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AI & 機械学習

The Prompt: AI によるカスタマー エクスペリエンスの変革 - 成功例と注意点

2025年4月1日
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Lisa O'Malley

Senior Director, Industry Products & Solutions, Google Cloud

2024 年に Google は、カスタマー エクスペリエンスを含め、 AI がビジネスをどのように変革するかを予測しました。当時から現在までの状況と、今後の展望についてお話しします。

※この投稿は米国時間 2025 年 2 月 25 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

現在、ビジネス リーダーたちの間で、生成 AI の話題が沸騰しています。急速に変化するこの変革的分野の話題をタイムリーにお届けするために、この「The Prompt」と題したコラムでは、Google Cloud のリーダーが、お客様やパートナーの皆様と緊密に連携して AI の未来を決定付けている現場からの見解を定期的に紹介します。今回は、AI プロダクト リーダーの Lisa O’Malley が、AI がカスタマー エクスペリエンスをどのように変革しているかを説明します。

昨年、Google は 2025 年の AI トレンドを発表し、多くの話題を集めました。しかし、企業の間で共感を呼んだのは、AI がカスタマー エクスペリエンスを根本的に変える可能性についてです。今では、多様なタッチポイントからお客様がスワイプ、クリック、音声コマンド入力をするたびに、お客様の期待は変化します。その結果、かつて手当たり次第に電話をかけていただけの営業が、ダーツの的の中心をピンポイントで狙えるスタイルに変わったのです。こうした現況を生んだ AI は単なる流行りのテクノロジーではなく、必要不可欠なテクノロジーになったのです。

ここでは、このテクノロジーを理論上のものとしてではなく、現実的にビジネスに導入するものとして再検討します。私の感じるところでは、2025 年、カスタマー エクスペリエンス(CX)に関しては、バックオフィス業務の AI による自動化がよく話題に上がっています。決して間違った使い方ではありません。しかしながら、AI の力をかなり過小評価した使い方であるようにも感じます。AI は単に処理速度を上げるだけではなく、仕事の進め方を根本的に変えるものです。AI のおかげで、カスタマー サポートがようやく正当に評価されるようになりました。私たちは、単なるパーソナライゼーションをはるかに超えた段階に進んでいます。物事の開始から完了までをより迅速に進められるようになっているのです。

会話を通して、私はこの変革がリアルタイムで進展するのを目の当たりにしています。同時に、いくつかの潜在的な失敗も見受けられます。詳しく見ていきましょう。

「目に見えない」CX の未来

カスタマー エクスペリエンスの本質は、お客様が企業とのやり取り全体を通してあらゆる認識と感情をどう抱いてもらうかにあります。カスタマー エクスペリエンスが高まると、お客様のエンゲージメント、定着率、ロイヤリティが向上し、離脱やカートの放棄が減ることで売上に直接影響を与えます。それでは、AI はそれにどのように貢献してきたのでしょうか。

まず、社内プロセスへの影響を考えてみましょう。企業は、建設的なフィードバックを提供できる AI を使用して、CX チームのオンボーディングを迅速化しています。また、24 時間 365 日対応のサポートコールがリアルタイムで文字起こしされます。たとえば、Abstrakt では Vertex AI を使用して、通話を文字起こしし、感情をリアルタイムで評価することで、コンタクト センターのカスタマー エクスペリエンスを強化しています。

お客様との接点となる部分では、ついに表面的な「パーソナライズ」を超える段階に移行しつつあります。AI を活用したカスタマー エクスペリエンスでは、理解されているという感覚、ニーズが予測され満たされやすいという感覚が生み出されます。その証拠はすでに現れています。お客様は仮想エージェントに対して「お願いします」や「ありがとう」と言うようになっており、このことは、エージェントとのやり取りがますます自然で充実したものになっていることを証明しています。これは「目に見えない」CX、つまりテクノロジーが背後に隠れて認識されなくなるほど効率的なエクスペリエンスが実現される未来を示しています。

しかし、おそらく最も重要な変化は、サポート システムがコストセンターから収益の創出源へと進化したことです。お客様との会話から、音声やウェブ、モバイル、メール、アプリを通じたオムニチャネル エンゲージメントが投資収益率を直接高めることがわかりました。カスタマー サポートの成功は、もはや通話処理時間の削減や解決率の向上のみによって定義されるものではなくなりました。重要なのは、エンゲージメント戦略の強化を通じて収益を増加させることが明らかになっています。

エージェントと AI を活用した検索の役割

このような変化の大きな要因となっているのが仮想エージェントであることは驚くに値しません。AI エージェントは、複数の言語とプラットフォームで人間と対話しているような形でのセルフサービスを提供しつつ、必要に応じて人間のエージェントに問い合わせを転送し、あたかも背後にテクノロジーが存在しないかのようなカスタマー エクスペリエンスを実現します。たとえば、Carrefour Taiwan のアプリに統合された会話型 AI サービスである AI Sommelier は、お客様が自分の好みに合ったワインを選ぶ手助けをします。これは、AI が複雑な選択においてもきめ細やかなサポートを提供できることを示す好例です。

私たちが目にした別の大きな差別化要因は、AI を活用した検索です。AI を活用した検索により、バーチャル アシスタントは予期しない質問に対する回答をすばやく見つけ、知識へのアクセスを改善できます。こうしたシステムは、事前にプログラムされた応答に頼るのではなく、ナレッジベース、ドキュメント、データベースなど、さまざまなソースから情報を動的に引き出します。設計上、マルチモーダル、多言語、マルチチャネルであるため、お客様が異なる言語を話す場合でも問題なくサービスを見つけることができます。

成功例: お客様の成功を支援

Gemini モデルはマルチモーダルです。つまり、さまざまな種類の情報の一般化、理解、操作、結合を同時に行うことができます。これが、ウェブ、モバイル、音声、メール、アプリといった幅広いチャネルでユーザーとやり取りするオムニチャネル エージェントの原動力となります。また、Google のオープンなエコシステムにより、顧客記録システムとカスタマー エクスペリエンス アプリケーションを簡単に接続できるため、エージェントはこれまでで最も包括的なデータとシステムに基づいて理解、推論、行動ができます。さらに、Google のエンド ツー エンドの Customer Engagement Suite(CES)は、Google Cloud の基盤となるセキュリティ、プライバシー、AI のイノベーションに基づいて構築されているため、すべてのチャネルで信頼性の高い一貫した顧客インタラクションを実現できます。

たとえば Wendy's では、AI 音声注文エージェントによって、従業員が料理の準備により多くの時間を割けるようになることを見込んでいます。初期段階のテストでは、AI を活用したドライブスルーの所要時間が、その地域の平均よりも 22 秒短縮されることが示されました。さらに、CES を活用することで Bell Canada は顧客業務全体で 2,000 万ドル以上のコストを削減し、Best Buy は問題の解決時間を 90 秒短縮しました。

注意点: すべてのエージェントを最高のエージェントに

こうした CX の変化は疑う余地のないものですが、同時に誤った方向に進む可能性も否定できません。以下に、私が気づいたいくつかの点と、どのようなことに注意すべきかについて説明します。

まず、chatbot は万能ではありません。チャットは重要ですが、それだけでカスタマー エクスペリエンスのすべてをカバーできるわけではないということです。この取り組みの真の意義は、人間の能力を補強し、すべてのエージェントを最高のエージェントにすることにあります。AI を活用することでエージェントの能力を最大限に引き出せるだけでなく、Agent Assist などのツールを使えば、AI を使用したリアルタイムのコーチング、便利な要約、双方向のチャット翻訳も提供できます。エージェントを排除するのではなく、支援することが重要なのです。

2 つ目に、考慮すべき要素は生成 AI だけではありません。たとえば、銀行の担当者が顧客に一連の質問に答えてもらい、本人確認をする必要があるとします。同時に、この顧客が「私にとって最適な住宅ローンは何ですか?提供されている商品を比較できますか?」と質問してきた場合、1 つ目の質問に答えるには確定フロー、2 つ目の質問に応えるには生成フローが必要です。この両方を行えるハイブリッド エージェントが鍵となります。

CX 向けの AI を検討中ならデータの準備を

会話型 AI アプリケーションに処理を求める知識、インタラクション、質問応答、タスク完了の種類について検討は済んでいるでしょうか。データの活用に向けた準備に取り組むことで、組織は AI アプリケーションを導入する際の価値実現までの時間を大幅に短縮できます。AI の品質は、アクセスできるデータの質に左右されるからです。

技術革新と消費者の期待の高まりに支えられ、今後数年間に AI の急速な発展が進むことは明らかです。パーソナライズの技術は、お客様の履歴を分析するという段階を超えて、声、表情、テキストから感情の手がかりを得て意図を解釈し、より寄り添ったサービスを提供できるようになるはずです。詳細については、AI ビジネス トレンド レポートをダウンロードしてご覧ください。

-Google Cloud、業界プロダクトおよびソリューション担当シニア ディレクター Lisa O'Malley

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