API で通信事業エコシステムの価値を創造: STC のデジタル トランスフォーメーション
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 10 月 22 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: 今回は、STC の技術および運用担当シニア バイス プレジデントの Haitham AlFaraj 氏と、アプリケーション担当バイス プレジデントの Yazeed Alfaris 氏に加え、アプリケーション計画・統制担当 GM の Faisal Alhatlani 氏にお話を伺いました。STC は同名でビジネスを展開しており、1998 年以来サウジアラビアとその周辺地域における通信業界を牽引しています。STC がデジタル トランスフォーメーション戦略の一環として API を使用してビジネスを拡張し、パートナーやお客様とより効果的に連携している方法をご紹介します。
通信事業会社の世界は変わり続けています。今や、人、情報、サービスがかつてないほどつながり、事実上すべてのサービスをオンデマンドですぐに使用できることが期待されるデジタル時代となっています。STC はすでに中東の通信業界のリーダーであるとはいえ、競争の激しい分野でトップの座を維持するには、成長を続け、価値ある体験をお客様に提供する必要があります。
私たちは将来に備えて 4 本柱の戦略を導入し、サウジビジョン 2030 に対応しています。当社の「DARE」戦略は、STC のデジタル化、コアアセットのパフォーマンスの加速、世界標準でのカスタマー エクスペリエンスの刷新、規模と範囲の拡大という目標を中心として構築されています。若者や起業家向けのデジタル プラットフォームとなり、強力なエコシステムを構築することで、サウジアラビアのさまざまな日常活動をモダナイズするように努めています。
デジタル トランスフォーメーションは、こうした各柱の芯となるものです。私たちは、デジタル化による成長、変化、進化を図るあらゆる方法を検討し、API が変革に不可欠であることを認識しました。ビジネスのあらゆるレベルで API を導入することで、組織内外の利用者に向けてデジタル サービスの安全性とアクセスを強化し、パートナー エコシステムとの連携を効率化して、新しいカスタマー サービスを迅速に提供できます。
全社的に API を導入
API の可能性を最大限に発揮できるように、社内グループでも API ファースト戦略の推進を開始しました。冗長になる可能性のある使い捨て機能やポイントツーポイント統合を数多く作成するのではなく、社内チーム、パートナー、他の STC Group の子会社が再利用できるプロダクトとして API を構築するようチームに指示しました。すでにさまざまなユースケースで 100 を超える API プロダクトを導入しており、拡大を続けています。
自社 API プロダクトのセキュリティ、ランタイム ガバナンス、シームレスなオンボーディング エクスペリエンスに関する API プログラム要件の増加に応じられる、、堅牢かつスケーラブルで柔軟な API 管理ソリューションが必要でした。当社のデジタル アーキテクチャにとって重要なコンポーネントとなるため、その選択は容易ではありませんでした。包括的な評価プロセスを経て、いくつものソリューションを調べました。
最終的に、当社は Google Cloud の Apigee API 管理プラットフォームを選びました。Apigee は強力なセキュリティと機能を備えているうえ、プラットフォームが非常に使いやすい点を高く評価しています。実装以来、Apigee から強力なサポートとソート リーダーシップが提供されているため、正しい選択をしたという確信がいっそう強まりました。
Apigee は、サービス プロバイダが IT と運用のアジリティを改善し、顧客中心主義をさらに進めることを目的とした TM FORUM Open API への参加など、革新的なデジタル トランスフォーメーション イニシアチブへの参画を可能にすることで、私たちの API プログラムを成功に導いてくれました。
API プログラムの成功は API トラフィック量にも表れています。子会社による使用から、API トラフィック量は 2020 年第 1 四半期から 2021 年第 1 四半期にかけて 300% 以上増大しました。
デベロッパーの成功を優先
API を使用し、STC のお客様に新しいサービスを提供するのはデベロッパーです。そのため、デベロッパーは API ファーストの考え方を成功させる鍵となります。デベロッパーが API を利用して成果を収めるには、一元化されたデベロッパー ポータルを通じたシームレスなセルフサービスのオンボーディング エクスペリエンスを構築することが重要であると私たちは考えています。API デベロッパー ポータルがあれば、デジタル アセットとそれが提供する価値の全体像を把握できるだけでなく、API 導入を加速し、API を見つけやすくすることもできます。
この方向に舵を切るために、STC は Apigee を活用する統合 API デベロッパー ポータルを作成しました。Apigee デベロッパー ポータルは非常にシンプルで、迅速かつ簡単にオンボーディングでき、デベロッパーは API についての確認やテスト、簡単な登録をすべて 1 か所で行うことができます。セルフサービスを利用できると、大企業と連携しているか、独立してアプリを作成しているかに関係なく、デベロッパー コミュニティのより多くのメンバーが当社の API を探索することができます。これにより、さらに多様なサービスや大きな価値がお客様にもたらされます。
デベロッパー ポータルはすでにリリースされており、数十人の内部デベロッパーがオンボーディングしています。主要なイニシアチブを推進する内部 API をリリースし、パートナー エコシステム向けの API もいくつかリリースしました。一般公開すれば、デベロッパーと API の数が大幅に増加すると予想されます。Apigee によって、当社のシステムを引き続き拡大し、すべてのユーザーに優れたエクスペリエンスを提供できると確信しています。
新しいカスタマー サービスの提供
パートナー向けにリリースした最初の API の一つは、キャリア決済(DCB)API です。これにより、STC のお客様は STC の請求書を通じてパートナー サービスの料金を支払うことができます。パートナーごとに独自の統合を作成する必要がなくなり、パートナーは DCB API を使用して接続することができます。そのため、Netflix、Apple、Microsoft、Amazon などの新しいパートナーを記録的な速さでオンボーディングできました。お客様はこうした新しいサービスに非常に肯定的な反応を示し、登録は着実に増加しています。
また、STC Pay の開始に必要な API の作成と提供の管理にも Apigee を使用しました。STC Pay は、STC Group の安全なデジタル ウォレット ソリューションです。Apigee を実装する前は、このソリューションを実行するための基盤を作成するまで 1 年近くかかったかもしれません。しかし、API ファースト戦略と強力な API 管理機能を実装することで、わずか 3 か月で STC Pay の提供を開始できました。この結果は、API が新しいビジネスを開拓し、STC のリーチを拡大するのにどれほど有効かを示しています。
デジタル化の未来に向けて
私たちは現在、API を使用して STC アセットを収益化し、新しい収益源を生み出す方法を理解するため、複数のビジネス ユニットと協力しています。また、STC Kuwait や STC Bahrain など、STC Group 全体の子会社まで API 管理を拡大する予定です。これにより、API を通じたコラボレーションと共有の可能性が広がります。
現在の API 管理プログラムは、当然ながら連携 API プラットフォームへと進化しており、複数のビジネス セグメントにサービスを提供しています。組織内で API の導入が増えるにつれ、サーバー間の通信ではなく、公開 API や、モバイル アプリ、スタンドアロン アプリとの接続に注目が集まることが予想されます。こうしたイニシアチブにより、API のセキュリティがかつてないほど重要になっていくと考えています。
STC では、デジタル トランスフォーメーションに引き続き重点を置くことは、自社の成長に良い影響を及ぼすと考えています。API を使用して自社、パートナー、お客様に対し価値を創出するうえで役立つ API 管理は、今後も変革において重要な役割を果たしていくでしょう。
STC などの他の多くの企業によって、API と Apigee API 管理がどのように使用されているのかの詳細については、Telecom State of the API Economy 2021 レポートをお読みください。
- STC 技術および運用担当シニア バイス プレジデント Haitham AlFaraj
- STC アプリケーション担当バイス プレジデント Yazeed Alfaris