データ変革: Vodafone Italy がクラウドでデータ アーキテクチャをモダナイズした方法
Naresh Rao
Head of Telco Analytics & Partnerships, Google
Michele Bertoni
BI Engineering and Delivery Manager, Vodafone Italy
※この投稿は米国時間 2025 年 2 月 27 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Vodafone Italy は、Google Cloud 上に AI 対応の最新のデータ アーキテクチャを構築し、業務の刷新を図っています。このアーキテクチャは、プロセスの効率、スケーラビリティ、リアルタイムのデータ処理を強化できるように設計されています。この変革は Vodafone Italy のクラウドベースのプラットフォーム Nucleus を基盤に行われ、AI を活用した新しい機能の導入とデータ マネジメントの効率化を目的としています。
Vodafone Italy のエンジニアリング チームが開発した Nucleus では、あらゆる分析ユースケースをクラウドネイティブ環境に移行するために、Google AI のインフラストラクチャと BigQuery を、堅牢なデータ移行アプリケーションと包括的な ETL フレームワークと合わせて利用しています。この最新のアーキテクチャにより、データのアジリティ、スケーラビリティ、AI による分析情報を強化しつつ、断片化されたデータサイロを一元的なリアルタイムのデータ エコシステムに統合できます。Vodafone Italy は、Amdocs および Google Cloud と提携して、この柔軟なエコシステム内でデータ パイプラインを再構築し、運用ワークフローを最適化してビジネスに不可欠な機能をサポートしました。また、自社の運用データストア(ODS)とエンタープライズ データ プラットフォーム(VID)を Nucleus に統合し、分析、AI、ML のためのスケーラブルな基盤を構築しました。
わずか 12 か月の入念な計画と設計を経て、ユーザーへのサービスやビジネスの中断や問題もなく Nucleus への移行が完了しました。
このモダナイズされたアーキテクチャにより、数々の重要なメリットがもたらされました。アジリティの向上、法令上の報告の効率化、費用の最適化を実現できたほか、財務、運用、マーケティングなどのコア機能でリアルタイム処理を改善できました。さらに、Nucleus は Vodafone Group のより広範なクラウド モダナイゼーション戦略のブループリントとなり、組織のデータ エコシステムのスケーラビリティと将来性の確保に役立っています。
データ モダナイゼーションの基盤を築く: Nucleus への道のり
2017 年、Vodafone Italy は、大規模なデジタル トランスフォーメーションの一環として、ビジネス サポート システム(BSS)とデータ マネジメントのモダナイズを目的とした大胆な全社イニシアチブ「NEXT」を開始しました。
この取り組みの中心にあるのは、データ マネジメントの変革です。その目的は、Teradata、SAP、BSS ワークロードなどの断片化された以前のシステムによって生じる非効率性を排除し、合理化された AI 対応データ エコシステムを確立することでした。このプロジェクトでは、財務、営業、運用の各機能におけるデータ処理を調和させ、報告、リアルタイムのデータへのアクセス、規制遵守の効率を高めることに重点が置かれました。
この変革は、スケーラビリティ、ガバナンス、アジリティを強化するうえで極めて重要であり、Vodafone Italy は、新商品の製品化までの時間を短縮し、組織全体でデータドリブンな意思決定を行えるようになりました。現代の通信運用の複雑さを認識していた Vodafone Italy は、主要なシステム インテグレータとして Amdocs と提携し、BSS とデータ マネジメントに関する Amdocs の専門知識を活用して、この規制の厳しい業界特有の課題を乗り越えました。
NEXT は、Vodafone Italy のイノベーションを新たなレベルに引き上げるための土台となります。AI を活用した新しい機能を実現し、デジタル インフラストラクチャの将来性を確保できるよう設計されたクラウド ファーストのデータ プラットフォーム「Nucleus」へと飛躍させる準備が整ったのです。
データ アーキテクチャの変革: 統合されたインテリジェントなアプローチ
NEXT プログラムは、データ アーキテクチャにおける画期的な進歩でした。これにより、断片化されたデータサイロから脱却し、スケーラビリティ、ガバナンス、リアルタイムの分析情報を得られるように設計された一元的な 2 層ビジネス インテリジェンス プラットフォームに移行できたのです。
階層 1: 運用データストア
基盤となる運用データストア(ODS)は、通信事業向けに調整された TM Forum 認定モデルである Amdocs Logical Data Model(aLDM)上に構築されています。Amdocs Data Hub を介して実装されるこの階層では、さまざまなアプリケーションからのデータをニア リアルタイムでシームレスに統合し、すべてのタッチポイントにおける顧客の行動とインタラクションを包括的に把握できるようにします。
階層 2: Vodafone Integrated Dimensional Data モデル
エンタープライズ データ ウェアハウスとして機能する Vodafone Integrated Dimensional Data(VID)モデルは、Amdocs と Vodafone のビジネスチームと IT チームが共同で開発しました。VID は、財務報告と分析報告の信頼できる唯一の情報源として機能し、Vodafone のガバナンスとコンプライアンスの基準を遵守しています。数百のエンティティで構成される合理化されたモデルに数百テラバイトのデータが統合されるため、データ ガバナンスが簡素化され、意思決定が加速し、運用効率が高まります。
これらの階層が連携して、組織全体のミッション クリティカルなアプリケーションを強化し、高度な AI と分析、財務報告、キャンペーン管理、インテリジェントな顧客エンゲージメント、マーテック ソリューションを実現しています。ニア リアルタイムのデータアクセスとセルフサービス機能により、Vodafone のチームはより深い分析情報を引き出し、イノベーションを推進して、カスタマー エクスペリエンスを大規模に強化できます。


Nucleus: Vodafone Italy のデータ モダナイゼーションを推進
このように最新のデータ基盤をすでに導入していた Vodafone Italy は、データ エコシステム内の柔軟性と相互運用性をさらに強化しようと考えました。そこで同社は、VID のモダナイゼーションに着手し、効率性、スケーラビリティ、AI への対応を強化できるように設計された、より広範なクラウド ファーストのアーキテクチャにシームレスに統合することにしたのです。
2023 年 6 月、Vodafone Italy はこの変革プロジェクトを開始し、このミッション クリティカルなアセットの進化を計画、テスト、実行するための 12 か月間のロードマップを策定しました。モダナイゼーション プロセスは、VID と Nucleus のインテグレーションを最適化し、データ処理の統合と分析機能の強化を図れるように戦略的に設計されました。
この成功を推進するために、Vodafone Italy は再び Amdocs と提携し、VID と aLDM に関する Amdocs の深い専門知識を活用しました。Vodafone Italy のエンジニアリング チームと Amdocs は Nucleus 環境内で協力して、よりアジャイルでスケーラブル、そして将来を見据えたデータ アーキテクチャへの移行を加速させました。
シームレスなデータ モダナイゼーションでビジネスの継続性を確保
Vodafone Italy は、Google Cloud と Amdocs の協力のもと、BigQuery と「クローン&シフト」のアプローチを活用して Google Cloud に移行し、データ インフラストラクチャのモダナイズを成功させました。入念に計画された 12 か月間の変革により、ビジネス運営を中断することなく、データの完全性とユーザー エクスペリエンスを維持しながら、スムーズな移行を実現しました。BigQuery 内で既存のデータ プラットフォームをレプリケートすることで、スケーラビリティ、アジリティ、リアルタイムの分析情報の強化といったクラウドネイティブ機能のメリットを得ながら、Nucleus フレームワーク内で包括的なデータ マネジメント ツールのスイートにアクセスできるようになりました。
「このプログラムにより、かつては想像もできなかった機能を利用できるようになりました。統合データ プラットフォーム、そして AI と生成 AI をネイティブに統合した包括的なデータ オーシャンを構築したことで、より良いサービスの提供、お客様のニーズの把握、お客様データの保護、営業、カスタマー オペレーション、マーケティングの各チームへのリアルタイム レポートの提供、IT 部門の生産性と製品化までの時間の大幅な改善を実現できました。」- Vodafone Italy、デジタル&IT、データ分析、常時稼働マーケティング システム担当責任者、Massimo Guarino 氏
「当社が開発した Nucleus フレームワークでは、Google Cloud の力を最大限に活用して新しい価値を生み出し、業務を変革しています。Amdocs との卓越したパートナーシップなしでは、この成果は成し遂げられませんでした。Amdocs の専門知識は、シームレスな移行を成功させるうえで大いに役立ちました。連携して運用スピードと適応性を大幅に改善できたことで、新たなチャンスをつかみ、コラボレーションを深め、大幅な成長を促進するための土台を築くことができました。」- Vodafone Italy、BI エンジニアリングおよびデリバリー担当マネージャー、Michele Bertoni 氏
「Vodafone は、aLDM 運用データストアとエンタープライズ データ プラットフォーム レイヤを備えた新しいデータ マネジメント ソリューションを導入したことで、競争上の優位性を獲得しました。効率の改善、ビジネスチームのエクスペリエンスの強化、お客様とエージェントの満足度向上を図りながら、運用コストも削減できたのです。Vodafone Italy の専任パートナーとして、同社のデータドリブンな取り組みをサポートできることを光栄に思います。」- Amdocs、BI コンサルティングおよびデータ アーキテクチャ ユニット リード、Eran Katz 氏
Vodafone Italy の変革の取り組みは、クラウドの力でデータの統合、AI の統合、運用効率を大規模に促進した好例です。Amdocs も交えたこのパートナーシップは、クラウドを活用したイノベーションによってこれまでにない価値を実現し、カスタマー エクスペリエンスと IT 効率の両方を最適化する方法を示しています。Google は、この取り組みで Vodafone と Amdocs をサポートできることを誇りに思い、両社のさらなるデータドリブンな成長を支援できることを楽しみにしています。AI サービスとデータサービスに関する Amdocs と Google Cloud のコラボレーションの詳細については、こちらをご覧ください。
-Google、通信分析担当責任者,、Naresh Rao
-Vodafone Italy、BI エンジニアリングおよびデリバリー担当マネージャー、Michele Bertoni 氏