Vertex AI Agent Builder で AI エージェントを構築、スケーリング、管理するその他の方法

Mike Clark
Director of Product Management, Vertex AI Agent Builder
※この投稿は米国時間 2025 年 11 月 6 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
多くのデベロッパーが AI エージェントのプロトタイピングを行っていますが、スケーラブルで安全かつ適切に管理された本番環境向けエージェントへの移行は非常に複雑です。
Vertex AI Agent Builder は、信頼できるエージェントを構築、スケーリング、管理するための Google Cloud の包括的かつオープンなプラットフォームです。一連のプロダクトとして、グローバル規模で強力なエージェント システムを構築するために必要な選択肢を提供します。
今年 Agent Builder が一般公開されて以来、Python Agent Development Kit(ADK)などのコンポーネントが大きな注目を集めており、ダウンロード数は 700 万回を超えています。Agent Development Kit は、Gemini Enterprise を使用するお客様向けのエージェントや、Google のさまざまなプロダクトで動作するエージェントにも活用されています。
この勢いをさらに加速させるため、Google は本日、AI エージェントの構築、スケーリング、管理を支援する、エージェントのライフサイクル全体にわたる新機能を発表します。この機能で以下のことができるようになります。
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構築を高速化: ADK API を使用して、制御エージェント コンテキストと構成可能なコンテキスト レイヤ(静的、ターン、ユーザー、キャッシュ)でトークン使用量を削減。
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Vertex AI Agent Engine(AE)の新しいマネージド サービス(新しいオブザーバビリティと評価機能を含む)を使用して本番環境でスケーリング。
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ネイティブ エージェント ID やセキュリティ保護などの新機能により、自信を持ってエージェントを管理。
これらの新機能は、Agent Builder に対する Google のコミットメントを強調するものであり、どの技術スタックを選択しても、お客様のニーズに合わせてエージェント開発ライフサイクルを簡素化します。
参考までに、使用するツールとタイミングは次のとおりです。


この図は、Agent Builder の包括的な構成を、構築、スケーリング、管理の柱に整理して示しています。
1. AI エージェントを迅速に構築
エージェントをコンセプトから実用的なプロダクトに構築するには、複雑なオーケストレーションが必要です。そのため、Google はデベロッパーの皆様の構築エクスペリエンスを向上させるために ADK を改善しました。
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より堅牢なエージェントを構築: 適応可能なプラグイン フレームワークを使用して、カスタム ロジック(ポリシーの適用や使用状況の追跡など)を実装できます。または、エージェントの「自己修復」を支援するツール使用のための新しいプラグインなど、Google の事前構築済みプラグインを使用することもできます。つまり、エージェントはツール呼び出しが失敗したことを認識し、新しい方法でアクションを自動的に再試行できます。
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より多くの言語をサポート: また、Go デベロッパーが Python や Java と並行して ADK エージェントを構築できるようにします(専用の A2A Go SDK を使用)。これにより、より多くのデベロッパーがフレームワークにアクセスできるようになります。
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単一コマンドでのデプロイ: エージェントを構築したら、ADK CLI を使用して、単一のコマンド adk deploy でエージェントを Agent Engine(AE)ランタイムにデプロイできます。これは、エージェントをローカル開発からライブテスト、本番環境での使用へと迅速かつシームレスに移行できるようにするためのメジャー アップグレードです。
GitHub の adk-samples または Vertex AI Agent Garden で今すぐ構築を開始できます。Agent Garden は、厳選されたエージェントのサンプル、ソリューション、ツールをまとめたリポジトリで、開発を加速し、ADK で構築されたエージェントのワンクリック デプロイをサポートするように設計されています。
2. AI エージェントを効果的にスケーリング
エージェントを構築してデプロイしたら、次のステップは本番環境で実行することです。エージェントの数を 1 つから複数にスケールするにつれて、それらを効果的に管理することが重要な課題になります。そのため、Google は Agent Engine で利用できるマネージド サービスを継続的に拡大しています。Agent Builder で作成したエージェントをデプロイ、スケーリングするためのコア機能を提供します
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オブザーバビリティ: adk web でおなじみのローカル開発環境を Google Cloud に導入し、クラウドベースの本番環境モニタリングを実現します。エージェント エンジンでは、以下のことが簡単にできます。
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エージェントの主要なパフォーマンス指標を追跡するダッシュボードで、トークン消費量、レイテンシ、エラー率、ツール呼び出しを時系列で測定します。
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トレースタブで本番環境の問題を迅速に発見して修正できます。フライアウト表示すれば、エージェントが実行しているアクションのシーケンスを可視化して把握できます。
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プレイグラウンドで、デプロイされたエージェントとやり取り(過去のセッションや問題を含む)して、デバッグループを大幅に短縮します。
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品質と評価: 非決定論的なシステムを評価することは大きな課題であるというご意見をいただき、これを解決する機能を導入しました。ユーザー シミュレータを含む新しい評価レイヤを使用して、エージェントのパフォーマンスをシミュレートできます。
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アクセスが簡素化: ADK CLI を使用して Agent Engine ランタイムにデプロイし、Google Cloud アカウントに登録しなくても AE セッションとメモリを使用できます。Gmail アドレスを使用して登録すると、最大 90 日間無料でご利用いただけます。Google Cloud アカウントをお持ちの場合は、AE ランタイムで無料枠が提供されるようになったため、安心してデプロイして試すことができます。
以下は、Agent Engine 内の更新された AE ダッシュボード、トレース、プレイグラウンドなど、新しいオブザーバビリティ機能の動作を示すデモです。


3. AI エージェントを自信を持って管理
エージェントのパフォーマンスを大規模に測定できるようになったら、ライフサイクルの最終段階として、エージェントが安全かつ責任を持って動作するようにします。新機能と拡張機能は次のとおりです。
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エージェント ID: 既存の Cloud IAM 機能を基盤として、エージェントに Google Cloud 内で独自のネイティブ ID を付与します。エージェント ID は、ファーストクラスの IAM プリンシパルとして、真の最小権限アクセスを適用し、コンプライアンスとガバナンスの要件を満たすためにきめ細かいポリシーとリソース境界を確立できます。
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保護対策と高度なセキュリティ: AI アプリケーションを保護し、安全を確保するための既存の保護対策がすでに利用可能です。Model Armor は、プロンプト インジェクションなどの入力リスクから保護するだけでなく、ツール呼び出しとエージェントのレスポンスもスクリーニングします。Model Armor は、Gemini モデルの組み込みインライン保護と、エージェントと統合するための REST API を提供し、完全な制御を実現します。完全な可視性を提供するために、Security Command Center の AI Protection との新しい統合により、エージェント アセットが検出されてインベントリに登録されるとともに、エージェントによる不正アクセスやデータ漏洩の試みなどのエージェントの脅威が検出されます。
さらに、Agent Builder で構築したエージェントは、チームが Gemini Enterprise 内で直接使用できるように登録できます。
以下は、Gemini Enterprise のダッシュボードのモックです。Agent Builder で構築されたカスタム エージェントを登録して従業員が利用できるようにし、ワークフローを加速させるための単一の場所を作成する方法を示しています。


Agent Builder で成果を上げているお客様
「Color Health は、関連医療グループの Color Medical とともに、米国唯一のバーチャルがんクリニックを運営し、予防からサバイバーシップまで、臨床的に指導されたエンドツーエンドのがん治療を 50 州すべてで提供しています。Google Cloud と Google.org とのパートナーシップにより、Gemini LLM を活用した ADK を使用して Vertex AI Agent Builder で構築された AI 搭載エージェントを使用し、Agent Engine で本番環境にスケーリングすることで、より多くの女性が乳がん検診を受けられるよう支援しています。Color Assistant は、女性がマンモグラフィを受ける時期かどうかを判断し、臨床医とつなぎ、ケアのスケジュールを立てます。このエージェントの強みは、規模を拡大できることです。これにより、より多くの女性にリーチし、多様でコンテキスト豊富な回答を収集し、リアルタイムで対応できます。早期発見が命を救う: 女性の 8 人に 1 人が乳がんを発症しますが、早期発見できれば生存率は 99% です。詳細は color.com/breast-cancer-screening をご覧ください」- Color、AI プラットフォーム責任者、Jayodita Sanghvi 博士
「PayPal は Vertex AI Agent Builder を使用して、本番環境でエージェントを迅速に構築、デプロイしています。具体的には、Agent Development Kit(ADK)CLI とビジュアル ツールを使用して、エージェントのインタラクションを検査し、状態の変化を追跡し、マルチエージェント ワークフローを管理します。エージェントのワークフローのトレースとデバッグには、段階的な可視化機能を利用します。これにより、チームはリクエスト / レスポンスを簡単に追跡し、インテント、カート、支払い指示のフローを可視化できます。最後に、Agent Builder の Agent Payment Protocol(AP2)は、信頼できるエージェントによる決済のための重要な基盤を提供します。AP2 は、安全でセキュアなエージェントベースのコマース エクスペリエンスの提供を加速するのに役立ちます。」- AI 担当プリンシパル エンジニア、Nitin Sharma 氏
「Geotab は Vertex AI Agent Builder を使用して、エージェントを迅速に構築し、本番環境にデプロイしています。具体的には、Google の Agent Development Kit(ADK)を AI エージェントのセンター オブ エクセレンスのフレームワークとして使用しています。単一の管理可能な本番環境へのパスでさまざまなフレームワークをオーケストレートできる柔軟性を提供すると同時に、ビルド、テスト、デプロイのサイクルを劇的に加速する優れたデベロッパー エクスペリエンスを提供します。Geotab にとって、ADK はエージェント AI ソリューションを企業全体に迅速かつ安全にスケールできる基盤です。」- データ・分析担当バイス プレジデント、Mike Branch 氏
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Vertex AI Agent Builder は、エージェントのライフサイクル全体を管理するための統合プラットフォームを提供し、プロトタイプから本番環境対応のエージェントへの移行を支援します。これらの新機能の詳細については、更新された Agent Builder のドキュメントをご覧ください。
スタートアップ企業で、エージェントの構築とデプロイについて詳しく知りたい場合は、スタートアップ向け技術ガイド: AI エージェントをダウンロードしてください。タスクの自動化、創造性の強化、スタートアップでのまったく新しいユーザー エクスペリエンスの構築など、どのような目標であっても、アイデアからプロトタイプ、そしてスケールへと進むために必要な知識を習得できます。
-Vertex AI Agent Builder、プロダクト マネジメント担当ディレクター、Mike Clark



