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AI & 機械学習

会話型 AI チームを構築するためのレシピ

2021年4月23日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2021 年 4 月 10 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

chatbot や音声 bot などのコンタクト センターの仮想エージェントは、人工知能(AI)の機能を活用することで、リクエストの量に関係なく企業が顧客とつながり、24 時間体制で質問に回答できるようにします。AI ツールは、今後カスタマー エクスペリエンスのプロセスを効率化するうえでますます不可欠になります。

コンタクト センターでの会話型 AI のメリットについては納得しているものの、どこから始めたらよいかわからない場合があります。

Google Contact Center AI(CCAI)のチームの一環を担う UX 研究者として、私たちはお客様と多くの時間を過ごし、仮想エージェントの適切な開発と管理のために必要となるものについて独自の視点を持っています。チーム作成に画一的な方法はありませんが、コンタクト センターの研究に多くの時間を費やす中で、典型的な 6 つの役割を発見しました。本投稿では、会話型 AI を正しく扱ううえで重要な要素となる各役割と、その他の関係者についてご説明します。

全員がエンジニア - 最も陥りやすい落とし穴

本題に入る前に、このトピックがきわめて重要である理由について簡単にご説明します。会話型 AI の開発をエンジニアだけ、もしくは 1 人のプロダクト マネージャーだけで構成されたチームに丸投げしているケースがよくあります。この理由として考えられるのは、顧客と適切かつ自然に対話できる仮想エージェントの実装がどれほど難しいものかを多くの企業が過小評価していることです。会話には微妙な流れがあり、解釈が難しくなることがよくあります。

たとえば、会話の締めくくりといった単純な場面でも、流れに合わない誤った応答をしてしまうことがあります。

ユーザー:       ではまた。

仮想エージェント:         「ではまた」とおっしゃいました。会話を元に戻しますか?

ユーザー:       (え?)   [ユーザーがチャットを終了]

このような解釈間違いはユーザーの混乱や失望を招き、「企業の顔」であるコンタクト センターの印象が悪くなります。深刻な場合、仮想エージェントの設計に十分な注意を払わなかったせいで、ブランドの信頼性が損なわれたり、企業イメージが傷ついたりする可能性もあります。そのため、ユーザーを中心に据えた視点で会話型 AI を構築していただくことをおすすめしています。それにはまず、適切なチームを編成する必要があります。

会話型 AI に求められる主な役割

仮想エージェントを初めて構築する際は、エンジニアリング、ユーザー エクスペリエンス、データ サイエンスのバランスを取りながら、スキルをうまく組み合わせたチームを編成する必要があります。Google 独自の経験から、次の 3 つの主な役割を特定しました。

1)会話アーキテクト

会話アーキテクト(CA)は会話の設計の専門家です。住宅を設計する建築家のように、お客様との対話で使用する仮想エージェントのブループリントを作成します。また、専門的な人間の言語スキルを活用して、自然な人間の話し方のパターンを人間から仮想エージェントへの対話フローに適用します。たとえば仮想エージェントの言葉遣いは、内容、スタイル、トーンを調整可能で、特定のコンテキストに必要とされる適正なレベルのフォーマル度を使用できる必要があります。さらに、CA は製品の要件とお客様のニーズを明確に理解するために、ビジネスの関係者と協力して以下を行う必要があります。

  • お客様の要件を収集する

  • ユースケースを定義する

  • 人間から仮想エージェントへの会話フローを繰り返し設計する

旅行の予約や既存予約の管理のために作成された chatbot を例に考えてみましょう。ビジネス ロジック、法的条件、ドメイン仕様に適合する操作フローを設計するには、複数の関係者とコミュニケーションを取る必要があります。この場合、CA はビジネス関係者と協力して、新規予約の作成に必要な目的地、日付、旅行者数などの重要な情報を定義する責任があります。また、CA は bot 作成プラットフォームを通じて、会話フローの設計を chatbot や音声 bot に転送することがよくあります。

2)bot デベロッパー

CA の役割は前述のとおり、人間と仮想エージェントの間で行われる会話を設計し管理することです。一方、bot デベロッパーの役割は、利用可能なフライトの予約可能な日時を確認するといった複雑なアクションを仮想エージェントが実行できるようにすることです。また、bot デベロッパーはサービスの統合や、カスタマイズされた追加の UI または IVR(インタラクティブ音声レスポンス)の実装をサポートする責任もあります。

3)品質保証テスター

AI の開発と保守の反復型ライフサイクルに基づくベスト プラクティスから割り出されたもう一つの重要な役割は、品質保証(QA)テスターです。この役割は、特に開発プロセスの初期段階では見落とされがちです。品質保証テスターは、事前定義されたユースケースに対して会話型 AI をテストする責任を負います。こうしたユースケースやスクリプトは通常、CA の設計に基づいて作成されるか、利用可能な会話データの分析を通じて作成されます。会話の途切れ、予期しないユーザー エクスペリエンス、ターゲット フローの不一致は、QA テスターによって発見され、チームに報告されます。また、新しいケースや問題のあるフローを特定し、CA が会話の設計を改善しやすくするのも QA テスターの役割です。

強力な会話型 AI 開発をサポートするためにあると良い役割

通常、強力な会話型 AI チームには、前述の 3 つの主な役割に加えて、次の推奨される役割が含まれます。

  • プロダクト マネージャー

  • コピーライター

  • データ アナリスト

プロダクト マネージャーは、CA がユースケースを定義して優先順位を付け、開発ライフサイクルを管理し、複数のチームとコミュニケーションするのを支援します。

コピーライターは CA が操作フローを定義した後に活躍します。主な目的は、仮想エージェントのコンテンツ品質を確保することです。トレーニング データなしで会話型 AI テクノロジーによって人間の会話を把握することは困難です。人は通常、さまざまな表現を使って物事について話します。私たちはその発言内容に基づいて、相手の意図を割り出します。

Google Cloud Dialogflow では、後述のトレーニング フレーズ(人が物事を話すために使用する可能性のあるさまざまな表現)を呼び出します。たとえば、ユーザーは「ピザが欲しい」というフレーズに「ピザを持ってきて」や「ピザを注文して」という表現を使用する場合があります。Google の大部分のお客様は、コールセンターのログデータやコピーライターを使用して、トレーニング フレーズの作成と定義を補助しています。

「会話の設計は 1 つあればよいですが、レスポンスの作文はそうはいきません。コピーライターは仮想エージェントの人格を作り上げるのに役立ちます。」- 会話型 AI インキュベーター マネージャー Pavel Sirotin 氏

大量のトレーニング フレーズとレスポンスを抱える複雑な仮想エージェントを作成するには、すべてのコンテンツを管理するコピーライターをチームに迎えることが不可欠です。たとえば、ユーザーが「パリ行きのフライトを予約したい」と言う場合、コピーライターは同じことを伝えるために使用する可能性のある他の表現を少なくとも 10~15 個考え出す必要があります。次に例を示します。

  • 「パリ行きのフライトを予約できますか」

  • 「パリ行きのフライトを予約希望です」

  • 「パリに行く予定がありフライトを予約する必要があります」

chatbot や音声 bot が起動されると、データ アナリストは主な指標を定義してモニタリングし、障害の根本原因を分析して、試験運用版の機能の A/B テストを設定できます。

考慮すべきその他の重要な関係者

会話型 AI の開発に直接役立つ役割に加えて、さまざまな深さで関わりのある関係者はほかにもいます。法務アドバイザーは、プロジェクトの範囲とユースケースを定義するために必要なあらゆる規制の包括的な見解を提供できます。また、マーケティング チームのビジネス アドバイザーが、仮想エージェントによるサービスが新たに策定されたビジネスルールや戦略に沿っているかを確認するケースもあります。

最も効果を出せる問い合わせのユースケースを見つけるために、チームからコールセンターのマネージャーに相談して調査することが多々あります。マネージャーは問い合わせの量とユースケースの複雑さに関する知識があるため、現状からの置き換えや補強に適したやり取りをより明確に理解しています。

また、会話型 AI の開発において、コールセンターのエージェントの役割が過小評価され、見過ごされることは少なくありません。これまで、コールセンターのエージェントが会話型 AI チームに正式なメンバーとして参加したり、そのコンサルタントを務めたりして成果を出している例を数多く見てきました。彼らが持つ現場の知識(ビジネスルールの熟知、実際の会話を通した無数の顧客対応経験など)は、会話フローの設計やトレーニング フレーズの作成に非常に有益です。たとえば、飛行機予約のユースケースの場合、コールセンターのエージェントがいれば、飛行機予約から発展しやすい質問の中から、お客様が尋ねることの最も多い内容を特定できます。

レシピを正しく理解する

会話型 AI チームの編成を成功させる 1 つの定まった方程式などはありません。結局は、優先順位、組織の発展段階、リソースなどに最適な組み合わせを見いだすことに尽きます。同時に、主な役割、あると良い補助的な役割、考慮すべきその他の主な関係者の組み合わせのレシピに沿うことで、世界クラスのチーム構築を実現できます。

会話型 AI の開発は魔法ではなく共同作業です。Google Contact Center AI Dialogflow CX を活用すれば、企業は直感的なビジュアル フロー ビルダーを使用して高度な仮想エージェントを少ない工数で構築できます。Dialogflow CX を使用して仮想エージェントを構築する方法の詳細については、こちらをご参照ください

-UX 研究者 Yuan Jia

-UX マネージャー Shantanu Pai
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