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AI & 機械学習

Agent2Agent プロトコル(A2A)を発表:エージェントの相互運用性の新時代

2025年4月10日
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Rao Surapaneni

VP and GM Business Application Platform

Michael Vakoc

Product Manager

※この投稿は米国時間 2025 年 4 月 9 日に、Google Developer blog に投稿されたものの抄訳です。

AI エージェントは、日常の繰り返しタスクや複雑な作業を自律的に処理し、人々の生産性向上を支援します。現在、企業は職場全体でのプロセス拡張および自動化のため、新しいノートパソコンの注文、カスタマーサポート担当者の支援、サプライチェーン計画まで、様々な場面で自律型エージェントの構築と導入を進めています。

AI エージェントの効果を最大化するには、分断されたシステムやアプリケーションを横断して、多様なエージェントがエコシステム内で連携できることが重要です。異なるベンダーやフレームワークで構築されたエージェント同士が相互運用できれば、自律性向上、生産性向上効果が倍増するとともに、長期的なコスト削減が実現します。

本日、Agent2Agent(A2A)という新しいオープンプロトコルを発表しました。この取り組みには、Atlassian、Box、Cohere、Intuit、Langchain、MongoDB、PayPal、Salesforce、SAP、ServiceNow、UKG、Workday など 50 以上のテクノロジーパートナーと Accenture、BCG、Capgemini、Cognizant、Deloitte、HCLTech、Infosys、KPMG、McKinsey、PwC、TCS、Wipro といった主要なサービス プロバイダーが参加しています。A2A プロトコルにより、AI エージェント同士がコミュニケーションを取り、安全に情報交換し、様々な企業プラットフォーム上やアプリケーション上でアクションを調整できるようになります。このフレームワークで、お客様の AI エージェントが組織全体のアプリケーション環境で連携し、大きな価値を生み出すと確信しています。

この共同の取り組みは、基盤技術に関わらず、AI エージェントがシームレスに連携し、複雑な企業ワークフローを自動化して、これまでにない効率性と革新をもたらす未来へのビジョンを示しています。

A2A は Anthropic の Model Context Protocol(MCP)を補完するオープン プロトコルで、エージェントに役立つツールとコンテキストを提供します。Google の専門知識を活かし、大規模なマルチエージェント システム導入の課題に対応するよう設計しました。A2A は開発者にプロトコル準拠の他のエージェントと接続可能なエージェントを構築する機能を提供し、多様なプロバイダーのエージェントを組み合わせる柔軟性をユーザーに提供します。特に重要なのは、多様なプラットフォームやクラウド環境でのエージェント管理を標準化できる点です。この普遍的な相互運用性こそ、協調型 AI エージェントの可能性を完全に実現するために不可欠だと考えています。

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A2A の設計原則

A2A は、基盤となるフレームワークやベンダーに関係なく、エージェント連携の標準を提供するオープン プロトコルです。このプロトコルの設計にあたって、パートナーとともに以下の 5 つの主要原則を遵守しました。

  • エージェントの能力を活用: A2A は、エージェントが記憶やツール、コンテキストを共有していない場合でも、構造化されていないモダリティでも自然に協力できるようにすることに重点を置いています。これにより、エージェントが単なる「ツール」を超えた、真のマルチエージェント連携を実現します。

  • 既存標準を基盤に構築: A2A は HTTP、SSE、JSON-RPC などの広く利用されている標準を基盤としており、企業が日常的に使用している IT スタックとの統合が容易です。

  • デフォルトでセキュリティを確保: A2A はエンタープライズグレードの認証と認可をサポートし、OpenAPI の認証スキームと同等のセキュリティ機能を提供します。

  • 長時間タスクへの対応: A2A は柔軟性が高く、短時間で完了するタスクから、人間が介在する数時間から数日かかる詳細調査まで、幅広いシナリオに対応できます。このプロセス全体で常にリアルタイムのフィードバック、通知、ステータス アップデートをユーザーに提供します。

  • モダリティに依存しない設計: エージェントの世界はテキストだけに限定されるものではありません。そのため、A2A は音声や動画ストリーミングなど、多様な形式をサポートするよう設計されています。

A2A の仕組み

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A2A は、「クライアント」エージェントと「リモート」エージェント間の通信を促進します。クライアント エージェントはタスクの作成と伝達を担当し、リモートエージェントはそのタスクを実行して正確な情報を提供したり、適切な行動を取ります。主な機能は以下のとおりです。

  • 機能のディスカバリ: エージェントは JSON 形式の「Agent Card」を使用して自身の機能を公開することで、クライアント エージェントがタスクを実行できる最適なエージェントを特定し、A2A を活用してリモート エージェントと通信することができます。

  • タスク管理: クライアントとリモートエージェント間のやり取りは、エージェントはエンドユーザーの要求を満たし、タスクを完了させることに重点を置いています。この「タスク」オブジェクトはプロトコルによって定義されており、ライフサイクルがあります。タスクはすぐに完了する場合もありますが、長時間実行されるタスクの場合には、各エージェントが互いにコミュニケーションをとりながらタスクの進捗状況を共有します。タスクの成果物は「アーティファクト」と呼ばれます。

  • コラボレーション: エージェント同士はメッセージを送信し合い、コンテキスト、返信、アーティファクト、またはユーザー指示を伝えることができます。

  • ユーザー体験の調整: 各メッセージには「パーツ」と呼ばれる要素が含まれています。これは生成された画像などの完成したコンテンツの一部です。各パーツには特定のコンテンツタイプが指定されており、クライアント エージェントとリモート エージェントが適切な形式について調整したり、iframe、動画、ウェブフォームなどの UI 機能について明示的に交渉することができます。

プロトコルの詳細な機能については、仕様書のドラフトをご覧ください。

活用事例: 人材採用

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A2Aを活用することで、ソフトウェアエンジニアの採用プロセスを大幅に効率化できます。たとえば、採用マネージャーが Agentspace のような統合インターフェース内で、エージェントに対し、勤務地、スキルなどが求人条件に合う候補者を探すよう指示すると、エージェントが他の専門エージェントと連携し、候補者を見つけます。ユーザーは候補者の提案を受けた後、エージェントに面接日程の調整を指示することで、選考プロセスを効率化します。さらに、面接プロセスが完了した後には、別のエージェントを活用してバックグラウンド チェックを実施することもできます。このように、AI エージェントがシステムを横断して協力し合うことで、適切な人材を効率的に採用するプロセスが実現できます。

エージェント相互運用性の未来

A2A は、エージェントの相互運用性における新たな時代を切り開き、より強力で多用途なエージェントシステムの構築を推進します。このプロトコルにより、エージェントが複雑な問題をシームレスに協力して解決し、私たちの生活を向上させる未来が実現するでしょう。

Google Cloud は、パートナーやコミュニティと協力し、オープンな環境でこのプロトコルを開発していきます。プロトコルはオープンソースとして公開し、誰でも簡単に参加、貢献できる仕組みを整えています。

A2A のウェブサイトでは、完全な仕様案、コードサンプル、およびシナリオ例を確認し、貢献方法について学ぶことができます。

今年後半には、パートナーとともに、本番対応版のプロトコルをリリースする予定です。

A2A パートナー

A2A プロトコルとその技術仕様の策定に積極的に参加しているパートナー企業が増え、エコシステムが拡大していることを心から嬉しく思っています。彼らの専門的な知見や洞察は、AI の相互運用性の未来を形作る上で非常に重要です。

以下は、A2A プロトコルに関わっている主要なパートナーの一覧です。

テクノロジー & プラットフォーム パートナー

  • ask-ai.com
  • Atlassian
  • Articul8
  • Arize AI
  • BCG 

  • Box
  • C3 AI
  • Chronosphere
  • Cohere
  • Confluent
  • Cotality (旧: CoreLogic)
  • DataStax
  • Datadog
  • Elastic
  • GrowthLoop
  • Harness
  • Incorta
  • Intuit
  • JetBrains
  • JFrog
  • LabelBox
  • LangChain
  • MongoDB
  • Neo4j
  • New Relic
  • Pendo
  • PayPal
  • SAP
  • Salesforce
  • ServiceNow
  • Supertab
  • UKG
  • Weights & Biases

サービスパートナー

  • Accenture
  • Deloitte
  • EPAM
  • HCLTech
  • KPMG
  • Quantiphi

  • TCS (Tata Consultancy Services)
  • Wipro

A2A: AI 連携の未来を切り開く

Agent2Agent プロトコル(A2A)は、AI アーキテクチャに重要なパラダイムシフトをもたらします。エージェント間の対話と連携のための標準フレームワークを提供することで、A2A は堅牢でスケーラブルかつ分散型エージェントシステムを構築する新たな可能性を切り開きます。A2A エコシステムは単なる技術仕様にとどまらず、多くの組織や個人が力を合わせて作り上げる共同プロジェクトでもあります。

専用プラットフォームで A2A の仕様書のドラフト利用可能なコードサンプルをご覧いただけます。プロトコルの構造を詳しく調べ、実際にコードを試し、A2A がどのようにベンダーに依存しない環境でエージェント同士の通信をどのように実現するかをぜひ体験してください。

AI の相互運用性の未来に向けて、ぜひプロトコルに参画ください。アイデアの提案、ドキュメント作成への協力、コミュニティへの参加を通じて、A2Aの改良と普及にぜひご協力ください

プロトコルを構築しながら、相互接続された AI エージェントの未来を一緒に築いていきましょう!

-ビジネス アプリケーション プラットフォーム バイス プレジデント兼ゼネラル マネージャー、Rao Surapaneni
-AI/ML パートナー エンジニアリング担当ディレクター、Miku Jha
-プロダクト マネージャ、Michael Vakoc
-プリンシパル エンジニア、Todd Segal

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