UCLA: API で築く高等教育機関テクノロジーの未来
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 7 月 14 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
あなたがある大学で働いているとします。大学で学部の経費を使う場合は、毎回いくつかの手順を踏む必要があるため、支払いに時間がかかります。あるいは学生であるなら、自分の成績表を確認して必要なクラスを見つけて登録したいと考えるでしょう。ところが、各種手続きが別々のアプリやウェブサイトに分散していて、情報が矛盾している場合もあります。現代の消費者が企業に対して手間のかからない魅力的なデジタル エクスペリエンスを期待しているのと同様、現代の学生も高等教育機関に対して同じようにわかりやすくスムーズなエクスペリエンスを期待しています。
次に、あなたがある大学の IT スタッフで、古いプロセスをデジタル エクスペリエンスに移行しなければならないとしましょう。プロジェクト単位でのカスタム統合は避けたいと考えています。つまり、教員が何かを購入する、学生がクラスの情報を必要としているなど、新しいユースケースごとに異なる統合は行いません。必要なのは、新たな用途に対して開発者が繰り返し、簡単かつスケーラブルに利用できるデータと機能です。また、これらのシステムを利用できるだけでは十分でありません。さまざまな関係者が問題なく見つけることができ、トラフィックの急増に耐え、シンプルに一括管理できるうえ、セキュリティの確保も簡単でなければなりません。
これはまさに、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の IT チームが直面した課題です。同校は長年、その優れた IT を称賛されてきましたが、テクノロジーの進化が止まることはありません。学生、スタッフ、保護者の期待に迅速かつ俊敏に対応するために、UCLA はアプリおよびデジタル サービス構築に際して最新の API ファースト アプローチを必要としていました。
UCLA のエンタープライズ統合担当プログラム マネージャーである Curtis Fornadley 氏によれば、多くの大企業と同様、大学にもレガシー システムが数多くあり、最新のアプリケーションに対して使用しなければならないことがあるそうです。
「UCLA のチームは以前、SOAP サービス向けの自前のゲートウェイで、エンタープライズ サービス バスを実行していました」と Fornadley 氏は説明します。「しかし SOAP ベースのサービスはスケーリングが難しく、こうしたサービスを管理するにはサービスのロックダウンが必要になることが頻繁にありました。これは、データと機能を開発者にとって使いやすいものにしたいという私たちの思いと相容れない状況でした。」
現代の API ファーストのアーキテクチャは分散したチーム全体にスケーリングできるよう設計されているため、管理者がガバナンスとセキュリティに対応する一方で、開発者は必要なリソースを簡単に利用して迅速に作業を進めることができます。UCLA でのこのようなアーキテクチャの導入の必要性を認識した Fornadley 氏は、包括的な API プログラム提案書を作成しました。これが Google Cloud の API 管理プラットフォームである Apigee の導入につながり、そのビジョンは現実のものとなりました。
「大学のすべての人々がもっと効率的に新しいソリューションを開発できるようにする API 管理ツールが必要でした」と Fornadley 氏は言います。
このビジョンの根幹を成すのは、Ascend 財務管理システムと学生情報システムの開発です。前者は UCLA が使用する財務システムの API を拡張したもので、さまざまな学部の開発者が安全でスケーラブルなセルフサービス機能を介して API にアクセスできます。また、学生情報システムに組み込まれた API により、キャンパスで使用されるさまざまな UCLA アプリケーションから学生の成績、財務記録、個人情報にリアルタイムでアクセスできます。これら 2 つのプロジェクトだけでも、API の数、そしてそれらの API を利用するアプリケーションの数は膨大なものとなり、サービスのオンライン化の維持、使用状況のモニタリング、アクセスの認証のために総合的な管理が必要になります。
大学内の開発者とパートナーの双方から見て、キャンパス全体を対象とした API プログラムがなければ、API エクスペリエンスが分断されてしまうことでこの取り組みの成功は難しくなったことでしょう。UCLA は現在 200 を超える API を管理しており、開発者がセルフサービス方式のポータルを使用して必要なサービスを探し利用するハブアンドスポーク モデルを構築しています。キャンパス全体を対象とする、連携のとれた API ガバナンスを確立できたため、関係者全員に一貫性のあるエクスペリエンスがもたらされ、開発者がアプリケーションを開発する際には信頼できる単一情報源のデータを利用できるようになりました。
UCLA の API プログラムはまだ拡大中ですが、多くの成果がその効果を物語っています。キャンパスでの Apigee の呼び出し回数は 2020 年の 100 万回から、2021 年には 1,100 万回(現時点)にまで増加しています。自前のゲートウェイから Apigee への全 API の移行は今月にも完了し、今年末までの呼び出しは 4,900 万回以上になると見込まれています。
また、このプログラムは今後の数え切れないイノベーションの基盤ともなります。たとえば、API の使用状況をモニタリングして分析することで、興味深い目的やよくある用途に使われているサービスを把握でき、将来の投資の判断に役立ちます。また、進化を続ける脅威から API を保護するための知見を得ることもできます。さらに、UCLA は API によって多数のデータストア間サイロを解消し、クラウド内のサービスに接続できるようにすることで、これらのデータストアを有効活用しています。そして何よりも、API はパートナーと UCLA の連携を容易にし、迅速かつシンプルなコラボレーションとサービス共有を実現しています。
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-Google Cloud ビジネス アプリケーション プラットフォーム プロダクト担当責任者(ディレクター)Vikas Anand