフサイクル全般にわたって安全な生成 AI コーディング支援とエージェントを提供します。また、AAOS 向けに特別に開発された Google のバーチャル ツイン技術を活用することで、Ampere はフルデジタル版の自動車を構築しました。
このソリューションのコンポーネントを詳しく見ていきましょう。
Google Cloud Workstations
Google Cloud Workstations は、Android オープンソース プロジェクト(AOSP)に携わる開発者の全般的な生産性向上に大きく役立ちます。Ampere のコンテキストでは、お客様の AAOS リポジトリと事前に同期された永続ディスクを備えたオンデマンドの開発環境が提供されます。これにより、長い同期時間やビルド時間が不要になり、開発者はどこからでも作業にアクセスできます。Ampere のプラットフォーム管理者はこれらのワークステーションをプロビジョニングし、開発者が生産性を発揮できるようになるまでの時間を大幅に短縮しています。開発者は、十分な vCPU、RAM、高速 SSD ストレージを備えた高性能な仮想マシンに即座にアクセスできます。これは、要求の厳しいエミュレータを使用する開発者にとって重要なことです。リソースを柔軟に利用できるようになり、ボトルネックの防止や開発の加速が進みます。次に、安全な認証済みクラウド アクセスと Google Cloud のセキュリティ ツールにより、IP(知的財産)の漏洩と不正アクセスを大幅に削減できます。最後に、一貫した開発環境を確保することで、「私のマシンでは動いたのに」という問題を回避し、デバッグ時間を短縮できます。 柔軟なアクセスとディスク構成により、どこからでもワークステーションにアクセスでき、永続ディスクを介したコードベース、構成、ビルド アーティファクトのセッション間での保持が可能になりリポジトリの同期を繰り返す必要がなくなるため、AAOS 開発者の生産性が向上します。
AI を活用した Android 開発のための Gemini Code Assist
そこで Ampere は、Gemini Code Assist と統合された Android Studio と Code OSS の IDE を開発者に提供して複雑化するコード管理に対処しました。これは、習得に要する時間を短縮しただけでなく、エラーの防止にも役立ちました。Gemini Code Assist は、検索拡張生成(RAG)を使用して Ampere の非公開コードベースとドキュメントにアクセスし、Android 開発の標準と規則に合わせて調整された、関連性が高く正確なコード提案を提供します。関数についての説明、モジュールの要約、次のステップの提案で、膨大なコードベースを迅速に把握できるようになり、新しい開発者や SDV ソフトウェアのさまざまな部分に取り組む開発者にメリットをもたらしました。また、ボイラープレート コードの自動化、API の提案、潜在的な問題の検出により、Android 開発の生産性向上にも役立ちました。開発者は反復作業ではなく、SDV のコアロジックに集中できるようになりました。


バーチャル ツイン
Google Cloud により、Ampere の AAOS 開発者とテスターは車の「バーチャル ツイン」を使用できるようになり、実車テストや管理が不十分な仮想テストに必要なリソースの確保や工程の複雑化という問題が解決されました。開発者は、強力な Compute Engine インスタンスと、Cuttlefish などの特殊な Android エミュレータを使用して、正確な仮想車両組み込みシステムを構築できます。これにより、仮想ハードウェアを使った厳格なソフトウェア テストが可能になり、物理プロトタイプを作る前に堅牢なパフォーマンスを確保できます。AAOS 開発者は、スケーラブルな仮想デバイスを使用して、並列テスト、包括的な回帰スイート、シミュレーションを行うこともできます。これにより、CI/CD パイプラインの「テスト」フェーズが加速し、SDV ライフサイクルが改善されます。バーチャル ツインは、GKE と GitLab などを利用して Cloud Workstations 開発環境とお客様の CI/CD パイプラインに統合されているため、開発者は、ワークステーションで AAOS に追加した変更をビルドしてバーチャル ツインのフリートでトリガーする自動テストにより、コードに関するフィードバックを即座に取得できます。
SDV 開発のモダナイゼーションによる具体的な効果
Google Cloud は、Cloud Workstations の堅牢なマネージド インフラストラクチャ、Gemini Code Assist のインテリジェントな支援、バーチャル ツインを組み合わせることで、Renault による自動車ソフトウェア開発のモダナイゼーション、イノベーションの加速、新機能のこれまでになくスピーディーな市場投入に役立っています。
「...ヨーロッパでソフトウェア定義自動車向けソフトウェア プラットフォームに投資して構築するには、ツールが必要です。Google はその点で優れています。その中心にあるのは AI です。コード生成について言えば、コンパイルを待ってから開発者が利用できるようになるのではなく、すぐに実行する必要があるものをインスタンス化します。エンジニアの効率を高めて、より少ない時間でより多くのことを行えるようにするためです。私たちは時間に追われています。」 - Ampere 最高ソフトウェア責任者(ルノー グループ)Henry Bzeih 氏
Google Cloud と Gemini Code Assist は、自動車 OEM にとって単なるツール導入に留まりません。競争力、収益性、イノベーションのスピードを高め、ビジネス成果に確かなインパクトをもたらす変革を実現します。
従来、新しい開発者のオンボーディングには数日と費用がかかります。AAOS での開発には、セットアップに時間がかかるだけでなく、依存関係の管理、ビルドシステムのトラブルシューティングも必要となるケースが多くあります。リポジトリの同期やツールチェーンの構成など、これまで数日かかっていた環境のセットアップを数分に短縮し、AI アシスタンスを活用すれば開発スピードも大幅に加速します。
OEM は、ローカル デバイスから知的財産が漏洩することを懸念しています。Cloud Workstations は、お客様の Virtual Private Cloud 内で動作することで、この懸念に対処します。このアプローチでは、ソースコードがローカル環境で同期されるため外部エンドポイントに公開されることがなく、セキュリティ リスクを抑えることができます。
クラウド インフラストラクチャの費用は発生しますが、全体として大幅なコスト削減が可能です。ハイエンドのローカル マシンを排除し、環境管理にかかる開発者の時間を最小限に抑えることでスケジュールを短縮し、総開発コストを削減します。また、実際に利用した分にのみ料金が発生するクラウド リソースを迅速に調整できることで、アイドル状態のハードウェアにかかるコストを避け、エンジニアリング投資のリターンも向上します。
最後に、自動車のバーチャル ツインを活用すれば、品質保証や検証作業の効率がよくなります。開発者は、限られたプロトタイプや信頼性に欠けるローカル エミュレータに頼る代わりに、精緻な仮想自動車モデルを活用することで、イテレーションの高速化、スケーラブルなテスト、早期のバグ検出、高度なシナリオ シミュレーションを実現できます。
Cloud Workstations と Gemini Code Assist の活用により、自動車メーカーは新たなテクノロジーを導入するだけでなく、開発能力そのものの再構築を進めています。詳細については、SDV 業界ソリューションの成功に関する、ルノーグループの Ampere 最高ソフトウェア責任者(ルノー グループ)Henry Bzeih 氏との対談をご覧ください。

自動車業界のお客様は、Google の GitHub リポジトリをご覧になることで、Gemini Code Assist を活用したカスタム AAOS 開発環境の構築をすぐに始めていただけます。もちろん、Google のパートナー エンジニアリング担当者、カスタマー エンジニアリング担当者がサポートいたします。
-Cloud Shell および Cloud Workstations プロダクト リード Femi Akinde